Sago Palm
Online ISSN : 2758-3074
Print ISSN : 1347-3972
10 巻, 1 号
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研究・調査報告
  • 佐々木 靖, 近江 正陽, 冨永 洋司, 福田 清春
    2002 年10 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 2002年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     本報ではサゴヤシデンプン抽出残渣から調製したプラスチックシートの生分解性を検討するため,土壌環境中での分解性,培養した生菌による分解性,各種溶媒に対する耐性を評価した.
     前報のエステル化反応条件で効率の良かった条件(140℃・4時間,160℃・2時間)でサゴヤシデンプン抽出残渣を工ステル化し,グリセロールを混合(0,10,15,20wt%)してプラスチックシートを調製した.このシートを土壌環境に60日間曝露して試験した結果,プラスチックシートの弾性率低下・重量減少が確認された.同様に調製したプラスチックシートをカワラタケを培養した培地に60日間静置して生菌分解試験を行った結果,試料はエステル化条件やグリセロールの添加量に関わらず顕著に分解された.各種薬品による耐溶解性試験の結果,プラスチックシートは酸やアルカリに対する耐性は低いことが明らかになった.極性溶媒と無極性溶媒に対する耐溶解性を比較すると,無極性溶媒に対する耐溶解性の方が高く,さらに極性溶媒の酎溶解性はグリセロールの添加により減少することが明らかになった.
  • 西村 美彦, Laufa Terence Miro
    2002 年10 巻1 号 p. 7-15
    発行日: 2002年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     サゴヤシはアジアや太平洋諸島のローカル地域では依然として重要な農作物として位置づけられており,根栽農耕文化圏における特徴あるサゴ農業を形成している.これらの地域におけるサゴヤシは人々の生活に密着しており,主食としての役割が重要であるが地域によって所有,消費は異なる.この農業でサゴ澱粉の加工抽出技術は地域において伝統的にそれぞれの形態を示している.本研究はこの技術の地域的な違いに着目してパプアニューギニア(PNG)とインドネシアを中心に現地調査を行い,またマレーシア等の地域については.文献,写真等の情報から技術の分布の違いを調べた.その結果,澱粉抽出技術の中で重要となるのは,収穫対象サゴヤシの伐採.サゴヤシの切り出し(ログ),髄の粉砕,粉砕髄からの澱粉抽出の4段階である.この過程のうち,髄の粉砕技術とこの髄からの澱粉抽出方法(水洗い)に地域的な違いを見つけた.PNGは髄粉砕に斧型手道具を使用し,抽出は手で洗う装置を使用する.一方,インドネシアのカリマンタン,マレーシアにかけて,髄粉砕はおろし金型道具により,抽出は足で行う装置によるという違いが確認された.また,インドネシアのスラウェシ島はこれらの地域の中間点に当たり,それぞれの技術が混在するが,南東スラウェシでは粉砕は斧型,抽出は足型という混合型となっている.PNGは伝統的にサゴは自給用主食であり,ローカル市場までの移動がほとんどであるのに対し,マレーシアでは澱粉商品としての位罷づけが強くなっている.そして,スラウェシでは主食と商品の両方の役目を果たしていることが確認できた.このことから,この技術の違いは文化的な違いも考慮する必要があるが,自給中心か商品化かというサゴの用途による違いが大きな要因であると想定され,おろし金型粉砕,足型抽出はより商品化への用途に移った形態と考える.
  • Celiz Lani Llego, 岡崎 正規, Josue Angero R., 豊田 剛己
    2002 年10 巻1 号 p. 16-23
    発行日: 2002年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     サゴヤシは泥炭土壌および無機質土壌のどちらにも生育し,幹に澱粉を集積する能力があることはよく知られている.しかし,フィリビン・ミンダナオでは,サゴヤシは農家の収人源となる屋根葺き材として主に利用されている.フィリピン・ミンダナオ・ミサミスオリエンタール・アルビヒットにおいて,サゴヤシバイオマス,生育密度などに関するデータを収集し,屋根葺き材生産に関する農家の収入を解析する研究を行った.アルビヒットでは,サゴヤシ葉から屋根葺き材をつくるために,3カ月ごとに1本のサゴヤシから3葉を収穫し,3ないし4葉を残す作業を繰り返しており,サゴヤシには幹の形成がみられず,結果的に,サゴヤシバイオマスはサゴヤシ葉の重量を計測することによって達成された.アルビヒットのサゴヤシ生育密度は極めて高く,ヘクタール当たり3025~4600であった.これは,アルビヒットが年間を通じて湛水条件下にあること,サゴヤシ栽培農家が新たに生育してくる吸枝を制御せず,より多くの葉を生産している意欲の表れであると判断される.ミンダナオにおける最近のサゴヤシ屋根葺き材(100枚)の市場価格は,6.24米ドルである.サゴヤシの生育密度から計算すると,サゴヤシ栽培農家のサゴヤシに関する収入は,ヘクタール当たり3,591.71米ドルで,周辺農家の純収入と比較して高いといえる.
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第10回講演会報告要旨
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