1975-79年の冬から初春にかけて,北海道大学苫小牧地方演習林でクマゲラ
Dryocopus martius のふんを採集し,分析した.
(1)同定できた餌は,動物質8品目,植物質1品目であった.
(2)冬期間の主要な餌は,雌雄共,大型のムネアカオオアリ
Camponotus obscripes で,それらは全餌数の80-100%を占めていた.また,出現頻度も89-100%と高かった.クマゲラは,それらのアリを樹の幹の低い所や根元で採食することが多かった.その他に小型のアリや鞘し目昆虫それにウルシ類の種子も採食したが,それらが全体の餌に占める割合は少なかった.
(3)初春に入るとクマゲラの主要な餌は,ムネアカオオアリから小型のトビイロケアリ
Lasius nigerに変わった.トビイロケアリは,繁殖期間中に親鳥が雛に頻繁に給餌するアリと同じ種であり,初春から繁殖期にかけての,クマゲラの主要な餌と考えられた.
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