森林総合研究所研究報告
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18 巻, 3 号
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  • James R. P. Worth
    2019 年18 巻3 号 p. 275-288
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    クロベは日本固有の重要な針葉樹だが、他のヒノキ科の種と異なり現在の種の分布の情報が不足している。本報告ではクロベの現在の分布を調査し、近年絶滅した集団の数を、公開されている利用可能なオンラインリソースと野外調査の結果を併せて評価した。さらに、Maxent による種分布モデルを用い、クロベの生息可能域を予測した。クロベは本州北部(北緯40.67˚)から四国(北緯33.49˚)の温暖な照葉樹林から山岳地域の近くまで日本に広く分布していた。その分布域の中心は日本の中央部で、多雪・少雪の両方の山岳地域を含んでいた。一方、西日本ではクロベは非常に稀で、中国地方に5箇所、四国地方に3箇所の合計8集団しか確認されなかった。これらの中には、種分布モデルでは推測されなかった非常に温暖な地域に存在する集団もあった。こうした集団は、本州中央部の分布の中心から隔離されたレフュージアが長期間持続していたか、もともと西日本の温暖な地域により広く分布していたクロベが数千年に渡る人間活動で消失して残存したものであり、保全上非常に意義のある集団である。20世紀半ばの人為的撹乱により3集団の絶滅が認められるが、全体としてはクロベの集団の推移は安定していた。
  • 吉藤 奈津子, 鈴木 覚, 玉井 幸治
    2019 年18 巻3 号 p. 289-299
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    適切な森林管理と林業経営を行うには気象害に対するリスク管理が必要で、被害率の推移や地域・樹種による違いを把握することは重要である。近年、地球温暖化に伴い乾燥が立木の枯死衰退に及ぼす影響の評価が世界的に注目されている。本研究では干害に着目し、林野庁が全国の民有林を対象に収集する気象害データ (森林被害報告) を用いて1959-2014年の干害実損面積の推移を明らかにし、さらに詳細な属性情報が得られた1978年以降の36年間について人工林1齢級 (1-5年生) の被害率の都道府県や樹種による違いを評価した。人工林1齢級は民有林干害実損面積の95.3%を占め、その被害率は1959-2014年の平均で0.26%、年々変動が大きく有意な増加・減少傾向は見られなかった。都道府県別で比較すると、北陸、甲信、近畿、中国地方及び香川県で被害率が大きく、北海道、東北、関東、東海、九州で比較的小さかった。主要造林樹種であるスギとヒノキの民有人工林1齢級被害率を比較すると、17都道府県でヒノキの方が有意に大きく、スギの方が有意に大きいのは2県のみであった。夏から秋にかけて著しく寡雨であった1994年の九州では、壮齢林でまとまった被害が生じた。壮齢林での被害は経済的にも生態系攪乱としても影響が大きいことが想定されるが、発生頻度が少ないため長期的動向を知るには継続して全国の気象害情報を網羅的に収集する必要がある。
  • 伊藤 江利子, 橋本 徹, 相澤 州平, 古家 直行, 石橋 聰
    2019 年18 巻3 号 p. 301-310
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    1960年代後半から1990年代に掛けて北海道で広く実施されてきた地がき(かき起こし)は林床のササを大型機械で除去する更新補助作業である。道内では主伐期を迎えたトドマツ人工林の低コスト再造林施業として、地がきで造成するカンバ材生産林業が提唱されている。今後地がきによるカンバ林造成を大面積で展開するにあたっては、林地の持続性に関する検討が不可欠であり、過去の地がきによる土壌理化学性への攪乱影響とその残存状況を明らかにすることが重要である。そこで本研究では1970~1990年代に筋状地がきを行った24林分を対象に、地がき帯と残し帯の表層 0-5 cmの鉱質土壌の土壌理化学性を調査した。地がきによる表層土壌理化学性への改変影響は地がきから15~41年経過したレーキドーザ筋状地がき地でも検出された。地がき帯では残し帯に比較して有意に小さい全炭素・全窒素濃度と有意に大きい細土容積重が認められた。CN比については処理によるわずかな減少が認められたが、林分間のばらつきが著しく、地がきの影響は微小と考えられた。立地要因の中では火山灰地域/非火山灰地域の違いによる有意な効果が認められ、非火山灰地域では火山灰地域に比較して有意に小さい全炭素・全窒素濃度と有意に大きい細土容積重が認められた。さらに非火山灰地域の林分では地がき帯と残し帯の差異はより大きく、地がきによる土壌攪乱が顕著になる傾向が示唆された。
