本稿の目的は、アレヴィーという人々がトルコ国内の地域社会から都市部へもしくはトルコからドイツへと越境することによって生じるアレヴィーリキ(アレヴィーなるもの、アレヴィー主義)の変化について明らかにし、多文化社会や異なる価値体系の共存する社会の中で変化、調整、適合をしているアレヴィーリキを通して「越境と宗教」について考察することである。
一九九六―二〇一八年までの臨地調査による観察や資料収集から得たデータを中心にして、トルコのアレヴィーやドイツのアレヴィーのトルコ系移民の動向やアレヴィーリキの変化を明らかにしたい。
アレヴィーリキは宗教とも文化とも考えられ、明確ではない。伝統的と考えられるアレヴィーリキが、イスラームやキリスト教の卓越する「多文化」社会(トランスカルチュラルな空間)、都市的社会、世俗主義社会などの社会的政治的環境のなかで、調整、適合、変化させ、持続、存続する様態を明らかにする。
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