森林総合研究所研究報告
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論文
  • 中田 了五, 花岡 創, 大崎 久司, 村上 了, 安久津 久
    原稿種別: 論文
    2024 年 23 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2024/03/28
    公開日: 2024/03/28
    研究報告書・技術報告書 フリー
    電子付録

    12年生グイマツ雑種F1人工交配家系の210個体の繊維傾斜の家系内変動を調べた。胸高付近から得た試料の各年輪境界の繊維傾斜を割裂法により測定した。平均傾斜と最大傾斜はそれぞれ0.96 ± 0.58, 2.72 ± 0.78度 (平均±標準偏差) であり、この家系はカラマツ属としては繊維傾斜が小さいが、全兄弟家系であるにもかかわらず家系内変動は大きかった。繊維傾斜について複数のパラメーターを算出し、それらの相互関係を解析したところ、最外年輪繊維傾斜と平均傾斜の間に比較的高い相関関係が認められた。このことは、丸太で最外年輪繊維傾斜を測定すれば、平均的に繊維傾斜の小さい丸太を選別することができることを意味している。家系選抜による遺伝的改良と、変動の大きい家系からの丸太の選別を組み合わせることで木材の高度利用を図ることができると考えられる。

  • ジョーンズ トレバー G., 山下 香菜, 平川 泰彦, 池田 元吉, 荒木 博章
    原稿種別: 論文
    2024 年 23 巻 1 号 p. 13-28
    発行日: 2024/03/28
    公開日: 2024/03/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    リュウノヒゲは、熊本県と大分県に植栽されているスギ在来品種で、成長は中生型で通直性と耐風性に優れるが、その木材の性質はほとんど知られていない。本研究では、熊本県菊池地方の同一林分に生育した30個体の地上高0.6~8.0 mから丸太と円板を採取して、木材性質の個体間と個体内の変動を調べた。他のスギ品種に比べて、木材密度、ヤング率及び晩材率は高く、ミクロフィブリル傾角は小さかった。また、他のスギ品種に比べて、接線方向と半径方向の収縮率は比較的大きかった。地際部を除くと生材の心材含水率は低かった。心材色では明度(L*)と黄色度(b*)が高く、赤色度(a*)が中程度であった。これら木材性質の個体間変動は小さく、樹幹内変動は全個体で類似していた。リュウノヒゲは、通直性と耐風性に加えて木材の性質も優れることから、造林用品種として望ましい性質を有している。

研究資料
  • 設樂 拓人, 直江 将司, 柴田 銃江, 松井 哲哉, 新山 馨, 田中 浩, 中静 透
    原稿種別: 研究資料
    2024 年 23 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2024/03/28
    公開日: 2024/03/28
    研究報告書・技術報告書 フリー
    電子付録

    小川試験地は森林の長期生態研究のために茨城県北部にある小川ブナ保護林に設置された6haの試験地である。当試験地は約60種の高木種や豊かな林床植生が見られる。しかし、草本種を含めた維管束植物の目録は、旧分類体系での整理にとどまり、一部の植物の同定については十分に検討されていなかった。そこで、2021年から2022年にかけて、これまでに採集、保管された標本の再同定を行い、未公開だった目録をAPG体系で整理するとともに、当該試験地とその周辺部において踏査を行い、野生維管束植物目録を作成した。その結果、88科219属358種の維管束植物を確認した。さらに、現地調査の中で新たに植物地理学上重要な種を複数確認した。

  • 金谷 整一, 佐山 勝彦, 菊地 琢斗, 久原 弥南, 坂田 萌美, 田中 晃征, 本多 優仁, 矢田 光麒, 長友 敬祐, 小野 智哉, ...
    原稿種別: 研究資料
    2024 年 23 巻 1 号 p. 35-47
    発行日: 2024/03/28
    公開日: 2024/03/28
    研究報告書・技術報告書 フリー

    1920年代に立田山で初めて発見されたヤエクチナシは、現在、自生地では絶滅したと考えられている。一方、観賞や緑化、さらに保全を目的に自生個体に由来するクローンが各地で植栽されているが、各種害虫類から頻繁に加害を受けている。そこで、ヤエクチナシの利活用および保全に資する情報の集積を目的として、害虫類に関して文献調査と野外調査を実施した。文献調査では、既存の図鑑や論文等において、クチナシを加害する旨の記載のあった昆虫類とダニ類の情報に加え、各害虫の加害様式の情報を整理した。野外調査では、2022年5月中旬~12月初旬に、森林総合研究所九州支所立田山実験林内に植栽されているヤエクチナシおよびクチナシにおいて発見した害虫類を同定して記録した。文献調査の結果、チョウ目13種 (蛾類12種、蝶類1種)、カメムシ目22種、アザミウマ目4種およびダニ目1種の計40種の報告があった。また、野外調査の結果、チョウ目8種とカメムシ目1種の計9種が確認された。このうちの蛾類3種 (ゴマフリドクガ、オオトビスジエダシャクとテングイラガ属の一種) は文献に記録はなかった。将来的なヤエクチナシの利活用および保全に向けて、被害が顕著であったオオスカシバ、アヤニジュウシトリバとヤツボシノメイガへの対応が重要であることを指摘した。

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