森林総合研究所研究報告
Online ISSN : 2189-9363
Print ISSN : 0916-4405
ISSN-L : 0916-4405
16 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 小山 明日香, 岡部 貴美子
    2017 年 16 巻 2 号 p. 61-76
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    生物多様性オフセットは、開発事業等による生物多様性や生態系への負の影響を回避、最小化、修復した後、なお残る残存影響に対し代償措置を行う制度である。既に多くの諸外国で法制度化されており、国内でも愛知目標を達成する生物多様性保全の具体策として期待される。生物多様性オフセットは開発行為により失われる生物多様性損失とオフセット行為による獲得を同等にする「ノーネットロス」の達成を原則としている。しかしながら生物多様性オフセットによるノーネットロスの達成には様々な理論、技術、実践上の課題がある。本総説は、生態学的観点から生物多様性ノーネットロスを達成する上での要点、特に1)生物多様性の計測および生態学的同等性の評価、2)保全効果の追加性、3)オフセット実施における不確実性および失敗リスク、および 4)オフセットの限界とミティゲーション・ヒエラルキーの順守、について整理して概説した。さらに、本制度を日本の生物多様性保全策として導入することを想定し、国内の二次的生態系の特徴を考慮した具体的課題として、オフセット地選定における地域的枠組み、および開発・オフセット地として期待される劣化した里山生態系の活用可能性を検討した。
  • 宮澤 真一, 西口 満, 古川原 聡, 田原 恒, 毛利 武, 掛川 弘一, 横田 智, 楠城 時彦
    2017 年 16 巻 2 号 p. 77-86
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    電子付録
    ガラクチノール合成酵素(Galactinol synthase, GolS) はmyo - イノシトールとUDP- ガラクトースからガラクチノールを合成する酵素であり、ラフィノース族オリゴ糖類(Raffinose family oligosaccharide, RFO)合成経路の初発反応を触媒する。植物体に蓄積するRFO、ガラクチノール、myo - イノシトールは適合溶質としての機能などが示唆されているが、生体内でのはっきりとした役割は明らかではない。我々はセイヨウハコヤナギ(Populus nigra)の葉から6 種類のGolS 遺伝子を単離し、乾燥や塩ストレスに応答して発現量が顕著に増加するGolS 遺伝子(PnGolS2 )を見出した。PnGolS2 を過剰発現した形質転換セイヨウハコヤナギ(OXGolS)の葉に含まれるラフィノース、ガラクチノール、myo - イノシトールの含量は、非形質転換体(non-transformant, NT)よりも顕著に増加した。また、OXGolS の気孔コンダクタンスはNT と比べると低下し、その結果、OXGolS の葉の蒸散速度は大きく減少していた。PnGolS2 を過剰発現しても葉の浸透圧に大きな影響はなかったが、一方で、過剰発現によって葉の水ポテンシャルは大きく低下した。これらの結果は、乾燥・塩ストレス応答性GolS 遺伝子であるPnGolS2 を過剰発現すると、セイヨウハコヤナギの通導コンダクタンスを低下させることを示唆している。
  • 井上 大成
    2017 年 16 巻 2 号 p. 87-98
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    茨城県かすみがうら市の森林総合研究所千代田苗畑のチョウ類相を解明するために調査を行った。その結果、1997 ~ 2016年の20年間に、アゲハチョウ科10種、シロチョウ科6種、シジミチョウ科17種、タテハチョウ科30種、セセリチョウ科8種、合計71種が記録された。記録種のうち、ムラサキツバメ、ナガサキアゲハ、ツマグロヒョウモンは2000年代に、アカボシゴマダラは2010年代に千代田苗畑に侵入したと考えられた。記録された71種を田中の基準に基づいて分類したところ、森林性種は51種(71.8%)、草原性種は20種(28.2%)であった。巣瀬の環境指数(EI)の値は145 で、「良好な林や草原」にあたる「多自然」と評価された。記録種の地理的分布型の構成比を日本全体と比較すると、シベリア型(15.5%)や汎熱帯型(8.5%)の種が占める割合は低く、中華型(23.9%)の種が占める割合が高かった。国または茨城県のレッドリストに掲載された種としては、ツマグロキチョウ、オオムラサキ、ウラゴマダラシジミ、クロミドリシジミの4種が記録された。
  • 齋藤 英樹
    2017 年 16 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は、大規模森林開発地判読の有効な判読キーとなる道路網を衛星データから抽出する手法の検討を目的とする。研究対象地はカンボジア王国コンポントム州およびプレビヒア州にまたがる森林地帯である。解析にはランドサット8 号OLI データを用いた。エッジ保存平滑化フィルタを施したNDVI 画像に対して、エッジ検出処理やフィルタ処理を施し、大規模森林開発地に特徴的な東西南北に走る道路網を抽出した。若いゴム林内の道路網は抽出できたが、開発直後の裸地状態およびゴム林が成熟して道路が被覆された状態では、抽出されない部分があった。今後は、今回の試みで抽出された道路網データとNDVI 差分画像などを組合せ森林変化地の自動抽出技術を開発する。
  • 村田 仁, 山田 明義, 遠藤 直樹, 早川 記央, 丸山 毅, 伊ケ崎 知弘, 毛利 武, 横田 智, 山中 高史, 田原 恒, 根田 仁
    2017 年 16 巻 2 号 p. 107-108
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
  • 上田 明良, ディアン ドウィバドラ, ウォロ ノエルジト, スギアルト , 近 雅博, 越智 輝雄, 高橋 正義, 福山 研二
    2017 年 16 巻 2 号 p. 109-119
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    糞虫(コガネムシ上科食糞群)は熱帯において生息地の質の有用な指標者である。インドネシア共和国東カリマンタン州の低地、バリクパパンの北10~ 40kmの地域において、2006年から2008年の12月に、人糞と魚肉を誘引餌としたピットフォールトラップによる糞虫採集を30カ所で行った。65種8,073個体の糞虫が捕獲され、そのリストを表に示した。糞虫群集を用いて森林環境を評価する今後の研究への有用な資料を提供するために、5個体以上捕獲された44種の食性と生息地選好性を評価した。44種のうち、41種は人糞と魚肉の両方で採集された。8種はどちらかの誘引餌へ偏りが70%を超えず、そのうちの5種はボルネオ島固有種であった。生息地については、36種が天然林に多く、人為的荒廃林、植林地と開放地でほとんど捕獲されなかったが、例外の7種はそういった生息地にも多かった。Catharsius renaudpauliani は荒廃林と植林地を主な生息地とする唯一の種と考えられた。開放地に多い7種は、天然林でほとんど捕獲されなかった。天然林に多い種は分布域が狭い傾向があったのに対し、開放地に多い種は分布域が広い傾向があった。
  • 正木 隆, 中静 透, 新山 馨, 田中 浩, 飯田 滋生
    2017 年 16 巻 2 号 p. 121-142
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    電子付録
    落葉広葉樹の老齢林である小川試験地に設定した6 ha プロット内で29樹種800本の胸高直径と樹高を計測し、拡張相対成長式をあてはめて樹種ごとのパラメータを推定した。元データ及び推定結果は、付表および補足電子資料として提供する。本資料は落葉広葉樹林を育てる際の途中および最終の目標林型の設計など、種の多様な森林の育成・管理を進める上で有効に活用できると考える。
feedback
Top