日本歯科理工学会学術講演会要旨集
平成14年度秋期第40回日本歯科理工学会学術講演会
選択された号の論文の115件中1~50を表示しています
第1日 一般講演(口頭発表)
  • 藤沢 盛一郎, 熱海 智子, 門磨 義則
    p. 1
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    光増感剤camphorquinoneの可視光線(VL)照射による細胞障害についての研究は少ない. 我々はすでにcamphorquinone(CQ)などの光増感剤の細胞毒性作用をヒト顎下腺腫瘍細胞, ヒト歯肉線維芽細胞を用いて研究し, ラジカルにより産生された活性酸素(ROS)による細胞障害について報告してきた1). 本研究は光増感剤(CQ, 9-fluorenone(9F))の光酸化の影響をヒト歯髄細胞(HGF), を用いて検討した. 加えてdimethyl aminoethyl methacrylate(DMA), グルタチオン(G)の影響についても調べた. リン脂質リポソームの相転移温度、エンタルピー変化は光増感剤の相互作用を知るパラメータになるので、VL照射による光増感剤の影響についても検討し、CQの光酸化細胞障害のメカニズムを明らかにしようとしたものである.
    CQはVL照射により細胞傷害性を増大させた。VL照射下CQ及びCQ+DMAはほぼ同程度の細胞傷害性であった. Gの添加はCQ光酸化毒性を阻害した. CQのHGF細胞光酸化細胞障害のメカニズムとしてCQラジカル並びに“CQ-induced generation ROS”が示唆された.
  • 吉田 靖弘, 永金 幸治, 福田 竜一, 井上 哲, 新谷 英章, 岡崎 正之, 佐野 英彦, 鈴木 一臣, Bart Van Meerbe ...
    p. 2
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    近年, セルフエッチングシステムは本邦のみならず諸外国においても広く臨床応用されている。従来のエッチングとプライミングを同時に行うセルフエッチングプライマー中には, 接着性能を左右する各システム特有の機能性モノマーが含まれている。しかしながら, その違いが接着性能に及ぼす影響についてはほとんど報告されていない。本研究では, 異なる機能性モノマーを含有する3種のセルフエッチングシステムの象牙質接着性について, 形態学的, 化学的および力学的に比較検討した。
    以上より, 各セルフエッチングシステムの象牙質接着性は, 含まれる機能性モノマーによって異なり, 長期安定性を左右する可能性があることが示唆された。
  • 伊東 孝介, 鳥井 康弘, 吉田 靖弘, 鈴木 一臣, 吉山 昌宏, David H. Pashley
    p. 3
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    酸処理象牙質にレジンを接着させるためには, プライマーもしくはウェットボンデイング法を用いることが必要である. いずれの場合でも酸処理により生成したコラーゲン層の水もしくは有機溶媒等による収縮および膨潤の動態を知ることが接着機構を理解する上で重要である. 今回の実験では, 脱水および加水における過程でのリン酸処理象牙質の寸法変化を測定し, その結果より, コラーゲン層の収縮および膨潤の動態にリン酸処理時間が及ぼす影響について検討した.
    これらの結果から, リン酸により脱灰した象牙質の寸法変化は, x: 酸処理時間(sec), y: 変位量(mm)とした場合において脱水時による収縮時にはy=0.056x+0.40, R2=0.95で示され, 加水による膨潤時にはy=0.019x+0.51, R2=0.95で示された. また, 象牙質の収縮/膨潤比(=回復率, y)は酸処理時間(x)の延長に伴い低下し, y=-0.96x+95.1, R2=0.87と示された.
  • 平林 茂
    p. 4
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    近年, 歯質接着において, エッチング, プライミング, ボンディングの3処理を1液の1回の処理で済ませてしまうワンステップボンディングシステムが市販された. このシステムは, 処理ステップの簡素化によるテクニカルセンシティビティーの改善を目的に開発されたが, 果たして1回の処理で十分な接着が得られるものか懸念される. そこで, それらの接着性能を, リン酸エッチングを行なうウェットボンディングシステムと比較検討した。特に, その影響が懸念される歯質研削面の性状を変化させた場合の性能を評価した.
    エナメル質に対しては, AQおよびOBでは, #1000研磨面でやや高くなる傾向を示した.
    全体的にワンステップシステムは, リン酸エッチングを行なうEXに比較して接着強さは低かった. 象牙質に対しては, XBの#150研磨面でやや増加, EXの#1000研磨面でやや低下する傾向は認められたものの, 他の材料では研削面性状の影響はほとんど認められなかった.
    しかし, 接着強さはEXとほとんど差はなく, 象牙質の脱灰程度が接着強さに及ぼす影響は, エナメル質とは異なることが示唆された.
  • — microcrackの影響(接着理論モデル) —
    若狭 邦男, 池田 敦治, 野村 雄二, 岡崎 正之, 新谷 英章, 佐野 英彦
    p. 5
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    接着理論モデルを創案するために, 著者らは接着強さを界面にかかる強さとして定義し, その値がmicro-tensile bond試験により評価されることを提案している1)。Wakasaはその試験方法をI-sectionモデルと称し2), ここではそのモデルをSanoモデル3)とYoshiyamaモデル(カリエスを含むroot dentineにSanoモデルを適用したもの)4)と考えている。すなわち, レジン/象牙質界面を想定して, 接着強さに与える諸因子の影響を明らかにするために5-7), resin composite/adhesive resin layer界面(界面III), adhesiveresin layer/hybrid layer界面(界面II), hybrid layer/dentine界面(界面I)を想定した。脱灰象牙質における欠陥8)や試験片における欠陥としてのporosity分布とその影響が明らかにされ9), 試験片内部のmicrocrackと界面IIにおけるmain crackとの相互作用(interaction)が接着強さに影響することを報告したので1, 9), microcrackが試験片の強さに与える影響を求めるため, micro-tensile bond試験の結果と比較して10-13), 接着強さに与える影響を理論的に解析する。
    microcrackの形態や量的関係が接着試験片の諸性質や諸因子が及ぼす応力の大きさに基づいて明らかにされた。
  • —とくに接着界面における欠陥の存在が接着強さにおよぼす影響について—
    宮崎 真至, 檜垣 潤, 安藤 進, 小野瀬 英雄
    p. 6
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    光重合型レジンの歯質に対する接着性は, 引張りあるいは剪断接着強さ試験と, 試験後の破断面観察などによって評価されている。接着系の破壊は, 接着界面付近の最も脆弱な, あるいは接着の十分でない部からクラックが発生, 進展することによって生じるが, 接着界面付近の応力分布は一様ではないことから, 測定された接着強さの解釈は, 測定法あるいは試片の寸法などを考慮して行う必要があることが指摘されている。また, 接着試験において, 接着界面付近に存在する接着欠陥の位置あるいは大きさが, 測定される接着強さに影響をおよぼす因子となる可能性があるものの, その詳細は明らかにされていない。そこで, 接着試片の製作にあたって, あらかじめ接着界面に欠陥となる未接着部分を意図的に付与し, 象牙質接着強さにおよぼす影響について検討をした。
    本実験の結果から, 象牙質接着試験で得られた接着強さの解釈は, クラックの進展などを含めて総合的に行う必要性があることが示唆された。
  • —接着耐久性の評価—
    門川 明彦, 伴 清治, 藤井 孝一, 蟹江 隆人, 有川 裕之, 篠原 直幸, 嶺崎 良人, 鬼塚 雅, 田中 卓男
    p. 7
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    チタンは軽量, 高強度で耐食性, 生体親和性等にも優れた金属材料として口腔内修復用材料として応用される機会も増加してきている. またチタンを用いて前歯部に補綴物を装着する場合, 審美性や耐摩耗性を考慮して硬質レジンで前装される場合が多いと考えられる. 金銀パラジウム合金と硬質レジンとの接着に関しては多方面にわたる研究がなされているが, チタン系金属と硬質レジンの接着に関する報告は少なく, いまだ確立された方法はない. 著者らは, 純チタンおよびチタン合金をアルカリ処理することにより表面に複合酸化物が生成され, 凹凸面を生成し接着強さが向上することを報告した1). そこで本研究では, アルカリ処理を施した純チタンに硬質レジンを前装し, 4∼60℃の熱サイクル負荷5, 000回後に, その接着強さを測定することで両者間の接着耐久性を評価し, 歯冠用硬質レジン前装用前処理法としての可能性を検討した.
