現代社会学理論研究
Online ISSN : 2434-9097
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14 巻
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  • イスラーム、シティズンシップ、ジェンダー
    岡崎 宏樹
    2020 年 14 巻 p. 1-5
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/25
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  • 多文化主義社会イギリスにおけるムスリム女性とヒジャブ
    安達 智史
    2020 年 14 巻 p. 6-18
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/25
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    「多文化主義は女性にとって害悪か」。この疑問は、多文化主義に投げかけられる根本問題である。多文化主義はマイノリティの文化に承認を与えるが、その結果、承認を受けたコミュニティの内部で個人の権利が制限される。そして、そうした権利を制限される個人は、多くの場合、女性なのである。だが、ムスリム女性について分析をおこなった本稿は、多文化主義をめぐるこうした支配的ディスコースと異なる知見を導きだしている。それによると、多文化主義は、女性たち自身の手による宗教的探求を促すことで「イスラームを人間化」し、その結果、市民社会の価値との両立を実現するとともに、彼女たちのより広い社会への参加を可能にしている。本稿では、イギリスの移民第二世代ムスリム女性のヒジャブ着用/未着用をめぐる態度についての分析を通じて、女性の自律と信仰の関係とともに、多文化主義、イスラーム、西洋社会への統合との間にあるより積極的な結びつきについて議論をおこなう。
  • セクシュアル・デモクラシー、「ノン・ミクシテ」と カラー・ブレイヴな普遍主義
    森 千香子
    2020 年 14 巻 p. 19-30
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/25
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    本稿は「ポスト多文化主義時代」のフランスにおいてマイノリティをめぐる状況にどのような変化が生じているのかを考察した。これまで多文化主義は、「共和主義」を国是とするフランスには馴染まない、あるいは反発を引き起こす、という観点から捉えられてきたが、実際には新たな動きも観察されている。「セクシュアル・デモクラシー」に見られるような新たな排除の論理が広がる一方で、反差別運動の内部から差別被害者だけのセーフ・スペースを求める「ノン・ミクシテ」という実践が展開されるようになった。それはマイノリティの権利擁護の運動に新たな地平を切り開くと同時に、従来のフランス型共和主義の発想と対立するものであることから、激しい批判や攻撃を引き起こしている。さらに「ノン・ミクシテ」運動やムスリム女性のスカーフ着用をめぐる「選択」の問題には、少数者が団結して抵抗するというコングリゲーションの論理と、社会が少数者ごとに隔離されていくというセグリゲーションの論理という、解釈をめぐる対立が浮かび上がっている。
  • 「理論」の独白から思想の対話へ
    鈴木 赳生
    2020 年 14 巻 p. 31-44
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/25
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    多文化主義にかんする思想は元来の文脈から切り離されて伝播し、しばしば、普遍的に妥当しうる「理論」として受容・検討されてきた。だがこれらの「理論」は、特定の時代の特定の社会で育まれた政治思想であり、その妥当性を正当に評価するには文脈化された検討が欠かせない。こうした考えにもとづき、本稿はとくにウィル・キムリッカのリベラル多文化主義思想を、それが元来応じたカナダ先住民政治の文脈に位置づけなおして検討する。
    この検討にあたって本稿は、キムリッカの思想を批判的な先住民思想と比較する。彼が応答した政治状況に対し、先住民の思想家たちはそれを異なる角度からとらえ、応答してきた。キムリッカの思想をリベラリズムの枠内のみで検討するのではなく、異なる伝統に立つ先住民思想と対比させることで、その限定性はより鮮明になる。本稿ではとくに「再起」と呼ばれる先住民思想、なかでもタイアイアケ・アルフレッドとリアンヌ・シンプソンの思想に着目し、かれらとキムリッカ、3 者の思想を比較する。比較の軸として、①植 民国家によって制度化された「承認の政治」、②ジェンダー化された規範による個人の自由の制約、の2点に対する応答の相違に焦点が当てられる。この「政治思想の対話」を通して提起されるのは、単一の価値世界の内へと多元性を押し込む「主義」や「理論」の追求から、価値世界自体の多元性と向き合うことへの、文化的多元性をめぐる議論の根本的な方向転換である。
  • 介護保険制度を中心に
    兪 羅珠
    2020 年 14 巻 p. 45-56
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/25
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    介護保険制度は、官民パートナーシップにより再生産労働を社会的サービスとして提供する制度である。社会的サービスは政府の財政で事業者がサービスを提供し、利用者がそれを購入する形式の福祉制度であり、私的領域で行われた再生産労働が公的領域に移った変化である。この変化はおよそ19世紀にさかのぼる。19世紀には「出生率、死亡率、平均寿命といった人口現象をめぐり、制度・技術・知識が結合したもの」である「社会的なもの」が形成され、福祉制度が成立した。生命の再生産にかかわる諸過程である再生産労働はこの時期から「社会的なもの」になり、福祉制度に入ることで公的関心の対象になった。本稿では、こうした背景を踏まえた上で日本の介護保険制度が提起する論点を考察する。介護保険制度における労働者と利用者の両方に焦点を当て、第一に、女性移住労働者が高齢者ケアを賃労働で担うことを果たして女性の公的領域への「進出」として見なせるかを考察する。19世紀においても現在においても「社会的なもの」である福祉制度は、再生産労働を公的なものとして可視化したが、相変わらず女性の労働である点でジェンダーと結びついている。第二に、国民年金制度には国籍条件があるが、介護保険制度には国籍条件が緩和されているため、日本国籍を持たない人々も介護サービスが利用できる。一部の在日朝鮮人も国民年金制度の対象にはならないが、介護保険制度の対象にはなる。国民年金制度が主権の作用する制度であり、介護保険制度が生権力の作用する制度であるとするなら、生権力は主権が排除した「非国民」を「人口」として包摂する。本稿は、こうした二つの考察を通して今後、再生産労働を再構築することに貢献することを目的とする。
