日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第34回日本臨床免疫学会総会抄録集
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シンポジウム
シンポジウム1
  • 小安 重夫, 山本 一彦
    セッションID: S1-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
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    生命科学としての基礎免疫学は疾患の理解の為の重要な情報を提供してくれるが、それだけで病気が理解できたり、新しい治療法が開発できるわけではない。さらに疾患研究におけるモデル動物は重要であるが、実際の疾患との異同を十分に理解しないと、間違った方向に進む可能性がある。 例えば、ノックアウトマウスの表現型がヒトの病態と似ていても、全く違うメカニズムのこともある。実際のヒトの病態とモデル動物との比較する学問がもっと発達しなくてはならないと考える。自己免疫疾患の例として、T細胞が関わると思われる炎症性腸疾患と抗体が主役の尋常性天疱瘡などにおいてモデルマウスが作製されているが、どこまでヒトの疾患と同列に論じられるかは厳密に検証されるべきである。また、モデル動物における発症とヒトにおける発症の機序がどこまで類似するかもきちんと議論されるべきであろう。  一方で治療に目を向けると、マウスで非常に効果のある治療法でもヒトに応用できていないものがある。経口免疫寛容を例にとると、動物モデルでは、自己抗原の経口投与で自己免疫疾患を制御出来たとのデータが多くあるが、現在までのところヒトの治験ではうまくいっていない。すなわち、マウスとヒトの免疫システムは似ているが、違うところも多い。技術的な問題を克服してヒトの免疫システムを体系的に十分に理解する必要があるのではないかと考える。  ヒトの免疫システムを十分に理解しないで、新しい治療法を開発している現在の状況は、ある意味では一点突破主義ではないかとも言える。2006年英国で起こった、ヒト化されたアゴニスト作用を持つ抗CD28抗体の第1相試験における事故は、ヒトの免疫システムの体系的理解が不十分だったからとも言えるのではないだろうか。
  • 清野 宏
    セッションID: S1-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
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    近年、新型インフルエンザウイルス(H5N1)やSARSコロナウイルスの流行などにより呼吸器感染症に対する早急な対策が求められている。その中で感染予防としてのワクチンは重要な手段である。従来の注射型ワクチンと異なり経鼻ワクチンは血液中の抗体産生だけでなく、感染防御の最前線とも言える粘膜面に抗原特異的な分泌型IgA産生や細胞性免疫を誘導する事ができる。 経鼻的にワクチン抗原を投与した場合、鼻咽腔に存在する免疫誘導組織としての鼻咽腔関連リンパ組織 (NALT)の役割は非常に重要と考えられる。ところがNALTの部位や形態など解剖学的特徴はヒトとマウスでは多くの相違点が知られている。例えばアデノイドや口蓋扁桃などワルダイエル扁桃輪はヒトの咽頭に存在するが、マウスの咽頭にリンパ組織は認められない。マウスの場合、鼻腔底粘膜にNALTが発達しておりヒトの扁桃に対応するリンパ組織と考えられている。最近、一部のヒト鼻腔粘膜にもリンパ組織が発見されたことから、マウスのNALTとの比較とその免疫学的機能解析が求められている。我々はマウスを利用してNALT発生のプログラムのユニーク性の解明を進めており、さらに同組織が抗原特異的免疫応答誘導の場である事を明らかにしてきた。経鼻ワクチン開発のためにはNALTを中心とした気道粘膜免疫システムのさらなる解明が望まれ、特にヒトとマウスの相違点を明らかにすることがヒトへの臨床実用化のためには重要である。
  • 坂口 志文
    セッションID: S1-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
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    正常個体中に存在する制御性T細胞は、免疫自己寛容の維持、免疫応答の抑制的制御に枢要である。内在性制御性T細胞は、CD25分子を構成的に発現する。正常動物末梢CD4+T細胞の約5-10%を占めるCD25+T細胞を除去すると、甲状腺炎、糖尿病など様々な自己免疫病が自然発症してくる。このようなCD25+CD4+制御性T細胞の少なくとも一部は、正常胸腺で機能的に成熟した状態で産生される。Foxp3は、制御性T細胞の発生、機能発現を制御するマスター制御遺伝子である。Foxp3は、胸腺、末梢のCD25+CD4+T細胞に特異的に発現しており、正常T細胞にFoxp3を発現させると、機能、表現型の点で内在性制御性T細胞と同等の制御性T細胞に転換できる。Foxp3+CD25+CD4+制御性T細胞の量的・質的異常は、様々な自己免疫疾患/炎症性疾患の直接的原因となる。さらに、内在性制御性T細胞のみならず、Foxp3遺伝子の導入により作製した制御性T細胞を用いて、様々な免疫疾患の予防・治療が可能である。一方、内在性制御性T細胞の除去あるいは機能操作は、自家腫瘍に対して有効な免疫応答を惹起できる。逆に、制御性T細胞の制御能を強化すれば、移植臓器に対する拒絶反応を抑制し、長期の移植免疫寛容を誘導できる。即ち、制御性T細胞は免疫自己寛容のみならず、自己/非自己に対する免疫応答の抑制的制御に重要である
  • 山村 隆, J. L. Croxford, 三宅 幸子
    セッションID: S1-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
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    Invariant NKT (iNKT)細胞とMAIT細胞(粘膜関連T細胞;mucosal associated invariant T cells)は、それぞれCD1d拘束性T細胞、MR1拘束性T細胞とも呼称されるユニークなリンパ球で、異なるインバリアントTCRを使用して糖脂質抗原を認識する。iNKT細胞に比べてMAIT細胞の研究は遅れているが、最近、EAEモデルにおいて重要な免疫制御機能を発揮することが明らかになった。本講演では両細胞の相違点やマウス、ヒトの差異などに関する知見を紹介する。 iNKT細胞とMAIT細胞は、いずれもNK細胞マーカー分子を発現し、広義の嗄KT細胞黷驕Bそれぞれの細胞を過剰発現したTCRトランスジェニックマウスでは動物モデルEAEは軽症化するが、 両細胞がTh1病態を制御する制御細胞であることを反映している。MAIT細胞の際立った特徴は、その名前が示すとおり消化管粘膜に集積する点にあり、腸内細菌成分がリガンドになる可能性もある。両者は状況によっては相互依存、相互補完的に機能するが、その詳細は今後の検討課題である。マウスではiNKT 細胞数がMAIT細胞数に比べて優位であるが、ヒトではこの比率が逆転しMAIT細胞数が優位となる。このマウス、ヒト間の相違は、免疫制御系の種差を考える上で興味深い。
  • 池原 進
    セッションID: S1-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
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    一般に、“幹細胞”は?半永久的に自己再生能力を有し、?種々の細胞へと分化する能力を有する細胞と定義づけられている。骨髄の中には、造血系の細胞を産生する「造血幹細胞」以外に、骨髄の環境を構成している「間葉系幹細胞」も存在する。後者は、身体の骨格(筋肉,骨,軟骨,結合織など)を構成する細胞の元になる細胞である。  我々は、10年程前に、「造血幹細胞」と「間葉系幹細胞」の主要組織適合抗原(MHC)のclass Iが一致している方が、「造血幹細胞」の増殖が助長されることを見出したが、この事実は、アロの骨髄移植を成功に導くためにも、また、「造血幹細胞」と「間葉系幹細胞」とのinteractionを分子生物学的な面から解析する上にも、極めて重要と考え紹介する。  我々は、約10年前、“造血幹細胞”が充分に育つためには、“造血幹細胞”と“間葉系幹細胞”の相性(拘束性)が存在すること、すなわち、主要組織適合抗原(MHC)のclass Iが一致する必要があることを見出した(Blood 89:49,1997;Stem Cells 19:46,2001)。従って骨髄移植の際、“種”だけを移植するのではなくて、“畑”もドナー側に置き換えると移植の成功率が高まることを発見した(Exp.Hematol.31:1142, 2003)。さらに、骨髄の中に存在する“造血幹細胞”と“間葉系幹細胞”をうまく利用すると、からだの中の傷害部位(病変部)を修復できる可能性も出てきた。現在、盛んに叫ばれている再生医療がそれである。若い時の自分の骨髄細胞(臍帯血でも可)を凍結保存しておけば、病気の際に利用できる。  マウスとヒトの造血幹細胞と間葉系幹細胞の相違点並びに移植方法の違いについて述べる。
  • 天谷 雅行
    セッションID: S1-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    マウスモデルは多くの場合、自己免疫疾患の病態解明に有用な知見を供する。しかし、マウスとヒトという種の違いに基づく相違点を注意深く認識する必要がある。我々は、自己抗原ノックアウト(KO)マウスが欠失した抗原分子に対する免疫寛容が成立していないことを利用し、自己抗原KOマウスのリンパ球をRag2-/-マウスに移植することにより、自己免疫モデルマウスの作成に成功している。同法により、表皮細胞間接着因子であるデスモグレイン3(Dsg3)KOマウスの脾細胞移植により、皮膚・粘膜を標的とする天疱瘡モデルマウスが作成された。また、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)KOマウスの脾細胞移植により、糸球体腎炎、血管炎を誘導することが示され、MPO-ANCAによるモデルマウスも作成されている。作成されたモデルマウスを用いて、既にヒトに使用されている種々の免疫抑制剤の効果を評価してみると、ヒトでの効果と必ずしも一致しない薬剤も認められる。本講演では、自己免疫疾患マウスモデルによる解析を行いつつ、自己免疫疾患患者の治療現場に身を置く立場から、マウスとヒトの違いを乗り越えて、ヒト自己免疫疾患克服のためのアプローチについて論じたい。
  • 清水 淳, 飯田 隆治, 西岡 朋尚
    セッションID: S1-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    生体の防御機構としての「免疫機構」は、 老化に伴い その防御機能が低下する傾向にある。機能低下した状態では、感染症にかかり易い、疾患が慢性化し易い、健康状態を取り戻すのに期間がかかる等の様々な問題 を伴ってくることとなる。従って、健康の維持・健康長寿の実現といった観点から、老齢時における免疫機構の維持は非常に重要な意味を持つこととなる。ここ では、免疫機構の中心的役割を担う「CD4T細胞」を中心に、老化に伴うCD4T細胞の機能変化について紹介した い。CD4T細胞は胸腺で分化・成熟し、末梢へと移行する。この過程については、精力的に解析が行われている。一方、時間的経過とともに胸腺は萎縮・退縮 してゆき、やがて新たなCD4T細胞の生成・供給も激減することとなる。即ち、限られたCD4T細胞のみで免疫を担うこととなる。そしてこのCD4T細胞 も、加齢に伴い機能が低下する傾向にある。これまでは老齢個体由来CD4T細胞の機能低下について、サイトカイン産生能、T細胞シグナル伝達系、細胞表面 機能分子など様々な観点から解析・報告されてきた。しかし何れもCD4T細胞を一集団として捉え解析に用いている。この様な解析において問題はないのか、 CD4T細胞も更に機能的観点から亜集団に分けて解析する必要はないのか、我々の解析結果を紹介しながら考えてみたい。