    以上の結果より, アルカリ処理による効果は, チタン表面への水酸基を含む酸化層の生成による化学的結合力の向上だけでなく, 表面の凹凸面の生成による機械的維持力の向上の影響が大きいものと考えられた.
  • 藤森 拓人, 高橋 英和, 中野 文夫, 岩崎 直彦, 早川 巖
    p. 8
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    現在, 多くの種類の義歯安定剤が市販されており, 年間売上総額は90億円以上に達している. その使用に関しては賛否両論あり, いくつかの報告も見られるが, 義歯安定剤に関する十分な情報がないのが現状である. 著者らは市販の義歯安定剤の接合力についてアクリル板を用いて検討したところ, クッションタイプの製品が比較的大きな値を示すことを報告した1). しかし, 実際の義歯安定剤の口腔内での接合力は粘膜面との接合力も関与するため, 口腔粘膜を想定した実験系による評価も必要であると考えられた. そこで今回, 口腔粘膜を想定した材料として寒天を使用し, 寒天とアクリル板の間に義歯安定剤を介在させた場合の接合力について検討した.
    粉末タイプの接合力は, 前回の接合力の値と同程度か, もしくは小さな値を示した. クリームタイプの接合力は, 前回の接合力の値よりもすべての製品が大きな値を示した.
    クッションタイプの接合力は前回得られた接合力の値よりも有意に小さい値を示した(p<0.01).
    以上の結果から, クッションタイプの義歯安定剤は粉末タイプやクリームタイプの義歯安定剤よりも, 粘膜などの水分を含んだ物質との接合力には不利であることが確認された.
  • (第1報)—咬合力による先在き裂からの破壊の可能性
    若松 宣一, 亀水 秀男, 飯島 まゆみ, 足立 正徳, 後藤 隆泰, 土井 豊
    p. 9
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    近年, 歯冠修復において審美性が強く望まれることから, 種々のオールセラミックス修復システムが開発されている。この修復物では, 研摩や咬合接触による表面き裂, 陶材中および界面の気孔やき裂が, 口腔内での修復物の破壊源と推定されているが, 破壊のプロセスを含めて現在のところ不明である。そこで本研究では, 臼歯部オールセラミックスクラウンが対合歯と咬頭嵌合位で噛み締められた状態を想定した。さらに, 咬頭と陶材との接触を, 陶材円板への円柱状Flat punchによる加圧とモデル化し, 有限要素法を用いて応力解析を行った。次に破壊源としてmicrocrackを伴う一個の気孔を, その直径と位置を変えて陶材中に導入し, その気孔からき裂が成長する条件を調べた。
    個人差や食物による違いはあるが, 通常の咀嚼運動では600MPaの接触圧は過大すぎると思われるが, 一度過大な圧力が陶材表面に作用すれば, 陶材内部および界面の気孔からき裂が成長する可能性は否定できない。
  • 水本 登志雄, 新家 光雄, 福井 壽男, 赤堀 俊和, 中野 芳規
    p. 10
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    インレーおよびクラウン等の補綴物用材料として用いられる歯科用銀パラジウム銅金合金は, 口腔内において咀嚼などによる繰り返し応力を受けることが考えられるため, その疲労特性は重要であると考えられる。しかし, 本合金の疲労特性は, 十分に把握されていないのが現状である。そのため, 演者らは, これまでに本合金鋳造材のミクロ組織に及ぼす疲労特性について研究報告を行ってきており, 本合金鋳造材(鋳造まま材)の疲労強度が本合金加工材のそれと比べ低下することを示した。そこで, 本研究では, 歯科用精密鋳造機により製造した本合金鋳造材に種々の熱処理を施し, それらの試験片を用いて疲労試験を行い, 本合金鋳造材の疲労強度の改善を行った。
    以上より, 本合金鋳造材の疲労強度は, 熱処理を施しミクロ組織を制御することにより向上させることができ, 本研究では1123WOが最も良い熱処理条件であると言える。
  • -鋳型材の違いによる鋳造体表面性状の変化-
    藤城 吉正, 守田 有道, 遠山 昌志, 彦坂 達也, 福井 壽男, 河合 達志
    p. 11
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    我々はVやAlなどの生態為害性が指摘されている金属元素を含まず、しかも良好な機械的性質と加工性を有するβ型チタン合金の開発と臨床応用を検討している。このβ型チタン合金はTa, Nb, ZrなどのIV族、V族のβ型安定元素の添加によって溶製されるが、純チタンと比較して、融点がきわめて高く、密度も大きく異なり、しかも高温活性であるため従来の溶解法では高純度で偏析のない均一な固溶体合金を溶製することはきわめて困難である。前報にてCold Crucible Levitation Melting(CCLM)とアルゴンアーク溶解炉での合金化を比較検討した。その結果CCLM法では、Ti, Ta, Nbなどの高融点材料であっても容易に純度の高い合金が溶製できることが判明した。今回は溶解炉の違いによる鋳造体の表面性状の変化を検討した。
    以上のことよりCold Crucible Levitation Melting(CCLM)法は通常のアルゴンアーク溶解と比較して鋳造時の鋳型との反応を減少できることが判明した。
  • —HA薄膜形成機構の解析—
    田村 誠, 遠藤 一彦, 大野 弘機, 田中 收
    p. 12
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    口腔インプラントに用いられている純TiやTi合金の表面にHA薄膜を形成することによって、骨伝導性を付与することができる。演者等は、HAの溶解度は温度の上昇とともに低くなることに着目し、リン酸カルシウム溶液に浸漬した純Ti基盤に電流を流すことによって加熱し、均一で緻密なHA薄膜を簡便に形成できることを示した。本研究では、HA析出の前駆過程ならびに初期過程を調べ、HA薄膜の形成機構を明らかにすることを目的とした。
    以上の結果から、純Ti基盤のアルカリ処理が均一なHA析出層を形成する前処理として有効な理由は、HAの核生成の前駆過程として、ゲル表面へのCa2+の取り込みとその濃縮が速やかに起こるためと考えられる。
  • —Ti-Nb合金の機械的性質と組織—
    菊地 聖史, 高橋 正敏, 奥野 攻
    p. 13
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    本研究ではCAD/CAM用として機械加工性に優れた歯科用チタン合金を開発することを目的とし, 各種試作チタン合金の機械加工性や機械的性質を調べてきた. その結果, Ti-Nb合金は純チタンと同等か, それ以上の機械加工性を有していることが分かった1, 2). そこで本報ではTi-Nb合金の機械的性質と組織についてさらに詳しく検討した.
