1) 卵は, 両端が半円形のソーセージ状で, 長径=180.4±9.2μ, 短径翻43.4±2.2μ, 長径/短=4.2で, クワの根辺土壌から同様に分離される
Xiphinema spp.の卵とは容易に区別できた.
2) 20~25℃での胚発生の経過を観察した結果, 桑実期は卵割後1~3日目, 嚢胚期は3~8日目, ぜん虫態期は7~10日目に認められ, 幼虫態期を経て艀化幼虫は産卵後16~23日目に現れた.なお, 卵内での幼虫の脱皮は観察されなかった.
3) 冬期の雌成虫のうち卵巣未成熟線虫をクワに接種すると, 20~24℃の温度条件では2~3週間目に卵巣が成熟するものが多く, 3~4週間目に抱卵および産卵する個体が多かった.
4) 寄主植物として本試験の結果, イチジク, ナス, トマトが新たに加えられたが, 桑園雑草では寄二生増殖がみられなかった.
5) 桑園においては, 本線虫は初夏に集中して産卵が行われ, つぎに秋霧の頃にも産卵した. 艀化幼虫は産卵期につづいて検出割合が高くなり, 初夏の産卵3か月経過後に第3期幼虫と成虫の検出割合が高くなる傾向がみられた.
6) 本線虫の桑園における生活環はつぎのように推定された.6月に産卵されたものは7月に第1期幼虫となり, 年内に第3期幼虫か成虫となり, 早いものでは10月に産卵し越冬する.翌年5月頃に第3期幼虫は成虫化して6月に産卵するが, 成虫で越冬した線虫も5~6月に産卵する.
7) 成虫の産卵時期における産卵数は少なく, 最大の抱卵線虫検出時期でも, 雌成虫あたり0.7個に過ぎなかった.しかし成虫の生存期間は長期にわたるとみられ, 艀化幼虫よりも齢期構成比が高かった.
8) 無寄主状態土壌中でも室温下 (0~28℃) で14~17か月間生存し, 0~9℃では30か月以上の耐久生存が可能であった.
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