本研究は、阪神・淡路大震災以来、災害時の“障害”がどのように変遷し、未だに解決できない要因を明らかにすることを目的としている。先行研究をレビューして研究動向および今後の課題を述べ、災害時の“障害”の代表例として障害者団体から発信された緊急提言の変遷を整理した。そして、熊本地震における身体障害者の実態と課題を現地調査より把握した。その結果、災害時の“障害”は、すべての被災者の共通の“障害”として捉えられていないこと、そして当事者参画が成されていないことが解決できない要因であると考察した。インクルーシブな防災を実現するには、災害に備えた地域づくりに多様な人々が参画するプロセスが必要であると結論づけた。
聴覚失認者(障がい者)は、現在、日本で用いられる緊急放送の注意喚起のためのチャイムを正しく認知できているのだろうか。そのチャイムの効果を確かめるために障がい者のべ78 名と対照として非障がい者のべ43 名が参加する2回の視聴覚実験を行った。被験者への課題としては記号としてのアルファベット(AからEまで)とトランプ記号を憶えること、2回目の実験ではさらに一桁の足し算・引き算の暗算を加え、各チャイムの注意喚起力を比べた。1回目の実験では障がい者と非障がい者の間に有意差はなかったが、2回目の実験では有意差が表れ、中・重度障がい者と非障がい者の差が顕著であった。そして実験を重ねる内に有意差は少なくなった。聴覚失認者にとって負荷が軽いか繰り返しがあれば、現在のチャイムは有効である。
2018 年は呉秀三が実態調査『精神病者私宅監置ノ実況及其統計的観察』の論文報告をして100年目である。これを機に製作された映画「夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100 年」を福井県で上映した。目的は福井県におけるメンタルヘルスを主とした地域づくり、まちづくりについての意識の啓発である。地元の実行委員会をつくる過程で人と人のつながりが生まれ、それが福祉のまちづくりへのきっかけとなり成功した事例である。歴史を知ることは過去を知り、「今」と「これから」への意識づくりとなる。歴史学は地域の中に入り、事実を未来に向けて伝えていく役割があると考える。
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