シンポジウム2
  • 田中 良哉
    セッションID: S2-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    全身性エリテマトーデス(SLE)や血管炎症候群などをはじめとする全身性自己免疫疾患(膠原病)は、多臓器病変を特徴とし、長期に亘り著しく支障をきたすが、治療はステロイド薬、免疫抑制薬などの副作用の多い非特異的免疫療法が中心である。その結果、難治性の臓器病変、特に中枢神経系障害、呼吸器系障害、腎障害、血管障害(血管炎)などに関しては、予後と関連する重要な課題が依然として山積している。また、非特異的治療に伴う日和見感染症やステロイド骨粗鬆症などの合併症の問題も残存する。これらの多岐に亘る課題を解決するために、多施設間での共同臨床研究を介して多数症例を集積し、疾患制御、臓器障害、長期予後、QOL向上などの観点から解析する必要がある。厚生労働省の研究事業に於いても、課題の克服に向けた多施設間の組織的研究が進行する。これら多方面の研究成果として、自己免疫疾患の病態形成過程に於いて中心的な役割を担うサイトカインや細胞表面分子などが同定され、これらの特定の分子を標的とした生物学的製剤による治療にも期待が成されるに至った。本シンポジウムでは、自己免疫疾患に伴う全身の臓器障害の病態、既存治療、及び、新規治療の評価と今後展開などについて、多角的に議論する。
  • 廣畑 俊成
    セッションID: S2-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    全身性エリテマトーデス(SLE)における中枢神経病変は本症の難治性病態の1つで、特に精神症状(ループス精神病)が臨床上問題となる。ループス精神病においては、血清中抗リボソームP抗体と髄液中の抗神経細胞抗体の上昇が見られることをこれまでに報告してきたが、ループス精神病患者の髄液中には抗リボソームP(C末端22ペプチド)抗体(抗P)の上昇はみられない。一方で、神経細胞の表面に存在するグルタミン酸レセプター(NR2)に対する抗体がループス精神病患者の髄液中に存在することが最近報告されている。しかし、血清中に抗NR2抗体が存在しても中枢神経病変を惹起し得ず、本抗体の中枢神経内での産生または脳血液関門の障害による中枢神経内への流入が病態形成上必須である。我々は最近、活性化ヒト末梢血単球表面に抗P抗体が結合するとヒト末梢血単球からのTNF-αやIL-6の産生を著明に増強することが明らかにした。これらのサイトカインはいずれも血管内皮細胞の接着分子を介して免疫担当細胞の脳内への侵入を促進する可能性がある。また別に、TNF-αは脳血液関門の機能を障害することが知られており、抗P抗体はTNF-αを介して脳血液関門の透過性を亢進させ抗NR2抗体の流入を促進する可能性も考えられる。このように抗P抗体は、中枢神経内における抗NR2抗体などの抗神経細胞抗体濃度を上昇させる働きをしているものと考えられる。
  • 原 まさ子
    セッションID: S2-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    全身性の自己免疫疾患の代表である膠原病において、呼吸器系の障害はその予後を決める大切な合併症で、しばしば難治性である。なかでも間質性肺炎、肺胞出血、肺高血圧症、肺梗塞症は重篤な合併症である。間質性肺炎は膠原病の種類により頻度・臨床像・治療反応性が異なる。合併頻度の高いのは多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM), 強皮症(SSc)で、約40%に認められる。 関節リウマチ(RA)では10~20%、全身性エリテマトーデス(SLE)では5%以下である。 SSc, RAでは慢性に発症するものが多いが、PM/DMは急性発症型、慢性発症型いずれもあり、時にARDSに至り、生命予後を左右する。 肺胞出血の頻度は低いがANCA関連血管炎やSLEに伴う重篤な合併症で、迅速な診断と、早期の積極的な治療が大切である。呼吸困難とびまん性浸潤影を見たときには本症が疑われる。 肺高血圧症(PH)は呼吸器系というより肺血管系の病変であるが, 特に混合性結合組織病(MCTD)での合併率が高く、注目されている。 いずれも活動性で進行性の病変があれば原病に対する治療、すなわち副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬による治療と病態に応じた対症療法を行う。活動性がなく、症状が固定したものでは対症療法に終始せざるをえない。ここでは疾患ごとに、自験例を基に、実際の治療法とその効果を示す。
  • 高崎 芳成, 戸叶 嘉明
    セッションID: S2-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    近年の膠原病学の進歩により早期の診断と治療が可能となり、その予後は著しく改善し、全身性エリテマトーデス(SLE)の生存率は、20年前の75%から現在の90%以上に上昇した。しかし、WHO IV型などのループス腎炎では、しばしば難治性の経過をとり、ネフローゼ症候群を呈して多量の蛋白尿を認め、大量ステロイド薬投与の治療に抵抗し、再燃を繰り返しながら腎不全の状態に進行していく症例も認められる。また、ANCA関連血管炎、強皮症、さらに関節リウマチなどの膠原病においてもしばしば難治性の腎障害が出現し、治療上の問題となる。これらの病態に対し、シクロフォスファミドの大量間歇投与、γグロブリンの大量投与療法、さらにシクロスポリンやミコフェノール酸モフェチルなどの新たな免疫抑制薬の使用が試みられ、その有効性が確立されつつある。また、抗原特異的なT細胞の活性化に関与する副刺激を抑制する目的で抗CD40 Ligand抗体やCD80および86のリガンドであるCTLAー4を阻害するCTLAー4 Igなどが用いられ、動物実験の段階から人への応用が進められている。さらにB細胞に特異的な免疫調節作用を有するLJP394やリツキシマブ、さらに免疫複合体を分解するDNase Iなどによる治療も試みられている。ここでは、ループス腎炎を中心とする膠原病の難治性腎障害の実態とその新たな治療について考察を加える。
  • 山田 秀裕
    セッションID: S2-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    自己免疫疾患による血管障害として、ANCA関連血管炎症候群は高頻度に非可逆的な重要臓器障害、臓器不全を来し、最も生命予後に影響する疾患群である。 かかる臓器障害克服の試みは、過去30年間で急速に発展してきた。その歴史を振り返ると、1970年代のシクロホスファミドとステロイド大量の併用療法の導入、安全性を高めるためのシクロホスファミド投与法の改良と併用ステロイド投与量の急速な減量法の導入、1990年代のANCA測定法の普及による早期診断、日和見感染症対策、他の免疫抑制薬による寛解維持療法への切り替え、さらに、これらを検証するための多施設共同前向き比較対照試験の実施などが生命予後や重要臓器保全に貢献してきた。 一方、かかる診断治療法の進歩にもかかわらず、予後不良な難治性病態が存在する。寛解導入困難例、びまん性肺胞出血その他の重篤な合併症、Wegener肉芽腫症による眼窩内肉芽腫、感染症合併例などである。かかる症例に対する新しい治療法の試みとして抗TNF薬、抗CD20抗体などが試みられている。また、我が国においても、厚労省難治性血管炎研究班を中心として、重症度別治療プロトコールの策定とその検証のための前向きコホート調査、抗CD20抗体を用いたパイロット試験が多施設共同で進められており、特に我が国に多いMPO-ANCA関連血管炎に関する質の高いエビデンスが確立されつつある。
  • 熊谷 俊一, 西村 邦宏, 河野 誠司
    セッションID: S2-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    膠原病の治療においては、ステロイドがしばしば治療の柱となり、SLE、皮膚筋炎、血管炎などでは、長期にわたって大量のステロイドが使用される。ステロイドの大量使用は大腿骨頭壊死とともに、しばしば二次性骨粗鬆症による骨折を誘発する。骨折は患者のQOLを著しく阻害し、高齢者では骨折後死亡率を上昇させる。また関節リウマチではステロイドとともに、関節局所あるいは全身性の炎症や不動による骨粗鬆症がしばしば見られる。膠原病患者にとってステロイドによる骨粗鬆症と骨折は、他のどの合併症よりも頻度の高いものであり、臨床的に予防しなければならない大きい課題である。 ステロイドは用量依存的に骨折リスクを高めるが、原発性骨粗鬆症に比べ骨折閾値が高い。我々の調査研究(厚労省 橋本班)で、ステロイド大量使用閉経前患者において骨密度が正常にも拘わらず骨折を生じる症例が多数確認された。ステロイド性骨粗鬆症の治療や骨折予防にビスホスホネートの使用が推奨されているが、ステロイド大量使用者における骨折予防効果は明確ではなく、現在大規模な前向きコホート多施設研究を行っている(厚労省 田中班)。前述の調査で、高脂血症が骨折のリスクファクターとなっており、ステロイド大量投与は下垂体を介したエストロゲン分泌障害や、骨形成抑制による皮質骨の厚みも低下させるなど、少量ステロイド使用では認めがたい機序が骨折を多発させると考えている。
シンポジウム3
  • 千葉 健治
    セッションID: S3-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    関節リウマチ (RA) の治療薬として, TNF-CIL-6 等の炎症性サイトカインおよびCD20, CD152等の細胞表面分子を標的とした生物製剤が開発され,それらの優れた治療効果が注目されている.しかし,これらの生物製剤はRAの全ての病態に奏効するわけではなく,易感染性,医療コスト,非経口投与等の課題も残されている.このようなRA治療薬の現状を踏まえると,将来的にどのような治療ターゲットが望ましいのであろうか.最近,RAにおいて抗IL-15抗体が上述の生物製剤とほぼ同程度の治療効果を示すことが判明した.RAの関節部位ではIL-15が過剰産生されており,IL-15はT細胞を活性化してIL-17の産生を誘導する.また,IL-17はマクロファージ等に作用し,TNF-CIL-6,IL-8,GM-CSF,MMP,PGE2等を誘導することが知られている.そこで,我々はRAを含めた免疫疾患の新たな病態関連分子としてIL-15およびIL-17に着目して創薬研究を進め, IL-15で活性化したT細胞からのIL-17産生を10 nMのオーダーで抑制する新規低分子化合物 Y-320を見出した.Y-320はマウスおよびサル関節炎モデルにおいて1 mg/kgの経口投与で治療効果を示すことが確認された.今回のオーバービューでは,免疫疾患の新規治療ターゲット探索の1例として,IL-17産生抑制薬Y-320の発見に至る創薬研究の過程を紹介する.
