動物福祉の評価は重要であるものの、動物園における実践的な評価方法については十分に議論されていない。本論文は、京都市動物園のツキノワグマを対象とし動物福祉向上に向けた実践の一連の流れを提示し、その際に用いた3種類の動物福祉評価の手法(動物福祉のリスク評価・人とAIによる行動評価)の利点や課題を明らかにすることで、今後の動物園における実践的な評価方法について考察することを目的とした。動物福祉のリスク評価は、動物福祉に関する課題をスコア化するもので、環境エンリッチメントを実施する前後で動物園職員23名が実施した。また、監視カメラで記録された960時間分の動画を使用して、環境エンリッチメント前後での行動変化について、人とAIにより評価した。結果、動物福祉のリスク評価は現状把握の上では有効である可能性があるものの、行動評価を合わせることで動物の状態をより詳細に評価することの重要性も示唆された。
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