    試作Ti-Nb合金はニオブの添加量が10%以上でCP Tiより大きな耐力と引張強さを有することが分かり, 歯科用合金としての可能性が示唆された.
  • 近藤 英臣, 横山 敦郎, 田村 豊, 川崎 貴生, 宇尾 基弘, 大川 昭冶, 菅原 敏, 亘理 文夫
    p. 14
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    歯科用インプラントは口腔内から顎骨内へ貫通する構造のため、各部位で要求される機能が異なる。各部位で機械的特性と生体親和性を最適に発揮するため傾斜機能材料(functionally graded material: FGM)の概念を導入したチタン/アパタイト系インプラントの開発研究を行ってきた。本研究では、粉末粒子間の放電作用により焼結促進効果の期待できる放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering: SPS)法により、耐磨耗性に優れる表面窒化チタン(Ti(N))とアパタイト(HAP)からなる傾斜機能型インプラントを作製しその物性の評価を行なった。
    放電プラズマ燒結法の作用により、低温の750∼850℃で傾斜材料を作製することができた。ブリネル硬さが傾斜的に低下する機械的物性は、歯根部での応力緩和に寄与すると考えられる。
  • 米田 澄江, 森上 誠, 杉崎 順平, 山田 敏元
    p. 15
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    従来型グラスアイオノマーセメントに水溶性モノマー(HEMA)を共存させたグラスアイオノマー系レジンセメントは歯質接着性、優れた機械的性能を保持し、歯科用セメントとして広く使用されるようになってきた。なかでも、フジルーティングは初めてのペースト+ペーストタイプのグラスアイオノマー系レジンセメントであり、練和操作性に優れ、術者の習熟度によって機械的性能に差異を生じにくい。また、付属のディスペンサーにより計量誤差もなく、常に一定の機械的性能が容易に得られる特徴を持っている。そこで、使いやすさを追求したグラスアイオノマー系レジンセメント「フジルーティング」の安定した機械的性能を臨床的に証明することが望まれる。フジルーティングは粉·液型のグラスアイオノマー系レジンセメントであるフジリュートの液成分中の水溶性モノマー(HEMA)を基材とし、粉末成分であるフルオロアルミノシリケートガラスをフィラーとしたAペーストとし、Bペーストはポリアクリル酸と水にシリカ微粉末をフィラーとして調製された。この2つのペーストを練和したときに起こる反応は粉液タイプと同様、酸—塩基反応とモノマーの重合反応が同時に起こる。歯質に対する接着性は基本的にポリアクリル酸と歯質中のCaイオンとのイオン結合に期待し、そのため接着する歯面に対する処理なしでも高い接着力を有する。付属のコンディショナー(10%クエン酸+塩化第2鉄)による歯面処理を行うと、エナメル質の場合エナメル表面が適切に処理され、象牙質界面では含浸層が形成され更に高い接着力を示す。更にフジルーティングの特徴として、被膜厚さは3μmで浮き上がりの心配がないこと、ペーストにフルオロアルミノシリケートガラスを用いているためグラスアイオノマーセメント特有のフッ素徐放性を示し、歯質強化を期待することが挙げられる。今回、300症例弱のインレー、クラウン等の各種修復物をフジルーティングで合着し、3ヶ月から1年半に亘る短期的臨床経過を観察したのでここに報告する。
    以上のことより、世界で初めてペースト化に成功したグラスアイオノマー系レジンセメント「フジルーティング」は歯科用インプラントの上部構造体をも含めた歯冠修復物の合着に際して、大変有用であり安心して使えることが明らかになった。
  • 森上 誠, 堀口 尚司, 杉崎 順平, 山田 敏元
    p. 16
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    最近、3M-Espe社より、光重合型コンポジットレジン“FiltekTM A110”が開発·市販された。“FiltekTM A110”は、MFR typeのコンポジットレジンであり、フィラーの粒径分布は0.01∼0.09μm(平均粒径0.04μm)である。審美的要求の強い、かつ高い強度を必要とされない部位の修復を適応とするコンポジットレジンである。本研究では、“FiltekTM A110”をシングルボンドと併用して、38症例の窩洞に充填を行い、その臨床経過を修復後3ヶ月まで慎重に観察したので報告する。
    光重合型コンポジットレジン“FiltekTM A110”をシングルボンドと使用して、38症例の窩洞に充填を行い、修復後3ヶ月まで経過観察を行ったところ、術後不快症状はまったくみられなかったが、歯質との色調適合性については若干の困難さが認められた。
  • 内田 博文, 中川 久美, 平口 久子, 田辺 直紀
    p. 17
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    グラスポリアルケノエートセメントは, 歯髄への低刺激性や歯質への接着性などの利点から, 窩洞の裏層材料としても用いられている. しかし, 裏層後直ちに寒天·アルジネート連合印象法によって印象採得を行うと, 模型に面荒れを生じることが知られている. この点の改善を目的とした端緒として, 本研究では市販裏層用グラスポリアルケノエートセメント面を寒天·アルジネート連合印象によって印象採得して作製された模型の表面粗さを比較検討した.
    以上の結果から, グラスポリアルケノエートセメントによる窩洞裏層と同時に寒天·アルジネート連合印象を行う場合は, 光硬化型を選択すべきであり, 従来型では模型の面荒れを防止する対策が必要である.
  • 松家 茂樹, 有働 公一, 中川 雅晴, 石川 邦夫
    p. 18
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    炭酸カルシウムは通常3種の変態を有し、その内、アラゴナイトは海洋珊瑚の成分であり, そのままあるいはリン酸水溶液中での水熱処理によりアパタイトに転化させて硬組織代替材料として応用されてきた。また、炭酸カルシウムはリン酸共存下で炭酸アパタイトの水熱合成に用いられている。しかし、単独での加水分解過程についての報告は殆どない。本報告では、炭酸カルシウムの中でもっとも安定なカルサイトの常圧下での加水分解過程に及ぼすフッ素の影響を検討した。
    加水分解生成物はフッ素濃度が低い場合にはオクタカルシウムフォスフェート(OCP)が主生成相であった。フッ素濃度が高くなるにつれてアパタイト相が生成するようになり、かつ回折ピークの分離が良くなり、結晶性が向上することがわかる。
  • 丸谷 善彦, 芝 〓彦, 金石 あずさ, 大山 明博, 松崎 孝徳, 玉置 幸道, 宮崎 隆
    p. 19
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    近年, 歯科医療従事者への感染対策の一つとして, 印象および模型の滅菌, 消毒が注目されており, 強電解酸性水は従来の消毒薬と比べても遜色ない殺菌, 消毒効果が得られる事が明らかになっている. 特に, 水中あるいは消毒用薬液に長時間浸漬すると吸水膨張を起こし模型の寸法精度や表面粗さに影響が現れるといわれているアルジネート印象材の消毒には短時間で殺菌, 消毒効果が期待できる機能水, 特に強電解酸性水は有効な手段であり, 我々はその洗浄, 殺菌方法を報告1)してきている. そこで本実験では機能水で練和したアルジネート印象材の臨床応用を目的として, 機能水で練和したアルジネート印象材のpHの測定, 永久歪み, 弾性歪み試験について検討を行ったので, 報告する.
