日本線虫研究会誌
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17 巻
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  • 山田 英一, 高倉 重義
    1987 年 17 巻 p. 1-7
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1)イチゴセンチュウの汚染土壌における花ゆり“明錦”の被害葉(黄・褐変葉)は6月上旬より次第に増加し、7月中旬(開花期)には約10枚、10月にはほぼ全葉に及んだ。
    葉内線虫数は急増を続け、10月には3万頭に達するが、葉位別では、5月中・下旬には生長点付近の未展開葉に多く、6月上旬~7月上旬には下から20葉位までがほとんどを占め、8月中旬には40葉位以上の葉にも移行し、増殖する。
    葉に寄生する線虫の性比は1:0.12~0.34の範囲にあった。
    球根内の線虫は5月下旬に高く、地上部の生育につれて葉に移行し、6月中旬~8月上旬まで低密度に推移するが、8月、10月の降雨により、葉から遊出する線虫により高まり、球根内で越年し、翌年の発生源となる。
    2)線虫高密度土壌に非寄主作物としてコムギ“ホロシリコムギ”を栽培したところ、密度はほぼ0となった。
    3)本線虫は乾燥葉内で極めて長期間生存する。
    4)ユリ属の原種で本線虫の寄生・被害が問題となる種はオニユリとチコウセンアカビメユリで、コオニユリにはわずかに寄生するが被害は問題とならず、テッポウユリ、ヤマユリ、エゾスカシユリ、ウチダカノコユリには全く寄生しない。交雑種では新テッポウユリ、“Fire King”および“Fire King”と“からこま3号”との交雑種、Mid-century hybridsの中では“Enchantment”を除くすべての品種・系統で寄生・被害が多い。
    5)雑草の中で、ヒメジョオン、ノボロギク、イヌホウズキ、イヌガラシ、ハコベ、シロザ、イヌタデに本線虫は寄生し、ノゲシ、アキメヒシバには寄生しない。
  • 福重 博正, 二井 一禎
    1987 年 17 巻 p. 8-16
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    マツノザイセンチュウを接種したクロマツ立木における線虫の密度、分散型第三期幼虫 (LIII) の割合、自活性線虫の密度および糸状菌の出現における季節変化を調査した。大半の木において、線虫個体数は、10月から12月にかけて減少したが、2月に一旦増加、その後再び減少して6月には材乾重1g当たり約100頭となった。糸状菌では、Ceratocystis spp.とTrichoderma spp.が比較的高い頻度で、Phomopsis spp.とMacrophoma spp.がやや低い頻度で分離された。LIII率の季節変化の様式は、木によって異なっていた。但し、その値は、大半の木において時とともに増加したが、6月においても50%以下であった。2月に多くの木において、マツノザイセンチュウの密度と自活性線虫の密度との間に、有意な正の相関が見られた
  • 松浦 邦昭, 細野 隆次
    1987 年 17 巻 p. 17-22
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1.3HラベルしたAChを用いる、JOHNSON & RUSSELLの方法はマツノザイセンチュウのAChE活性を高感度(測定可能な最低素酵素蛋白量で1.0μg)で測定できた。
    2.線虫体の磨砕物を素酵素液として、AChEの活性を検討したところ、至適pHは約7.0、至適温度は約35℃ であった。素酵素液を遠心分画した後に酵素活性を比較した結果、最大比活性は105,000×gで60分遠心後の沈澱部に認められた。25℃ における最大反応速度は8.7nmole・ACh/min/mg・蛋白、ミカエリス定数は6.25μMであった。
    3.AChEの素酵素液に対する各種薬剤の阻害作用を調べた。ダィスルフォトンを除く3種の有機りん剤の阻害活性はチオノ型よりオクソン型の方が100~300倍高かった。即ち、チオノ型のI50値は、フェンスルフォチオンで8.4×10-5M、チオナジンで3.4×10-4M、メスルフェンフォスで2.4×10-4M、ダイスルフォトンで2.8×10-4Mであったのに対して、オクソン型では、フェンスルフォチオンで4.8×10-7M、チオナジンで1.1×10-6M、メスルフェンフォスで2.0×10-6M、ダイスルフォトンで1.8×10-4Mであった。
    4.有機りん剤以外でもAChE阻害活性が認められ、I50はメソミルで6.0×10-7M、酒石酸モランテルで2.4×10-6M、塩酸レバミゾールで2.3×10-5Mであった。
  • 田村 弘忠, 峰尾 一彦, 山田 利博
    1987 年 17 巻 p. 23-30
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    マツノザイセンチュウを接種したクロマツにおける通水阻害を色素液注入法によって調べた。10年生のマツの枝に線虫を接種し、1~5週間後に樹幹から酸性フクシン水溶液を注入した。接種1週間後、接種木の樹幹横断面にみられる染色パターンが乱れ始め、少数の線虫が接種枝から樹幹に分散していた。その後、樹幹と枝の通水が徐々に阻害された。
    接種4週間後に、樹体内の線虫数は急速に増加し、5週後には通水はほぼ完全に停止した。
  • 阿部 芳彦
    1987 年 17 巻 p. 31-34
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    Steinemema feltiae (DD-136) の培養基質としてのふすまの有用性を検討した。ふすま単独培地では、感染態幼虫 (IJ) の収量は培地1kg当たり104の水準に留まった。この培地にサラダ油を添加したりBacillus属芽胞細菌による発酵を行うと線虫収量は104以上に増加した。B. thuringiensisあるいはB. cerus生菌を含む培地から分離したIJはこれらの細菌を宿主昆虫へ伝播し、線虫の殺虫力は高くなった。DD-136の継代培養はこれらの細菌添加培地でも可能であったが、継代を重ねるにしたがってDD-136の共生細菌Xenorhabdus nenatophilusの密度は低下し、IJの収量は低下した。
  • 近藤 栄造, 石橋 信義
    1987 年 17 巻 p. 35-41
