育種学研究
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10 巻, 2 号
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原著論文
  • 高田 兼則, 谷中 美貴子, 池田 達哉, 石川 直幸
    2008 年10 巻2 号 p. 41-48
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/17
    ジャーナル フリー
    日本の麺用小麦はオーストラリアからの輸入小麦銘柄(ASW)と比べて製麺適性が劣っている.西日本の小麦品種には高分子量グルテニンサブユニット(HMW-GS)が Glu-A1座の対立遺伝子がコードするサブユニットが欠失型(null)で Glu-B1座が7+8,Glu-D1座が2.2+12や2+12をもつ品種が多数を占める.そこで,これらの高分子量グルテニンサブユニットの小麦粉生地物性への影響を小麦品種「ふくさやか」を反復親として,8種類の準同質遺伝子系統を作出して分析した. Glu-D1座が2.2+12をコードする系統では, Glu-A1座が欠失型の場合,Glu-A1座がサブユニット1をコードする系統と比べて不溶性ポリマー含有率が有意に低く,小麦粉の生地物性も弱かった.とくに日本品種に多く見られるnull,7+8,2.2+12のサブユニット構成は最も弱い物性を示した.一方, Glu-D1座が2+12をコードする系統では, Glu-A1座のサブユニットの有無による不溶性ポリマータンパク質や生地物性への影響は小さかった.これらのことから Glu-A1座とGlu-D1座の対立遺伝子の組合せが,小麦の加工適性に大きく影響していることが明らかになった.これまでHMW-GS構成はSDS-PAGEを用いて判別するのが一般的であったが,サブユニット構成によっては Glu-A1座のサブユニットの判定が困難な場合がある.そこで,Glu-A1座のサブユニット1(Glu-A1a),2*Glu-A1b)およびnull(Glu-A1c)を判別するPCRマーカーを開発した.
  • 中村 和弘, 細野 哲, 上原 泰, 牛山 智彦
    2008 年10 巻2 号 p. 49-55
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/17
    ジャーナル フリー
    長野県農事試験場が育成した精麦用六条オオムギ品種のミノリムギ,シュンライ,ファイバースノウ,シルキースノウについて5年間の千粒重,硝子率,粒厚分布,55%搗精時間,55%精麦白度,砕粒率,完全搗精粒率,黒条線支配率,30%搗精粉ペースト色相を調査した.形質間相関係数を算出した結果,精麦白度との間に2.6 mm以上の粒厚分布で正の,黒条線および硝子率で負の有意な相関がそれぞれ認められた.重回帰分析の結果,これら3形質で精麦白度の変異の約80%を説明できた.精麦白度へのそれぞれの寄与の大きさは,粒厚分布>黒条線支配率>硝子率の順であり,またこれら形質の遺伝率は,0.56~0.71と中位の値を示した.しかし,精麦白度そのものに有意な品種間差は認められず,遺伝率(0.26)も低かった.このため今後現在の普及品種より更に精麦白度が高い品種の育成には,精麦白度のみならず,粒厚分布,黒条線支配率および硝子率を同時に選抜することで精麦白度の選抜効果を補う必要があると考えられた.
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