3次元動作解析と表面筋電計を用いて,鼠径部痛の既往者における片脚ジャンプ動作の特徴をバイオメカニクス的視点から明らかにすることを目的とした.サッカー選手を対象に鼠径部痛群8名9脚と,痛みの既往がないコントロール群7名14脚の比較を行った.その結果,体幹の側屈と骨盤の挙上の角度及び角速度と,体幹の回旋と股関節屈曲の角度は鼠径部痛群がコントロール群に比べて小さかった(p<0.05).また,ジャンプ動作の下降局面の腹横筋/内腹斜筋の筋活動の平均値は鼠径部痛群がコントロール群に比べて小さかった(p<0.01).鼠径部痛群は腹横筋/内腹斜筋の筋活動の低下とともに体幹及び骨盤と股関節の動きの活用が少ないジャンプ動作を行っていることが示唆された.
本研究は2014~2023年度の10年間にわたり,千葉県内の高校野球選手464名を対象に肩・肘の外傷・障害発生率をポジション別・シーズン別に比較した.結果,ポジション別の肩・肘障害発生率は投手が最も高く,次いで捕手も他のポジションより高かった.さらに,投手はオンシーズンの肩・肘障害発生率がオフシーズンより高かった.また,投手のオフシーズンの障害発生率は内野手・外野手と比較して約2倍高値であった.
海上保安官の暑熱環境下でのパフォーマンス維持と熱中症予防を目的に,室内のトレッドミルを用いた合計10セッションの暑熱順化トレーニングを立案した.本トレーニングにより推定平均心拍数や深部体温の低下が示されたが,推定発汗量の増加は認められなかった.限られた機材で安全かつ効果的な負荷を選択しつつ,適応に必要な負荷を確保するには,現場での試行錯誤とデータ蓄積が引き続き求められる.
33歳の男性プロフェッショナル・バスケットボール選手が,試合中突然心停止を起こして倒れたが,チームATらがコート上でAEDを使い,迅速な蘇生に成功し,選手は後遺症なく社会復帰することができた.本稿では,Bリーグ初の「選手の心停止およびAEDの使用例」となった本症例の詳細を報告し,さらに1)的確な救急対応を可能にした要因と,2)今後に向けての改善点を共有することを目的としている.
スポーツ系大学におけるJSPO-AT資格取得者のGrade Point Average (以下,GPA)の特徴を明らかにすることを目的とした.資格を取得した15名を取得者群,資格を取得できなかった26名を未取得者群に分類しGPAを比較した.その結果,取得者群の学年別,総合共通科目及び専門教育科目,AT科目のGPAは,未取得者群と比較して有意に高かった.JSPO-AT教育においては,大学4年間を通した教育や専門教育に加えて教養教育も重要であることが示唆された.
本研究の目的は,肩外旋筋への運動負荷後に実施される冷却刺激および圧迫刺激が肩内旋可動域に及ぼす影響を明らかにすることとした.健常な大学生45名を対象に,運動後20分および24時間後の肩内旋可動域の変化を測定した.被験者は無作為に3群(冷却群,圧迫群,対照群)に割り付けられた.対照群では有意な変化はなかった.一方,冷却群では両時点で肩内旋可動域が有意に減少し,圧迫群では両時点で有意に増加した.結果から,冷却刺激は運動後の内旋可動域を減少させ,圧迫刺激は増大させる可能性が示唆された.ただし個体によって経時的な変化の傾向にばらつきが見られたため,現場での応用に際しては個別の反応を考慮する必要がある.
本研究は日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の新カリキュラムを「スコープ」と「シークエンス」の観点から整理し,課題を明らかにすることを目的とした.JSPO-AT教育は段階的進行を示すカリキュラムであるとともに,螺旋型カリキュラムを特徴としていた.先行研究では課題としてキャリア形成を示しているが,スコープとシークエンスの観点から「現場実習」を検討することにより,課題解決につながる可能性が示された.
高校女子新体操選手(以下:新体操群)計62名と審美系競技未経験の女性群(以下:審美系競技未経験群)86名を対象に,全身関節弛緩性と部位別関節弛緩性の陽性率を比較した.
新体操群の全身関節弛緩性の陽性率は,審美系競技未経験群より有意に高かった(p<0.05).部位別関節弛緩性では,新体操群が審美系競技未経験群に比べて股関節,両膝関節,脊柱の関節弛緩性が有意に高い値となった(p<0.05).
本研究から,高校女子新体操選手の関節弛緩性の特性が明らかとなった.
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