本研究の目的は、学童保育における障がい児の受入れ実態を明らかにし、環境整備のあり方について検討することである。本調査では、障がい児の受入れ状況と学童保育施設の環境について調査を行った。その結果、障がい種別に関わらず受入れがあること、また、自ら気持ちを落ち着かせるための行動がみられることが示された。一方、障がい児の好んで過ごす空間は、「仕切りなどで仕切られた空間」「カーペットなどの上など決まった空間」など、特別な部屋とはかぎらなかった。学童保育を利用する児童が障がいの有無にかかわらず、一緒に安心して活動し過ごせるような空間構成を検討することが必要である。
人が生涯にわたって学び続けることと、共生社会を実現することを掛け合わせる取り組みが活発になっている。本論では社会教育活動に関わるNPO法人を対象にしたインタビュー調査をもとに、共生社会の実現に向けられた学びの場のあり方や、学習提供者に求められるふるまいを提示する。とりわけ、地域においては、障害のある人もない人も共に参加するインクルーシブな学びの場を意識的に設置していくことで、そのひとつひとつが共生を実現し得るコミュニケーションを実践する場として機能し、このような場の接続状態が共生社会として表出する展望を述べる。
本研究は、2018年の西日本豪雨の被災地である倉敷市真備町でのアクションリサーチを通じて、復興過程における弱い市民(小さな声)である障害当事者の主体的な活動の課題と可能性を考察することを目的とした。その結果、障害当事者が主体的な活動を起こすことを阻む 要因として「被災地スティグマ」が確認された。一方で、さまざまな参加の機会は障害当事者自身 を成長させ、障害当事者主体の活動は、被災地のスティグマを乗り超える効果があり、弱い市民(小さな声)である障害当事者が地域の担い手となる可能性が確認された。弱い市民(小さな声)が安心して参加できる場には、お互いの声を聴きあうことが求められている。
本研究では、東京都23区の子ども施設に対するアンケートおよびインタビュー調査を通じ、施設の立地、災害対策、地域連携、災害時の施設から地域への支援の可能性について明らかにすると共に、災害に対する施設強化に繋がる要素について分析、考察を行った。結果として、災害の種類に応じた協力先の指定、立地に応じたかさ上げや浸水対策等、各施設が工夫を講じていることが分かった。加えて、災害時に子ども施設が地域を支援する背景として、周辺地域との日常的な交流や子ども施設に対する自治体からの災害用公的支援が重要であることが明らかとなった。しかし、こうした公的支援は、施設形態による規定や条件の有無等、課題もあることが分かった。
本稿は、我が国におけるソーシャルワーク専門職の国家資格である社会福祉士に関して、立法府である国会においてどのように議論が行われてきたのか、その量的推移、及び、主たるテーマやその変容過程を解明することを目的として、国会会議録に対する計量テキスト分析を行ったものである。結果として、社会福祉士に関する議論は量的には緩やかに増加しており、その内容としては「福祉の専門資格である社会福祉士、国家試験と受験資格」等の10の主たるテーマがあること、また、経年的なテーマの変容として、前期では主に資格「制度」に関する議論が行われたのに対し、後期に掛けて、児童や認知症高齢者、刑余者等多様な対象に対する「支援」の内容や場、人員の配置等に変化していったことが明らかになった。
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