本研究の目的は,対人援助職者の職業性ストレスに関する新たな知見を得ることにあり,特定の「職業観」が踏襲されている職種に着目した.2015年1月〜3月に,教諭1000人,病院勤務看護師850人に対し無記名自記式質問紙郵送調査を実施,452人の回答を解析対象とした(回収率25.6%有効回答率95.6%).回答者全体の80%以上が特定の「職業観」である職務に対する「献身の姿勢」「使命感」を「必要」と回答し,現代では労働者の権利とされる事項については,31.2%が「有給休暇の取得」,14.8%が「職務に見合う十分な給与」を「不要」と回答した.特定の「職業観」を踏襲している群は,職業性ストレス反応得点がそうでない群に比べ有意に高い項目があり,「職務上の理想像」の「必要」群と「不要」群で「抑うつ感」を導くストレス要因が異なっていた.以上のことから,「職業観」の違いが職業性ストレスと関連し,ストレス反応を導くストレス要因に対する自覚に関連する可能性が実証的に示された.
本研究は男性の地域在住高齢者51人を対象とし,転倒リスクとロコモティブシンドローム(ロコモ)評価および足趾運動機能との関連性を検討したものである.調査項目として転倒リスク簡易評価指標,ロコモの評価として開眼片脚起立時間およびロコモ度テスト(2ステップテスト,立ち上げりテスト,ロコモ25),また足趾運動機能として,足趾10秒テスト,足趾握力,足趾挟力を測定した.その結果,対象者の約4人に1人に転倒リスクがあり,すべての測定項目において転倒リスクと有意な相関関係(r>0.47,p<0.01)が認められた.その程度を最も反映していたのはロコモ評価では2ステップテスト(r=−0.679),足趾運動機能では足趾握力(r=−0.574)であった.この2つは動的なバランス力の他に地面と接地する足趾力を反映しており,これらをトレーニングすることで転倒リスクの軽減につながる可能性が示唆された.
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