  • 西川 昌孝, 名井 陽, 冨田 哲也, 高樋 康一郎, 南平 昭豪, 吉川 秀樹
    セッションID: S3-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】関節リウマチの新しい治療法として生物製剤が注目を浴びている。しかし使用患者数の増加に伴い抗体の産生に伴うアレルギー反応や効果の減弱なども報告されるようになってきた。我々はTNF-AIL-1祿ANKLの共通の細胞内シグナル伝達物質であるp38 MAP kinaseに注目した。p38 MAP kinaseの阻害薬であるFR167653のコラーゲン関節炎(CIA)ラットに対する効果を検討し関節リウマチ治療における新たな治療ターゲットの可能性を検討した。 【方法】関節炎発症前(予防投与群)及び関節炎発症後(治療投与群)からFR167653を32mg/kg/dayにて4週間皮下投与を行った。足関節腫脹、レントゲン、組織学的スコア、血清及び組織中の炎症性サイトカイン濃度の検討を行った。またin vitro破骨細胞誘導でのFR167653の効果を検討した。 【結果】関節炎による足関節腫脹が予防投与群では見られず、治療投与群でも大幅に改善した。レントゲン、組織学的スコア、破骨細胞数はCIAに比べ両群とも有意に低かった。予防投与群の血清TNF-AIL-1A足関節IL-1傭IAに比べ有意に低値であった。またFR167653はsRANKL及びTNF-謔骰恊総Eのin vitro破骨細胞様分化を抑制した。 【結論】FR167653はコラーゲン関節炎の発症及び関節破壊進行を抑制した。p38 MAP kinaseは関節リウマチの治療ターゲットになりうる可能性がある。
  • 上阪 等, 野々村 美紀, 村上 洋介, 関根 知世子, 宮坂 信之
    セッションID: S3-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    関節リウマチ(RA)滑膜では、リンパ球やマクロファージ活性化により炎症性サイトカインが産生されている。これらで刺激された滑膜線維芽細胞は増殖してパンヌスを形成し、組織破壊酵素を産生したり破骨細胞を活性化して関節破壊をきたす。現在の治療法は、生物学製剤も含めて炎症抑制を狙うものばかりである。これらの治療効果は大きいものの、寛解導入例は少なく、過度の免疫抑制も問題となっている。そこで、我々は、滑膜線維芽細胞の増殖阻止も新しい治療戦略となると考え、細胞増殖にかかわる分子の中でも、細胞増殖を抑制するサイクリン依存性キナーゼ阻害因子(CDKI)p16INK4aとp21Cip1に注目し、RAモデルにこれらの関節内遺伝子治療を行い著効することを示した。 遺伝子治療の詳細な効果発現機序の解析からは、CDKIがCDK抑制依存的および非依存的に炎症や組織破壊にかかわる分子の発現を抑制することも明らかとなった。すなわち、p21Cip1がJNKに結合しこれを不活化するばかりでなく、CDKのうちp16INK4aが抑制するCDK4活性の抑制でも線維芽細胞からのサイトカインカインやMMP-3産生が抑制され、マクロファージからのサイトカイン産生も抑制された。また、破骨細胞の分化も抑制された。このように、細胞周期分子としてしか知られていなかったCDK4は細胞周期ばかりではなく、関節破壊にかかわる種々の局面を支配していた。そこで、低分子CDK阻害薬を新規合成してRA動物モデルに全身投与したところ、リンパ球抑制をきたさずに関節炎と関節破壊を抑制することができた。人への応用に向けて阻害薬開発を進める予定である。
  • 石津 明洋
    セッションID: S3-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    cAMP response element binding protein(CREB)は細胞の増殖や種々のサイトカイン産生に関わるロイシンジッパー型転写因子である。自身のホモダイマーまたはactivation transcription factor 1(ATF-1)をはじめとするファミリー分子とヘテロダイマーを形成し、標的となるDNA塩基配列に結合して転写活性を発揮する。関節リウマチでは滑膜に発現し、その病態形成に関与していると考えられている。我々は、ロイシンジッパー構造を保つもののDNA結合領域に変異を有することによりCREBを競合的に阻害するdominant negative ATF-1(ATF-1DN)を作製し、関節リウマチに対する分子標的治療の可能性を検討した。関節炎を発症したenv-pXラット(ヒトT細胞白血病ウイルスHTLV-Iのenv-pX遺伝子を導入したラット)の滑膜細胞にCREBの発現が認められた。この滑膜細胞にシンビスウイルスベクターを用いてATF-1DNをトランスフェクションすることにより、cyclin-dependent kinase 4(CDK4)やIL-6の発現が減少した。また、ATF-1DN搭載シンビスウイルスベクターを腫脹した関節内に投与することにより、関節炎の治療効果が確認された。転写因子CREBは関節リウマチの新たな治療ターゲットになると考えられる。
  • 庄田 宏文, 藤尾 圭志, 山口 優美, 岡本 明子, 沢田 哲治, 山本 一彦
    セッションID: S3-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    新規サイトカインHuman Interleukin-32 (hIL-32)はマウスマクロファージ及びヒト単球に対してTNF-Y生を誘導するヒトサイトカインとして報告された (Kim SH et al, Immunity, 2005)。 関節リウマチ(RA)患者の滑膜組織におけるhIL-32発現は、変形性関節症患者の滑膜組織と比較して顕著に亢進していた。In situ hybridizationでは滑膜組織に浸潤するリンパ球においてhIL-32発現が亢進していた。そこでマウスモデルを用いてIL-32の炎症性関節炎への関与を検討した。まず、hIL-32笂`子を導入した骨髄細胞の移植によりhIL-32蝸}ウス(BM-hIL-32 mouse)を作成した。BM-hIL-32 miceでは末梢血中のmTNF-Z度が上昇しており、2型コラーゲン抗体誘発性関節炎モデルでは比較対象より有意な関節炎の悪化がみられた。次にhIL-32笂`子をCD4陽性T細胞に導入し、コラーゲン誘発性関節炎発症直前のマウスに移入した。hIL-32D4陽性T細胞の移入により関節炎は悪化し、この増悪効果はetanerceptにより抑制された。以上よりhIL-32はRA患者の滑膜浸潤リンパ球に発現し、一部はTNF-?鰹鰍揶^していることが示唆された。
シンポジウム4
  • 竹内 勤
    セッションID: S4-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    炎症性サイトカインの一つ、腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor: TNF)を標的とする生物学的製剤は、優れた臨床的有効性ならびに関節破壊抑制効果から、高い評価を得ている。その導入によって、最近の治療目標は、従来では考えられなかった臨床的寛解、画像的寛解を目指すものとなっている。  現在、世界的にRAの適応を有するTNF阻害製剤は、キメラ型抗TNFR体インフリキシマブ, TNFR2 (p75)-IgFcエタネルセプト, 完全ヒト抗TNFR体アダリムマブの3剤である。日本では、インフリキシマブが03年7月, エタネルセプトが05年3月に承認され、05年7月には、インフリキシマブの市販後全例調査が終了し、その全容が明らかにされた。使用経験が豊富になると共に、注射時反応を初めとする副作用全体の頻度は明らかに減少した。一方、肺炎や日和見感染などの重篤副作用については、その患者背景が示され、リスク評価、対処法を考える上で貴重なデータとなった。これらの成績を踏まえ、TNF阻害製剤を、同のような症例に、いつから投与すれば良いか、いつまで投与すれば良いかが話題となっている。有効性の予測や、寛解導入率の向上に向けた取り組み、治療の最適化モデルの構築、など最近の展開について報告する。
  • 田中 良哉
    セッションID: S4-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
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    関節リウマチ(RA)は、滑膜炎症を主座とする自己免疫疾患である。RAの治療の基本は、疾患活動性と関節破壊の進展抑制を目標とした発症早期からの抗リウマチ薬の使用であった。しかし、既存治療では目標達成が不十分であり、病態形成に関与する特定の標的分子制御を目的として生物学的製剤が導入された。本邦でも、平成15年に抗TNFαキメラ抗体インフリキシマブ、平成17年にTNF受容体免疫グロブリン複合蛋白エタネルセプトが市販され、抗リウマチ薬で疾患制御できないRA症例に対して画期的な効果を上げている。当科の約200例の検討でも、インフリキシマブとMTXの併用療法により、1年後に4割近くが寛解基準を満たし、6例でインフリキシマブ中止にても寛解を維持した。早期RA症例を対象とした欧州のBESTスタディでも、インフリキシマブとMTXの使用により高率に寛解導入でき、55%の症例でインフリキシマブ中止にても1年以上寛解維持を可能とし、25%で抗リウマチ薬が不要となったと示された。また、欧米の試験結果から、TNF阻害療法とMTXの併用により8割以上の症例で関節破壊進行を制御した。以上から、TNF阻害療法の適正使用は、RAの治療目標を寛解導入、さらに、生物学的製剤や抗リウマチ薬フリーの真の寛解維持を目指すことを可能とし、治療にパラダイムシフトを齎しつつある。今後のさらなるエビデンスの蓄積が期待される。
