育種学研究
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24 巻, 2 号
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原著論文
  • 鐘ケ江 弘美, 松下 景, 林 武司, 川島 秀一, 後藤 明俊, 竹崎 あかね, 矢野 昌裕, 菊井 玄一郎, 米丸 淳一
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 24 巻 2 号 p. 115-123
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/12/22
    [早期公開] 公開日: 2022/10/04
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    電子付録

    作物の系譜情報は育種を行う上で必要不可欠であり,特に交配親の選定において極めて重要である.しかし,系譜情報の分析基盤や可視化ツールは少なく,育種家は範囲が限定された系譜図を使用せざるを得ない.本研究では,育種や作物データの解析に系譜情報を広く活用するため,系譜情報グラフデータベース「Pedigree Finder」(https://pedigree.db.naro.go.jp/)を構築した.系譜情報を整備するために語彙やデータフォーマットの統一を行うとともに,品種・系統の標準化されたIDを利用することにより,関連するゲノム情報および形質情報との紐づけを可能にした.系譜情報の整備にはデータモデルとしてリソース・ディスクリプション・フレームワーク(Resource Description Framework, RDF)を採用し,共通性と永続性を高めた上で,グラフデータベースを構築した.グラフデータベースの利用により,系譜情報をわかりやすく可視化し,セマンティック・ウエブ(Semantic Web)技術による外部データベースとの情報統合や高度な検索が可能である.本システムにより系譜情報を収集・可視化することで,系統の育成過程をたどり,遺伝的な近縁性を考慮した交配親の選定や系譜と特性との関係の把握など,品種育成や遺伝研究の意思決定における育種データの統合利用が可能になると期待される.

  • 長岡 寛知, 森 正彦, 長岡 泰良, 加藤 清明
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 24 巻 2 号 p. 124-133
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/12/22
    [早期公開] 公開日: 2022/09/28
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    電子付録

    本研究は,アズキの品質関連形質として重要なアン色に関わる量的形質遺伝子座の特定を目的とした.そのために,北海道の品種「エリモショウズ」とアン色が紫色で優れる「紫さやか」との交雑に由来する組換え自殖系統150系統を北海道十勝地方の気温の異なる2地点で2カ年の計4環境下で栽培し,アン色と強く関連する煮豆色と種皮色に関与する量的形質遺伝子座の検出を試みた.供試材料の種皮色と煮豆色について,L*C*h表色系を用いて,明度(L*),彩度(C*),色相角(h)を評価した.DNAマーカーには,「紫さやか」と「エリモショウズ」のリシーケンス解析データに基づいて設計したInDelマーカー34種とCAPSマーカー1種,dCAPSマーカー1種を用いた.DNAマーカーの連鎖分析の結果,全長363.6 cMをカバーする7連鎖群から構成される連鎖地図となった.「紫さやか」は,アン色の特徴とされる煮豆の色相角は,「エリモショウズ」より小さいため,うすい紫色を呈し,かつ登熟期間の積算温度への反応性の小さい品種であると示された.種皮色と煮豆色に関わるQTLとして,それぞれ9個と8個が特定され,種皮色のQTLと煮豆色のQTLとのクラスターが3領域で確認された.煮豆色のQTLについて,紫色のアン色に強く影響を及ぼす色相角では,「紫さやか」型対立遺伝子が色相角を下げるqBBH1qBBH3qBBH4,色相角を上げるqBBH2が検出された.また,煮豆色の明度と色相角に関わるqBBL1qBBH4は,登熟期間が高温で少ない日射量となった1環境を除いた3環境下で検出され,一方,qBBH2は,高温で少ない日射量となった環境のみで検出され,環境により作用するQTLが異なることが明らかになった.

  • 黄川田 智洋, 依田 悠希, 藤原 崚, 眞田 康治, 佐藤 広子, 佐藤 尚, 上床 修弘, 荒川 明, 髙井 智之, 清 多佳子, 内山 ...
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 24 巻 2 号 p. 134-145
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/12/22
    [早期公開] 公開日: 2022/11/19
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    牧草品種育成での罹病程度評価および越冬性評価において,一般的なRGBカメラを搭載したUAVで撮影した空撮画像から,GRVIを含む88のRGB植生指標を算出し育種家評点と比較した.罹病程度評価においては,育種家評点とのピアソンの積率相関係数の2乗(R2)の平均が0.5以上の高い値を示したのはGRVI,GmR,GmR_2,MGVRI,VARI,GI,RGRI,ExGR,ExR_2,SAVI,SAVI_2の11植生指標で,その植生指標の多くは,RGBの3色のうちのBによる影響が小さい植生指標であった.越冬性評価において育種家評点と高いR2を示したのはg,ExG,ExG_2,GLI,CIVE,CIVE_2,RGVBI,RGBVIの8植生指標であった.越冬性評価とのR2が高かった8植生指標はRGBの全色を利用する植生指標であった.この他に複数の地域で行われた,エンバク,イタリアンライグラス,スーダングラス,ペレニアルライグラス,アカクローバの育種試験における育種家評点とGRVIの相対指標であるrGとを比較したところ,草勢および冬枯れ程度の評価でR2が高かった.一方,草型,倒伏程度の評価ではR2は低かった.また,形質の種類にかかわらず,育種家の評価自体が難しい試験ではR2が低かった.これらのことからrGでの評価は,上空からの空撮画像において,試験区内における植物体の面積の大きさで評価する形質や,試験区全体の色調の違いで評価する形質に適していると考えられた.

