Sago Palm
Online ISSN : 2758-3074
Print ISSN : 1347-3972
3 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
研究・調査報告
  • Foh-Shoon Jong
    1995 年3 巻2 号 p. 45-54
    発行日: 1995年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     泥炭層の薄い泥炭地に生育するサゴヤシは同一の生長段階にあっても,幹の高さ,周径,重量とも変動がみられる.植栽時点から幹が形成されるまでの約5.5年間は,ロ ゼッタ段階にとどまっており,開花は12.5年で始まり,果実が完全に脱落するまでには14.5年かかる.
     澱粉の平均乾燥重量は,開花期まで成熟するにつれて増大する.比較的早い生長段階では澱粉は主として幹の下部に集中するが,このことは澱粉の集積が幹の基部から頂部に移行することを示している.18~20%という最大の澱粉量は,幹の最大生長段階(花序形成の直前)と開花段階のあいだでみられる.その後は澱粉量は急速に減少し,最終段階では4~6%になる.
     正常に結実したヤシと対照的に,花序の異常あるいは損傷のためにまったくあるいはごくわずかしか結実しなかったヤシでは,澱粉の大半は幹の中に保持される.このことは,幹の中のほとんどの澱粉は,生長の最終段階である果実の発達のために移送されることを示している.
     時間あたりの澱粉生成量が最大になるのも,幹の最大生長段階と開花段階のあいだにある.経済的にみて最大の収量を得ることと,次世代のヤシの生長を促進させるためには,収穫は最大生長段階でなされるべきである.
  • 第1報 農村の現状と食生活
    西村 美彦
    1995 年3 巻2 号 p. 55-61
    発行日: 1995年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     南東スラウェシ州はまだ開発は十分進んでいない地域であり,農村は伝統的農法を継承しながらも水田耕作が取り入れられ始めた.水田耕作は他の地域からの移住者によって伝搬されたもので,伝統的な農業も変わりつつある.クンダリのある半島部は先住民としてトラキ人が住んでおり,南部の島にはムナ人,プトン人が先住民として住んでいる.彼らの伝統的農業は焼畑とサゴヤシで森からの採集を合わせ生計をたてており,この生活は自給を基本としたものであった.しかし異なる背景をもつ民族の移住によってもち込まれた,水稲栽培の農法は新しい村の形成に影響を与える大きな要因となっている.
     村はトラキ語を語源として,約300世帯で形成されているが,先住民だけの村,移住者の混在している村,水田が導入されている村など発展段階の違いが認められる.クンダリ周辺の村では米,サゴ,トウモロコシが重要な主食となっており,村によって食する形態が変わっている.米はほとんどの村で重要な主食となっていたが,これにサゴデンプン,トウモロコシが加わり,わずかに芋,バナナも含まれている.主食となるものは民族の嗜好性と村の作物の生産状況によると思われる.以上のことから,この地域では焼畑を中心とした雑穀農業と湿地のサゴ採取農業が主流をなしていたが,水田耕作が新しく導入され多様な変化が始まっていることが明らかになった.
  • 第2報 作物栽培の現状とサゴヤシの利用
    西村 美彦
    1995 年3 巻2 号 p. 62-71
    発行日: 1995年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     南東スラウェシ州の農業は,焼畑とサゴ採取農業を中心に営まれてきた.しかし,この農業形態では村人は自給生活を営むためのぎりぎりの所得しか得ることができない.村の伝統的な焼畑による作物収量は陸稲で平均1.5 t/ha,トウモロコシで2.5 t/haである.また,サゴヤシは先住民トラキ人の重要な主食の1つとなっている.クンダリ周辺のサゴデンプンの生産は乾季に水洗いの水に不足するため,デンプン抽出作業は雨季が中心となる.水の豊かなコナウェハ川流域の生産地からは,サゴヤシは年間を通してクンダリ市等の都市部に出荷される.また,湿地の分布する地域のサゴ生産地から周辺の村に供給されている.サゴデンプンは湿った状態で流通するので,日持ちが悪いが,かなり広い範囲にわたって移動することがわかった.サゴデンプンは米よりも価格は安く,都市部では安定して販売されている.しかし,村では需要と供給のバランスが価格に微妙な変動を与えている.これらのことを反映して,現在ではサゴ採取農業は水田農業に次第に置き換わりつつある.
特別報告
  • 高橋 節子, 平尾 和子, 貝沼 圭二
    1995 年3 巻2 号 p. 72-82
    発行日: 1995年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     熱帯地域の人々の主食として用いられてきたサゴ澱粉の利用特性について,理化学的ならびに調理科学的に検討した.顕微鏡観察,粘度および膨潤力・溶解度の測定とともに,アミロース含批およびアミロペクチンの鎖長分布はゲル濾過法により求めた.澱粉の加熱糊化過程および保存中の糊化・老化特性はβ—アミラーゼ・プルラナーゼ法によった.澱粉ゲルのレオロジー的性質およびテクスチャーは,クリープメーター,テンシプレッサーを用いて測定した.
     調理・加工特性については,食文化的面からハルサメ,ブラマンジェ,くず桜,わらびもち,胡麻豆腐などを調製しサゴ澱粉の利用性を検討した.また,膨化調理についてはマフィンおよびパンをとりあげ,小麦粉の代替としてのサゴ澱粉の利用効果について明らかにした.これらの結果から,サゴ澱粉は理化学的性質からも調理科学的性質からもすぐれた特性をもつことが明らかとなり,純度の高いサゴ澱粉が入手可能ならば,調理・加工面に広く利用できると考えられた.
サゴヤシ研究賞入賞論文
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