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    Steinernema feltiae (DD-136), S.bibionisおよびS. glaseriのハスモンヨトウおよびハチミツガ終令幼虫に対する感染性と昆虫体内での発育の経過を濾紙法を用いた室内実験で比較調査した。その結果、いずれの線虫に対しても、ハチミツガ幼虫はハスモンヨトウ幼虫より感受性が高く、早く死亡した。しかし、両種昆虫への侵入線虫数は、S. feltiaeS. bibionisではハスモンヨトウへの方が多く、S. glaseriではほぼ等しかった。ハチミツガ幼虫へ侵入した線虫の成虫への発育率や大きさは、いずれの線虫も、ハスモンヨトウに侵入した場合より大きかった。以上の結果、ハスモンヨトウ幼虫の方がハチミツガ幼虫より感受性が低い原因は、誘引・侵入数の達いよりも、侵入後の線虫に対する昆虫の防御反応の差異に基づくことが示唆された。
  • 清水 啓, 百田 洋二, 大島 康臣, 三井 康
    1987 年 17 巻 p. 42-47
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    千葉県から採取したムギシストセンチュウ、Hetmder aumaeの寄生型を明らかにするために国際判別用麦類の品種21種を用いて接種実験を行った。
    1)異なる発生地帯から得た個体群について寄生型を比較したところ著しい差は認められなかった。
    2)麦類による寄生程度はコムギ、オオムギ、ライムギ、エンバクの順に高かった。エンバク野性種およびオーチャードグラスにも新たに寄生が認められた。
    3)1972-73年NIELSENによる寄生型の分類に従えばヨーロッパに分布するB型あるいはインドに分布する5型に近い型を示した。一方1981年EPPOの提唱した分類法に従えば“Ha 31”を示したが、なお検討する必要がある。
  • 大林 延夫
    1987 年 17 巻 p. 48-53
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1.ダイコンを加害するキタネグサレセンチュウの防除技術として、D-D(92%油剤)とオキサミル(1%粒剤)の併用処理効果を検討した。
    2.10a当たり、D-Dの15~20lとオキサミル20kgの併用処理は、D-D20l処理より優れ、D-D30l処理と同等の効果であった。
    3.ダイコンに処理されたオキサミルは、植物体に浸透移行してキタネグサレセンチュウの加害を阻止し、その効果は冬季の3~4か月間にわたって維持された。
    4.これらの結果、D-D92%油剤20lに、オキサミル1%粒剤20kgを併用することにより、実用的な高い防除効果が得られることが明らかになった。
  • Takayuki MIZUKUBO, Kazutoshi NAKASONO
    1987 年 17 巻 p. 54-56
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    A nematode belonging to the genus Psilenchus DE MAN, 1921, which is apparently a new record from the Far East, was found around the root of tulip in Toyama, Japan, and this was described here as Psilenchus bilineatus n. sp. Nematodes were separated from soil by the Baermann funnel technique, relaxed by gentle heat, fixed by TAF, and mounted in glycerin after SEINHORST's glycerol-ethanol method.
  • 佐野 善一, 中園 和年
    1987 年 17 巻 p. 57-58
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 荒城 雅昭, 中園 和年
    1987 年 17 巻 p. 59-60
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    A Meloidogyne population reacting as M. incognita race 3 in the host range test was isolated from a mixed Meloidogyne population attacking eggplant in Nagasaki Pref.(Kyushu Is.). This population was derived from a few individuals reproducing on cotton during host range test of the latter and was cultured for several months on tomato before inoculation.
  • 黒木 功令
    1987 年 17 巻 p. 61-64
    発行日: 1987/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    A population of the bulb and stem nematode, Ditylenchus dipsaci (KÜHN) FILIPJEV, was detected in fields with commercially grown onions on Ohshima Island, Yamaguchi Prefecture, in May 1986. This is the first case of infestation with the nematode recorded in onion fields in Japan. The infested area as of May 1987 covered approximately 48 ares and the population levels of the nematode in these fields were comparatively high. Infested seedlings became twisted and deformed and frequently died in severely infested areas of the fields. Most of the bulbs of the plants which survived in the infested fields showed symptoms characterized by deformity, cracking and/or rotting.
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