観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
1 巻, 2 号
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  • 生成的なディシプリンへの呼びかけ
    遠藤 英樹
    2013 年1 巻2 号 p. 129-144
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/13
    ジャーナル フリー
    人文・社会科学は観光研究も含め、1960年代から1980年代にかけて「言語論的転回」を、1980年代から2000年代にかけて「文化論的転回」を経ながら、みずからのレゾンデートル(存在意義)を刷新してきた。特に人類学、社会学、地理学の領域では、国内外ともに、その傾向は顕著であった。だが現在、これら「言語論的転回」や「文化論的転回」の議論をさらにすすめて、「モビリティー」や「再帰的近代」等に対する問いかけがなされるようになっている。これら人文・社会科学におけるいくつかの転回は、既存の学的な視点によっては「社会的なもの(the social)」の位相を充分にとらえることができなくなってきたがゆえのものだと言える。本稿では、これらをふまえて、現在「社会的なもの」は「観光(tourism)」に明白に現れるようになっており、人文・社会科学は観光論的な視点を積極的に内在化させていく必要があることを主張する。結論として、観光学を、静的・定常的なディシプリンとしてではなく、動的・生成的なディシプリンとして確立していくべきことを呼びかける。
  • 神田 孝治
    2013 年1 巻2 号 p. 145-157
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/13
    ジャーナル フリー
    人文・社会科学における観光研究は、学際的な文化/空間論的転回の影響を受けるなかで、1990年代に入ってから盛んになった。そこで本稿では、文化/空間論的転回と呼ばれる研究動向における視点を整理した上で、かかる議論に触発された観光研究の特徴を明らかにした。さらに、文化/空間論は1990年代後半以降にその視点が変化しており、それに影響を受けた観光研究の視座も変容しているため、この点についての考察も行った。最後に、本稿で取り上げた議論をもとにして、観光学の意義と可能性について、「移動」、「出会い」、そして「あわい」という3つの点から検討した。
  • 観光/文化/人類学のはざまからの視点
    鈴木 涼太郎
    2013 年1 巻2 号 p. 159-172
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/13
    ジャーナル フリー
    本稿は、日本における観光人類学の展開を文化論的転回をめぐる議論との関連から検討するものである。1970年代に開始された観光現象を対象とした人類学的研究は、1980年代半ば以降に日本に移入された。近年国内外を問わず数多くの研究成果が蓄積されており、観光研究にも重要な示唆を与えている。しかしこれまで、観光人類学が観光研究に対しどのような貢献を行っているのかについては、観光研究/人類学双方の文脈において十分に検討されてこなかった。そこで本稿では、観光人類学を観光研究の一領域として位置づけ考察を行った。その際、人文社会諸学において文化論的転回と呼ばれる文化の政治性や構築性について考察する諸研究との関連について焦点を当てた。その結果明らかになったのは、文化論的転回の議論は、日本における観光人類学の導入に重要な役割を果たす一方で、観光人類学が扱う対象や論点を狭めたということである。今後の日本の観光研究における観光人類学は、文化論的転回の議論が不可視化してきた論点も含むより幅広い問題系に取り組む可能性を有しており、地域振興への参画など実践とのかかわりを含むものとなると考えられる。
  • メディア時代のグローカルなロケーション
    山口 誠
    2013 年1 巻2 号 p. 173-184
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/13
    ジャーナル フリー
    観光化が社会問題から地域振興策へ転換した1980年代を経て、観光地は「遠くの場所」だけでなく、街中や日常空間などの「近くの場所」にも現れた。2000年代には「ここ」を観光的想像力によって再発見し、パワースポットや下町やB級グルメの地元として再編成されるとともに、そうした「ここ」へ向かう観光が人気を博した。本稿では、「ここ」を再発見する観光のかたちに着目し、D. ブーアスティンとJ. メイロウィッツによるメディアと場所に関する先行研究を批判的に継承し、「ここ」を観光する快楽の作動原理を考察する。結論として、均質化と差異化が同時に進行するグローカリゼーションの一例として「ここ」への観光を捉えたとき、そこには観光することではじめて「ここ」を空間的かつ身体的に体験し、また「ここ」を物質的に体験する「わたし」を実感する、というメディア時代の観光の快楽を指摘することで、今後の課題を明らかにした。
  • 『台湾日日新報』を中心に
    曽山 毅
    2013 年1 巻2 号 p. 185-202
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/13
    ジャーナル フリー
    日本統治期台湾の教育機関が実施した修学旅行について、民族属性や多様な参観地選択などに注目して検討した。とくに、総督府国語学校に導入された修学旅行には統治者/日本人と被統治者/台湾人という図式が顕著に表れたが、これは日本統治期の修学旅行の基底に存在し続けた。1920年代には中等教育機関の中に南支旅行を実施する学校があらわれ、修学旅行における内地と台湾の関係性は相対化され、台湾人と日本人との間に存在する修学旅行における意味づけの相違が判別しにくくなった。1920年代以降、内地修学旅行を再認識する動きが見られたが、これには、内地が修学旅行の絶対的な選択肢ではもはやないという側面と、内地旅行を植民地統治という文脈において復権しようとする側面があった。修学旅行は初等教育機関にまで普及していくが、1930年代には、日本人児童にも内地旅行が要請されるようになり、台北市などが小・公学校児童を対象にした内地修学旅行を実施するようになった。この旅行では日本人児童と台湾人児童の統治・被統治の関係に由来する優劣性にはある種のねじれが生じることになった。
  • 富山県南砺市城端を事例として
    片山 明久
    2013 年1 巻2 号 p. 203-226
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、第1にアニメ聖地巡礼者と地域住民との間に生まれる関係性の段階的発展を明らかにすることであり、第2に制作者を交えた3者の関係の中で、彼らが共有する中心的価値にアプローチすることである。その考察のために、「次世代ツーリズム」という概念を分析枠組として取り入れ、考察を行った。その結果、「次世代ツーリズム」のひとつであるアニメ聖地巡礼において、ファンと地域住民の間に「趣味充足段階」「理解交流段階」「参画協働段階」という3つの発展段階が存在していることを発見した。次に事例として富山県南砺市城端を取り上げ、アニメ『true tears』に動機付けられたファンが地域において行いつつある活動と特性を、上記の3つの発展段階に沿って示した。またファンと地域の関係がどのようなコンテンツに向かって求心されているのかについても考察し、その結果、各アクターが作品と共に地域の歴史と伝統に基づいた地域文化に敬愛とも呼べる共感を示し、それを尊重した形でアクター間の関係性を発展させているということを明らかにした。そしてその関係性を、城端における「次世代ツーリズム」の関係性モデルとして図式化し提示した。
  • 「宗教ツーリズム」研究の幕開け
    橋本 和也
    2013 年1 巻2 号 p. 227-230
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/13
    ジャーナル フリー
  • 虚構のアイロニー
    高岡 文章
    2013 年1 巻2 号 p. 231-233
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/13
    ジャーナル フリー
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