動物の行動と管理学会誌
Online ISSN : 2435-0397
57 巻, 4 号
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原著論文
  • 黄 宸佑, 矢用 健一
    2021 年 57 巻 4 号 p. 127-136
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2022/01/12
    ジャーナル フリー

    繋留による行動制限はウシのストレス要因と考えられるが、ストレス反応の時間的変化についての報告は少ない。そこで、ウシの行動および生理反応を指標として、連続繋留期間の経過に伴うストレス反応を明らかにすることを目的とした。ホルスタイン種雄去勢牛8頭を供試した。2日間のフリーバーン飼育(pre)と10日間のタイストール飼育(d1-d10)期間に、個体維持行動を20:00から06:00まで記録した。同時にホルター心電計を用いてAB誘導法により心電図を記録した。得られた心電図から心拍間隔変動解析により心拍数(HR)および自律神経活動であるlow-frequency power(LF)、high-frequency power(HF)およびLF/HF比を算出した。なお、毎日15:30に頸静脈から採血し、血漿中コルチゾール濃度を測定した。行動時間割合は、preと比べ、タイストールでは首を曲げて頭部を体側に乗せる睡眠姿勢が少なかった(P < 0.05)。睡眠姿勢以外の伏臥位休息(P < 0.05)、立位(P < 0.05)及び摂食(P < 0.05)は、タイストール期間に増加し、バウト数が多くなった(P < 0.05)。また、d2からHR(P < 0.05)及びLF/HF(P < 0.05)が上昇し、HFが低下した(P < 0.05)。血漿コルチゾール濃度はd1からd10までpreより高い値を示した(P < 0.05)。夜間における睡眠の減少は、タイストール繋留による行動制限に起因した行動学的なストレス反応と考えられたことから、ウシがタイストールへ移行後長期間にわたってのストレス状態にあることが確認できた。

  • 加瀬 ちひろ, 寺師 楓, 森岡 杏月, 豊田 英人, 植竹 勝治
    2021 年 57 巻 4 号 p. 137-145
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2022/01/12
    ジャーナル フリー

    動物園でのふれあいがテンジクネズミの行動と生理に及ぼす短期的影響を評価するため、埼玉県こども動物自然公園にて10頭を対象に調査した。調査対象個体は15:00から15:30のふれあいイベントに用いられた。コルチゾル濃度を測定するため、各個体からふれあい開始10分前、終了10分前の2回唾液を採取した。また、ふれあい後1時間の行動を3分間隔の瞬間サンプリングで評価した。ふれあい前後の唾液中コルチゾル値差には、ふれあい実施の有無による差はみられなかったが(z=−0.06, P=0.953)ふれあい持続時間と摂食には負の相関(rs=−0.29, P=0.028)が、ふれあい回数と身繕いには正の相関(rs=0.30, P=0.021)がみられた。これらの結果からふれあいは極端な生理的ストレスを与えることはないが、時間と頻度の増加により軽度のストレスと関連する行動に短期的に影響することが明らかになった。したがって、長時間のイベントでは1頭あたりのふれあい時間に制限を設けることが推奨される。

短報
  • 河野 成史, 野上 大史, 木村 藍, 椎原 春一
    2021 年 57 巻 4 号 p. 146-153
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2022/01/12
    ジャーナル フリー

    飼育下キリンにおける四肢に関する疾患の1つである変形性関節症は、間欠的あるいは持続的な跛行がみられることがある。ヒトやイヌを対象とした保存療法として温熱療法が広く取り入れられているが、キリンでの報告はない。そこで本研究では、冬季に跛行がみられる変形性関節症(指骨瘤)のキリンにおいて、跛行の予防を目的としてウマの輸送用バンデージを装着し、無線式温度センサを用いて体表温度を測定することで、保温性および有効性を検証した。大牟田市動物園で飼育されているキリン1頭を対象とし、バンデージ装着時と未装着時の装着部位の体表温度、気温、跛行の有無を記録した。装着時は未装着時と比較して、装着部位の体表温度は高い値を示し、装着後は跛行がみられなくなった。バンデージの装着は肢の保温が可能であり、冬季に発生する跛行の予防に効果的であることが示唆された。

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