Sago Palm
Online ISSN : 2758-3074
Print ISSN : 1347-3972
2 巻, 1 号
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研究・調査報告
  • ―パプアニューギニアにおける1調査事例―
    下田 博之, 斉藤 邦行, パワー A. P.
    原稿種別: 研究・調査報告
    専門分野: 農学・食品科学
    1994 年2 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 1994年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     サゴヤシの澱粉生産性に関与する要因のうち,1)幹立ち後収穫期 (花器形成開始期)までの年数,2)樹齢別・樹高別の澱粉含有量について,Papua New Guinea,Sepik州での調査事例を基に検討考察した.1981年にサッカーを移植したサゴヤシ苗の追跡調査から,調査地のサゴヤシは移植されたサッカーが幹立ち後,速い株で10年,遅い株では16年後に収穫期を迎えることが確認された.また髄中の澱粉は,幹立ちの2.5-3年後から幹の基部より蓄積を開始し,次第に頂部に向かって蓄積して,8年後には最頂部を除いて樹商別の含有率はほぼ一定となることを認めた.
  • 阿部 登
    1994 年2 巻1 号 p. 7-12
    発行日: 1994年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     ヤシの葉は熱帯地域では建材,手芸品の材科,記録材料として,利用されているが,そのうちでもサゴヤシ,ニッパヤシ,ココヤシが首位をしめている.この3者の耐久性をしらべるために,その構造を観察し,その耐久性との関係を検討した.サゴヤシの葉には葉肉紺織がしっかりつまり,繊維の強い柔構造であり,ニッパヤシは外皮と壁状の葉脈による箱形の硬い構造であった.それにくらべて,ココヤシはサゴヤシに似た構造であるが,繊維が弱いので,前2者にくらべて耐久性が小さかった.しかし,これらのヤシの業は,それぞれの性質を知った上で利用すれば,有用な自然の資源として活用できると考えられた.
  • 三橋 淳, 佐藤 仁彦
    1994 年2 巻1 号 p. 13-20
    発行日: 1994年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     パプアニューギニアでは,古くからサゴヤシ伐倒木に発生するオサゾウムシを食用としていることが知られている.今回の調査により採集された種は,ヤシオオオサゾウムシであることが判明した.住民は伐倒後放置されたサゴヤシから,オサゾウムシの幼虫を採集する.子供達はその幼虫を生きているまま呑み込むことを好むが,一般的な食べ方としては,虫をココナツミルク,塩,味の素,玉ねぎ,アイビカ,フクロタケなどと煮て,シチュー状にしたものである.化学分析の結果,幼虫生体は水分73.4%,タンパク6.9%,炭水化物8.5%,脂肪11.3%,灰分0.7%よりなることが明らかになった.またアミノ酸分析の結果は,トリプトファンが遊離およびタンパク構成アミノ酸中に欠如していることを示した.文献によるデータを参照して,ヤシのオサゾウムシ類の生活環,利用法,食用法などを検討した.
  • —銅,亜鉛を指標として—
    山口 千尋, 岡崎 正規, 金子 隆之
    1994 年2 巻1 号 p. 21-30
    発行日: 1994年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     現在,マレーシアのサラワク州では2万haのサゴヤシ栽培地がありその約60%がOya-Dalat,Mukah地区に分布し,大規模なプランテーションも行われつつある.この地域のサゴヤシ栽培地のうち約60%が泥炭土壌である.このような熱帯泥炭は,oligotrophic peatであり,微量元索の含有率が著しく低く,特に銅は有機物と強い錯体を形成しやすいために,植物への有効性が低く,作物に欠乏症が発生しやすい.しかし,サゴヤシには銅の欠乏症が発生しにくいことから,このような泥炭土壊で栽培できる作物の一つとして期待されている.サゴヤシは生育立地によって生長が異なることが知られているが,その生育環境中に,あるいは植物体中にどの位の濃度の銅,亜鉛が分布しているか,また,それらが植物の生長と生育段階にどのように関係しているかを明らかにし.熱帯泥炭土壌におけるサゴヤシの 持続生産の可能性を探ることを目的に研究を行った.
     熱帯泥炭地域における土壌およぴ水環境中の銅と亜鉛の濃度は非常に低く,特に銅は低濃度であった.それにもかかわらず,サゴヤシ中の銅と亜鉛の濃度は沖積土壌で生育した作物体中の銅,亜鉛濃度とほぼ同じ程度で,Deep peat soilで生育したサゴヤシ中の銅濃度以外は欠乏症が発現するとみられる濃度を超えていた.異なる泥炭土壌に生育したサゴヤシの生長を比較してみると,Deep peat soilで生育したサゴヤシはshallow peat soilで生育したサゴヤシよりも生育が遅く,幹にデンプンを蓄積するようになるまでに時間がかかることが明らかになった.
     サゴヤシを収穫し系外へ搬出すること,地下水位を低下させることによる泥炭の分解に伴って微量元素が流失することなど,サゴヤシ栽培地域の微量元素の循環を考慮すると,銅は降水からの付加が流出量を上まわるため系内に蓄積する傾向がみられるが,亜鉛は系内へ付加される亜鉛に比べ,系外へ失われていく亜鉛が多いため,施肥などによって亜鉛が付加されない限り,亜鉛は土壌中から失われていく傾向にあることが示された.このようなことから無計画なサゴヤシ栽培は持続的なサゴヤシ生産を保証しないといえる.
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