医療の質・安全学会誌
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最新号
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総説
  • 青木 拓也
    2022 年 17 巻 4 号 p. 393-398
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
    Patient Experience(PX)は,医療サービスに関する患者の具体的な「経験」を意味する概念であり,Patient Satisfaction(PS)の進化形として,国際的に重要な医療の質指標に位置付けられている.PXの意義に関しては,すでに国内外で多くのエビデンスの蓄積があり,PXが,技術的な医療の質指標と正の関連を示すことに加え,アドヒアランス,セルフマネジメント,受療行動といった患者行動などにも影響を及ぼすことが報告されている.行政機関主導でPXの活用を推進する諸外国と比較し,日本のPX評価の取り組みは,これまで大きく遅れをとっていたが,近年日本でもPX尺度の開発研究やPXを用いた実証研究が活発化しつつある.今後日本でも,医療の質向上のため,幅広い領域かつ臨床・教育・研究の各方面で,PXの評価・活用を推進する必要がある.
原著
  • 田中 顯, 吉光 喜太郎, 山口 智子, 正宗 賢, 村垣 善浩
    2022 年 17 巻 4 号 p. 399-406
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
    目的:医療機器からの各種ラインは増加傾向にあり,それに伴う医療アクシデント・インシデント(以下A/Iと記す)も増加している.効果的な対策の一つは物理的にラインをなくすことであり,電線ラインのワイヤレス化がA/I抑制に貢献できると我々は予測した.しかし電線ラインのA/Iについて詳細な調査は渉猟しえた限り見当たらない.そこで今回我々は医療現場の電線ラインにおけるA/Iの原因や現状対策を調査した. 方法:事例調査は日本医療評価機構ホームページ医療事故情報収集等事業の事例検索から行った.次に検索結果の内容を発生場所,医療機器,電線の部位に分類し,A/I発生件数の分布形態とその理由を検討した.そして発生状況とその原因を考察した. 結果:2010~2019年における調査結果,事例検索可能なものは104,659件,そのうち電線ラインに係わる検索結果は401件であった.A/I発生場所は,病室が34%(135件)と最も多く,手術室が27%(109件),ICU12% (49件)と続き,3か所合計で73%であった.医療機器別では118機種と多くに分散していた.発生部位別では,「機器-電源」を繋ぐ電源ラインが182件(45%)と最も多かった.A/Iの発生状況は「不通電」「抜け」が多く,その原因は,「接続忘れ」「取り違い」など,66%がヒューマンエラーであった.その対策として92%が教育・周知や手順書見直しなど“人力による対策”であった. 結論:効果的な対策の一つはライン数を減らすことであり,電線ラインのワイヤレス化もA/I抑制の一助になると考えられた.
  • 堀江 直人, 狩俣 正雄, 宇田 淳
    2022 年 17 巻 4 号 p. 407-416
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
    目的:医療組織の人的課題に対するリテンション・マネジメントの方策として,働きがいのある「充実した医療組織モデル」を構築するため,働きやすさや働きがいに関する高評価を受けた医療組織経営者の意識段階を調査し,その意識段階が職員離職率や経営指標に好影響を及ぼすことを実証することを目的とした. 方法:働きやすさに関する第三者評価を受けた医療組織の経営責任者に対し,働きやすさ・働きがいに関する経営学的先行研究から作成した質問紙によるアンケートとインタビューを実施し,その回答を分析し,意識レベルを測定した.第三者評価としては,公益財団法人日本生産性本部ワーク・ライフ・バランス大賞受賞,またはイージェイネットの「ホスピレート」認証を採用した.また成果尺度としては,リテンション・マネジメントとして看護師離職率を,また経営指標として経常利益,医業利益率などを調査した. 結果:調査に応じた5病院はいずれも経営責任者の意識レベルが高かった.看護師離職率は全国平均を下回 り,また医業利益率など経営指標は,それぞれの病院の経営母体別平均より高い結果となった. 結論:働きやすさ・働きがいに関する経営責任者の意識段階が高いことは,リテンション・マネジメントや経営指標に良い影響を及ぼしており,「充実した医療組織モデル」は一定程度支持されたといえる.
報告
  • 菊田 裕規, 新田 雅彦, 濱田 武, 西原 雅美, 神吉 佐智子, 森田 美千代, 江口 博美, 上田 英一郎, 根尾 昌志, 勝間田 敬 ...
    2022 年 17 巻 4 号 p. 417-423
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
    要約:転倒転落は複数の要因により発生するが,中でも睡眠薬が起因となっている事例は少なくない.今回我々は,原疾患治療で入院中不眠を訴える患者に対して,転倒転落リスクの低い睡眠薬を用いた標準化フローを作成し,運用を開始したので報告する. 方法:院内の睡眠薬の処方状況を確認し,より安全な薬剤が選択できるように不眠時治療標準化フローを作成した.また,クリニカルパスや病棟定数配置薬も併せて調整を行い,より適切な治療が行えるように見直しを図った.運用後,睡眠薬治療にどのような影響を与えたのか処方状況を再度確認した. 結論:標準化フローの作成と院内整備によって不眠症治療が統一化されたことで,転倒転落の原因となり得る睡眠薬の処方は大幅に減少した.しかし運用開始間もないため,転倒転落との因果関係はまだ解析には至っていない.今後は連携先医療機関も含め,地域全体へ当院の運用,取り組みを拡大できるように計画を進めていく.
  • −新聞記事の内容分析を通して−
    喜田 雅彦, 平尾 百合子, 佐藤 淑子
    2022 年 17 巻 4 号 p. 424-430
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
    薬剤耐性(Antimicrobial Resistance:AMR)対策アクションプラン発表後のAMRに関する新聞記事の内容分析を行い,AMRに関する情報発信の現状を明らかにした. その結果,AMR関連の情報として【耐性菌の性質】【不適切な抗菌薬の使用による耐性菌の発生・増加】【抗菌薬使用による耐性化の機序】【耐性菌の拡散状況】【耐性菌による医療の弊害】【抗菌薬適正使用への取り組み】【抗菌薬使用に関する国民への啓発】【社会全体の意識改革と行動変容の必要性】【我が国のAMR対策の政策】【世界全体のAMR対策】【抗菌薬使用による環境汚染】の11カテゴリーに分類した. AMR関連の新聞記事には,情報源や統計データが明確に示されており,AMR対策アクションプランに基づいた情報が網羅的に取り上げられていた。今後も,情報源となる専門機関や医療者,研究者とメディアが相互に連携していくことが適切な情報発信を継続していくためにも必要である.
  • −単施設後向き観察研究−
    髙林 拓也, 奥村 将年, 森 一直, 牧野 悟士, 田中 千晶, 河村 佑太, 津下 和貴子
    2022 年 17 巻 4 号 p. 431-437
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
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