植生の状態を表すために,これまでに様々な植生指標が提案されてきた。しかし,植生指標に求められる条件やそれに対応する物理量については明確にされていないのが現状である。そこで,最初に植生指標に対して一般的に求められる条件を議論し,次にその条件を考慮しながら,パターン展開法に基づいた新しい植生指標VIPDを提案した。
植生指標に求められる理想的な条件として,1)植生量に線形である,2)植物め活性度に線形である,という2つが考えられる。リモートセンシングデータは,植生の全体量を表すバイオマスよりも葉の量に敏感であることから,本論文では植生量として葉の量に着目する。葉の量に関しては,植生被覆の面積比率と植物葉の重なりによって表すことができる。また,植物の活性度については,植物の光合成活性を考えた。光合成活性は,気温やCO
2濃度等の周囲の環境,また,葉内クロロフィル量や水分量などの葉自身の状態の主に2つの要因に支配される。つまり,環境的要因を除けば,葉の状態量ある葉内クロロフィル量と水分量により植物の活性度を調べることができる。
本論文では,パターン展開法による新しい植生指標VIPDを提案し,それが上記の条件を満足しているかを検証する目的で,放射分光計を用いた植物葉の放射分光測定を行なった。
放射分光測定データからLandsat/TMセンサを想定した波長帯の反射率を抽出し,パターン展開法を適応した。そして,得られたVIPDについてNDVIと比較しながら,葉の厚さ,葉内クロロフィル量,水分量との関係を調べた。
その結果,葉の厚さについては,VIPDはNDVIに比べて葉の厚いところまで線形であった。また,葉内クロロフィル量,水分量とVIPDの関係から,VIPDが植物の活性度を反映していることが明らかにされた。以上の結果から,総合的にみて,VIPDはNDVIよりも植生指標としての条件をより満足していることが明らかとなった。
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