目的:入院中に外傷性頭部損傷を発生した65 歳以上患者の特性と死亡リスク因子を明らかにすること.
対象と方法:DPC 調査研究班のデータから2010 年4 月1 日以降に入院し2017 年3 月31 日までに退院した65 歳以上の患者のうち,主病名が外傷ではなく,入院後発生疾患名が外傷性頭部損傷であった12,228 人を対象とした.対象患者の特性を調査し,退院時転帰生存群と死亡群で有意差があった項目について入院死亡を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い,死亡リスク因子を検出した.
結果:対象患者の平均年齢は79.2 歳(SD:7.7),平均BMI は21.3(SD:3.9),入院死亡率は17.9%であった.
多重ロジスティック回帰分析の結果,死亡リスクを上昇させる因子は,悪性腫瘍,血液系疾患,呼吸器系疾患,外傷性頭部損傷手術,チャールソン併存疾患スコア3 以上,循環器系疾患,向精神薬,男性,BMI < 18.5kg/m2,死亡リスクを低下させる因子は,神経系疾患,特定機能病院,平地歩行自立,BMI ≧ 25kg/m2 であった.
結論:外傷性頭部損傷と死亡との因果関係は不明だが,入院中に外傷性頭部損傷を発生した患者の死亡リスクに関する結果を,入院中に外傷性頭部損傷が発生した際に重篤な転帰をとる患者の識別に応用できる可能性がある.
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