Second Language
Online ISSN : 2187-0047
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2 巻
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  • 菅野 和江
    2003 年2 巻 p. 3-20
    発行日: 2003/05/01
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
  • 平川 眞規子
    2003 年2 巻 p. 23-51
    発行日: 2003/05/01
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    本論文は, 日本語学習者 (英語母語話者) のもつ日本語における非対格性の知識に関する実証的研究である.ここではLevin & Rappaport Hovav (1995) やKageyama (1993) に従い, 深層と表層の非対格性を区別する.深層の非対格性は, 非対格動詞の項が目的語の位置に生成される構造をさす.それに対し, 表層の非対格性は, 目的語の位置に生成された項が派生後も同じ位置を占める構造をさす (すなわち, 主語の位置に移動しない).日本語は深層と表層の非対格性をもつと主張されており (Kageyama, 1993;Yatsushiro, 1999), 「たくさん」構文や数量詞浮遊 (quantier floating) をテストに用いた第二言語獲得に関する先行研究によれば, 日本語学習者は深層の非対格性に関する知識を有する (Hirakawa, 1999;Sorace & Shomura, 2001).しかしながら, これらの研究で使用された格脱落 (Case Drop) テストは, 日本語母語話者の振るまいが予測とは異なり, 表層の非対格性の知識を調べるには不十分であった.本研究は, こうした先行研究をさらに発展させ, 新たな構文 (深層レベルの非対格性のテストとして結果構文, 表層レベルの非対格性のテストとして使役受動文) を用いて実験を行った.その結果, 深層の非対格性は中級および上級学習者ともに獲得されたが, 表層の非対格性は上級学習者のみに獲得された.結論として, 第二言語学習者のもつ文法はUGの原理の制約を受けているが, 非対格動詞の特質が第二言語と第一言語において異なる場合には, 第一言語の影響も受けることが導き出される.
  • 若林 茂則, 根岸 留美子
    2003 年2 巻 p. 53-73
    発行日: 2003/05/01
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    日本語は空主語ならびに空目的語を許すが, 英語はどちらも許さない.この違いから, 日本人英語学習者にとっては, 目的語を義務的に使用することを習得することと主語を義務的に使用することが, 同程度に困難であることが予測される.この予測に反して, 本研究のデータによると, 目的語を義務的に使用することは主語を義務的に使用することよりも, 日本人英語学習者にとってはるかに難しい.Yhan (1997) は中国人英語学習者について本研究と同様のデータを用い, この非対称性は入力において引き金となるデータが入手可能かどうかに原因があると論じている.すなわちYUanの説明では, 主語の義務的使用の習得については主語と動詞の一致を示す形態的証拠によって明示的な引き金が与えられ, それによって習得が起こるが, 目的語の義務的使用についてはそのような形態的証拠が存在せず, そのため習得が起こらない.YUanは, 表層的な形態素使用は, その規定にある文法能力を必ずしも反映しないとしているため, この議論を反証することは極めて難しい.しかし同時に, この議論は実験的データによって支持されるものではない.例えばDavies (1996) は, 主語と動詞の一致と主語の義務的な使用に相関関係が見られないことを明らかにしている.本研究ではYhanの立場を取らず, 主語と目的語に見られる非対称性は入力における一貫性の問題であるという説明を試みる.主語名詞句は英語の全ての文において一貫して音形を持つが, 目的語は必ずしも全ての文で音形を持つわけではない.この種の入力を受けて, 日本人英語学習者は, 英語では主語は義務的に使用する必要があるが目的語は母語と同様に省略しても良いと誤解してしまう可能性がある.また英語の動詞には自動詞および他動詞両方の用法があるものがあり, それらが目標言語の文法とは異なる中間文法を作り出す原因となっている可能性もある.さらに英語動詞の自他性についての形態的指標の欠如が, 日本人英語学習者による動詞の統語的特質の習得を困難にしているとも考えられる.
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