  • 山中 寿
    セッションID: S4-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
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    2003年8月にinfliximabの関節リウマチ(RA)への適応が追加されたのに続き、2005年3月にはetanerceptが承認され、欧米に比して後れを取ったものの、わが国のRA治療においてもTNF阻害療法が開始された。これらTNF阻害薬の臨床効果は欧米の臨床研究で実証されてきたが、安全性に対しての懸念は大きかった。その一つが結核の再燃である。TNF阻害薬infliximabやetanerceptが開発された欧米においては結核の罹患率は極めて低いが日本では罹患率は依然高い。しかも日本と同等の結核罹患率を持つスペインにおいて、infliximab投与により結核再燃例が著増したという報告がなされ、大きな懸念となった。その解決策の一つとして、厚生労働省の指導により、これら薬剤には市販後全例調査が義務づけられた。全例を登録しての前向き調査は、多額の資本と臨床医の時間を消費し、大変な苦労ではあったが、結果的に大きな成果をもたらした。そのひとつは、さまざまな有害事象の正確な頻度やその危険因子が同定されたことであり、これは臨床の現場に直接フィードバックしうる貴重な情報である。さらに、市販後全例調査の実施は、適用外使用や用法用量を超える投与などの不適切な医療を制約する効果をももたらした。TNF阻害薬における市販後全例調査のもたらしたものを今一度検証し、概説する。
  • 日比 紀文
    セッションID: S4-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    マクロファージから産生されるTNF-A炎症性腸疾患において消化管炎症の惹起ならびに持続に重要な因子であり、これを標的として抗TNF-Lメラ抗体(Infliximab)など種々のTNF阻害剤が開発された。なかでもInfliximabは、欧米において38万人に投与され、クローン病の緩解導入ならびに維持療法として治療の中心的存在となっている。本邦においても緩解導入療法として3700例以上に投与され、維持療法の認可に向け臨床治験が開始されている。一方、潰瘍性大腸炎に対しても全米での大規模臨床試験(ACT I/II trial)で有効性が示され、今後の広まりが予測される。副作用に関して当初結核など重篤な感染症が懸念されたが、投与前のスクリーニングの徹底により低率に抑えられている。しかし、infusion reactionや自己抗体出現、lymphomaならびに脱髄性疾患などの問題もあり、新たなTNF阻害剤、ヒト型の Adalimumabさらにはヒト型Fab fragmentにpolyethylene glycol分子を結合させたCertolizumab pegolなどが開発されている。クローン病では栄養療法が中心となっている本邦ではTNF阻害剤の位置づけが問題となるが、今回、新規生物製剤の治療成績をあわせて報告し、TNF阻害剤の有効性と安全性についてさらには今後の展望について言及したい。
  • 永渕 裕子
    セッションID: S4-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    従来全身性血管炎の治療には副腎皮質ステロイドとシクロホスファミドの併用療法が用いられ、寛解にいたる症例がある一方で、治療に抵抗性を示す症例も経験され、臨床の現場ではまだまだ新しい治療法の開発が望まれている。現在、TNF阻害薬による治療は関節リウマチにはじまり、多くの疾患の治療に適応拡大が検討されている。  今回、TNF阻害薬(inflixmab, etanercept)による血管炎治療をレビューする。 ウエゲナー肉芽腫に対するinflixmabはその効果があったとする複数の報告がある一方で、etanerceptによる無作為プラセボ対照二重盲検試験ではプラセボ群との差は認められず、シクロフォスファミドとの併用による腫瘍発生のリスクが報告されている。また高安動脈炎においては15症例の治療抵抗例でinflixmabあるいはetanerceptが投与され、14例が治療に反応し、10例でステロイド治療が中止できた。9例で再発し、治療量や投与薬剤の変更が必要となった。副作用としてInfusion reaction1例、真菌感染1例、帯状疱疹1例が認められた。この他、顕微鏡的多発血管炎やChurg-Strauss症候群でのTNF阻害薬の安全性や有効性についての報告が散見される。一方、関節リウマチに抗TNFα阻害療法を行い、皮膚白血球破砕性血管炎や腎炎を発症した報告もある。inflixmab,とetanerceptの作用機序の差異の問題もあり、今後さらに検討を重ね、TNF阻害療法の安全性と適応基準を明らかにする必要がある。
  • 武井 修治
    セッションID: S4-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    JIAは16歳未満で発症した慢性関節炎であり、methotrexate(MTX)を中心とした従来の治療では、約1/4の症例が重篤な関節機能障害と著しい成長障害に陥っていた。しかしTNF阻害薬の登場は、これら難治性JIAの予後を成人RA以上に大きく変えようとしている。 Etanercept 0.4mg/kg/週2回をMTX不応の難治性JIA に投与した米国での検討では、臨床的寛解(70%改善)を達成した患児は投与4か月で36%、2年で67%に達し、本邦での治験でも68%と報告されている。また1年以上継続した報告での副作用中止率も0~6%と低い。一方のInfliximabはJIAに対する臨床治験が米国で終了し、認可をまつ状況である。本邦ではinfliximabが先行して成人RAで認可されたため、当科ではteenagerを中心としたJIAに使用したが、etanercept同様の高い有効性を確認した。 小児におけるTNF阻害薬の有用性は、臨床症状の改善以上に、発育過程にある患児の関節破壊を抑止し、身体的成長を確保しうる点にある。当科での検討では罹患関節の骨びらんの修復や関節裂隙の再生が観察され、手根骨長で評価した関節破壊の進行は、TNF阻害薬の導入により停止した。更に炎症病態の抑制やステロイド減量効果が、患児の成長を促進していた。 シンポジウムでは、TNF阻害薬が示す小児での有用性を報告し、JIAへの適応について提言する。
  • 朝比奈 昭彦
    セッションID: S4-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    乾癬とは、表面に厚い鱗屑を付着した紅斑局面が多発する、慢性かつ難治性の炎症性皮膚疾患である。一部の患者では関節症状を伴い、強い関節痛とともに関節リウマチと同様の破壊性の関節炎が進行する場合もあり、その効果的な治療法が求められている。これまでは、NSAID、シクロスポリン、エトレチナート、MTXなどが用いられてきたが、その改善効果は限定的であった。一方、最近登場した各種の生物製剤は、乾癬の病態の理解に基づく理論的な治療方法で、ピンポイントに働き、今までの治療法より副作用が少ないと考えられている。生物製剤の全てが必ずしも満足のいく治療効果を示さない中で、Th1系の炎症性サイトカインであるTNF-?}えるTNF-j害薬は、速やかに皮疹を改善させるのみならず、関節症状の改善効果や進行の阻止効果もあり、最も注目されている。すでに米国では、関節リウマチの治療薬であるinfliximabとetanerceptが乾癬性関節炎の治療薬として承認されている。さらに後者は尋常性乾癬にまで適応を広げており、前者も適応拡大される見込みである。完全ヒト型抗体であるadalimumabは、米国で関節リウマチに使用され、また本邦でも承認申請中であるが、現在のところ尋常性乾癬に対する治験が日米同時に進行中である。今後の乾癬の治療のストラテジーは、大きく変革する可能性を秘めている。
  • 園田 康平
    セッションID: S4-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    現在のぶどう膜炎(内眼炎)治療は、副腎皮質ステロイド・シクロスポリンを中心に行われている。これら免疫抑制薬の有効性は疑うべくもないが、炎症を繰り返す難治性症例では効果が不十分であり、本邦ではとりわけベーチェット病が問題になる。ベーチェット病は1:口腔内難治性アフタ潰瘍、2:結節性紅斑などの皮膚症状、3:虹彩毛様体炎・網脈絡膜炎(ぶどう膜炎)、4:外陰部潰瘍を主症状とする原因不明疾患であるが、特に眼症状は重篤である。前眼部および後眼部のぶどう膜炎発作を繰り返すうちに失明に至るケースも多く、本症患者のQOLを著しく低下させている。これまで発作期ベーチェット病患者の血液中でTNFZ度が上昇することが知られていた。そこで難治性眼ベーチェット病患者に対して、本邦で抗TNFR体(商品名:レミケイド)の多施設治験が行われた。この結果活動性の高いベーチェット病患者の網膜ぶどう膜炎発作頻度を抑制できることが示され、今後保険適応される見通しである。このように眼病変に薬効を期待できる一方で、投与するにあたり感染症増悪等の副作用に対して充分に配慮する必要がある。  ベーチェット以外の難治性ぶどう膜炎に対しても、主に海外で抗TNFR体が投与されている。講演ではベーチェット病に対する抗TNFR体の治験結果を中心に、難治性ぶどう膜炎に対する本薬剤の効果を、いくつかの文献をもとにレビューする予定である。
