ヒトおよび霊長類は,肝臓の尿酸酸化酵素(ウリカーゼ)を変異により欠失しているため,プリン体代謝の最終産物は水溶性のアラントインではなく,難溶性の尿酸となる.これら霊長類の腎臓は同時に尿酸再吸収機構を備えており,他の哺乳類に比較し血中尿酸値が高い.これがヒトに特徴的な高尿酸血症,痛風発症の原因と考えられている. しかしこれまで, 高尿酸血症の病態意義を検討できる適切な実験動物は存在していない.そこで我々は,ウリカーゼを欠損したヒト肝臓を持つマウスでは,ヒトと同様の血中尿酸値を維持できる可能性に期待し,ヒト肝細胞キメラマウス(フェニックスバイオ(株))での血中尿酸レベルの解析を試みた.本研究では,同キメラマウス(9匹)と正常対照マウス(2匹)において,ヒト肝臓の置換率を示すマーカーとなる血中ヒトアルブミン濃度と,体重,血中尿酸値との相関性を検討した.3週齢の免疫不全肝障害(uPA/SCID)マウスにヒト肝細胞を移植し,ヒト肝細胞キメラマウスを創出し,移植後10-12週に体重, 血中ヒトアルブミン濃度と血中尿酸値を測定し,キメラマウス群の中でのそれぞれの相関性について検討した.キメラマウスでは全例において血中ヒトアルブミンの産生が認められた(3.8-8.7g/dl).血中尿酸値も正常対照マウス(0.9mg/dl)に比べ,著明な上昇が認められた(1.7-8.8mg/dl).キメラマウスの血中尿酸値は血中ヒトアルブミン濃度と有意な相関を示した(r=0.828,P<0.05).以上の結果から,ヒト肝細胞キメラマウスの血中尿酸値はホストのマウスよりも増加し,一部は血中尿酸値がヒトの高尿酸血症に達する個体も含まれていたことから,同マウスが今後高血圧,糖尿病,高脂血症といったヒトの生活習慣病における尿酸の意義を考える上で,重要な疾患モデルとなる可能性が示唆された.
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