Tropics
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11 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • CHAIRUL, 米田 健
    2002 年 11 巻 2 号 p. 59-68
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    日本の照葉樹林とインドネシアの熱帯多雨林における林床での葉部リターの分解に及ぼす外部環境の影響を,同じリターを用いたリターバッグ法による1年間の観測結果に基づき考察した.照葉樹林において分解が冬から始まった場合,その後1年間の炭素重量の減少パターンは第1近似としてひとつの指数関数曲線で近似することができ,材料とした照葉樹林の5種類のカシ類の業部リターの平均分解率は 0.70±0.13y-1で、あった.しかし,3ヶ月間隔での評価では分解率に季節変化が現れた.一方,熱帯多雨林においては,分解初期の3ヶ月間での重量減少がとくに大きかった.また,観測期間中に発生した2ヶ月間に及ぶ異常乾期中では分解率が大きく低下した.異常乾期を除く期聞から推定した平均分解率は照葉樹林のカシ類の葉を基質とした場合は 1.62±0.24y-1で,両観測地の年平均気温から推定した温度係数は,5 種の平均で Q1O=2.19±0.26で、あった基質のC/N比は重量減少とともに減少し,分解過程の後半では両森林において基質の違いにかかわらずC/N=20で一定となる傾向を示した.これら分解率とその季節変化,さらにC/N比の変化に基づき両森林生態系の林床での葉部リターの分解過程の特徴を考察した。
  • 土谷 彰男, Mario HIRAOKA, Carlos Rosario da SILVA
    2002 年 11 巻 2 号 p. 69-79
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    アマゾン川河口のウルブエウア島における林令 30 年程度のパルゼア林(浸水林)とテラフィルメ林 (陸上乾燥林)を対象に、樹木個体数、種数、地上部現存量、人為、雨期(高水位期) ・乾期(低水位期)における樹幹横断面の導管形状値から両者を比較した。個体数・種数ともにテラフィルメ林が多かった(個体数: 85/400m 2,種数: 22/400m 2) が、パルゼア林では商品作物であるアサイヤシ(ElIterpeoleracea Mart.)の保護育成のための人為の大小によって方形区間で個体数にばらつきが見られた(個体数: 62 ± 19.51) 。林分の樹高階分布にも下層木の伐採の影響が見られた。方形区当たりの地上部現存量の推定値は平均値では両者はほぼ同じ値を示した(パルゼア: 12.43t,テラフィルメ: 11.56t)が、パルゼア林の区間差は大きく (SD: ± 6.02t)、人為が小さければ成長速度が速いことが 示唆された。岡林分の成長季節は、乾期と雨期の導管面積率・導管数・直径・周囲長の比較から、テラフィルメの樹木は雨期依存性であるが、林床を水に覆われるパルゼアの樹木は低水位の乾期に主に成長していることがわかった。
  • 土谷 彰男, 小林 幹夫, 伊澤 紘生
    2002 年 11 巻 2 号 p. 81-90
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    コロンビア,マカレナ国立公園のドゥダ川沿いの河畔林に 3 箇所の方形区(100 m )を設定し,毎木調査と樹幹横断面の年輪解析から代表種の特性を調べた. 河岸からの距離が長くなるにつれて個体数は 103 から 45 へと減少したが,樹高は 10 m 以下から 20 m へ,胸高直径(DBH)は 10 cm 以下から 25 cm へ,方形区あたりの (DBH)2H 合計値は1. 39 m3 から 11.62 m3へと変化した.年輪数から推定した林齢は河岸では 10 年以下であったが内陸側では 25 年程度であった.総じて先駆種の Cecropia membranacea が優占していた.この種は初期肥大成長は他種を上回るものの,成長と枯死のサイクルが短く,内陸側でも平均樹齢は 10 年以下であった. しかし,導管直径が 250μm を上回ることから短期間に林冠に達する早生種であると推察される . Ficusinsipida やPiptadenia flava も大径の導管をもっ林冠種であるが,成長率の安定したグループである.一方,導管径の小さい Guarea guidonia と Inga bomplandiana は林内の中下層にとどまり,上長成長よりも肥大成長が中心であると考えられる.