ノート
  • 塔野岡 卓司, 柳澤 貴司, 青木 恵美子, 平 将人, 吉岡 藤治
    2022 年 24 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/12/22
    [早期公開] 公開日: 2022/07/08
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  • 池谷 聡, 千田 圭一, 藤田 涼平, 入谷 正樹, 田中 静幸
    2022 年 24 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/12/22
    [早期公開] 公開日: 2022/07/08
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  • 中西 愛, 田村 克徳, 片岡 知守, 佐藤 宏之, 田村 泰章, 坂井 真, 伏見 力, 竹内 善信
    2022 年 24 巻 2 号 p. 160-167
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/12/22
    [早期公開] 公開日: 2022/10/12
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    「笑みたわわ」は晩生の製パン適性が優れる多収水稲品種「ミズホチカラ」を早生化した多収品種を育成することを目標とし,「金南風」の胚乳蛋白質突然変異系統「PMF84」と「モミロマン」のF1を母本,「ミズホチカラ」を父本とする三系交雑後代から育成された品種である.育成地(福岡県筑後市)における「笑みたわわ」の出穂期は「ヒノヒカリ」と同程度で「ミズホチカラ」より7日早い.成熟期は「ヒノヒカリ」より8日遅く,「ミズホチカラ」より10日早い.稈長は「ヒノヒカリ」より3 cm程度高く,穂長は4 cm長く,穂数は少ない“穂重型”の草型である.耐倒伏性は「ヒノヒカリ」より強い“強”である.収量は「ヒノヒカリ」を40%以上上回り,「ミズホチカラ」と同程度である.葉いもち圃場抵抗性は“弱”,縞葉枯病に“罹病性”,白葉枯病抵抗性は“弱”,穂発芽性は“やや難”,4-HPPD阻害型除草剤成分に対して“感受性”である.関東および九州地域での奨励品種決定調査において出穂期および成熟期は「ミズホチカラ」より早く,収量は同等もしくは上回った.「笑みたわわ」の米粉を使用した100%米粉パンの膨らみは「ミズホチカラ」と同程度で,製パン適性が優れることが示唆された.その要因として「笑みたわわ」の白米中のアミロース含有率が適度に高いこと(21.3%),製粉時の損傷デンプンが少ないこと(1.7%)および米粉粒径が小さいことが関連すると考えられる.以上より「笑みたわわ」は関東以西の地域で米粉用品種としての普及が期待される.

  • 平田 香里, 菱沼 亜衣, 島村 聡, 加藤 信, 山田 哲也, 菊池 彰夫
    2022 年 24 巻 2 号 p. 168-175
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/12/22
    [早期公開] 公開日: 2022/11/12
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    国産ダイズの生産力強化のための多収品種の開発は,国内のダイズ育種現場における最重要課題の一つである.東北地域は,ダイズの作付面積が全国で上位の県が多いにもかかわらず,その収量は全国平均より低い.したがって,東北地域のダイズ収量の向上は,国産ダイズの生産力向上につながると期待される.近年の東北地域では,適期収穫できない場合の裂莢,およびダイズシストセンチュウ(SCN)レース3抵抗性品種を侵すSCN個体群による被害が減収要因として懸念されている.そこで本研究では,東北地域の多収品種「ふくいぶき」にDNAマーカー解析と戻し交配を利用して,難裂莢性を付与した「東北185号」およびSCNレース1抵抗性(SCNレース3抵抗性より高度なSCN抵抗性)を付与した「東北189号」を開発した.「東北185号」は,「ハヤヒカリ」を難裂莢性の供与親として開発され,その裂莢率は「ふくいぶき」と比較して有意に低かった.「東北189号」は,「To-8E」をSCNレース1抵抗性の供与親として開発され,「ふくいぶき」が感受性を示すSCNレース1個体群に抵抗性を示した.「東北185号」および「東北189号」の「ふくいぶき」に対する農業特性の同等性を評価するため,成熟に要する日数,倒伏程度,主茎長,最下着莢節位高,子実収量,百粒重および粗蛋白質含有率を調査した結果,「東北189号」の子実収量および百粒重が「ふくいぶき」より低い傾向が認められたものの,全形質について両系統と「ふくいぶき」の間で統計的に有意な差異は検出されなかった.現在,東北地域には難裂莢性とSCNレース1抵抗性の両方を備えた品種は存在しない.SCNレース1抵抗性を導入する場合は,導入遺伝子が収量および粒大に与える影響に注意する必要があるが,「東北185号」と「東北189号」を交配することにより,「ふくいぶき」の多収性を受け継ぐ,東北地域向け難裂莢性かつSCNレース1抵抗性品種を開発できると考えられる.

特集記事
特集記事 2021年第62回シンポジウム(シンポジウム・ワークショップ)報告
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