症例は62歳男性.40歳頃に痛風と診断されたが放置.多関節炎を繰り返したために50歳頃から関節リウマチとして,近医で非ステロイド抗炎症薬(NSAID)で治療されていた.2003年4月15日に多関節痛のため当院を紹介され,外来にてNSAIDに加えてブシラミンが投与された.その後関節痛は軽減したが,腎機能の低下,低蛋白血症,貧血がみられるようになり,精査加療の目的で同年9月20日入院となった.入院時下腿浮腫と両膝関節の腫脹が認められた.両肘関節,両手関節,両手指関節,両足趾関節には皮下結節が見られ,一部の皮下結節は自潰していた.Hb7.7g/dl,CRP7.79mg/dl,総蛋白4.7g/dl,アルブミン1.5g/dl,尿蛋白5.9g/日,クレアチニン(Scr)2.1mg/dl,尿酸(Sua)8.0mg/dl,リウマトイド因子陰性.膝関節液と皮下結節に尿酸塩結晶が認められ,骨エックス線写真では骨破壊像が著明であった.腎生検は細動脈硬化,尿細管萎縮,間質の線維化に加えて膜性腎症の所見であった.入院後ブシラミンを中止し,腎機能低下を伴うネフローゼ症候群の治療としてプレドニゾロンとミゾリビンの併用投与を行ったところ,蛋白尿の減少と血清アルブミン値の増加をみた.高尿酸血症に対してはベンズブロマロン単独で治療したが,75mgではコントロールがつかず100mgに増量したところ1ヶ月後に腎機能の低下(Scr1.06→3.82mg/dl)を伴ってSuaの急激な増加(5.2→15.7mg/dl)がみられた.IMPデヒドロゲナーゼを阻害するミゾリビンはプリンde novo生合成経路を刺激して尿酸の産生過剰をきたす可能性があり,大量のベンズブロマロンとの併用が腎機能に悪影響を与えた可能性があるため,ベンズブロマロンを減量してアロプリノールを併用したところ腎機能と血清尿酸値は安定化し,2年5ヶ月の経過で痛風結節の著明な縮小が観察された.本症例は身体所見,検査所見より慢性結節性痛風と考えられ,ネフローゼ症候群は広義の痛風腎に併発したブシラミン腎症と推察された.本症例に見られたブシラミン腎症とミゾリビンの関与が疑われる腎障害の増悪について文献的考察を加え報告する.
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