米国IOM (Institute of Medicine) の一連の報告書をきっかけに医療安全と医療の質に対する関心が高まるとともに, 医療職の育成と患者安全の確保にまつわる問題が鋭く意識されるようになった.
一方, 医学教育改革の世界的な流れは, わが国においては, コア・カリキュラム, OSCE (Objective Structured Clinical Examination) を含む「共用試験」, 更には卒後臨床研修の必修化という形で急速に進んでいる. 一方, コンピテンシー概念を軸とした問題解決型の教育も浸透しつつある中で, 患者安全は最重要の学習 (研修) 課題と位置付けられている.
しかし, 医療職, 特に医師の臨床研修の現場では, 今なお多くの患者安全上の課題が未解決のまま放置されており, 特に侵襲的手技の習得過程における患者安全の確保は従来の経験主義的な考えに支配されており, 最近になってようやくシミュレーターの活用が研修指導医や安全管理者の間で重視されるようになったところである.
本稿では, わが国の医学教育, 特に卒後臨床研修の現状を患者安全の観点から概説するとともに, 米国医科大学協会が2003年に編纂した報告書「患者安全と卒後臨床研修」の内容を紹介し, わが国の実情に即していくつかの提言を行った.
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