本稿では、「インスタ映え」という新しい現象を対象に、ソーシャルメディア時代における観光がどのような特徴を持つのかについて、主として社会学の立場から検討した。
インスタ映えは、メディアを経由して流入する情報が空間の意味を上書きするという〈多孔化〉の議論によって一部説明できる。しかしながらそこではインスタ映えについては検討されていない。そこで本稿ではインスタ映えについて(1)消費者研究における「関与」の程度の違いがもたらす効果、(2)経営学における「ほんもの」に関する議論を参照しながら理論的分析を行った。
その結果、以下のような知見を得た。すなわち、(1)インスタ映えは、低関与な消費者が自らの需要を満たすために、シンボリック属性に関する情報探を行う際に適合的である。(2)インスタ映えする観光地のオーセンティシティは、ソーシャルメディア上のコミュニケーションが生み出すコードと、観光地のマテリアリティの相互作用が生み出している、というものである。
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