  • 中絶をめぐる女性の自己決定権の再考
    松浦 由美子
    2020 年 14 巻 p. 57-69
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/25
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    「自己決定権」の概念は、人工妊娠中絶へのアクセスを求めるフェミニズムの主張の論拠として1980年代後半以降広く使われてきたが、日本のフェミニズムは「権利」の語の使用には積極的ではなく、それはしばしば忌避され、ときには棄却されてきた。フェミニストたちは、自己決定することは胎児の生命の価値を否定するものではない、女性の「自己」とは胎児と別個に存在しているのではない、と繰り返し論じてきたが、「権利」のないその「自己決定」は「決定」の名に値するものなのか。はたして「権利」は中絶をめぐるフェミニズムの言説において本当に必要ないのだろうか。これらの問いに答えるために、カール・シュミット、ジャック・デリダ、エルネスト・ラクラウらの議論を参照して主体と決定との構成的な関係を考察する。それによりフェミニズムが用いてきた自己決定権の主張がはらむ問題点を明らかにし、これまで避けられてきた「権利」概念の必要性を論じたい。
  • 70年代の理論構想の意義
    德宮 俊貴
    2020 年 14 巻 p. 70-82
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/25
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    見田宗介の思索を跡づける際、社会学理論の構築から出発しながら、ある時期以降は近/現代社会の自明性を相対化(反転)するための拠点を深化させてゆき、それによって現実社会の原理的矛盾(と内在的に格闘する社会学)から離れてしまったと見る向きがある。本稿では、そのように指摘される見田の〈理論〉とはなにか、それ自体を含めて再検討し、別様の見方を提起したい。〈反転〉がじつは〈理論〉と結びついていたのではないかという可能性が、1970年代前半に書かれた諸著作、とりわけ「価値空間と行動決定」(1972)を内在的に再考証すると、浮かび上がってくる。当時の見田を貫いていたのは、人間の価値選択をめぐる非条理な矛盾に対する問題感覚だった。非条理を克服する現実的な可能性として見田は、近代の「価値空間」すなわち主体の前に現象する価値の全体構造自体の、内側からの再創造(裂開)の論理の獲得を提起する。これをふまえるならば、その後の見田のいわば外側からの〈反転〉も、〈裂開〉のための媒介として、〈理論〉の中に再定位することができる。〈反転〉と〈裂開〉のこの弁証法的な往還を問い直すことは、見田の所論の今日的可能性を系統的に再検討してゆく新たな視角になりうるだけでなく、見田自身によっても具体化されていない諸課題を展開してみる際の基礎的な参照点にもなると考えられる。
  • 知識社会学の根本問題の解決に向けて
    小田 和正
    2020 年 14 巻 p. 83-95
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/25
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    一般に知識社会学は知識と社会的存在との相互関係を究明する社会学の一分野として定義される。したがって基本的に知識社会学には知識と社会、精神と物質といった二元論的構図が伴われる。しかしその確立者であるK.Mannheimがそうするようにあらゆる知識が社会的に制約されると規定する場合、その二元論的構図はジレンマに陥る。二元論の両極はいずれも知識であり、もし社会的存在を説明されるべき知識の関係項として実体的に扱うなら、知識の普遍的な社会的制約性の主張と矛盾するように見えるからである。
    本稿はこの知識社会学一般にかかわる根本問題の解決に向けた予備的研究として位置づけられる。解決の基本方針は知識社会学を知のホーリズムとして定式化するというものであり、それに向けて本稿では、Mannheimの知識社会学がW.V.O.Quineが提起する知のホーリズムとしての性格をもつこと、逆にそのQuineのホーリズムは知識社会学化される必要があること、MannheimとQuineを補完する議論としてA.Schützの知識理論を位置づけうること、そしてそのSchützの知識理論もまた独自の知のホーリズムとしての特徴をもつことを論じる。最後に、知識社会学を知のホーリズムとして定式化する際のSchützの貢献を明確化し、知識社会学の根本問題の解決に向けて残された主要な課題を指摘する。
  • 馬渡 玲欧
    2020 年 14 巻 p. 96-101
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/25
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  • インヴェンションとシンフォニア
    油井 清光
    2020 年 14 巻 p. 102-106
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 石川 洋行
    2020 年 14 巻 p. 107-112
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/25
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  • 出口 剛司
    2020 年 14 巻 p. 113-117
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル オープンアクセス
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