    以上の結果より, アルジネート印象材の機能水練和はコントロール練和と比較しても印象材としての物性には負の部分が少なく, 臨床に使用可能であることが示唆された.
  • 宇尾 基弘, 菅原 敏, 大川 昭治, 亘理 文夫
    p. 20
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    金属アレルギーの問題から口腔内金属の組成を迅速に分析する必要が生じている。大野ら1, 2)は研磨用ポイントとXPSを用いた微量サンプリング/迅速分析法を開発している。他方、走査型X線分析顕微鏡(X-ray Scanning Analytical Microscope: 以下XSAM)はX線導管により集光したX線を試料に照射し、試料をX—Y方向に走査することで透過X線像と蛍光X線による元素分布像を同時に得るものである。本顕微鏡は大気中で試料の前処理無く分析が可能であるため、さらに迅速な元素分析に応用が可能である。本研究では微量サンプリング法を用いたXSAMによる口腔内金属の迅速分析の可能性について検討した。
    従ってXSAMと微量サンプリング法を用いた本迅速分析法は口腔内金属の同定に有用であると考えられた。
  •  
    藤瀬 恭平, 井上 邦子, 中川 雅晴, 高橋 景子, 寺田 善博
    p. 21
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    歯科用合金は, 鋳造等の操作性, 優れた機械的性質, 生体適合性などが要求される。ところが、臨床において歯冠修復物の表面に腐食が原因と思われる黒変がしばしば見受けられる。同じ合金を使用したにもかかわらず黒変の程度には個人差があり, 短期間で補綴物表面が黒変する症例もある。現在日本において歯冠修復物やその他の補綴物の大半は, 金銀パラジウム合金で作られている。そこで当講座において辻ら1)が、金銀パラジウム合金を各種溶液(蒸留水、人工唾液、5ppmNa2S含有人工唾液、0.9%塩化ナトリウム溶液、25倍希釈ポビドンヨード溶液)に浸せきし変色と腐食を調べたところ、ポビドンヨード溶液中において著しく変色し、溶液中への合金成分の溶出が確認された。また、さらに各種歯科用合金(金銀パラジウム合金、白金加金、コバルトクム合金、純チタン)を用いて、ポビドンヨード(PI)溶液中における変色および腐食を調べるための基礎的実験として浸せき実験の結果、金銀パラジウム合金は変色を示したが、その他の合金については変色はみられなかった。そこで今回我々は、様々な要因が複雑に関与していると思われる口腔内環境におけるポビドンヨード含嗽溶液による歯科用合金の変色に及ぼす影響を調べるために臨床的実験を行い、基礎的実験の結果と比較し考察した。
  • 浜中 人士, 土居 壽, 小竹 雅人
    p. 22
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    25-30年間にわたり装着していた金銀パラジウム合金製クラウンを除去したのを機会に, この合金の長期間口腔内腐食について検討した. マージン部分が腐食により, 年間0.05mm以上溶出する部分もあり, 外見的には十分光沢のある部分においても腐食がかなり進行していた. 金銀パラジウム合金の口腔内における長期間の腐食は, 短期間の試験から予想される結果よりさらに厳しいものであると考えられる. 歯科用金属材料の評価については, 長期間の口腔内における臨床データを収集し, 統計的な解析が必要であると思われる.
    歯科用金属材料の腐食については短期間の腐食試験により評価されているが, さまざまな臨床データを収集し, 統計的な評価をする必要があると思われる.
  • 齋藤 設雄, 荒木 吉馬, 平 雅之, 昆 隆一, 桂 啓文, 福岡 恒夫
    p. 23
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    金銀パラジウム合金の耐食性は貴金属元素と非貴金属元素の組成によって変化するが、バルクの組成よりも表面の組成が直接腐食に影響すると考えられる。前回、鋳造の諸過程で起こる合金表面の成分元素濃度の変化について検討した結果、酸処理や溶体化処理により表面の合金成分の分布に差が見られた。本研究では、表面の組成変化と耐食性との関係を明らかにするため、熱処理および化学処理後の合金を硫化物溶液に浸漬し、生成した硫化物層の厚さから耐硫化性を比較した。
    以上の結果、金銀パラジウム合金の耐硫化性は表層部の組成に依存しており、特に、表面のCu濃度を低下させることにより耐硫化性が改善されることが確認された。
  • 遠藤 一彦, 大野 弘機, 川島 功, 山根 由朗
    p. 24
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    歯科鋳造用金銀パラジウム合金は、補綴学および保存修復学領域で最も使用頻度の高い合金である。本合金は、強度、耐食性および鋳造性などの諸性質が比較的良好であり、コストパフォーマンスも高いことから、保険診療に欠かせない重要な材料となっている。しかし、近年におけるPd価格の高騰によって、金銀パラジウム合金の価格は、一時期、金合金と同等もしくはそれ以上となった。今後ともPdが安定的に供給されるという保証はないことから、希少金属であるPdの含有量を出来る限り低減化した合金の開発が急務となっている。現在、金銀パラジウム合金の成分·組成を見直してPd含有量の低減化を実現する試みや低カラット金合金を開発する試みがなされているが、耐食性を低下させることなくPdならびにAu含有量を大幅に低減化することに成功していない。本研究では、JIS第2種Ag合金の成分·組成を検討し、安価で金銀パラジウム合金に匹敵する耐食性と耐変色性を有する歯科鋳造用貴金属合金を開発することを目的とした。
    以上の結果から、JIS第2種のAg合金にAuを数%添加することによって、Pdを配合しなくても0.1%Na2S溶液中における耐変色性を改善できることが明らかとなった。
  • 松下 悟, 新家 光雄, 水本 登志雄, 赤堀 俊和, 福井 壽男
    p. 25
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    歯科用Ag-Pd-Cu-Au合金は, 鋳造のままあるいは熱処理を施してから臨床に供されるが, しばしば破損する例が見られる。これは, 適切な熱処理条件で使用されていないことが主原因として考えられる。そのため, 熱処理組織, すなわちミクロ組織と引張特性および疲労特性等の機械的特性とを関連付けた研究がなされている。また, 口腔内は, 唾液のほかに咀嚼により食物が空気とかき混ぜられたり, 食物残渣の腐敗により乳酸を生じる。つまり, 口腔内は厳しい腐食環境にあるといえる。そのため, 耐食性の評価も行われている。さらに, 口腔内では, 噛むという行為により, 歯科用材料には応力が作用する。以上のことより歯科用材料は, 応力下での腐食が生じていると言える。そこで本研究では, 歯科用鋳造機により製造した本合金材に種々の熱処理を施し, ミクロ組織を制御した試料につき, 引張応力下での人工唾液中における耐食性試験を行い, 本合金の耐食性に及ぼすミクロ組織の影響について検討した。
