東南アジア原産のデンプン資源作物であるサゴヤシについて.その業の気孔密度を葉位別,小葉位別および小葉の部位別に調べ,さらに気孔密度が樹齢によってどのように変化するかについて検討した.
 実験Ⅰ(小葉の着生位置別および部位別気孔密度):インドネシア,リアウ州トゥビンティンギ島の農家サゴヤシ園に生育する幹立ち直後の個体について.小葉を葉位(上位,中位,下位)別,小葉位(上位,中位,下位)別に採取し,各小葉の先端部,中央部,基部の気孔密度および葉厚を測定した.気孔密度は小葉の表側で100~250個/mm
2,裏側で550~750個/mm
2と裏側で顕著に高かった.小葉内の部位別気孔密度をみると,表側では基部>中央部>先端部の順に高く,裏側では中央部,基部に比べて先端部で低かった.小葉の同一部位の気孔密度には,小葉位間および葉位間で差が認められなかった.また,小葉上の気孔密度と葉厚は表側,裏側ともに有意な正の相関を示し,葉厚の薄かった小葉の先端部ほど気孔密度が低かった.
 実験Ⅱ(樹齢による気孔密度の変化):マレーシア,サラワク州ムカの農家サゴヤシ園において,サッカー発生後1年目から幹立ち期までの1年ずつ樹齢の異なる個体から,主幹の中位葉の中位小葉を採取し,小葉中央部について気孔密度および気孔長を測定した.幹立ち期までの樹齢別気孔密度は裏側ではサッカー発生後1~3年目にかけて顕著に増加(400~900個/mm
2)したが,その後は漸増して5年目(幹立ち期)にはほぽ一定(約1000個/mm
2)になった.表側では幹立ち期まで増加し続けた(約50~120個/mm
2).気孔長は表側で12~14μm,裏側で9~13μmであり,気孔密度の高い裏側の方が小さく,また樹齢に伴い減少する傾向を示したために,気孔密度と気孔長は裏側では高い負の相関 関係(r=-0.970**)を示した.以上の結果より,サゴヤシの葉の気孔密度は,1)表側に比べて裏側で顕著に高いこと,2)葉位間,小葉位間に差はなく,小葉内では先端部で低いこと,3)幹立ち期までは増加するが,その後の変化は小さいこと,が明らかになった.
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