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福島 正子, 小坂 愛子
セッションID: P-158
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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<目的> n-3系脂肪酸であるEPAやDHAは循環器系の疾患予防や血小板凝集の低下等に有効であることが知られている。EPAやDHAは魚油に多く含まれる。一方,最近では調理済食品や電子レンジの普及が著しく市販の弁当や焼き魚を持ち帰り,再加熱して食することが多くなっている。そこで魚の再加熱が脂肪酸量や組成に及ぼす影響について検討した。
<方法> 魚はオーブン加熱用と電子レンジ再加熱用として,それぞれ80gづつ切り身にして用いた。 対照には生のものを用いた。オーブン加熱は切り身をアルミホイルで包んだのち, オーブンレンジで 230℃, 15 分間加熱した。再加熱試料は魚の切り身を加熱試料と同条件下で加熱し,4℃の冷蔵庫内で 24 時間保存した後ポリ塩化ビニリデン製フィルムで包み,500 W の電子レンジで 1 分間再加熱して用いた。脂質の抽出はクロロホルムメタノール混液を用いた。魚油のメチルエステル化はナトリウムメトキシド/メタノール法を用いて行った。内標準にはペンタデカン酸メチルエステルを用い, ガスクロマトグラフィー(GC)およびガスクロマトグラフィーマススペクトロメトリー(GC-MS)で脂肪酸組成を分析した。
<結果> 焼いたブリ及びサバの切り身をさらに電子レンジで再加熱すると脂質量が僅かに減少したが、脂肪酸組成に大きな影響は認められなかった。また生のブリ、サバは焼くことで脂肪酸量が著しく減少したが焼いたものを電子レンジで再加熱しても減少量はわずかだった。再加熱したブリ、サバからもDHAやEPAを量的には少なくなるものの十分摂取できることが示唆された。
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本 三保子, 内田 菜穂子, 渡 佳代子, 斉藤 まゆ美, 福本 由希
セッションID: P-159
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的これまでテアフラビンなどの紅茶成分が糖質消化酵素阻害活性を有することは明らかにされているが,紅茶の製造工程における糖質消化酵素阻害作用については十分な検討がなされていない.そこで,各製造工程の茶葉から抽出した紅茶の糖質消化酵素阻害作用を検討した.
方法2006年5月に静岡県島田市で摘採した葉(べにひかり)をオーソドックス製法で製造した紅茶を用いた.各工程で試料を採取し,萎凋葉,揉捻葉,発酵(1,2,3時間)葉とした.試料は粉砕後,熱水で1時間浸出・ろ過したもの(1g/100mL)を用いた.
In vitroにおける糖質消化酵素阻害活性はα-アミラーゼ阻害活性はヒト唾液希釈液を用いて,デンプン残量を測定した.また,α-グルコシターゼ阻害活性はラット小腸アセトン粉末(Sigma社製)から調製した酵素液を用いて,酵素反応により生成したグルコース量を測定した.総ポリフェノールの定量は(+)カテキンをスタンダードとして酒石酸鉄比色法により行った.
結果および考察α-アミラーゼ阻害活性は製造工程が進むに従って強くなり,発酵3時間葉が最も高値を示した.マルターゼおよびスクラーゼ阻害活性は生葉,萎凋葉で高値を示したが,その後工程が進むに従って低下した.ポリフェノール含量は生葉,萎凋葉で高値となり,その後工程が進むに従って減少した.以上の結果から,調製した紅茶は製造工程が進むに従ってα-アミラーゼ阻害活性は上昇し,α-グルコシターゼ阻害活性は低下することが示され,各糖質消化酵素に対する阻害活性成分は異なることが示唆された.また,α-グルコシターゼ阻害活性を示す成分はカテキン類である可能性が示唆された.