    以上のことより, 応力下で行ったアノード分極試験では, 通常のアノード分極試験に比べ, 腐食開始電位が低電位側に移行し, 応力により腐食が促進されることがわかる。
  • 高田 雄京, 林 時徳, 浅見 勝彦, 金 教漢, 奥野 攻
    p. 26
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    日本の歯科治療では、歯科用アマルガムを使用する頻度は激減したが、口腔内にアマルガムを持つ人は少なくない。口腔内で長期間安定に機能してきたアマルガムであっても、チタンなどの新しい補綴物との接触によって、溶出イオンの増加を招く危険性もある。歯科用アマルガムから溶出するSnやCuイオンがチタンとの接触によって増加することを既に報告してきた1, 2)が、各イオンの増減については不明な点が多かった。今回は、歯科用アマルガムから溶出する各イオンの増減を詳細に把握するため、アマルガム単独とチタンとの接触における溶出イオン量の相関を求め、チタンとの接触による各イオンの溶出を簡単な数式で近似することを試みた。
    このように、チタンとの接触による各イオンの溶出量は、簡単な1次式から予測することが可能であることが示唆されたが、Hgイオンはいずれの表面積比においてもチタンとの接触で急激に減少し、この式に従わなかった。
  • —ES細胞の分化に及ぼす影響について—
    今井 弘一, 増田 景久, 黒田 収平, 中村 正明
    p. 27
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    水銀蒸気は水銀化合物に比較して, 生体への影響が著しく強いことが知られているが, ヒトの発生への影響については未だ十分なデータが得られていない. 我々はマウス由来のembryonic stem cellであるES-D3 cellとマウス結合織由来のBalb/c 3T3 cellを用いたin vitro発生毒性試験法であるEST(Embryonic Stem Cell Test)1)によって, 各種歯科生体材料がヒトの発生に及ぼす影響を系統的に検討してきた. しかし, 今回, 実験材料とした水銀蒸気のような気体については, 従来の実験方法では対応できず, その実験方法に大幅な改良を加える必要があった. 少量の培地を入れた培養瓶を回転することによって, 培養液をほとんど介さずに, 細胞が水銀蒸気を含む気相と直接に接触する回転培養方式の大量培養器に着目し, 水銀蒸気のin vitro発生毒性試験を実施した.
    今回の実験でES-D3 cellではdifferentiation assay, cell viability assayともに, 水銀濃度が1ng/Lでは大きな影響が認められなかったものの, それ以上の濃度では大きな影響が認められた. これに対して, 成熟した分化細胞である3T3cellでは逆に最も高濃度の水銀蒸気濃度でも大きな影響が認められなかった. 以上の結果から, 水銀蒸気には強い発生毒性の存在することが示唆された.
  • 平 雅之, 齋藤 設雄, 荒木 吉馬
    p. 28
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    チタンは生体親和性に優れインプラントや顎補綴材料に用いられている。チタンは合金化することによって加工性や強度を増加させることが可能であるが, 常に, 添加元素の溶出による細胞毒性が懸念されている。本研究では, 細線加工性に優れた新規医療用β型チタン合金と現在汎用されている医療用チタン合金について, 細胞毒性試験, 溶出イオン測定と陽極分極試験を行って比較検討を加えた。また, 対照金属材料に2種類の医療用ステンレス鋼を用いた.
    細胞毒性の低いものから合金を順に並べると, Ti, Ti-6Al-4V, NAS106Nステンレス鋼, Ti-14Mo-3Nb-1.5Zr, 316Lステンレス鋼であった. ICPによる分析では, NiイオンとAlイオンの溶出が確認され細胞に為害作用を及ぼしたと考えられたが, Tiイオンの溶出は確認されなかった.
    このことは3種類のTi合金が生体中で同等の高い耐食性を有する反面, 2種類のステンレス鋼の耐食性には問題があることを示している.
第1日 一般講演(ポスター発表)
  • 玉崎 秀樹, 荘村 泰治, 高橋 純造
    p. 29
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    歯科インプラント手術や歯周病治療において, 骨誘導·再生を目的とした骨補填が必要な症例が存在する。適用される骨補填材としては自家骨, HAp, β-TCP, BCP, 牛海綿骨由来焼成骨等があり, その優れた骨形成能が報告されている。しかしこれらの骨補填材においても, 移植骨採取量, 採取部位の制限や付随する手術侵襲, 補填材の長期残存, 安全性などにおいて検討を要する課題も残されている。一方、生分解性高分子材料は骨形成能は低いものの, 要求される材料特性に対する設計の自由度や、化学的修飾の可能性などの点において優れており, 骨補填材としての応用の価値は高いと考えられる。本研究では新骨補填材の開発を目指して, 生分解性高分子溶液をスプレーガンを用い噴霧後, 種々の温度にてゲル化し球状粒子を作製し, さらに臨床応用を考慮し粒子とフィブリングルー複合体を作製し, その細胞応答の評価を行ったので報告する。
    以上より, スプレーガンを用いPLLA溶液濃度の粘性, ノズル口径, ゲル化温度を適切に制御する事により, PLLA多孔質粒子を作製する事が出来た。またPLLA粒子とフィブリングルー複合体中においてラット由来骨芽細胞が生育しうる事が明らかとなった。
  • 小森山 学, 野本 理恵, 平野 進
    p. 30
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    レジンと歯科用合金の接着は、金属接着性プライマーの登場により多くの研究がなされてきた。接着向上の一つとして歯科用合金と歯冠用硬質レジンの間に酸化膜を介在させて接着層を形成させることを考案し、接着試験をおこなったので報告する。
    これらのことより、Si酸化物の粒度とAg, Cuの金属酸化膜が、金属とレジンの接着向上に関与していると考えられる。
  • 谷本 安浩, 西脇 剛史, 根本 君也
    p. 31
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    歯冠用硬質レジンは審美歯冠修復材料として歯科臨床に広く使用されているが, 機械的強度を補うために金属で裏装して使用されるのがほとんどである. そのため金属アレルギーなどの観点からもメタルフリーを目指したガラス繊維によるレジンの補強が考えられる. しかしガラス繊維で補強したレジンの破壊様式や最適なガラス繊維の挿入位置などを明らかにする必要がある. そこで本研究では, ガラス繊維強化レジン(以下, GFRR)の力学的特性を予測するための数値モデルを提案した. さらに三点曲げ損傷進展解析を行い, 得られた解析値と実験値を比較·検討して本数値モデルの妥当性を確認した.
