応用教育心理学研究
Online ISSN : 2436-6129
Print ISSN : 0910-8955
40 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 田中 修敬, 西山 修
    2023 年40 巻1 号 p. 3-17
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー
    本論では,保育者が実践の中で抱く「ズレの認知」に着目した。具体的には,保育者が子どもを理解する上で,ズレを感じたエピソードを収集し分析した。先ず,記述内容をKJ法により分類し,保育者がどのようなズレを認知しているのかを整理した。次に,保育経験年数との関係をテキストマイニング等を援用し分析した。その結果,1)保育者のズレには,「思い込み・決めつけによるズレ」「経験させたい願い・期待によるズレ」「計画の遂行・強い信念によるズレ」「戸惑い・困惑によるズレ」「ありのままの受容によるズレ」が存在すること,2)保育者がズレを認知できるかどうかは保育経験年数に関係がないこと,3)ただし,保育経験年数ごとのズレの認知の内容には,一定の特徴が認められることが明らかとなった。最後に,保育者の置かれた諸条件及び保育者効力感との関連から,今後の展開の可能性を述べた。
  • 上岡 紀美
    2023 年40 巻1 号 p. 19-35
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,児童期のアタッチメント対象移行に伴うアタッチメントスタイルの変化によって,ストレスに直面した際のコーピングスキルの活用と正感情の高まりにどの程度の関連があるかについて明らかにすることを目的とした。小学校5・6年生550 名を対象として,過去と現在のアタッチメントスタイル,FPM コーピング,正感情を測定する3つの質問紙調査を実施した。アタッチメントスタイルは,幼少期の養育者(過去)と現在の友人(現在)それぞれのアタッチメントスタイルの安定と不安定の組み合わせにおける4群を分析した。その結果,過去のアタッチメントの質を基盤としつつも,現在のそれがFPM コーピングの利用促進と正感情の高まりに影響を与える可能性が示唆された。この結果を踏まえて,児童期の健康適応においてアタッチメントスタイルの変化がもたらす補填効果と教育現場への予防的介入の可能性について考察した。
  • 福谷 泰斗, 皆川 直凡
    2023 年40 巻1 号 p. 37-50
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー
     本研究では,中学3年生63人を対象に社会科の学習方略が社会科学習への動機づけに及ぼす影響について検討を行った。学習方略の下位尺度として,体制化方略,対話方略,モニタリング方略,計画方略が,動機づけ方略の下位尺度として,内的調整,同一化的調整,取り入れ的調整,外的調整が含まれた。相関分析の結果,全ての学習方略と内的調整,同一化的調整が有意な相関を示した。重回帰分析の結果,体制化方略と対話方略が内的調整と同一化的調整に正の影響を与えていた。これらの結果から,自律的な学習動機づけの向上には,体制化方略や対話方略が有効であるという示唆が得られた。最後に,本研究の成果をふまえ授業改善についての考察と今後の課題を述べた。
  • 金子 智昭, 金子 智栄子
    2023 年40 巻1 号 p. 51-65
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,保育者養成校における簡易型マイクロティーチング(簡易型MT)に特化したルーブリックを作成し,ルーブリックを簡易型MTに導入することの利点を検討することである。研究1では,「指導案の書き方」「指導態度」「保育技術」「幼児理解」「学習状態の認識と学習意欲」の評価観点から成る「簡易型MT版ルーブリック」を作成した。研究2では,学生の質問紙と自由記述の分析から,簡易型MT版ルーブリックを用いた自己評価活動の有効性が確認され,その効果の要因として「学習状態の認識」「学習課題の設定」「今後の学習への活用」のカテゴリーが検出された。また学生が記入したルーブリックの分析から,簡易型MTの授業ごとの学習成果とその推移が定量的に示された。本研究は,簡易型MTの教育効果を向上させるための評価ツールと活用方法を具体的に提示するものである。
  • 高須 裕美, 髙橋 敏之
    2023 年40 巻1 号 p. 67-81
    発行日: 2023/08/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー
     本研究では,幼児教育の領域「表現」の音楽表現に関して,音環境に関する近年の基礎的研究や実践研究の成果から, 子どもの感性を育むための保育者の専門性の内実と,その専門性を身に付けるための保育者養成上の課題について, その観点を抽出した。その結果,保育者の専門性としては,保育環境にある様々な音に対する感受性を高めること,その音を素材として保育実践に活かす手立てを具体的にイメージする力を身につけることが重要であることが示唆された。さらに,これらを踏まえて,保育者養成教育に必要であると考えられる事項を提案し,保育者養成教育において,先ずは保育環境にある様々な音を取り扱うことの意義を強調し, 即興的な遊びなどの具体的な保育実践の在り方を検討したり議論したりする活動が求められることが考察された。
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