動物の行動と管理学会誌
Online ISSN : 2435-0397
58 巻, 1 号
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原著論文
  • 籾田 康介, 吉田 茉純, 宗田 吉広, 石崎 宏, 桑原 正貴, 小針 大助, 矢用 健一
    2022 年 58 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    極低用量リポ多糖(LPS)投与による極軽度の病態モデルでの休息行動様態の変化から、新たな早期疾病発見の指標を検討した。7〜8ヶ月齢のホルスタイン種去勢雄6頭に、クロスオーバー法でLPS(0.005μg/kg/5ml)または生理食塩水5 ml(control)を投与した。投与後12時間において、control処置に比べLPS処置で、呼吸数は1、3時間後に有意に増加し(p<0.05)、体温は2、3、4時間後に有意に増加した(p<0.05)。摂食行動の総持続時間も、LPS処置で有意に減少した(p<0.05)。反芻を除いた伏臥位姿勢を休息行動と定義し覚醒休息、行動から推測したレム睡眠様休息、行動から推測したノンレム睡眠様休息に分類すると、行動から推測したノンレム睡眠様休息の総持続時間と総生起回数がcontrol処置に比べLPS処置で有意に増加した(p<0.05)。このことから、行動から推測したノンレム睡眠様休息行動の増加を指標とし、極軽度の病態を予察できる可能性が示唆された。

  • 小針 大助, 福重 さな子, 路川 強
    2022 年 58 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    本試験では、カウブラシへの嗜好性の高さを利用した運動場の利用状況の改善可能性について検討した。黒毛和種繁殖牛15頭を使用した。調査はブラシ設置前の対照期間3日間と設置後の実験期間2週間で行った。25区画に分割した運動場にカウブラシを2台設置し、調査日毎に各区画の利用頭数、乾草槽付近の敵対行動、維持行動を記録した。実験期間はカウブラシの利用状況(頻度、時間、頭数)、カウブラシ周辺の敵対行動、カウブラシへの探査行動も記録した。各区画の利用頭数は、対照期間と実験期間で差が認められたが、乾草槽付近にはあまり変化がなく、敵対行動、維持行動にも差がなかった。カウブラシの利用状況および周辺の敵対行動には2つのカウブラシ間で差はなかったが、探査行動は期間の経過に伴い減少した。以上、カウブラシの設置により運動場の利用状況は変化したが、飼槽など特定資源の利用状況改善には不十分であった。

資料
  • 出口 善隆, 廣井 馨, 井盛 貴博, 牛越 利之, 柴田 典弘, 小松 守
    2022 年 58 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    日本の動物園において、サシバエによるトナカイの吸血被害が発生している。サシバエ防虫剤として、フルメトリン1%製剤噴霧の有効性を明らかにすることを目的とし、動物園の飼育雄トナカイ3頭を供試した実験を行った。製剤施用前に行動を調査し、3日後に四肢および腹部にフルメトリン1%製剤10 mlを噴霧した。トナカイの行動を施用後3日目および12日目の10〜15時の間、1分毎に観察した。また、トナカイ体表のサシバエ数を目視およびビデオカメラ画像から計測し、製剤施用前と製剤施用後3日目、または12日目についてMann-Whitney検定によって寄生数と身繕い行動数を比較した。施用後3日目のサシバエ最大数および身震い出現回数は、施用前に比べて有意に減少した。摂食行動出現割合は施用後3日目に、摂食持続時間は施用後3日目および12日目に有意に増加した。

  • 川瀬 啓祐, 飯田 伸弥, 所 亜美, 正藤 陽久, 生江 信孝
    2022 年 58 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    ロバ(Equus asinus)に正の強化を取り入れたハズバンダリートレーニングを行い採血に成功した。ハズバンダリートレーニングの手順は、1)興奮条件づけ、2)ターゲットによる採血場所への誘導および静止、3)採血部位の系統的脱感作および4)穿刺の順で行った。ハズバンダリートレーニングを取り入れて24セッションで採血に成功した。本手法は正の強化を用いることで、動物福祉に配慮した採血技術であると考えられる。

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