動物の行動と管理学会誌
Online ISSN : 2435-0397
59 巻, 4 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
Original article
  • 加瀬 ちひろ
    2023 年 59 巻 4 号 p. 129-134
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    キョン(Munitacus reevesi)に有効な電気柵の高さを明らかにするため、異なる高さの柵線に対する探査行動を調査した。飼育下キョン12頭(メス3頭、オス9頭)を供試し、非通電の柵線を10 cm間隔で高さ60 cmまでの6段張りで提示した。追加実験として20 cm間隔の2段張りも提示した。その結果、6段張りでは全ての個体が高さ20 cmもしくは30 cmの柵線に鼻先で接触した。2段張りでは高さ20 cmの柵線にのみ接触した。多くの個体が20 cmと30 cmの柵線の間を通過したが、20 cmの柵線の下を通過した個体もいた。以上の結果から、電気刺激を確実に与えるためには10 cm間隔の4段柵が望ましいが、20 cm間隔の2段柵でもキョンの侵入防止に有効であることが示唆された。

原著論文
  • 平田 昌弘, 林田 空, 村西 由紀
    2023 年 59 巻 4 号 p. 135-144
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    本研究では、哺乳行動を観察し、搾乳の難易性、搾乳するための労働投入量、搾乳によって得られた生産量を明らかにすることにより、ブタで搾乳が行われてこなかった要因について哺乳行動と労働生産性の視点から検討することを目的とした。ブタからの搾乳は、母ブタ-子ブタの哺乳行動に合わせて実施しないと成功しなかった。搾乳のタイミングや母ブタの泌乳の意志、周辺環境が影響して、ブタからの搾乳は容易に中断することもあり、困難を伴う作業であった。搾乳間隔は平均56.6分であり、搾乳成功率は61.3%に留まった。搾乳量は平均11.5 ml/7時間であり、得られた乳量は極少量であった。ブタから搾乳すること自体が困難であり、1日中を拘束される重労働であり、得られる食料(乳)は極めて少なく、食料生産体系に組み込む必然性が必ずしも必要でなかったことが、哺乳行動と労働生産性からみたブタから搾乳されなかった要因の一つと考えられた。

資料
  • 村上 翔輝, 大谷 祐紀, 土井 啓行, 小畑 洋
    2023 年 59 巻 4 号 p. 145-151
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    動物園では、採食時間の延長を目的とし展示動物に小さく切った餌を与えることが一般的だが、その効果を評価した報告は少ない。本研究はNIFRELで飼育するワオキツネザル10頭について、約1×1×1 cmの賽の目状または約1×1×6 cmのスティック状の餌を与えた時に発現する行動を調査した。結果、賽の目状の餌は床から直接口で拾い、スティック状の餌は前肢で把持し摂食する行動が主だった。30分の観察中、摂取/採食行動の発現割合に条件間で有意差はない一方、スティック状の餌は相互毛繕いの発現割合を増やした(P <0.05)。条件間で行動の経時変化に差はないが、スティック状の餌は特に餌提示から11-20分で自己毛繕いを増やした。以上、ワオキツネザルにおいては、餌の大きさによって採食時間は変化しない一方、発現する行動が異なる可能性が示され、餌を小さく切って与える効果について、改めて評価する重要性が示唆された。

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