  • 酒井 敦, 大谷 達也, 宮本 和樹, 八代田 千鶴, 藤井 栄
    2019 年18 巻3 号 p. 311-317
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    ニホンジカが生息する皆伐跡地でシカ対策を実施することで植生がどのように変化するか把握するため調査を行った。再造林を前提に二か所の皆伐跡地でシカ防護柵を設置し、柵の内部と外部で下刈りを行った上で植生調査を連続して行った。片方の皆伐跡地では計14頭のシカを捕獲した。皆伐跡地ははじめシカの不嗜好性植物であるタケニグサが優占していたが、下刈り後柵内では柵外よりもクサイチゴ等の急速な増加が見られ、種組成が大きく変化した。シカを捕獲した皆伐跡地では捕獲後柵外でキイチゴ類や一部の草本の植被面積が増加した一方、捕獲しない皆伐跡地では植生変化は比較的緩やかだった。キイチゴ類はシカの利用頻度を示す指標植物として利用できる可能性がある。
  • 末吉 昌宏, 向井 裕美, 北島 博, 黄 俊浩
    2019 年18 巻3 号 p. 319-324
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    国内および中国の菌床シイタケ栽培施設で発見されたシワバネキノコバエを報告する。本種の成虫と幼虫は栽培施設で9月から11月までの間見られたが、子実体の食害は確認されなかった。2017年6月から2019年3月までの間、茨城県と群馬県内5箇所の栽培施設に設置された延べ1320枚の粘着トラップのうち、7枚に7個体の成虫が捕獲された。また、栽培施設の菌床上で採集した幼虫を室温 (平均気温摂氏20.4度) で飼育した結果、13日後に成虫が羽化した。さらに、屋外環境および栽培施設で採集された成虫標本に基づき、本種が対馬と沖縄本島、中国にも分布することがわかった。以上のことから、本種は国内と中国の栽培施設で夏季・秋季に複数世代発生する、潜在的な害虫であると考えた。
  • 平川 浩文
    2019 年18 巻3 号 p. 325-332
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    北海道札幌市南部に位置する森林において7年間(2004年 ‒ 2010年)にわたってコウモリ捕獲調査を行った。194回の捕獲作業の結果、コテングコウモリ、ヒメホオヒゲコウモリなど6種がのべ285頭捕獲された。コテングコウモリには体重と前腕長に明確な雌雄差が認められ、メスがオスより大きかった。ヒメホオヒゲコウモリは体重にのみ明確な雌雄差が認められ、逆にオスがメスより大きかった。コテングコウモリのメスの体重は顕著な季節変動を示し、当調査地では7月に出産・子育てが行われ、8月初めに当歳仔が独立して飛翔を始めると推察された。また、母親が子育て期に大きく体重を減らす可能性が示唆された。
  • 酒井 敦
    2019 年18 巻3 号 p. 333-343
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    暖温帯の低山丘陵地に位置する森林総合研究所四国支所に自生する維管束植物のフロラを調べ、2006年に作成した植物目録をAPG III分類体系に基づいて改訂した。その結果、110科277属360種(シダ植物38種、裸子植物6種、被子植物316種)が記載された。前回の植物目録に加え39種(シダ植物10種、裸子植物3種、被子植物26種)が新たに記載された。常緑性のシダ(ヤブソテツ等)や常緑性の木本(ホルトノキ等)など耐陰性の高い植物や、逆に攪乱に適応した草本類 (オニノゲシ等)が新たに記載された。実験林や樹木園の林分構造の発達や、実験林の改植による支所構内の環境変化に応じてフロラも変化していると考えられる。
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