ランチョン教育講演・イブニングセミナー
  • 高崎 芳成
    p. 134
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    自己抗体のなかでも抗核抗体(ANA)は、種々の膠原病で検出され、特定の疾患と高い相関を有すことからその診断の有用な手段となっている。さらに、特異な病像との相関を認めるものがあり、その抗体を有する患者の予後の予測に有用なことも知られている。例えば、抗トポイソメラーゼI抗体は広汎皮膚硬化型の症例を中心に約30%の強皮症で特異的に検出され、肺線維症の発症率が有意に高く、抗セントロメア抗体(ACA)陽性例に比較して予後不良となる。これに対し、ACAは約12%の強皮症で検出され、皮膚硬化の範囲の狭い限局型と相関し、一般に予後良好の経過をとる。また、多発性筋炎で検出されるアミノアシルtRNA合成酵素に対する抗体は難治性の肺線維症と相関し、ステロイド薬の治療にしばしば抵抗する。また、全身性エリテマトーデス(SlE)やシェーグレン症候群で検出される抗SS-A抗体は、その抗体を有する患者自身の病態ばかりではなく、紅斑、血小板減少症、などのSLE様の症状や先天性完全房室ブロックなどの症状を特徴とする新生児ループス症候群と相関し、妊娠のリスクとなる。また、比較的予後良好とされる混合性結合組織病で検出される抗U1 RNP抗体は、その一方で肺高血圧などの難治性病態と相関し、前述のACAも生命予後は良いものの、閉塞性の血管障害との相関も認められ、一概に予後良好因子とも言えない側面もある。本講演ではこのような一連の自己抗体と病像との相関について解説し、難治性病態の診断と予後の予測における有用性につて考察する。
  • 平形 道人
    p. 135
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)は骨格筋の炎症や変性および再生を基本病変とする慢性炎症性疾患である。原因は不明であるが,筋組織への炎症細胞浸潤,他の自己免疫疾患の合併,および自己抗体の存在などより,自己免疫異常がその発症に関与すると考えられている。しかし,その病像は多彩で,種々の異なった病態を含む疾患群で,各々で異なる病因・発症機構の存在が示唆される。したがって,画一的な診断・治療法はなく,各々の病態に基づいた病因の追究,臨床経過の観察,治療法の選択が必要である。  近年,PM/DMの診断では従来の血液検査,筋電図,筋生検に加え, MRIなどの非侵襲的画像検査の有用性,治療ではステロイド抵抗性筋炎に対する大量γグロブリン静注療法,間質性肺炎合併筋炎に対するタクロリムスなどの免疫抑制薬の有効性,が注目されている。本講演では,これらの知見も含め,PM/DMの診断,治療の動向について話したい。また,抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体と間質性肺炎,抗SRP抗体と治療抵抗性筋炎,抗Mi-2抗体と皮膚筋炎など,筋炎に特異的に検出される自己抗体(Myositis-specific antibody:MSA)は診断,経過・予後の推測,治療法の選択など臨床的に極めて重要である。したがって,最近,見出された抗PMS 1抗体,抗CADM-140抗体なども含め,MSAとその臨床的意義についても明らかにしたい。
  • 竹内 勤
    p. 136
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    TNFを標的とする3剤の生物学的製剤は、進行期RAから早期RAを対象とした成績が相次いで明らかにされ、発症早期例でより高い臨床的有効性が明らかにされている。それによって、従来の抗リウマチ薬にない優れた臨床的効果も得られ、ACR70やDAS寛解などを目標とした、臨床的寛解をめざす治療が現実的なものとなってきた。一方、関節破壊の抑制に関しては、関節破壊が急速に進行する早期RAに対しても、これら製剤の強力な抑制効果が明らかとなり、関節破壊の修復まで期待される成績が報告されている。安全性に関しては、世界にも類を見ない市販後全例調査が我が国で行われ、インフリキシマブ、エタネルセプトにおける安全性の概要が明らかとなった。有効性、安全性のデータから、これら製剤投与の最適化が求められている。  一方、第2世代とでもいうべき生物学的製剤、ヒト化型抗IL-6受容体抗体トシリツマブ、キメラ型抗CD20抗体リツキシマブ、CTLA4-Ig融合蛋白アバタセプトについては、DMARD抵抗例、MTX抵抗例、TNF阻害薬抵抗例を対象とした成績を中心に、最新の情報をレヴューしたい。TNF阻害製剤を含めたこれら生物学的製剤の適応、位置づけ、課題について議論する。
  • 小池 隆夫
    p. 137
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    TNFα阻害薬の登場が、RA治療に革命を起こしつつある。今から約10年前(わが国では3年前)までは、RAは完治が出来ない疾患であったが、早期からのTNFα阻害薬の投与により、それも決して夢物語ではなくなった。現在わが国で使用可能なTNFα阻害薬は二種類であるが、欧米では実に多数の生物学的製剤が登場しており、ある種のバブル状態になっていることも否定できない。今から50年前、ステロイドがRA治療に多大な期待とともに臨床現場に登場したが、それがRAの特効薬ではなかったように、「光」だけが注目されている今日の生物学的製剤の「影」の部分の存在も忘れてはならない。 RA以外の膠原病の治療にも数々の新しい試みがなされている。SLEに対する抗CD20抗体の効果もわが国を含めて確認されつつある。特に中枢神経症状を有するSLEでは劇的効果があることが報告されており、SLEの中枢神経障害の病態形成も含めて極めて興味深い。しかし、この抗CD20抗体も決してSLEの特効薬ではなく、再発例や無反応な症例も存在することもまた事実であり、正確な治療機序の解明が待たれる。CTLA-4-Ig (MMFとの併用で)やLymphoStat-Bによるループス腎炎の治療薬として、欧米を中心に期待を持って多数の治験が始まっている。 本講演では関節リウマチとSLEを中心にした難治性のリウマチ疾患治療についての生物学的製剤の現状と将来の展望につき概説する。
  • 八田 和大
    p. 138
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    強直性脊椎炎(AS)はリウマトイド因子陰性脊椎関節症(SNSA)の代表疾患としてよく知られた疾患である。HLA B27の頻度が約6-8%の欧米に対し日本では1%以下と低いためASなどのHLA B27関連疾患はまれである。しかし乾癬性関節炎や掌蹠膿胞症など皮膚病変に伴うもの、感染症に誘発される反応性関節炎、また分類不能の脊椎関節症(USpA)などを含めると決してまれな疾患ではない。昨今SAPHO症候群として周知の掌蹠膿胞症、乾癬などの皮膚症状を伴う骨関節炎は、園崎先生などによる日本人発の疾患である。 SNSAの骨関節症状の特徴は、脊椎炎・仙腸関節炎による炎症性腰痛・背部痛、また関節炎・付着部炎などである。関節症状としては下肢優位の非対称性の関節炎と付着部炎が特徴的であるが、末梢関節炎が優位であれば関節リウマチと類似し診断に戸惑うこともある。腸管病変、皮膚病変、ブドウ膜炎等の眼病変など、関節外症状もまた特徴的である。 SNSAに加えて電解質異常やビタミンD関連の骨関節症や、肝疾患や腎疾患などの内科疾患に合併した二次的な脊椎関節症を含めると、日常臨床でしばしば遭遇するものである。実際、原因が不明のまま放置されているものの中に本病態が見逃されている可能性がある。鑑別診断に常に念頭におくべき病態である。
一般演題
  • 高橋 康恵, 吉本 桂子, 津坂 憲政, 安倍 達, 竹内 勤
    セッションID: 1-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    目的:BAFFは主に単球、マクレファージ、樹状細胞、T細胞などに発現し、可溶型で分泌され、B、T細胞上にある受容体と結合し、抗体産生能などに影響を与える。特に単球、マクロファージや樹状細胞におけるBAFF発現は自己免疫疾患の病態において密接な関係があると考えられる。われわれはヒト単球細胞株THP-1を用いてBAFF発現産生機構を検討した。方法:ヒト単球細胞株THP-1をLPS、あるいはヒトrIFN-γ存在下で刺激培養し、経時的に培養上清、細胞を回収した。培養上清中のBAFF、IL-6、TNF-α、IP-10濃度を特異的ELISA法により測定し、培養細胞からこれらサイトカインの遺伝子発現をRT-PCRを用いて検討した。結果・考察:THP-1をLPSあるいはrIFN-γ存在下で培養した場合、培養24時間後から強いBAFF発現誘導が認められた。特にrIFN-存在下ではBAFF産生促進と共にIL-6、TNF-α、IP-10の著しい産生促進が認められ、rIFN-γによる細胞機能変化の誘導が推測された。一方、rIFN-γ刺激THP-1には著しい細胞形態の変化が認められ、BAFFなどサイトカイン、ケモカイン産生促進と共に、細胞分化が促されたと考えられる。これらの結果よりTHP-1は単球のBAFF産生機構および、自己免疫疾患における単球の役割を解明する有力なツールとなる可能性が示唆された。
  • 吉本 桂子, 高橋 康恵, 瀬戸山 由美子, 鈴木 勝也, 津坂 憲政, 安倍 達, 竹内 勤
