心身健康科学
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5 巻, 2 号
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特別講演
第8回日本心身健康科学会学術集会 シンポジウム
原著論文
  • —成人女性の怒りの気分に及ぼす影響から—
    大谷 喜美江
    2009 年 5 巻 2 号 p. 82-92
    発行日: 2009/09/10
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    ストレスや怒りの感情は,時に怒りをぶつける形のストレスコーピングとして表出され,この回避は重要である.一方,心身健康科学は心身相関に関し文化的視点を含め,Knowledge for well-beingの創出を目的とする.
    そこで本研究では聴取型音楽を用い,特に成人女性の「怒り」に及ぼす影響を検討した.また心身健康科学的観点から,育児ストレスコーピング法として聴取型音楽の有用性を類推した.
    方法は,乳幼児保護者を含む成人女性計43名を音楽使用・未使用の群に任意区分し,聴取有無別に気分変化をProfile of Mood States短縮版(以下POMS)を用い類推し,統計学的処理を経て分析を行った.
    結果,1.下位尺度「活気」の増加,「混乱」の減少,2.「怒る」「すぐかっとなる」の減少,3.音楽以外の要素も下位尺度,設問項目の一部の減少の効果を認めた.
    以上より聴取型音楽は成人女性の気分変容効果があり,怒りをぶつけるコーピング回避に有用と類推された.また心身健康科学の観点から,育児ストレスの解消においては適宜音楽聴取体験の活用が有用と考えられた.
  • 佐藤 和彦
    2009 年 5 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2009/09/10
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    容易に実施できるリラクセーション手法の一つに呼吸法がある.しかし,どのような呼吸法がリラクセーション効果を生じさせるかについては諸説があって明らかではない.
    本研究では,特別な修練を行うことなく誰もがその場で実施できる呼吸法として,呼吸パターンに着目する.呼吸法の実施前後における心拍,血圧の測定,及び各呼吸法に関する快適度等の主観評価を行い,呼吸パターンの違いによる効果を考察した.
    呼吸パターンとして「吸気-止息-呼気」を「呼吸法X-Y-Z」として秒数表記した場合,パターン化した呼吸法自体への不快感がない人においては,「呼吸法2-1-4」がより効果的であることが示唆された.修練不要な簡易な呼吸法であっても一定の効果があり,その呼吸パターンにおけるリラクセーション効果は,呼吸法自体の快適度によって影響を受けることが明らかになった.
  • 池田 耕二, 玉木 彰, 山本 秀美, 中田 加奈子, 西條 剛央
    2009 年 5 巻 2 号 p. 102-108
    発行日: 2009/09/10
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,認知症後期高齢患者の理学療法実践において周囲からも一定の評価を受けている4年目の理学療法士の「実践知」の構造の一端を,構造構成的質的研究法により探索的に明らかにし,それらを実践理論や教育モデルの一つとして提示することにある.
    その結果,実践知モデルは【患者力】と【家族力】の2つのカテゴリーによって構成された.【患者力】は「身体の基本的な動作能力」,「疼痛の程度」,「関節可動域障害の程度」から総合的に評価される《動きからみる身体能力》と「否定的感情」,「肯定的感情」の表出やそれらの「感情の波」として評価される《感情表出パターン》,さらに「理学療法士に対する認識」,「自己や周囲に対する誤認識」から解釈・判断される《関わりの中で感じる認知能力》,「口頭指示の入りやすさ」,「発語能力」,「働きかけに対する反応」から評価される《反応からみるコミュニケーション能力》の4つのサブカテゴリーによって構成された.また【家族力】は,「家族の退院にむけた希望」や「家族の理解や協力」によって構成された.
    これによって認知症後期高齢患者の社会復帰に向けた問題点の一端を,患者とその家族,それらのバランスという視点から評価することや,それによって理学療法を施行する際には,どこに大きく焦点をあてるべきかが理解しやすくなる可能性が示唆された.また理学療法実践においても柔軟なストラテジーの選択に活用できるということからして有用性が発揮される可能性が示唆された.
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