    これらのことから本研究で提案した数値モデルを用いることにより, ガラス繊維強化レジンの曲げ強度および損傷進展過程の予測が可能であることが示された.
  • 濱田 吉之輔, 松浦 成昭, 高橋 純造
    p. 32
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    ある程度以上大きな組織再生には、細胞、細胞の足場となる生体材料、成長因子以外に、細胞への栄養補給のための血管新生が求められる。従来から知られているVEGF、bFGF、HGFなどの血管増殖因子は、100∼200のアミノ酸からなるタンパク質であり、アレルゲンとして免疫学的な問題をおこす可能性も考えられる。一方、アミノ酸が10個前後結合したペプチドは、種々の増殖因子と比較して抗原性の問題から副作用が起こりにくく安全であり、代謝が容易であり、デザインが容易で高効率な合成法や検定法が確立されているといった利点を有する。現在、血管新生作用が示唆されるペプチドがいくつか見出されているが、未だ十分な研究は成されていない。本研究はアミノ酸配列IKVAVに着目し、これを合成し、ゼラチン上に固定化した。そして、このIKVAVペプチド固定化ゼラチンの血管新生能を、血管内皮細胞を用いたin vitroの実験により検討した。
    よって、このIKVAVペプチド固定化ゼラチンは、その管腔形成能から組織再生医療、人工臓器の移植時などの多くの医療分野において有効に利用できる可能性を秘めている。さらには、このペプチドの機能を阻害させるデザインを構築することにより、新たな抗癌剤の開発や軟骨再生治療にも有効となりうると考える。
  • 王 興〓, 宮崎 光治, 本川 渉
    p. 33
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    歯科矯正治療では弾性を有し、操作性に優れたエラストマーが多用されている。このうち1990年代に米国で開発されたフッ素徐放性エラストマーは、矯正治療中の白斑や初期う蝕の抑制に有効であることが報告されているが、装着期間中の力学的性質の低下が問題である。そこで、本研究では力学的性質の低下が少なく、かつフッ素の徐放性を有するエラストマーを試作し、その機械的性質について検討しました。
    これらの結果から、0.5wt%のフッ化スズを添加した試作ポリウレタンエラストマーは顕著な機械的性質の低下もなく、矯正治療への応用が期待できることが示唆された。
  • 泉田 明男, 細谷 誠, 片倉 直至, 依田 正信, 木村 幸平, 奥野 攻
    p. 34
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    重付加型シリコーンゴム印象材はその優れた弾性回復力と寸法安定性のため, 精密弾性印象材として臨床において広く用いられている. 近年, 口腔内からの撤去のしやすさをうたった弾性ひずみの大きい高弾性タイプの印象材が開発され市販されている. 本研究は高弾性重付加型シリコーンゴム印象材の硬化体の物性を調べることを目的に, 弾性ひずみに関する試験として硬さ試験, 永久ひずみに関する試験として動的粘弾性試験を行い, 従来の重付加型シリコーンゴム印象材との相違について比較検討した.
    以上の結果から, 高弾性重付加型シリコーンゴム印象材のゴム硬化体は従来の重付加型シリコーンゴム印象材と比較して, 硬さ, 貯蔵弾性率とも小さい値を示し, より軟らかいことがわかった. このことは臨床において印象の撤去や模型材の破折防止の点で従来型よりも優れていると考えられる. しかし損失正接が大きいことにより, 永久ひずみの点で問題を残していることもわかった.
  • 伊原 雅俊, 松本 卓也, 中尾 浩之, 濱田 吉之輔, 高橋 純造
    p. 35
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    細胞外マトリックスは、細胞の足場として組織を構築する以外に生理活性物質やミネラルの輸送経路としても重要である。この基質内では生理活性物質やミネラルの外部環境変化に応じた局所的な濃度変化が生じている。硬組織の石灰化は、細胞外マトリックスに存在する基質小胞内でカルシウムイオンやリン酸イオンの局所濃度が増加し、リン酸カルシウム結晶の核形成が促進されることから始まると考えられている。この局所濃度勾配をin vitroで達成できれば、生体内での石灰化機構をより詳しく検討できるかもしれない。そこで、本研究では、ハイドロゲルカプセルを人工基質小胞として利用することを目的に、その基礎実験としてアルジネートハイドロゲルカプセル(AGC)を種々の条件で作製し、その物理化学的性質について検討を行った。
    本研究結果から、作製条件を変えることにより、種々の物性をもつAGCを作製できることが明らかとなった。また、無機イオン透過性が高いことから、AGC人工基質小胞として利用できる可能性が示唆された。
  • 川島 功, 大野 弘機, N.K. Sarkar, 遠藤 一彦, 山根 由朗
    p. 36
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    現在、歯科鋳造用合金として、種々の成分·組成のものが使用されている。このうち、貴金属合金については、極微量のPdやCuが溶出し、金属アレルギーの原因となることが報告されている。口腔内において、それぞれの合金について、どの成分があるいはどの相が腐食し、それがどのように進行して行くのか等について、いくつか報告がみられるが、その詳細は未だ不十分と思われる。そこで、金濃度の異なる七種類の市販の貴金属合金について、口腔内に4年間装着された貴金属合金について腐食の状況を観察し、検討した。
    C1sのピークが高く有機物等が多く存在していることが、また、In、SnそしてZnの酸化物の存在が予測された。硫化物は存在しないことも示唆された。これらの傾向は金濃度の高い試料でも同様に見出された。
  • (第6報)—繊維体積率が損傷修復後の形状変化に及ぼす影響—
    浜田 賢一, 河野 文昭, 浅岡 憲三
    p. 37
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    形状記憶合金繊維を埋め込んだ床用レジンが破折した際に、繊維の収縮を利用して簡便で効果的な修復が可能であることをこれまでに報告してきた1-4)。これまでの検討では、繊維体積率約3%(埋め込み繊維本数3本)の試験片での評価を行ってきたが、臨床的には埋め込む繊維の本数は少ないほど床義歯作製は簡便となる。しかし、繊維体積率が減少すると繊維が収縮した際に試験片の形状を回復する効果が低下することが予想される。そこで今回は、埋め込み繊維本数を減少させた試験片の評価を行い、繊維体積率が修復後の強度と形状変化に及ぼす影響について検討した。
    以上から繊維の本数は試料の強度にあまり影響しないと考えられた。
    変形量は繊維本数の影響を受けておらず、繊維体積率を減少させても修復後の寸法精度は維持できると考えられた。
  • Pornkiat Churnjitapirom, 後藤 真一, 仲居 明, 宮川 行男, 小倉 英夫
    p. 38
