小児リウマチ
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最新号
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招待解説論文
解説論文
  • 冨板 美奈子
    原稿種別: 解説論文
    2022 年 13 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2023/02/14
    ジャーナル 認証あり

    Sjögren症候群(SS)は,外分泌腺の障害を特徴とする全身性の自己免疫性疾患である.これまで小児にはまれと言われてきたが,実は小児期の膠原病の中で4〜5番目に患者数が多い.小児期患者は乾燥自覚症状を訴えないため,診断に至っていない例も多いと考えられる.長期予後については不明な点も多いが,長期経過で乾燥自覚症状や新たな腺外臓器障害が出現する例があること,少数ではあるが悪性リンパ腫発症の報告もあり,早期診断と長期フォローアップが必要である.「小児期シェーグレン症候群診断の手引き」が早期診断の参考となる.治療法や症状進行抑制のための早期介入については今後の課題で,そのためにも日常診療でSSを鑑別に考えて,疑わしい症例に対して検査を行い,SSの可能性のある症例を見逃さないことが重要である。

  • 小林 法元
    原稿種別: 解説論文
    2022 年 13 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2023/02/14
    ジャーナル 認証あり

    抗NXP2抗体は,抗TIF1γ抗体および抗MDA5抗体とともに,若年性特発性炎症性筋症(JIIM)で検出される主要な筋炎特異的自己抗体(MSA)であり,人種に関係なくJIIMの15〜30%で陽性となる.筋病理では,他のMSAと比較して強い血管炎を認める.また血管炎を反映し,臨床症状として,皮膚筋炎に典型的な皮疹以外に,浮腫や皮膚潰瘍を認めることが特徴であり,筋力低下などの筋症状も他の2つのMSA陽性群より強い.近年,中国から消化管穿孔による死亡例が報告され,予後不良因子として,浮腫,皮膚潰瘍,嚥下障害/発声障害,抗核抗体陽性などが推測されている.また,消化管穿孔は治療後しばらくしてから認めることが多いため,副腎皮質ステロイドなど治療薬の影響も考えられている.難治例に対する確立した治療法はなく,新たな治療プロトコールの開発が望まれる.

  • 八代 将登
    原稿種別: 解説論文
    2022 年 13 巻 1 号 p. 22-31
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2023/02/14
    ジャーナル 認証あり
  • 赤峰 敬治
    原稿種別: 解説論文
    2022 年 13 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2023/02/14
    ジャーナル 認証あり

    若年性特発性関節炎(JIA)の治療方法は各国で相違が見られ,それぞれの国で作成されている手引きやガイドラインから確認できる.日本におけるJIA診療は,「若年性特発性関節炎初期診療の手引き2015」と「若年性特発性関節炎における生物学的製剤使用の手引き2020年版」を組み合わせて行う.それぞれ手引きのため,エビデンス集に専門科の意見を加えたものである.米国では2019年と2021年にガイドラインが作成され,設定されたClinical Question(CQ)に対してシステマティック · レビュー(SR)が行われ,推奨文が掲載されている.この解説論文では,客観的な立場からそれぞれの治療指針の特徴と相違について説明する.日本では現在,厚生労働省難治性疾患政策研究事業で新たなJIA診療ガイドラインが作成中である.本ガイドラインの策定には小児リウマチ科医のみならず,成人リウマチ科医,眼科医,患者会が参画している.

症例報告
  • 敦賀 和志, 藤岡 彩夏, 遅野井 香純, 橋本 礼佳, 佐藤 啓, 佐藤 工, 杉本 和彦
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 13 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2023/02/14
    ジャーナル 認証あり

    IgA血管炎(IgA vasculitis:IgAV)は小児では比較的多い血管炎症候群であり,経過中に再燃することもまれではない.IgAVの再燃時に急性虫垂炎を合併し,保存的治療で改善した症例を経験した.症例は6歳男児.下腿の紫斑と腹痛が出現し,症状増悪のため第7病日に当院を受診しIgAVと診断され入院した.prednisolone(PSL) 1 mg/kg/dayの投与により症状は速やかに改善し第15病日に退院した.PSLは漸減中止し腹痛や紫斑の再燃もなく経過していたが,退院から11日目に発熱と腹痛のために救急外来を受診した.紫斑はなく上腹部と右下腹部に疼痛があり,超音波検査で虫垂の腫大を確認し急性虫垂炎と診断した.cefmetazole(CMZ)による保存的治療で虫垂炎の症状は改善したが,両下腿に紫斑が出現し上腹部痛のみ残存した.IgAVの再燃による症状と判断し,PSLの投与により症状は速やかに改善した.IgAVに急性虫垂炎を合併することはまれであるが,臨床所見に加え超音波検査やCT検査などの画像検査も行い,適切な治療法を決定する必要がある.