  • 原口 昭, 矢部 和夫
    2002 年 11 巻 2 号 p. 91-100
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    インドネシア中部カリマンタン,ラヘイ周辺の 2 つの泥炭湿地林において,土壊の酸化還元電位の垂直および水平分布について調査した。泥炭表面の酸化還元電位は,最大標高差約 40cm の微地形に対応して変化した。すなわち,相対的に標高が低くて冠水している土壊の酸化還元電位は低く (0-300mV). 逆に,相対的に標高が高く,渇水している土壊の酸化還元電位は高かった(> 500mV) 。土壊表層の酸化還元電位は,渇水している土嬢と冠水している土壌の境界において明瞭に変化した。泥炭の酸化還元電位の垂直分布は,泥炭の堆積が 7.5m に達する泥炭湿地林と,鉱物質層上に 5-15cm 程度の泥炭堆積が見られる低木湿地林とで著しい違いが認められた。低木湿地林では,酸化還元電位が表層から深度 45cm まで一様に減少したが,泥炭湿地林では,表層から深度 50cm まで一定で 400 mV 以上の高い値を維持していた。泥炭湿地林において,高い酸化還元電位が深度 50 em まで維持されている理由は,樹木の気根によって土嬢への酸素輸送が行われていることと,低い土壌 pH によって好気性微生物活性が著しく低くなっていることに起因するものと思われる。
  • 仲川 泰則, 李 畠華, 岩坪 五郎
    2002 年 11 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    著者等は,中国南部九連山において森林集水域のプロトン収支と土壌酸性速度を算定した。この集水域では, H+ , NH4+ , Ca2+, SO42- の大気沈着量(それぞれ, 400 , 351 , 299 , 876 eq/ha/yr) が他の溶質より高かった。これらの物質の発生源は中国南西部あるいは北部であろう。土壌の酸性速度は 2562 eq/ha/yr であり,高くなかった。土壌酸性化の最も重要なプロセスは,土壌中の“イオン交換と風化”による集水域からの塩基性陽イオンの流出であり,主に Mg2+ の純損失 (830 eq/ha/yr) によるものである。しかし,集水域での H+ , NH4+ , SO42- の保持(それぞれ 399, 321, 723 eq/ha/yr) も集水域土壊を酸性化し, SO42- の保持は土壌酸性化に大きく作用する。プロトン収支を土嬢コンパートメントについて評価した際,陰イオン保持の重要性が示唆された。集水域土壌は酸'性化しているが,渓流水は酸性化していない。しかし,酸性化物質が供給され続け,土壊の酸性化が更に進行すると,渓流水の pH は低下するかもしれない。
  • 山中 慎介, 福田 善通, 石川 隆二, 中村 郁郎, 佐藤 雅志, 佐藤 洋一郎
    2002 年 11 巻 2 号 p. 109-120
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    1960 年代の渡部による先駆的な研究以来,モチイネ栽培圏に関する体系的な研究成果はその中心部のラオス人民共和国の政情不安定によりほとんど得られていない。その後 90 年代になって現地調査が可能になり,我々は 91 年から 99 年にかけてラオス全土をほぼ網羅するかたちでイネ遺伝資源、の探索を遂行する機会を得た。特に 95,96 年には北部の焼畑地帯の農村に滞在し重点的に調査を行った。その結果,モチイネ栽培圏でも近代化が進み,伝統的なイネ品種が近年導入された改良品種に置き換えられるケースがみられた。この 9 年間で得た裁第イネは 8 地域・ 104 サイトから計 408 系統にのぼるが,その内訳をみると無毛性 (glabrous) に関して極端な地理的クラインが認められ,北部 5地域では 61 %が glabrous 系統であったのに対し,中央および南部 3地域では 4%のみが glabrous でふ毛を有する系統がほとんど、であった。このようにラオスで大部分を占めるモチイネ系統も北と南では形態が大きく異なっているように見えるが,モチ・ウルチ性を支配する waxy 遺伝子座の由来を dCAPS マーカーで調べたところ, 99%が japonica タイプであった。このことはラオスにおけるモチイネ(モチ性突然変異)の起源は,見かけ上の indica­japonica 分化とは独立に,その大部分が japonica 系統に由来することを意味する。
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