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    当理工学教室では、口腔内で歯科修復に使用される合金が、1種類の合金で対応でき、しかも、石膏系埋没材を使用して歯科精密鋳造法で製作できるような多機能合金の開発を行っている。35Ag-30Pd-20Au-15Cu-0.02Ir合金にSnを添加した合金は、超低融陶材焼付用合金や義歯床用合金としての有用な合金であることが一連の研究で明らかとなった1.2)。しかし、この合金の硬さは、陶材焼成行程の加熱·冷却を行った場合, 約250-280HV1であり, インレーやクラウン用として用いるには軟質化することが必要と考えられる。本研究の目的は、Sn添加Ag-Pd-Au-Cu合金の軟化熱処理条件(加熱温度, 加熱時間)を検討することである。
    いずれの合金においても650℃から急冷処理した合金はas castに比べて硬さは有意に減少した。750℃と850℃から急冷した場合, 0%Sn合金の硬さは650℃から急冷処理したときの硬さと余り変わらなかったが, Sn添加合金ではすべて硬さが有意に減少した。
    以上の結果から試験したSn添加合金を軟化するには850℃からの急冷処理が最も効果的である。
  • —65∼85%銀、5∼25%銅、10∼30%鉄の合金粉末—
    大熊 一夫
    p. 39
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    金属修復物の作製には、模型作製、ワックスアップ、焼却、鋳造など多くの時間を必要とする。そこで、鋳造操作を必要としない金属製インレーの作製を考えた。以前の実験で、銀粘土を電子レンジで加熱焼成後、レーザーにより表層を金合金化やパラジウム合金化することにより、金属製インレーを30分で作製することができた1.2)。また、銀、銅と鉄の純金属粉末の添加率を変化させた合金粉末(図1)を電子レンジで加熱焼成した。結果、銀の粉末70%、銅15%と鉄15%の粉末とメチルエチルケトンを練和して、電子レンジで4分加熱焼成すると、圧縮強さは169MPaとなった(図1の〓)3)。今回は、65∼85%銀、5∼25%銅と10∼30%鉄の6種の合金粉末を作製した。また、この6種の合金粉末に、銀粉末5, 10, 15%の3種を加えた計18種の合金粉末を作製した。合計24種の合金粉末を用いて、電子レンジで加熱焼成後、圧縮試験を行った。実験の結果、“30分で作製する金属製インレー”の可能性見出したので報告する。
    (1)合金粉末の種類によって、銀粉末の添加が圧縮強さにおよぼす影響は異なる傾向を示した(図2)。(2)合金粉末No. 2(75%Ag-15%Cu-10%Fe)に銀粉末0, 5, 10%添加とNo. 3(65%Ag-25%Cu-10%Fe)に銀粉末0%添加の粉末1.5gにメチルエチルケトン0.1gとを練和し、電子レンジで4分間加熱焼成した試料の圧縮強さは131∼142MPaとなった(図3)。(3)銀、銅と鉄の各純金属の粉末による電子レンジによる焼成物の圧縮強さは、合金を粉末化したものとそれに銀粉末を添加して電子レンジの焼成物より、大きかった。
  • 松本 まき子, 服部 雅之, 長谷川 晃嗣, 吉成 正雄, 河田 英司, 小田 豊
    p. 40
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    近年, パラジウムの高騰やアレルギーの発現などから, 低パラジウム合金の開発が望まれている. 演者らはパラジウム含有量を10mass%とし, インジウムを添加した低カラット金合金を作製し, 引張試験, 電気化学的腐食試験, 変色試験および溶出試験を行い, Inの添加効果について検討した.
    以上の結果より, パラジウムの含有量を10mass%とした低カラット金合金へのInの添加は引張強さおよび耐変色性を向上させる効果が認められた.
  • 成瀬 重靖, 岡本 佳三, 宮崎 光治, 吉田 諭史
    p. 41
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    IT業界を始め、産業界において薄膜技術が格段に進歩してきている。TiCrN, CrN, TiN, TiCN, TiAlNなどの薄膜をプラズマの利用により、様々な材料に薄膜形成することができる。歯科で使用される金属は、口腔内環境により腐食、変色などの問題を抱え、特に腐食によるイオンの溶出は生体に対する影響も取り沙汰されている。そこでこれらの金属表面に、プラズマスパッタリングによるコーテイングを施し、表面性状がどのように変化するかを検討した。合金試料はK18合金、金合金タイプ4、金銀パラジウム合金、銀合金の4種に、それぞれCrN, TiNをドライコーテイングし、溶出量、変色、表面硬さ、表面性状について検討したので報告する。
    以上の結果から、各合金に対する薄膜の形成は表面性状を大きく替えると考えられ、TiNの薄膜形成処理は溶出量の多い合金に有効と考えられる。
  • 橋本 典也, 小佐田 義久, 上田 明博, 大島 浩, 中村 正明
    p. 42
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    PCRを逆転写酵素と組み合わせたRT-PCRは微量なmRNAの検出にも用いられてきたが, 最近になって, TaqManケミストリを利用してPCRサイクルごとの副産物をリアルタイムにモニタリングし, mRNAの定量をリアルタイムPCR法によって行うことが可能となった. 演者らはこれら分子生物学的手法の最近の進歩を歯科生体材料の細胞適合性の評価に応用する目的で, ヒト骨芽様骨細胞に塩化水銀を作用させ, インターロイキン8(IL-8)とHeat Shock ProteinのmRNAの発現量を濃度および時間依存的に調べた.
    以上の結果から, 両遺伝子の発現が細胞毒性試験の認められない濃度, ならびに時間経過で細胞反応として現れることが分かった。このことによって, 種々の材料に対する細胞反応を調べる上から, 従来から行われている細胞毒性に加えて分子生物学的に遺伝子発現などを調べることで細胞内部での反応や作用機序について多面的に調べられる道が拓かれることになる.
  • 武田 昭二, 善入 雅之, 中村 正明, 吉田 隆一, 宮坂 平, 岡村 弘行
    p. 43
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    金銀パラジウム合金は歯冠修復用としての機械的性質と生体適合性を有しており, 社会保険適用の歯科用金属材料として重要な位置を占めている. ところが近年, パラジウム価格が高騰し, 金銀パラジウム合金にもその影響が及んで歯科医療現場において適正な診療を行うことが困難な状況に立ち至った. そのため金銀パラジウム合金と同等か, それ以上の機械的性質, 化学的性質および生物学的性質を有し, 価格的に安定した合金を開発することが必要となってきた. そこで本研究では, 銀-銅共晶組成に金を加えた3元系合金に少量のパラジウム, インジウムおよび亜鉛を添加した合金について, 代替合金としての可能性について細胞毒性の観点から検討した.
    今回, 40種類の試作合金について細胞毒性の観点から金銀パラジウム合金の代替としての可能性を検討した. その結果, 30%以上の金を含有する試作合金において細胞毒性は認められず, 本実験の範囲内において代替の可能性が示唆された.