    セッションID: 1-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>シェーグレン症候群において唾液腺に浸潤するT細胞に高いBAFF発現が認められることが報告されている。一方ヒト唾液腺細胞株においてIFN-γがMMP2、MMP9の発現を誘導することも報告され、BAFF、IFN-γ、MMPの関与を検討するため、ヒト末梢T細胞由来細胞株Loucyを刺激培養し、BAFF発現におけるMMPの関与を検討した。<方法>LoucyをTPA+ionomycinあるいはrIFN-γにより刺激培養し、96時間後培養上清と細胞を回収した。培養上清中のBAFFをELISA法を用いて測定し、RT-PCRによりBAFF、MMP2、MMP9の遺伝子発現を検討した。さらにMMP2阻害剤、MMP9阻害剤を培養系に添加しBAFF産生における影響を検討した。<結果・考察>LoucyをTPA+ionomycinあるいはrIFN-γにより刺激培養することにより、細胞におけるBAFF、MMP2、MMP9発現が誘導され、培養上清においてBAFFおよびIFN-γ産生亢進も認められた。これに対して、MMP2阻害剤、MMP9阻害剤を培養系に添加したところ、濃度依存的に強いBAFF発現、産生抑制が認められた。これらの結果より、MMP2および9発現とT細胞におけるBAFF産生やそれに関わるIFN-γとに関連性がある可能性が示唆された。
  • 水野 由美, 田中 珠美, 原 寿郎
    セッションID: 1-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    目的:小児期の中枢神経感染症・熱性けいれんにおけるケモカインの関与を検討するため髄液及び血清中のケモカイン濃度を測定し疾患による比較検討を行った。対象:細菌性髄膜炎、無菌性髄膜炎、脳炎・脳症、熱性痙攣患者方法: Cytometric Bead Array (BD Biosciences) kitを用いてIP-10、MCP-1、MIG、RANTES、IL-8濃度を測定した。結果:細菌性および無菌性髄膜炎では髄液中IP-10、MCP-1の著明な上昇があり血清中濃度より高値だった。髄液中IP-10、MCP-1は脳炎、熱性けいれん患者でも上昇したが両疾患で有意差はなかった。髄液中MIGは細菌性および無菌性髄膜炎で上昇した症例があり血清より高い傾向があった。髄液中RANTESは細菌性および無菌性髄膜炎のすべて、熱性けいれん10人中2人で上昇したが血清中濃度より低値だった。髄液中IL8は細菌性及び無菌性髄膜炎で著明に上昇し血清中より高値だった。脳炎・脳症では髄液中IL-8が著明に高値の症例があり血清中より高値で、熱性けいれん患者髄液中では軽度上昇する例があった。結語:疾患によりケモカインの上昇パターン、程度に差が見られた。細菌性および無菌性髄膜炎でIP-10、MCP-1、MIG、IL-8、脳炎・脳症、熱性けいれんの一部の症例でIP-10、MCP-1、IL-8の髄液中産生が病態に関与する可能性が考えられた。
  • 伊藤 亘, 金廣 有彦, 加藤 光里, 竹田 正秀, 谷貝 朋美, 山口 一考, 千葉 貴人, 斉藤 紀先, 植木 重治, 萱場 広之, 茆 ...
    セッションID: 1-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】HGF (hepatocyte growth factor) は種々の細胞に対して増殖や運動性の促進、形態形成誘導、抗アポトーシス作用など多彩な生物活性を有することが知られている。以前我々は、マウス喘息モデルを用いて、アレルギ!)性気道炎症や気道過敏性がHGFによって抑制されることを報告した。一方、好酸球はアレルギ!)性気道炎症において中心的な炎症細胞であり、その局所への遊走活性の調節は治療を考える上で重要な意味を持つ。今回我々はin vivoで認めたHGFの抗炎症効果のメカニズムを明らかにするために、ヒト好酸球に対してHGFがどのような機能的役割を果たしているかin vitroで検討した。【方法】末梢血よりCD16 negative selection法で分離したヒト好酸球をrecombinant human HGF(rhHGF)にて前処理し、eotaxinなどの遊走因子に対する遊走活性をBoyden Chamber法を用いて測定した。【結果と考察】ヒト好酸球をrhHGFにて前処理することにより、コントロールと比較し、eotaxinに対する遊走が濃度依存性に抑制された。マウス喘息モデルでは、HGFがTh2サイトカインを介して好酸球活性化を抑制していると考えられたが、今回の結果より、HGFが好酸球遊走能に直接的に作用していることが示唆された。
  • 川口 鎮司, 副島 誠, 菅野 朗子, 鎌谷 直之, 原 まさ子
    セッションID: 1-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    原因不明の線維化病変を主症状とする強皮症では、病変局所の線維芽細胞の異常が病態形成に重要と考えられている。我々は、強皮症線維芽細胞の異常に細胞内のpre-IL-1αが重要な役割を果たしていることを報告してきた。今回、pre-IL-1αが、線維芽細胞内で、結合蛋白との複合体を形成し、その複合体が、コラーゲンの過剰産生に重要であることを報告する。強皮症患者の生検皮膚より線維芽細胞を培養した。cell lysatesと抗IL-1α抗体を用いて免疫沈降反応を行った。SDS-PAGEにて展開した結果、pre-IL-1αの結合蛋白質は、HAX-1とIL-1RIIであることがわかった。免疫染色法にて、HAX-1, IL-1RIIは、強皮症線維芽細胞の核内に存在した。一方、正常線維芽細胞では、HAX-1は、細胞質にあり、IL-1RIIの発現は、ほとんど認められなかった。RNAi法によるHAX-1の抑制で、強皮症線維芽細胞が産生するpre-IL-1αの核内移行が抑制された。IL-6およびprocollagen type I c-peptideの産生量は、HAX-1, IL-1RIIの抑制にて、同程度に低下した。細胞内のpre-IL-1αは、複合体を形成して、核内移行や生物学的活性を惹起していた。HAX-1あるいはIL-1RIIの制御が強皮症の治療に結びつく可能性が示唆された。
  • 副島 誠, 杉浦 智子, 川口 鎮司, 川本 学, 高木 香恵, 市田 久恵, 菅野 朗子, 馬場 さゆみ, 鎌谷 直之, 原 まさ子
    セッションID: 1-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】Pulmonary and activation-regulated chemokine (CCL18)は最初に肺胞マクロファージで発見されたことに因んで命名され,近年では末梢単核球,樹状細胞やマクロファージにも発現していることが報告されている。慢性炎症性疾患である筋炎において血清CCL18が高値を呈するかどうかを検討した。【方法】治療前の筋炎65例(男女比=50:15),RA16例,シェグレン症候群4例,全身性エリテマトーデス4例,強皮症10例,成人発症スティル病5例,正常コントロール10例を対象に血清CCL18およびCCL18と構造が類似しているMIP1-bなどのケモカインをELISAで測定した。【結果】血清CCL18値は筋炎でコントロールと比較し有意に高く(平均821.04±547.40 pg/ml versus 178.41±63.12),他の膠原病においても同様の結果であった(P < 0.0001, Kruskal Wallis H-test)。CCL18値は皮膚疾患の有無や肺病変の有無,更に疾患活動のマーカーであるCK値との関連はなかった。一方でMIP1-bは、CCL-18と比較し、筋炎に特異的な上昇は示さなかった。【考察】血清CCL18値は炎症性筋炎の診断に有用なマーカーとなる可能性が示唆されたが、間質性肺病変などの臨床的な特徴との相関はなかった。
  • 野沢 和久, 池田 圭吾, 松下 雅和, 森本 真司, 天野 浩文, 戸叶 嘉昭, 高崎 芳成
    セッションID: 2-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
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    NA14(Nuclear Autoantigen of 14kDa)は、1998年にRiosらによりシェーグレン(SjS)患者血清をプローブとしてhuman testis cDNA libraryより同定された新規自己抗原である。しかしながら、その後NA14と自己免疫の関連を示す追加報告は無く、各リウマチ性疾患でのNA14に対する自己抗体の出現率や臨床データとの相関、及びその生体内での役割は不明なままであった。そこで今回我々はリウマチ性疾患患者血清における新規自己抗原NA14に対する反応性を、リコンビナント蛋白を用いたELISAにて測定し解析を加えた。健常人血清(n=39)のODの平均値+3SDをCut Off値としたところ、SjS患者血清(n=89)において25.5%、混合性結合組織病(MCTD)患者血清(n=113)においても15.9%が陽性であった。これらの疾患におけるNA14に対する自己抗体の出現率は全身性エリテマトーデス(SLE)患者、関節リウマチ(RA)、強皮症(SSc)、皮膚筋炎/多発性筋炎(DM/PM)患者と比較して統計学的に有意に高率であった。各種リウマチ性疾患患者血清における抗NA14抗体の出現はほぼSjS及びMCTD患者に限られており今後疾患特異性をもった自己抗体として臨床応用が出来る可能性を秘めていると考えられた。
  • 中村 稔, 近藤 久義, 松山 睦美, 小森 敦正, 伊東 正博, 右田 清志, 大黒 学, 阿比留 正剛, 上平 幸史, 八橋 弘, 石橋 ...
