北海道大学苫小牧地方演習林で,同所的に生息する5種のキツツキ(コゲラ,アカゲラ,オオアカグラ,ヤマゲラ,クマゲラ)の繁殖生態を調査した.
(1)演習林内では,5種とも針葉樹人工林より広葉樹林で個体数が多かった.営巣木は,広葉樹林と二次林内でだけ発見された.
(2)5種のなかでは,オオアカゲラが最も早く繁殖を開始した(産卵は4月下旬に始まり,雛は6月初旬に巣立った).クマゲラがこれに次いで繁殖に入った(産卵は5月初旬から中旬にかけて行われ,6月中旬に雛が巣立った).コゲラ,アカゲラ,ヤマゲラの繁殖時期は最も遅かった(5月下旬頃抱卵を開始し,雛は6月下旬に巣立った).
(3)営巣樹種はすべて広葉樹であった.オオアカゲラは,相対的にも絶対的にも樹木の高い所で営巣した.オオアカゲラの巣の約64%は樹冠層から突出した樹木にあったが,他の種ではほとんどの巣が樹冠より低い所にあった.
(4)コゲラとアカゲラは,葉の表面からとったリン翅目の幼虫をおもに雛に給餌した6オオアカゲラは倒木や切り株の中から採集したクワガタやカミキリの幼虫を給餌した.ヤマゲヲはリン翅目の幼虫とアリを,クマゲラはおもにアリを雛に給餌した.
(5)リン翅目の幼虫の生物量は,6月初旬から中旬にかけて最大になったが,この時期とリン翅目の幼虫を雛に給餌するキツツキの育雛期はほとんど一致していた.
(6)「鳥類の繁殖時期は,雛に与える餌の入手しやすい時期と一致している」という見地から,オオアカゲラの繁殖時期の早い開始を論議した.甲虫目の幼虫の効率的利用と関連して,オオアカゲラの体の大きいことが,この種の早い繁殖開始の原因となっていることを示唆した.早い繁殖開始に伴ってみられるオオアカゲラの行動についても言及した.
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