  • 田中 里奈, 清水 正樹, 真保 麻実, 山崎 晋, 高澤 啓, 鹿島田 健一, 森尾 友宏, 森 雅亮
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 13 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2023/02/14
    ジャーナル 認証あり

    高クレアチンキナーゼ(CK)血症の原因は多岐にわたり,リウマチ性疾患のほか甲状腺機能低下症もその原因となる.今回われわれは,混合性結合組織病(MCTD)と橋本病(HD)を合併し,それぞれの増悪に伴い高CK血症をきたした症例を経験したため,報告する.7歳時にレイノー現象が出現し,9歳時に発熱,腹痛,炎症性斜頸,甲状腺機能低下症を認め,HDを合併したMCTDと診断された.ステロイドパルス療法で寛解に至り,ミコフェノール酸モフェチル(MMF)を併用された.レボチロキシン(LT)も開始されたが,甲状腺機能が正常化した4か月後に中止した.10歳時に腹痛,嘔吐,高CK血症を呈しMCTDの増悪が疑われたが,甲状腺機能低下も認めLTを再開し改善した.12歳時に再び頸部痛 · 斜頸,高CK血症をきたしたが,甲状腺機能は正常でありMCTDの増悪と考えPSLを増量し改善した.MCTDではHDの合併率が高く,CK上昇を呈した場合にはMCTDの増悪のほか,hypothyroid myopathyにも注意する必要がある.

  • 河西 彩菜, 安岡 竜平, 幸田 昌樹, 加藤 由希子, 内田 博之, 北形 綾一, 夏目 統
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 13 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2023/02/14
    ジャーナル 認証あり

    血栓性微小血管症(TMA)は全身性エリテマトーデス(SLE)の重篤な合併症であり,SLEの疾患活動性と並行して発症することが報告されている.今回われわれは,SLEの初発時に治療を開始してSLEDAI(SLE disease activity index)や血清学的マーカーが改善傾向にもかかわらず,TMAを発症した女児例を経験したため報告する.症例は12歳女児で,重症ループス腎炎を伴うSLEを発症した.ステロイドパルス療法1コース目を開始後,血小板数は増加し,抗ds-DNA抗体価は低下した.しかし,ステロイドパルス療法を2コース終了後(入院12日目)に末梢血に破砕赤血球が出現し,ヘモグロビンと血小板数の減少を伴ったことからTMAを発症したと考えられた.早期に血漿交換療法を導入し,経静脈的シクロフォスファミド療法,ミコフェノール酸モフェチルの内服を追加し,入院33日目に破砕赤血球は消失した.TMAはSLEの治療経過中のいつでも発症しうるため,血小板減少や貧血の進行と破砕赤血球の出現を認めた場合,医療者はTMAの合併を考慮すべきである.

  • 金子 修也, 清水 正樹, 伊良部 仁, 真保 麻実, 山﨑 晋, 森 雅亮
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 13 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2023/02/14
    ジャーナル 認証あり

    8歳男児.3週間程度続く間欠熱,関節痛と皮疹を主訴に紹介医を受診した.肝機能障害やフェリチン値の上昇(2,043 ng/mL)を認め,全身型若年性特発性関節炎(systemic juvenile idiopathic arthritis:s-JIA)が疑われ当科へ紹介受診となった.上肢や体幹部を中心に強い掻痒感を伴う丘疹や紅斑を多数認め,一部褐色調の色素沈着も伴い色素性痒疹様の皮疹を呈していた.s-JIAと診断しステロイド治療を開始すると,発熱,関節痛は徐々に改善した.掻痒を伴う丘疹や紅斑は徐々に消退し,表面がなだらかな色素沈着が残存したがそれも次第に消退した.成人発症Still病では約2割の患者が非典型皮疹を呈し,その多くが強い掻痒を伴う丘疹,紅斑である.一方s-JIAは8割以上の患者で典型疹を呈するが,非典型疹はほとんど認められない.s-JIAでも非典型疹を呈することがあり,発熱小児で掻痒を伴う持続性の丘疹,紅斑を呈する場合にはs-JIAを鑑別する必要がある.

  • 髙木 健太郎, 高橋 英城, 山崎 崇志, 大野 幸子, 堀 佳那江, 亀井 優, 松本 和華子, 呉 宗憲, 河島 尚志
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 13 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2023/02/14
    ジャーナル 認証あり

    非感染性ぶどう膜炎のうち,尿細管間質性腎炎を伴うものはTINU症候群と呼ばれる.TINUと甲状腺機能亢進症の合併はまれだが,非感染性ぶどう膜炎に一過性の尿細管障害と甲状腺機能亢進症を合併した1例を経験した.症例は13歳女子.眼球結膜充血を主訴に近医眼科を受診し,ぶどう膜炎と診断され当院眼科を受診した.ステロイド点眼でぶどう膜炎は改善傾向となったが,血液検査でリウマトイド因子が陽性,尿検査でNAGとβ2MGが高値であった.また,遊離トリヨードサイロニン(FT3)と遊離サイロキシン(FT4)の高値,TSHの低値を認め入院した.甲状腺に関連する自己抗体はすべて陰性だった.超音波検査で甲状腺に低エコー域の不規則な分布を認めた.入院2週間後,血中FT3,FT4,TSH,尿中NAG,β2MGの値は正常化した.本症例は,非感染性ぶどう膜炎に合併した尿細管障害と潜在性甲状腺機能亢進症が,同時期に発症し寛解したと考えられた.これらの疾患の発症機序に共通性があると考え,文献的考察を踏まえて報告する.

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