医療の質・安全学会誌
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14 巻, 1 号
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総説
  • 高橋 敬子, 中島 和江, 鈴木 敬一郎
    2019 年 14 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2019年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー
    医学生への医療安全教育は座学のみで修了するのではなく,他の臨床科目と同様に,臨床現場に知識を反映させるための実習を導入することで,さらなる学習効果が得られるものと考える.プログラムには実際の臨床での流れに近いシミュレーション教育や多職種連携教育を含むなどの工夫が必要で,実習を通じて学生は「患者安全の確保」という医師の使命を認識し,医療安全教育を生涯学習として捉える動機付けとなる可能性が高い. 我が国の医学部生教育に対する医療安全教育には,学生に対する学習プログラムのみでなく,指導者に対する指導要綱や学生評価基準などが存在せず,各大学での医学教育モデルコアカリキュラムに沿った工夫に任されている.患者安全を重視した学生医行為実施のためにも統一された医療安全教育プログラムが望まれる.
原著
  • 酒井 洋子, 土屋 八千代
    2019 年 14 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 2019年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー
    目的:勤務中の看護師の更年期障害による業務への影響が潜在する危険となること,及びセルフケアとの関係を明らかにし,安全な役割遂行のための提言を行う.
    方法:医療機関に勤務する,器質的疾患や現病歴のない40 ~ 60 歳の更年期症状の経験を有し,同意を得られた看護師11 名を対象に半構成面接を実施し,修正版グランデッド・セオリー・アプローチにて分析した. 結果:分析の結果,32 概念,14 サブカテゴリー,7 カテゴリーが生成された.更年期にある看護師は様々な[困惑する心身の不調]を抱えており,その症状が業務に影響を及ぼし[リスクの潜在化]となる.そのことがミスへの恐怖感や自信喪失という[役割遂行困難な心理状態]を引き起こし,[リスクの顕在化]につながっていた. 自分なりの[セルフケアによる心身の調整]を行っているが,リスクの潜在化と役割遂行困難な心理状態に職場の[協働体制の不備]が重なることでリスクの顕在化は増大する.この為,学びの機会や思いをオープンにできる[協働体制づくり]の必要性が要望として挙げられた.
    考察:先行調査では更年期にある看護師のインシデントの要因として“慣れ”が指摘されているが,今回の結果より更年期障害が一つの要因となることが示唆された.医療安全を担保するためには更年期障害を有する看護師の支援が不可欠となる.
報告
  • 明野 伸次, 畠山 誠, 藤本 紗樹子, 石川 幸司
    2019 年 14 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2019年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,全国の訪問看護師を対象に,摘便を安全に行うために必要な手技の実施状況と,その手技を実施しないと生ずる可能性がある有害事象に関する知識との関連を明らかにすることである.手技と知識の関連についてはχ二乗検定を実施した.
    結果,訪問看護師は,摘便を安全に行うために必要な手技を高い割合で実施しており,その手技を実施しないと生ずる可能性がある有害事象に関する知識も有していた.また,摘便の実施には医師の指示よりも自らの判断を重要視していた.実施率が最も低かった項目は,「キシロカインショックを防ぐため,指にはキシロカイン以外の潤滑剤を塗り行う」の87.6%であった.一方,全ての項目で手技と知識に有意な関連は見られなかった.以上から,摘便を安全に行うために必要な手技の実施率を高めるための方略として,キシロカインに変わる潤滑剤を準備し,使用しない環境を整える必要性が示唆された
  • 永井 弥生, 千明 賛子, 菅野 恭平, 斎藤 繁, 好本 裕平
    2019 年 14 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2019年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー
    群馬大学医学部附属病院の医療事故問題において,診療録に残された説明同意文書の内容が非常に乏しかったことは大きな問題であった.医療行為に際しては,患者に説明し記録に残すべき内容として求められるものがある.何を説明し記録に残すべきかを医療者にわかりやすく示し,必要な項目を含めた書式が確実に院内全体で使用できるよう,2014年10月より統一書式の説明文書承認体制を構築した.手術を中心として,1年後には480件,2年後675件,3年経過した2017年9月末現在で765件の文書を作成した.侵襲的医療行為に加え,化学療法や疾患の説明文書などについても作成が進んだ.さらに内容のブラッシュアップや患者に対してわかりやすさなどを問うアンケート調査を行っている.また,文書は他施設にも提供している.患者が十分な理解の上で自身の治療方針を決定するために,必要な情報をよりわかりやすく提供できるよう,さらなる課題に取り組む必要がある.
  • 八巻 知香子, 原田 敦史
    2019 年 14 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2019年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー
    目的:2016年に障害者差別解消法が施行され,医療機関でもこれまで以上に障害のある人への配慮が求められているが,医療機関での対応はいまだ不十分であることが推察される.よって,視覚障害者が医療機関を受診する際に求められる配慮について,啓発資料を作成し,眼科医領域の医療従事者からの評価を得た.
    方法:医療情報提供分野の研究者,視障害者支援の専門家12名の議論により,医療機関に視覚障害者が受診した際に医療機関が配慮すべき要点を抽出し,啓発パンフレット「医療従事者のための見えにくい方へのサポートガイド(以下,ガイド)」を作成した.眼科分野の医療者108名を対象にガイドの記載内容の有用性に関する調査を実施し,89名から回答を得た.
    結果:ガイドの記載内容は,眼科医や眼科看護師・医療職では,8割が「だいたい知っていた」と回答したが,眼科事務職では,7割が「ほとんど/全く知らなかった」と回答した.また作成したガイドは,眼科領域に限らず,眼科以外の看護師や医療職,事務職員に役立つとの回答が得られた.
    考察:本ガイドの記載内容は,視覚障害者との関わりの多いはずの眼科においても十分に知られていない知識であることが明らかになった.記載内容は,知りさえすれば容易に実施可能な内容であることから,ガイドの普及により,これまで対応されなかった合理的配慮について,幅広い機関での対応を促すことが可能であると考えられた.
学術集会報告
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