1)イチゴセンチュウの汚染土壌における花ゆり“明錦”の被害葉(黄・褐変葉)は6月上旬より次第に増加し、7月中旬(開花期)には約10枚、10月にはほぼ全葉に及んだ。
葉内線虫数は急増を続け、10月には3万頭に達するが、葉位別では、5月中・下旬には生長点付近の未展開葉に多く、6月上旬~7月上旬には下から20葉位までがほとんどを占め、8月中旬には40葉位以上の葉にも移行し、増殖する。
葉に寄生する線虫の性比は1:0.12~0.34の範囲にあった。
球根内の線虫は5月下旬に高く、地上部の生育につれて葉に移行し、6月中旬~8月上旬まで低密度に推移するが、8月、10月の降雨により、葉から遊出する線虫により高まり、球根内で越年し、翌年の発生源となる。
2)線虫高密度土壌に非寄主作物としてコムギ“ホロシリコムギ”を栽培したところ、密度はほぼ0となった。
3)本線虫は乾燥葉内で極めて長期間生存する。
4)ユリ属の原種で本線虫の寄生・被害が問題となる種はオニユリとチコウセンアカビメユリで、コオニユリにはわずかに寄生するが被害は問題とならず、テッポウユリ、ヤマユリ、エゾスカシユリ、ウチダカノコユリには全く寄生しない。交雑種では新テッポウユリ、“Fire King”および“Fire King”と“からこま3号”との交雑種、Mid-century hybridsの中では“Enchantment”を除くすべての品種・系統で寄生・被害が多い。
5)雑草の中で、ヒメジョオン、ノボロギク、イヌホウズキ、イヌガラシ、ハコベ、シロザ、イヌタデに本線虫は寄生し、ノゲシ、アキメヒシバには寄生しない。
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