2007年の第5次医療法改正により,すべての医療施設に医療機器安全管理責任者の設置が義務付けられた.これにより医療施設での医療機器の安全確保は向上していると考える.しかし,医療施設間での医療機器安全管理責任者の医療機器の保守管理に関する知識レベルや保守点検レベルに差があること,保守管理に必要な人員の確保ができないなどの問題がある.医療機器安全管理責任者に関するアンケート調査では,臨床工学技士がいる病院の70%で臨床工学技士が医療機器安全管理責任者の任についており,医療機器の安全管理の効率化や定期的な安全使用の研修など,きめ細やかな安全管理が実施されている.その反面,医療機器安全管理責任者の負担も徐々に大きくなっている現状がある.臨床工学技士がいない中小規模の病院では,医療機器の安全管理が十分実施されているとは言い難く,医療スタッフは医療機器の安全管理の必要性や重要性を感じているものの,その取り組みについて苦慮している可能性が伺われる.今後も医療現場では多くの新たな工学的医療技術と医療機器が普及と拡大し続けることから,医療機器安全管理責任者の役割と医療機器の安全管理体制の充実は,今後の医療の質と安全の確保のために益々重要になる.今後さらに医療機器の安全管理を押し進めるためには,病院管理者の医療機器の安全管理に対する重要性を十分理解し,最低限の医療機器の安全管理が実践できるような環境整備と支援が必要である.
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