Sago Palm
Online ISSN : 2758-3074
Print ISSN : 1347-3972
4 巻, 1 号
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研究・調査報告
  • 荻田 信二郎, 久保 隆文, 竹内 学, 山口 千尋, 岡崎 正規
    1996 年 4 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1996年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     光学顕微鏡およぴ走査型電子顕微鏡(SEM)によって,3年生,5年生,8年生および開花直前の13年生のサゴヤシ(Metroxylon sagu)樹幹内のデンプン蓄積量の変化と分布を観察した.デンプンは楕円形あるいは豆型であり,基本組織の柔細胞中に蓄積されていた.しかし,基本組織中に一様に分布するのではなく,維管束周辺の柔細胞中により多く蓄梢されていた.デンプン粒の直径は5~50µmと様々であり,樹齢および樹高によって異なった.デンプン粒の直径は加齢と共に増大傾向を示し,その蓄積量も増加した 基本組織中には大きな髄腔が多数認められた.このような髄腔にはデンプン粒は全く存在していなかった.
  • 糟谷 信彦
    1996 年 4 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 1996年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     熱帯の泥炭低湿地に生育するサゴヤシの根についての2種類の実験をマレーシアのサラワク州において行った.実験の目的は,サゴヤシの成長が異なると見られる2種類の土壌,すなわち泥炭土と沖積鉱質土におけるサゴヤシ根量とその分布のちがいを明らかにすることである.実験1では,サゴヤシ植栽地で約8年生のサゴヤシの幹の根元付近,そこから約1mあるいは2m離れた地点で土壌プロックを深さ40cmまで掘り出し,根量を調べた.サゴヤシ根を直径と分岐により,分岐の密な直径2mm以下と,分岐の疎な5mm以上,中間的な2mmから5mm,の3種類に分けて定量した.直径5mm以下の細根現存量は泥炭層の厚い泥炭土壌,沖積鉱質土壌でそれぞれ,4.7,11.4 t/haと差がみられた.これらは森林における値の範囲の5~10 t/haとそれほど変わらなかった.成長のよい沖積鉱質土壌で細根量が多いという今回の結果はこれまでのサゴヤシや針葉樹の結果と異なっており,土壌サンプリングの深さや根の分岐特性のちがいが一因と考えられたが,今後さらに調査する必要がある.サゴヤシ根量の深さ40cmまでの土壌中の垂直分布は2種類の土壌で同様であり,直径2mm以下の根と直径2mmから5mmの根は表層の深さ0~20cmにそれぞれ 60%以上と55%以上が分布し,一方直径5mm以上の根は深さ10cmより深い土層,特に20~30cmに50%以上が存在した.サゴヤシの根の分布は他樹種の根や粗大木質有機物の存在により影響を受けていなかった.実験2では,約1年生の若いサゴヤシを,泥炭層の厚い泥炭土壌と泥炭層の薄い泥炭土壌で3本ずつ地上部・地下部ともに調査した.根の最大深さは両地点で少なくとも1mに達していると推察された.根株から分岐している1次根に関して,サゴヤシ1株あたりの全体の本数は泥炭層の薄い泥炭土壌の方が多かったが,上向きに伸長している根を除くと差は小さくなった.1次根の直径では土壌間の差はなかった.以上から深い泥炭土壌と沖積鉱質土壌では上述の3つの直径階の根の垂直分布パターンは同様であったものの,根の量全体で比べると成長が遅いとされる前者の方でより少ない傾向にあることが示唆された.
  • ―サゴパールの加熱方法について―
    平尾 和子, 高橋 節子
    1996 年 4 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 1996年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     サゴヤシの樹幹に蓄積されるサゴ澱粉から加工されたサゴパールは,直径約2~4mm程度の球状でスープの浮き身やゼリーなどのデザートに利用されている.サゴパールは加熱の際に煮崩れしやすく,均一な煮上がりを得ることが困難とされている.そこで芯がなく,透明で,弾力のある食感を短時間に得るための節便な加熱方法を検討するために実験を行った.サゴパール(マレーシア・サラワク州産)は,直径2.8-3.5mmで傷のないものを選ぴ出した.加熱方法は直火法と魔法瓶を用いるポット法の2種を用い,物性測定および加熱による経時的な形状および走査型電子顕微鏡による組織形態変化を観察した.結果は次のとおりであった.
     1)サゴパールは直径が小さいために,いずれの加熱方法においても25-30分間の短時澗で加熱することができた.走査型電子顕微鏡による観察から加熱25分以降に澱粉粒の変化が認められた.加熱40分以降になると,サゴパールは弾力性が失われ付着性が増してべたつきが感じられた.
     2)直火法はポット法に比べて煮上がる時間が比較的短く,直径が大きい軟らかい物性が得られた.しかし,芯のあるサゴパールが混在する不均一な煮上がりとなった.湯煎法は直火法よりも均一なパールが得られると推察されるが,ポット法よりも煮上がりは遅くなり,手間もかかると思われた.
     3)ポット法は煮くずれせず,弾力があり,均一な煮上がりとなり,形状,テクスチャーの良いパールが得られる優れた方法と思われた.また,ポット法は加熱途中の攪拌や湯を補うなどの手間がいらないという点で,簡便で有効な加熱方法と考えられた.
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