著者等は,中国南部九連山において森林集水域のプロトン収支と土壌酸性速度を算定した。この集水域では, H
+ , NH
4+ , Ca
2+, SO
42- の大気沈着量(それぞれ, 400 , 351 , 299 , 876 eq/ha/yr) が他の溶質より高かった。これらの物質の発生源は中国南西部あるいは北部であろう。土壌の酸性速度は 2562 eq/ha/yr であり,高くなかった。土壌酸性化の最も重要なプロセスは,土壌中の“イオン交換と風化”による集水域からの塩基性陽イオンの流出であり,主に Mg
2+ の純損失 (830 eq/ha/yr) によるものである。しかし,集水域での H
+ , NH
4+ , SO
42- の保持(それぞれ 399, 321, 723 eq/ha/yr) も集水域土壊を酸性化し, SO
42- の保持は土壌酸性化に大きく作用する。プロトン収支を土嬢コンパートメントについて評価した際,陰イオン保持の重要性が示唆された。集水域土壌は酸'性化しているが,渓流水は酸性化していない。しかし,酸性化物質が供給され続け,土壊の酸性化が更に進行すると,渓流水の pH は低下するかもしれない。
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