観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
7 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 「インスタ映え」の観光社会学的考察
    鈴木 謙介
    2019 年 7 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、「インスタ映え」という新しい現象を対象に、ソーシャルメディア時代における観光がどのような特徴を持つのかについて、主として社会学の立場から検討した。
    インスタ映えは、メディアを経由して流入する情報が空間の意味を上書きするという〈多孔化〉の議論によって一部説明できる。しかしながらそこではインスタ映えについては検討されていない。そこで本稿ではインスタ映えについて(1)消費者研究における「関与」の程度の違いがもたらす効果、(2)経営学における「ほんもの」に関する議論を参照しながら理論的分析を行った。
    その結果、以下のような知見を得た。すなわち、(1)インスタ映えは、低関与な消費者が自らの需要を満たすために、シンボリック属性に関する情報探を行う際に適合的である。(2)インスタ映えする観光地のオーセンティシティは、ソーシャルメディア上のコミュニケーションが生み出すコードと、観光地のマテリアリティの相互作用が生み出している、というものである。
  • トリップアドバイザーがシミュレートする「想像による旅」
    松本 健太郎
    2019 年 7 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、旅行情報コンテンツとして世界一の閲覧数を誇るトリップアドバイザーをとりあげ、そこで旅行者が投稿した写真データの位置づけを分析の俎上に載せる。そのうえで、そのアプリに搭載された機能が旅をめぐるイマジネーションを喚起するのか、そして旅をめぐる体験をシミュレートするのかを考察することになる。
    より具体的にいえば、トリップアドバイザーのサイト、およびそのスマートフォン版アプリによって、私たちは都市や地域ごとのホテル、レストラン、観光情報などに関する口コミや価格比較を利用しうるわけだが、本論文ではそこに含まれるデジタル写真のメディア論的な位置づけに着眼したうえで、それに関連した二つの機能――「トラベルタイムライン」と「360度パノラマ写真」――を分析していく。そしてそのうえで、単なる「旅の表象」ではなく、むしろ「旅のシミュレーション」という観点から、それらが可能にする「旅の想像」のメカニズムについて考察を展開することになる。ようするに本研究では、写真の画像データにもとづいて、旅という行為をよりリアルなものとしてシミュレートする上記の機能を考察することで、今日的な旅のイマジネーションの実相に目を向けようと試みるわけである。
  • デジタル空間における宗教経験のリズム・フローをめぐる観光学的考察
    安田 慎
    2019 年 7 巻 1 号 p. 21-35
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本論考は、ツーリズムにおけるデジタル化の動きが観光研究にもたらしたインパクトについて、イスラームにおけるデジタル空間上の宗教経験の公共性と真正性を分析しながら考察するものであった。一連の議論を通じて、デジタル空間上で玉石混交の宗教経験が大量に蓄積されて流通するなかで、どの宗教経験が公共性や真正性を保持するものであるのかを、社会のなかで信認することを困難にしていった。特に、個々の宗教経験に付随していたマテリアリティに基づくコミュニケーションがデジタル空間において喪失するなかで、自分の保持するリズムや時間感覚と類似した宗教経験を参照や共有、模倣することを通じて、他者とのコミュニケーションを確立していく動きが活発になっていく。その結果、デジタル空間上での類似する宗教経験の集積・離散度合が、個々の宗教経験の公共性や真正性をも担保していく点を指摘した。以上より、ツーリズムにおけるデジタル化の動きが観光研究にもたらしたインパクトとして、観光経験の公共性と真正性が、デジタル空間上の類似した経験の集積・離散度合によって計られる形へと変化してきた点を示した。
  • もう一つの大衆観光について
    高岡 文章
    2019 年 7 巻 1 号 p. 37-49
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    観光研究は、近代以前の旅やポストモダン以降のもう一つの観光を善きものとして、対照的に近代の大衆観光を悪しきものとして扱ってきた。その結果、私たちは大衆観光の真相を十全に分析し損ねてきた。こんにちにおいて、観光の大半は団体旅行ではなく個人旅行の形態をとる。だからといってそれは社会から孤立しておこなわれているわけでもない。観光者はひとり(alone)でありつつ、なんらかの社会性に編み込まれている(together)。観光におけるこのようなaloneとtogetherはどのように関係しているのだろう。現代的な状況における観光の社会性や大衆性とはいかなるものだろうか。本稿は「観光のつながり」の社会学的研究をとおし、大衆観光/もう一つの観光の二項対立を越えて「もう一つの大衆観光」の探究を試みたい。
  • メディア研究の移動論的転回
    遠藤 英樹
    2019 年 7 巻 1 号 p. 51-65
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    私たちが他者と生をいとなむ「社会空間」はすべて、必ず何らかの時代状況との関わりにおいて形成されている。とくに現代にあっては、人、モノ、資本、情報、イメージ、観念等がグローバルに国境を越えて移動する状況のもとで「社会空間」が存在していることにより注意を向けるべきだろう。現代の「社会空間」はグローバルなモビリティの状況によって大きな影響を受けながら形成されているのである。社会のモビリティを現出させていくうえで、「デジタル革命」を経たメディアが果たしている役割は大きい。「デジタル革命」を経たメディアは「モビリティの時代」の中で形成され、社会のモバイル化をうながしているのである。同時にそれは、「モビリティの時代」において、「社会空間」のひとつとして、多様な振舞い(パフォーマンス)がなされる舞台(settings)となっている。社会がモバイル化することによって、デジタル・メディアにおける「プラットフォーム」を「社会空間」として表現される振舞い(パフォーマンス)や情報・イメージ・観念はこれまでと異なる位相のものへ生成変化を遂げていく。同時に、そのことによって「プラットフォーム」は「社会空間」として、モビリティの諸現象を新たなものへと誘い出しうながしもするのである。このことは特に観光現象において、明瞭に見てとることができるだろう。本稿では観光の「インスタ映え」を議論の俎上にあげつつ、観光をめぐる「社会空間」もまた、デジタル・メディアと密接に結びつき、そのことで観光のあり方を変容させるようになっていることを、ぬいぐるみの旅などの事例を通じて検討する。
  • 地域文化観光から考えるローカルな主体とアクターネットワーク論
    福井 栄二郎
    2019 年 7 巻 1 号 p. 67-69
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
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