Sago Palm
Online ISSN : 2758-3074
Print ISSN : 1347-3972
8 巻, 1 号
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研究・調査報告
  • —小葉部位,小葉着生位置,葉位並びに樹齢による差異—
    大森 一輝, 山本 由徳, 新田 洋司, 吉田 徹志, 角田 憲一, Jong Foh-Shoon
    2000 年8 巻1 号 p. 2-8
    発行日: 2000年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     東南アジア原産のデンプン資源作物であるサゴヤシについて.その業の気孔密度を葉位別,小葉位別および小葉の部位別に調べ,さらに気孔密度が樹齢によってどのように変化するかについて検討した.
     実験Ⅰ(小葉の着生位置別および部位別気孔密度):インドネシア,リアウ州トゥビンティンギ島の農家サゴヤシ園に生育する幹立ち直後の個体について.小葉を葉位(上位,中位,下位)別,小葉位(上位,中位,下位)別に採取し,各小葉の先端部,中央部,基部の気孔密度および葉厚を測定した.気孔密度は小葉の表側で100~250個/mm2,裏側で550~750個/mm2と裏側で顕著に高かった.小葉内の部位別気孔密度をみると,表側では基部>中央部>先端部の順に高く,裏側では中央部,基部に比べて先端部で低かった.小葉の同一部位の気孔密度には,小葉位間および葉位間で差が認められなかった.また,小葉上の気孔密度と葉厚は表側,裏側ともに有意な正の相関を示し,葉厚の薄かった小葉の先端部ほど気孔密度が低かった.
     実験Ⅱ(樹齢による気孔密度の変化):マレーシア,サラワク州ムカの農家サゴヤシ園において,サッカー発生後1年目から幹立ち期までの1年ずつ樹齢の異なる個体から,主幹の中位葉の中位小葉を採取し,小葉中央部について気孔密度および気孔長を測定した.幹立ち期までの樹齢別気孔密度は裏側ではサッカー発生後1~3年目にかけて顕著に増加(400~900個/mm2)したが,その後は漸増して5年目(幹立ち期)にはほぽ一定(約1000個/mm2)になった.表側では幹立ち期まで増加し続けた(約50~120個/mm2).気孔長は表側で12~14μm,裏側で9~13μmであり,気孔密度の高い裏側の方が小さく,また樹齢に伴い減少する傾向を示したために,気孔密度と気孔長は裏側では高い負の相関 関係(r=-0.970**)を示した.以上の結果より,サゴヤシの葉の気孔密度は,1)表側に比べて裏側で顕著に高いこと,2)葉位間,小葉位間に差はなく,小葉内では先端部で低いこと,3)幹立ち期までは増加するが,その後の変化は小さいこと,が明らかになった.
  • —窒素の挙動に関わる土壌要因—
    角田 憲一, 安藤 豊, 吉田 徹志, 山本 由徳, 新田 洋司, 江原 宏, 後藤 雄佐, プルワント ベニト H.
    2000 年8 巻1 号 p. 9-16
    発行日: 2000年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     サゴヤシの窒素に関する栽培管理の基礎的なデータを得る目的で,現地の土壌断面調査を行い,土壌の化学的性質及び土壌窒素無機化量について検討を行った.インドネシア国リアウ州テビンティンギ,マレーシア国サラワク州ムカ,マレーシア国ジョホール州バッパハト,タイ国ナラチワトの土壌断面調査,土壌の化学的性質及び土壌窒素無機化量について調査した.テビンティンギ,ムカ及びバツパハトには泥炭土壌及び鉱質土壌が存在した.ナラチワトには鉱質土壌が分布していた.泥炭土壌のpHは4以下を示し,鉱質土壌よりも低いpHを示した.泥炭地帯の地下水中アンモニア態窒素は0.1-0.5mgl-1であり,サゴヤシの生育に影響を与えるものと予想された.陽イオン交換容量(CEC)は,鉱質土壌<泥炭土壌であった.一方,CEC pH4/CEC pH7は鉱質土壌で0.9以上を示す土壌が多く存在したが,泥炭土壌では0.7-0.9を示す土壌が多く存在した.したがって,泥炭土壌の窒素吸着強度は鉱質土壌に比べて弱いことが予想された.泥炭土壌の窒素無機化量は鉱質土壌のものに比べ高い水準にあった.易分解性窒素量は泥炭土壌で3.5mg kg-1前後,鉱質土壌では0.9mg kg-1前後であった.泥炭土壌の無機化速度定数kは鉱質土壌に比べて高い傾向にあった.活性化エネルギーは泥炭土壌と鉱質土壌に差は認められなかった.ムカとテビンティンギ両地域における泥炭土壌の容積重は0.15-0.20g cm-3,鉱質土壌では0.90-1.10g cm-3であった.容積当たり窒素無機化量は鉱質土壌よりも泥炭土壌で低いことが示された.また,容積当たりのCECでは,泥炭土壌は鉱質土壌よりも低いものと予想された.本試験の結果より,泥炭土壌と鉱質土壌に生育するサゴヤシの生育差は,土壌の窒素栄養からある程度説明できるものと推察された.
情報
第9回講演会報告要旨
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