激しい筋運動時には骨格筋でのプリン分解が亢進する. adenosine monophosphate(AMP) が, inosine monophosphate(IMP)へ脱アミノ化される過程でアンモニアが生じ, さらにinosineを経てヒポキサンチンが生成される. 本研究では, 慢性心不全患者の運動時アンモニア, ヒポキサンチン濃度を心不全重症度毎に比較し, 乳酸値との関連を検討した. 慢性心不全患者59名 (NYHA classI-III)と健常者21名に症候限界性心肺運動負荷を行い, 安静時および運動後に採血して血中乳酸, アンモニア, ヒポキサンチン濃度の最高値を求めた. 最高仕事量(peak WR : 健常者, NYHA I,II,III : 163±11, 152±9, 94±5, 69±5ワット), 最高酸素摂取量は NYHA class が上がるに従って低値をとった. 安静時の乳酸, アンモニア, ヒポキサンチン濃度には差を認めなかった. 乳酸最高値(6.7±0.3, 5.5±0.4, 5.3±0.3, 3.7±0.3mmol/L), アンモニア最高値(182±13, 171±20, 133±14, 76±5μg/dl)およびヒポキサンチン最高値(37±4, 28±5, 24±3, 14±1μmol/L)は心不全重症度に従い低値となった. 対象全体で, 乳酸最高値とアンモニア最高値間には r=0.73の,乳酸最高値とヒポキサンチン最高値間には r=0.72の正相関を認めた. 各代謝産物の血中濃度増加分( △ ) を最高仕事量( peak WR ) により標準化すると, △ 乳酸/ peak WR は, 健常者に比し NYHA class II-III心不全群で有意に高値, △アンモニア/peak WRは, NYHA class III心不全群で有意に低値となった. 以上より, 最大運動時のアンモニア, ヒポキサンチン濃度は乳酸最高値と正相関し, 全体としてプリン分解反応は乳酸産生と共に亢進した. しかし運動負荷量で標準化すると, 重症心不全群では乳酸産生がより亢進しているのに対し, アンモニア反応は低値を示し, 運動時のAMPからIMPの経路の分解反応低下の存在が示唆された. Key Words:プリン分解, アンモニア, ヒポキサンチン, 慢性心不全, 心肺運動負荷.
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