    セッションID: 2-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
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    <背景・目的>原発性胆汁性肝硬変(PBC)では、抗gp210抗体が予後予測抗体として有用であるが、PBCで出現する他の自己抗体の臨床的意義に関しては十分に検討されていない。<対象・方法>国立病院機構肝疾患共同研究グループに登録されている肝生検で確定診断されたPBC276症例(年齢30-83、中央値58歳、初回肝生検時Scheuer‘s stage 1,2: 217例、stage3,4: 59例)。血清の抗核抗体(gp210、SP100、centromere、chromatin)をELISA法で経時的に測定し、抗核抗体とPBCの進行との関連をstep-wise Cox proportional hazard regression、step-wise logistic regression model を用いて解析した。抗核抗体と肝生検組織の病理因子との関係についても同様に解析した。<結果>肝関連死亡、肝移植への危険因子としてgp210抗体陽性(hazard ratio 6.742, 95%CI :2.408,18.877)、肝不全型肝硬変への進行因子としてgp210抗体陽性(odds ratio 33.777, 95%CI : 5.930,636.745)、非肝不全型肝硬変への進行因子としてcentromere抗体陽性(odds ratio 4.202, 95%CI :1.307,14.763)が同定された。gp210、centromere抗体陽性の病理学的特徴として、interface hepatitis、ductular reactionが強いことが示された。<結語>PBCは抗核抗体の有無により進行群と非進行群に分類され、進行群はさらに、gp210抗体陽性の肝不全型進行群とcentromere抗体陽性の非肝不全型進行群に分類可能であった。
  • 吉田 秀雄, 玉熊 桂子, 吉田 俊治
    セッションID: 2-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
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    目的:MCTDにおける抗内皮細胞質抗体 (AECA)を肺高血圧症(PH)の有無で検討する。対象:PHありMCTDとPHなしMCTDの患者血清それぞれ5例方法:間接蛍光抗体法により染色パターンを評価した。染色細胞には、human umbilical vein endothelial cells(HUVEC)、human pulmonary artery endothelial cells (HPAEC) を用いた。2次抗体 (Alexa Fluor 546 goat anti-human IgG) で反応後、3% paraformaldehydeで固定しDAPI核染色を行なった。更に、HPAECのmembrane fractionを超遠心法により抽出し二次元電気泳動法へ展開し、免疫染色にてspotsの検討を試みた。結果:HUVEC では、PHありMCTDとPHなしMCTDの患者血清で細胞膜表面に顆粒上の染色像が見られたが、両者の染色パターンの差は明らかでなかった。HPAECでは、PHありMCTDで顆粒状の染色が強く認められたが、PHなしMCTDでは染色がほとんど認められなかった。二次元電気泳動法とWestern blot法でPHありMCTD患者で幾つか点在したスポットと、線状の強い反応(矢印)が認められた。考察: MCTDでPHの病態に特徴的なAECAが存在する可能性がある。
  • 井村 嘉孝, 田中 真生, 吉藤 元, 川端 大介, 大村 浩一郎, 臼井 崇, 藤井 隆夫, 三森 経世
    セッションID: 2-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
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    抗Wa抗体は強皮症のまれな自己抗体であり,48kDaのtRNA結合蛋白を対応抗原とする.この抗原蛋白は遺伝子クローニングでNEFAおよびNucleobindin-2として報告された分子と一致した.しかしその機能は依然不明であり,その解明を目的としてWa抗原の解析を行った.HEp-2細胞を基質とする間接免疫蛍光法では,Wa抗原は核と細胞質両方に分布した.Wa抗原結合tRNAの同定のために,各アミノ酸特異tRNAに対してprimerを作成し,抗Wa血清沈降tRNAを基質としてRT-PCRを行い,5種のtRNA(His,Lys,Met,Pro,Val)の増幅を認めた.HeLa細胞よりクローニングしたNEFA融合蛋白は抗Wa陽性血清すべてと反応し,対照血清とは反応しなかった.クローニングの際に,exon11欠失スプライシングバリアントを確認した.融合蛋白をウサギに免疫して作成した抗NEFA血清は,HeLa細胞破砕上清を基質としたRNA免疫沈降で抗Wa血清と同じtRNAを沈降した.ヒト組織cDNAパネルを用いた定量PCRにおいて,NEFAは膵臓などの外分泌組織での高発現を認めた.Wa/NEFAはDNA結合ドメインを持つことが報告されているが,我々はさらに特定のtRNAを結合することを明らかにした.Wa抗原は蛋白の翻訳系あるいは細胞外分泌に関わっている可能性が示唆される.
  • 中村 友美, 若松 英, 松本 功, 内藤 祐介, 冨板 美奈子, 河野 陽一, 森 雅亮, 横田 俊平, 真村 瑞子, 後藤 大輔, 伊藤 ...
    セッションID: 2-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】唾液や涙腺の分泌に関わる受容体の一つとしてM3ムスカリン性アセチルコリン受容体 (M3R) が知られている。我々は (Ann Rheum Dis 2005; 64: 510-511)、成人SS患者の一部において抗M3R抗体価および陽性率が成人健常人、成人関節リウマチ (RA) 患者、成人全身性エリテマトーデス (SLE) 患者と比較して有意に高値であることを明らかにしてきた。しかし、小児発症SS患者における抗M3R抗体の存在については未だ報告されていない。そこで、本研究では小児発症SS患者血清中における抗M3R抗体の抗体価の測定を試みた。【方法】小児発症SS患者31名および成人健常人70名を対象とした。M3Rの第二細胞外領域25mer の合成ペプチド (H-KRTVPPGECFIQFLSEPTITFGTAI-OH : 25mer) を抗原として、血清中の抗M3R抗体価をEnzyme linked immunosorbent assay (ELISA) 法により測定した。コントロールペプチドとして (H-SGSGSGSGSGSGSGSGSGSGSGS-OH : 25mer) を用いた。【結果】1)小児発症SS患者血清中の抗M3R抗体価(0.364±0.223) (mean±SD)は、健常人(0.135±0.08)と比較して有意に高値を示した (p<0.001)。2)小児SS患者(52%)における抗M3R抗体陽性率は、健常人(2.9%)と比較して、極めて高値を示した (P<0.001)。【結論】小児発症SS患者血清中に抗M3R抗体が高頻度に存在することから、抗M3R抗体が小児発症SS患者の診断に有用なマーカーになり得ること可能性が示唆された。
  • 山崎 宜興, ホンカネンースコット ミンナ, 池田 圭吾, 山田 秀裕, 尾崎 承一, リーブス ウエストリー, 佐藤 実
    セッションID: 2-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
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    目的:抗RNAP_I_/_III_陽性例での蛍光抗体法 (IF)での染色パターンを解析し、核小体染色が抗RNAP_I_/_III_抗体のスクリーニングに有用であるか否かを検討した。また、ELISA、免疫沈降法 (IP)との相関も解析した。方法:18例の抗RNAP I/III陽性血清をIF(HEp2細胞) 、抗RNAPIII ELISA, IP(35S標識K562細胞抽出液)で調べた。抗RNAP_I_/_III_抗体陽性血清(IP陽性)は 抗fibrillarinモノクローナル抗体との二重染色で核小体の一部が染色されているかを確認した。結果: 抗RNAP抗体陽性者18例すべては斑紋型核染色を示したが核小体染色は 44_%_のみであった。核小体染色はさらに、抗fibrillarin抗体との二重染色でさらに28_%_の血清で確認されたが、残る症例の核小体染色は陰性であった。この結果は100_%_の血清で核小体染色陽性であった抗fibrillarinや抗Th(7-2RNP)血清 と対照的であった。ELISAとIPの抗RNAP IIIレベル= 0.6127, P = 0.0089)、 抗RNAP _III_とRNAP Iレベル(IP)は正の相関を認めた(r = 0.6786, P = 0.0054)。抗RNAP _III_のELISA, IPでのレベルは核小体染色陽性例で有意に低かった (P < 0.01) 。一方で、抗RNAP_I_レベルの高い血清は、核小体染色が陽性であった。結論:核小体染色の有無は抗RNAP I/III抗体のスクリーニングとしては有用でなく、強皮症の症例では 抗核抗体のパターンに関わらず、抗RNAPIII ELISAを行うことが 適切であると考えられた。
  • 董 凌莉, 正木 康史, 金 哲雄, 黄 成日, 童 暁鵬, 坂井 知之, 沢木 俊興, 河南 崇典, 田中 真生, 福島 俊洋, 広瀬 優 ...
