日本は災害大国と言われるように、発生間隔に違いはあれ、災害は繰り返し起こりうる。特に水害は毎年のようにどこかで発生しているが、水害が発生するたびに、「こんなことになるとは思わなかった」といった言葉が聞かれるなど、その発生状況とは矛盾した状況が確認される。実際、水害時における住民の対応行動については、過去の多くの災害で教訓や課題が指摘されてきたにも関わらず、長年十分な改善が見られず、災害が起こるたびに同じような課題が指摘され続けている。
このような状況を打開するために、著者らは災害の「素振り(災害発生前に災害発生を想定して対応行動を確認したり実施したりする)」と「振返り(事象が落ち着いた段階で自身が採った対応行動を評価し再検討する)」に焦点を当て、これらをWEB上で疑似的に体験する訓練ツールの開発を進めている。本研究では、訓練ツールの事前の効果検証として、訓練ツールを用いて作成した動画を利用し、3地区において水害を対象にした実験を行った。その結果、素振り時と振返り時で、明確な対応行動の変化が見られるとともに、参加者を対象としたアンケート結果から「現実感」・「行動時期の確認や改善」・「リアルタイム感覚」などの効果が確認された。
今後、本結果を踏まえ、訓練設定の作成手法の開発を進め、WEBを通じた災害発生前の疑似的な災害対応訓練のためのプラットフォームとしての展開を図っていく。
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