従来のモデルではChl.a濃度の推定が困難であった懸濁物質量や溶存有機物量の多い茨城県霞ヶ浦を対象水域に選び,水面で測定されたスペクトルデータを基にChl.a濃度と水面直下での分光スペクトルの関係を調べた。検討結果を以下にまとめる。
ChLaの吸収帯である波長(675nm)と従来水質の定量には使用されなかった近赤外波長帯(700nm)の2波長の水中分光反射率の比は,日時が変化してもChl.a濃度とかなり高い相関があった。このことより,リモートセンシングにおいて近赤外光の波長帯が,懸濁物質量や溶存有機物量の多い水域に対し有効であることが示された。
さらに,その提案されたChLa推定モデルが懸濁物質の影響が強い水域においてなぜ有効であるのかクベルカームンクの式を基にいくつかの仮定をもうけて理論的に検証した。その結果,675nmと700nmとの水中分光反射率の比は,水中の物質の後方散乱の影響を避けることができ,Chl.a濃度が0~30[μg/l]の場合,提案したモデルは,SS濃度に関係なくChl.a濃度を推定できることが示された。また,Chl.a濃度が30~60[μg/l]の場合は,SS濃度が既知ならば(17)式によりChl.a濃度を推定することができることが示された。Chl.a濃度が60[μg/l]以上の場合,計算値と実測値は,一致しなかった。
今後,Chl.a濃度が60[μg/l]以上の場合の検討および他の季節における提案したChl.a推定モデルの検証,そしてその推定モデルを実際のリモートセンシングに応用するために水面反射光や大気散乱光の影響を除去する方法についての検討が必要である。また,このような波長を有する高濃度水域観測用センサーの開発に向けての努力が必要である。
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