  • 青柳 裕仁, 金 景月, 馬場園 健一, 岩崎 直彦, 高橋 英和
    p. 44
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    従来の材料試験は万能試験機を用いた静的試験によって行なわれていた。最近、静的試験に加えて繰り返し試験が可能な動的試験機が各種紹介され、動的試験機を用いた材料評価も行われるようになっている。また、これらの試験結果をコンピューターで解析するソフトも各種市販されている。しかし、異なる試験機、分析ソフトを用いたときに得られる結果がどのように異なるかは十分に明らかではない。そこで、本研究では異なる2種類の試験機と分析ソフトを用いてコンポジットレジンの3点曲げ試験を行い、あわせて測定環境の違いが得られる曲げ特性にどのような影響を与えるかを検討した。
    試験機間での弾性係数の違いは本研究においては分析ソフトでの弾性係数算出方法を統一していた事より分析ソフトの違いよりも試験機のコンプライアンスの違いの影響と考えられる。
    また、水中での試験結果が室温でも大気中と異なっていたことは、水中では試験機のピストン部分に浮力がかかるために大気中での試験と比較して高い曲げ特性が得られるということが考えられる。
  • —3. 測定方向との関係—
    河西 宗一郎, 深瀬 康公, 臼井 伸行, 高岡 謙次, 吉橋 和江, 八木原 建司, 西山 實
    p. 45
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    材料の性状を示すパラメータの中でも表面あらさのパラメータは、表面性状を表現することのみならず、色調や光沢、ぬれなどの表面エネルギー、腐食、摩擦、曲げ強さ等に深く関わっている。そのため、他のデータとの関連や補完をする目的で表面あらさの値を用いることも多い。歯科領域では、回転切削器具を使用することから、回転切削器具によって得られる表面性状は、回転による連続的な、方向性のある凹凸による表面あらさである。これまでにFukaseらは、この回転切削器具による表面あらさの値に方向依存性があることを明らかにした1)。すなわち、回転切削器具などによって方向依存性のある表面あらさを付与された試験体は、測定の際のプローブのトレースの方向によっては、実際の表面あらさと、測定で得られる見かけの表面あらさに違いが生じることが判明した。これは、JIS等で規定されている表面あらさの測定目的が表面性状の検査に重点を置いているために、必ずしも表面性状を解析するためのパラメータではないこと2)、一般的に行われている2次限的な測定の場合、プローブの走査による線上の測定範囲における2次元的な凹凸であり、3次限的な測定の場合のような面状の測定範囲の凹凸データではないことのためである。今回、方向依存性のある表面あらさに対して、測定の走査角度を変化させた際の表面あらさの値(見かけの表面あらさ)の変化について、波長のパラメータを加えた評価を行った。
    見かけ波長を示すRλaは、Raの場合よりも、MAに対しての変化が大きかった。また、この関係は、みかけ波長を計算によってシミュレートした結果と近似していた。信頼区間および分散分析の結果を用いることにより、MAに依存している見かけの表面あらさの影響を排除することが可能と考えられた。
  • 永松 有紀, 陳 克克, 田島 清司, 柿川 宏, 小園 凱夫
    p. 46
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    院内感染対策として, わずか1∼数分間で高い殺菌能を示し、環境への影響がない電解酸性水および中性水が注目され、歯科において用いられるようになってきた。本研究においては、臨床での有効な処理をさらに検討するために、根管洗浄処理などに備えて口腔内温度で電解水(強および弱酸性タイプ、中性タイプ)を保存した場合について、それらの諸物性および殺菌効果の持続性への影響を調べた。
    いずれの電解水も、60℃で24時間保温後も有効な殺菌効果を維持していることから、診療直前に調製した電解水を密栓して保温した場合、診療時間内は十分に有効な殺菌効果を示すことが示唆された。
  • —トレー形態がアルジネート印象模型の再現性に及ぼす影響—
    平口 久子, 中川 久美, 内田 博文, 田辺 直紀
    p. 47
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    発表者らは, 高齢者に対する訪問歯科診療時の印象の消毒に着目し, 模型の再現性の低下を伴わない消毒処理のマニュアル作製を目的として検討を続けており, 前回はアルジネート印象材の混水比の影響について報告した. 引き続き, アルジネート印象の消毒が片側顎堤断面模型の再現性に及ぼす影響をトレー形態を変化させて検討した.
    以上から, トレー形態はアルジネート印象の薬液浸漬消毒による模型の再現性に影響を及ぼすことが示唆された.
  • 田辺 直紀, 中川 久美, 内田 博文, 平口 久子
    p. 48
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
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    石こう模型を次亜塩素酸ナトリウム消毒液中に浸漬すると, 表面粗さおよび微細部再現性が悪くなることを報告1)した. そこで本研究では, これらの模型表面への影響が表面硬さにも影響を与えていると考え, 市販の12製品の石こう模型材を用いて製作した模型を次亜塩素酸ナトリウム溶液中に浸漬し, 表面硬さを測定して比較検討したので報告する.
    以上のことから, 石こう模型を次亜塩素酸ナトリウム溶液中で浸漬すると表面硬さが僅かに低下するが, その程度は各製品によって異なることが認められた.
  • -メタクリル酸銀/メタクリル酸メチル系レジンの抗菌性-
    森下 久美子, 倉田 茂昭, 下山 和夫, 楳本 貢三
    p. 49
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    健全歯におけるう蝕予防が大切なように、治療のために挿入された補綴物における口腔内衛生を管理することは重要である。特にハンディキャップのある方、寝たきりの方などで頻繁に治療を受けられない環境にいる方、またレジン系の顎顔面補綴物を装着された方など、必ずしも十分な口腔内管理衛生が行き届かない場合がある。補綴物に抗菌性を付与し、少しでも材料による口腔内衛生の低下を抑えることは有意義な方法と考えられる。これまで歯科材料、特にレジン系の材料に銀による抗菌性を付与した研究は幾つかある。本研究では、抗菌性を示すモノマーとしてメタクリル酸銀を用い、メタクリル酸メチル(MMA)への溶解性や共重合性について調べ、抗菌性材料としての可能性について検討した。
    本実験では、M-AgがMMAに均一に溶解することから、M-Agを含むMMAモノマーを重合することにより、Ag+がレジン中に均一に分散した抗菌性材料が得られると考えられる。
    圧縮および曲げ強さと共にPMMAに比べPM-Agの方が強度が増加した。
  • フッ化炭素鎖による床用レジン表面の疎水性化処理
    倉田 茂昭, 森下 久美子, 下山 和夫, 楳本 貢三, 二瓶 智太郎, 尾本 直大, 大橋 桂, 寺中 敏夫
    p. 50
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)は, 床用レジンとして広く使われている. しかしながら, その機械的性質ならびに吸水性については必ずしも十分ではない. 吸水により機械的性質の低下や腐敗臭の原因となり, 一層の改善が望まれている. 強い撥水性をもつポリ(フルオロ)アルキル基をMMAのエステル位に置換したポリ(フルオロ)アルキルメタクリレートの重合体は, 吸水量が大きく減少するが, 機械的性質は低い. 一方, フェニル基やノルボニル基に置換した重合体も, 吸水量を低下することができるが, 硬く靭性のないものとなる. 本発表では, ポリ(フルオロ)アルキル基をもつモノマーをPMMAの表面上で硬化, コーティング処理し, レジンの機械的強さを低下させること無く, 吸水性を低下させる可能性について検討した.
    接触角は処理量とともに高くなり, 約10%濃度のとき高い値が得られた.
    一方, 各濃度における吸水量は, PMMAに比べ低下するものの, 処理濃度が増加してもほぼ同様な値を示した.
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