    セッションID: 3-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    To clarify the nature and progression of clonal lymphocyte infiltration in patients with Sjogren’s syndrome (SS) associated with lymphoproliferative disorders (LPD), we examined the clonality of lymphocytes in SS-related lymphoproliferative tissues from 3 patients with SS associated with LPD and compared the clonality between minor salivary gland (MSG) and nodal lymphoma tissues from 6 SS patients with simultaneously diagnosed nodal lymphoma by cloning and sequencing of IgVH-CDR3. Three consecutive patients with SS associated with LPD showed progressive clonal expansion with the presence of the same or similar subclones in different tissues during the course of the disease. However, 3 SS patients with B cell nodal lymphoma, as well as 2 of 3 patients with SS with T cell nodal lymphoma who showed both B and T cell rearrangement in LND, showed different clonal B cell expansion between MSG and LND. Our study indicates that clonal progression is a multistep process. The study of 6 SS patients with nodal lymphoma suggests that malignant clones may develop not only in salivary and lacrimal glands but also in extraglandular LND with an abnormal microenvironment
  • 末広 寛, 今井 浩三, 日野田 裕治
    セッションID: 3-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】大腸癌ではWntシグナルcanonical経路の活性化が知られているが、受容体として関与するFrizzled遺伝子ファミリーのうちいずれが主要な役割を果たしているかは明らかでない。今回我々はFrizzled-7について検討した。【方法】1) 6種類の大腸癌細胞株でのFrizzled-1から10の発現をRT-PCR法により検討した。2) 大腸癌細胞株にFrizzled-7を導入してTOP-Flashアッセイを行なった。また、Frizzled-7 siRNAを導入して同様に検討した。【結果】1) Frizzled-1から10のうちFrizzled-6とFrizzled-7は6種類の大腸癌細胞株全てにおいて発現していた。前者はnoncanonical経路に関るため、Frizzled-7について更に検討した。2) Frizzled-7を導入すると、全ての大腸癌細胞株でTcf活性の増加を認めた。3) Frizzled-7 siRNAを導入すると、LoVo以外の5種類の細胞株で明らかなTcf活性の抑制を認めた。【結論】Frizzled-7は大腸癌の免疫治療標的分子として有用である可能性が示唆された。
  • 長澤 英治, 西野 譲, 玉熊 桂子, 加藤 賢一, 深谷 修作, 吉田 俊治
    セッションID: 4-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】膠原病患者に発症する間質性肺炎や肝機能障害、血球減少では、膠原病自体の活動性や薬剤の副作用、感染症併発の早期鑑別を必要とする。そこで、CMV antigenemia(ag)検査を施行した膠原病患者の臨床的検討を行い、CMV感染症への早期対策への一助とすることを目的とした。【方法】平成14年1月〜平成17年3月に当科入院中にCMV ag検査を施行した患者を対象とした。CMV agの結果、感染症の有無、臨床内容の検討を行った。【結果】対象患者は128例で、陽性患者数は34例で、生存予後は陽性患者のほうが悪かった。検査施行理由は間質性肺炎が最多で、その他血球減少、肝障害などであった。血球異常の中でも血小板減少例にCMV ag陽性例が多かった。肝障害はCMV感染症患者19例のうち13例で認めた。ステロイド増量後のCMV ag陽転日数は39.2±31.3であった。その他CMV感染症発症のリスクとしてパルス療法を含めたステロイド増量、低アルブミン血症、リンパ球減少が抽出された。【考察】ステロイドパルス療法を含めたステロイド大量投与後の患者に、肝機能異常、血小板減少、低アルブミン血症、リンパ球減少を認める場合、CMV感染症に注意し、より早期にCMV ag検査を施行すべきであると考えられた。
  • 勝山 直興, 今村 愉子, 大久保 道子, 野崎 俊子, 前田 聡彦, 小川 仁史, 高木 妙子, 山田 秀裕, 尾崎 承一
    セッションID: 4-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    多種の免疫抑制薬や生物学的製剤が広く臨床に導入された結果、日和見感染症が重大な合併症として問題となってきている。当科では平成17年7月から平成18年5月までに、関節リウマチ・膠原病治療中に肺ノカルジア症を合併した5症例を経験した。症例は関節リウマチ、悪性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスが各1例、顕微鏡的多発血管炎が2例であった。平均年齢は64歳(37-80)、治療薬はステロイド単独が3例、免疫抑制薬併用が2例であった。診断は、喀痰または胸水の選択培地での長期培養により確定され、1例は胸水のグラム染色で菌体が観察された。肺炎の画像所見は膿胸2例、空洞病変2例、空洞+網状影1例であった。1例にアスペルギローマの合併もみられた。感染前のリンパ球は平均484/μl(114-833)、血清IgGは平均817mg/dl(275-1459)と低値であった。治療はカルバペネム系抗生物質の静脈注射とST合剤またはミノサイクリンの長期内服療法を行った。経過中1例は、ミノサイクリン減量後に脳膿瘍で再燃した。現在までに全例、寛解ないし臨床的改善が見られている。最近、免疫抑制療法中の患者にノカルジア感染症の合併が散見されるようになった。ノカルジア症の診断には長期培養が必要であり、疑わしい症例では本症を早期から念頭に置き検査を進めていく必要があるものと考えられた。
  • 粟屋 昭, 森 透, 佐橋 紀男
    セッションID: 5-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    著者は2002年以来、「乳幼児疾患の川崎病やアレルギー性鼻炎・結膜炎(花粉症)、喘息、アトピー性皮膚炎等アレルギー疾患患者の皮膚状態はおとなしく、ほくろの殆どない人・ほくろ生成系の弱い人が大多数である」という現象、更にはパーキンソン病患者や難聴者も同様の皮膚状態であることを報告した。そして疾患の発症や進展を遅らすための、メラノサイトの生成系・活動系、メラニン合成・代謝系の活性化という日常的な健康法と、メラノサイト免疫学への注力を提案してきた。また著者らは2003年以来、日本固有に共に1960年代初期に発見された川崎病とスギ花粉症等アレルギー疾患をPIDと名づけ、川崎病発症の疫学的解析を報告してきた。即ち自治医大より若干恵与された神奈川県の91年-2002年のみの川崎病患者5900人以上の発症日月別dataと、国立相模原病院の毎日の全花粉飛散数観測dataの比較検討で、年間3回の発症の波・peak(や高原状態)が、花粉飛散peak以後一定の間隔を置いて生じることが示された。中でも12月、1月が川崎病の多発症月であるが、花粉飛散が大幅に増える3-4月まで患者数peakが持続せずに、一過的に減少するpatternが毎年見られた。このアレルギー疾患川崎病発症抑制現象の解析のため、感染症週報インフルエンザ罹患患者数と比較検討したところ、この減少に転じる週間がインフルエンザ流行の最盛期と一致することが垣間見られた。この傾向は、東京都等でも顕著であった。
  • 千葉 貴人, GULIXIAN MAHEMUTI, 加藤 光里, 竹田 正秀, 谷貝 朋美, 山口 一考, 斉藤 紀先, 伊藤 亘, 植木 ...
    セッションID: 5-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】retinoic acid(RA)の受容体にはRARやRXRが存在する。リガンドである9-cis RAはRARとRXRの両方を活性化し、all-trans RA(ATRA)はRARのみに結合する。アレルギー性炎症において好酸球は重要な役割を果していが、今までに好酸球に対するRAの役割や好酸球中のRARやRXAの発現についての報告はない。今回、好酸球の生存能に対するRAの影響と、RARやRXAの発現の有無、さらにRAによるサイトカイン産生についての検討を行った。【方法】末梢血より分離したヒト好酸球を用いて、9-cis RAとATRAの存在下で培養し、好酸球生存能についてはフローサイトメトリーで解析した。RARとRXRの発現はWestern blottingとRT-PCRにて検討した。また培養上清中のサイトカインをcytokine micro arrayとELISAにて測定した。【結果】9-cis RA、ATRAはともに濃度依存性に好酸球生存能を延長した。好酸球におけるRARとRXRの両方の発現が確認された。また、培養上清中にはIL-5とGM-CSFは認めずMCP-1が検出された。【考察】RAは、好酸球中のRARやRXRを通して、IL-5やGM-CSFには非依存的に好酸球の生存能を延長することが考えられ、アレルギー性炎症疾患において重要な役割を担う可能性が示唆された。
  • 竹田 正秀, 鎌田 由美子, 植木 重治, 伊藤 亘, 齋藤 紀先, 山口 一考, 千葉 貴人, 谷貝 朋美, 加藤 光里, 萱場 広之, ...
    セッションID: 5-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】好酸球はアレルギー疾患における重要な炎症細胞として認識されており、好酸球遊走因子と複雑なネットワークを形成し、その作用を発現している。Prostaglandin D2(PGD2)の受容体であるCRTH2、eotaxinやRANTESの受容体であるCCR3はそれぞれ好酸球細胞表面に発現し、炎症部への集積に関与していると考えられている。我々は以前より末梢血分離好酸球細胞表面上のCRTH2の発現がPGD2によって、CCR3の発現がeotaxinによって濃度依存性に減少することを報告してきた。今回、好酸球増多症1症例において肺胞洗浄液と末梢血中の受容体発現を比較した。また末梢血全血好酸球細胞表面上のCRTH2とCCR3の発現をアレルギー患者と健常人について比較・検討した。【方法】好酸球増多症1症例の肺胞洗浄液と末梢血を用いてCRTH2とCCR3の発現を比較した。またアレルギー患者と健常人のヘパリンあるいはEDTA加末梢血に100μlのPE標識antiCRTH抗体、FITC標識antiCCR3抗体を加え、4℃30分反応後、赤血球を溶血させ、フローサイトメーターを用いて解析を行った。【結果と考察】好酸球増多症1例の肺胞洗浄液における受容体発現は末梢血に比べ低下していた。また末梢血全血を用いたアレルギー患者と健常人の比較では、アレルギー患者に有意な受容体発現の低下が認められ、CRTH2、CCR3の発現がアレルギー疾患のモニタリングに利用できる可能性が示唆された。
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