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岡田 悦政, 岡田 瑞恵
セッションID: P-160
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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【目的】植物エストロゲン(PHE)は、エストロゲンレセプター(ER)に結合することにより、生体内に存在するエストロゲン(E2)の作用を修飾、あるいは模倣し、生物学的応答を誘導する植物物質である。その構造は、生体内のE2と類似構造を示し、芳香族A環上にOH 基そして同一平面上のA環状に第2のOH基を有するジフェノール化合物である。これらの構造により、E2と同様なERへの結合を示し、動物やヒトに対して弱いアゴニスト/アンタゴニストとして作用する。昨年度の本大会において植物エストロゲンのCHO細胞 への増殖促進効果を報告し、その機構は、転写活性化遺伝子AP-1を構成する遺伝子タンパクc-Fos発現への影響を伴うものであることを見出しているが、その効果は、E2存在下でどのように変化するのかを今回検討したので、ここに報告する。
【方法】PHEは、ダイゼイン、ゲニステイン、ビオカニンA、ケルセチンを用い、PHE、E2サンプルはDMSO溶解した。CHO-K1細胞は、Health Science Research Resources Bank(HSRRB)から入手した。CHO細胞にPHE、E2あるいはPHE+E2を一定期間投与後、それぞれの細胞の核抽出をし、c-Fos transcription factor assay kit (Active Motif)により、それぞれのc-Fosを測定した。
【結果及び考察】結果は、それぞれ単独PHE投与の場合、用いたサンプルすべてのc-Fos発現が見られた。最大値は、ゲニステインで見られ、一方、E2を同時投与した場合は、その発現量は、低下し、その最大値は、ケルセチン+E2で記録した。E2による抑制効果が推察された。
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竹山 恵美子, 福島 正子
セッションID: P-161
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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<目的> ヒト結腸ガン由来の上皮細胞株Caco-2は単層培養すると,様々な小腸上皮細胞様の機能を発現し,腸管吸収モデルとして有用である。従来,栄養素は消化によりかなり低分子化したものが吸収されるとされていたが,近年はタイトジャンクションの部分等からかなり大きい分子までもが通過すると考えられるようになってきた。一方,茶・ワイン・果実・野菜類に多く含まれるポリフェノールは,生体内における抗酸化作用が認められ,注目されている。そこで,分子量の異なる各種ポリフェノールが小腸上皮細胞からどの程度吸収されるか検討した。
<方法> Caco-2細胞を,牛血清ならびにGPSを加えたMEM培地により37℃,CO
2濃度5%のインキュベーターで培養した。一定の細胞数となった後,これを12-wellカルチャーインサートに移し,一日おきに培地を交換しながら,2週間培養したものを実験に用いた。培地を取り除き,PBSで4回洗浄後,プレート側に希釈したPBS溶液を,インサート側に各種ポリフェノールを希釈PBS溶液でさらに希釈した液を添加後,2~4時間放置した。透過後のプレート液とインサート側に残った溶液を取り出し,これをFolin-Denis法により測定し,細胞透過量と残存量を測定した。
<結果> Caco-2細胞によるポリフェノールの透過量は,ポリフェノールの種類により異なり,ケルセチンとクロロゲン酸では,透過率が約3倍異なった。また,透過・吸収量には,濃度依存性が認められた。
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大塚 譲
セッションID: P-162
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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過酸化水素の添加により発現に変化の出る遺伝子の網羅的解析
○大塚 譲 (お茶大・生環研センター)
目的 酸化ストレスによりどのような反応が生じるのかはいまだ不明な点が多い。そこで様々な細胞が過酸化水素添加時にどのような遺伝子発現の変化をするかをDNAマイクロアレイを用いて網羅的な解析を行った。
方法 ヒト肝ガン由来のHepG2細胞とヒト正常繊維芽細胞HUC‐F2に過酸化水素を添加し、4時間培養後トータルRNAを抽出し、IVT法で遺伝子の増幅を行った後ABI社のヒトDNAマイクロアレイで分析した。さらに発現に変化の認められた遺伝子についてリアルタイムPCRにより確認した。
結果 HepG2細胞のほうがHUC-F2細胞より過酸化水素に対して抵抗性があった。HUC-F2細胞で過酸化水素添加により3倍以上または3分の1以下に発現が変化した遺伝子の数は約2000個であった。HepG2では約1500個であった。抗酸化剤を添加すると変化した遺伝子の発現が元に戻るものが認められた。
[文献] 1) Rieko Oba, Yasuko Kudo, Naomi Sato, Reiko Noda and Yuzuru Otsuka, “A new method of competitive reverse transcription - polymerase chain reaction with SYBR Gold staining for quantitative analysis of mRNA." Electrophoresis 27, 2865-2868 (2006)
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荒木 裕子
セッションID: P-163
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
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【目的】工芸茶は中国で考案されたお茶で、緑茶の中に多彩な乾燥花弁を包み込み糸で結束して作られ、浸出時の茶葉と開いた花の美しさや近年の健康ブームと相まって消費が伸びている。本研究では工芸茶の抗酸化能を明らかにするためにポリフェノール含量、DPPHラジカル補足活性を測定した。さらに工芸茶を有効に飲用するための浸出方法についても考察した。
【方法】試料は中国茶専門店で購入した工芸茶7種で、使用されている花弁の種類が異なるものを用いた。ラジカル補足活性はDPPH法を用い測定し、ポリフェノール量はFolin-Denis法でクロロゲン酸相当量として算出した。浸出条件の違いによる溶出固形分、ポリフェノール含量を測定した。
【結果】工芸茶の製造に用いられる花弁はカーネンション、キンモクセイ、芙蓉など色彩の鮮やかなものが多く、緑茶と花弁の構成比は10対1程度であった。DPPHラジカル補足活性を調べた結果、全ての工芸茶に高い抗酸化活性が示され、ポリフェノール含量とDPPHラジカル補足活性の間には有意に高い正相関が認められた。お茶の浸出条件を調べた結果、工芸茶は製造時に茶葉を硬く結束していることから、煎茶や紅茶に比べ抽出するのに時間を要した。熱湯で5分程度の浸漬では結束中心部まで充分に浸透せず、10分以上浸漬することが望ましいと考えられた。また、2煎目以降でも充分な成分の溶出がみられたことから、お湯を継ぎ足しながら飲用する方法も有効であると考えられた。
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安田 みどり, 松田 智佳
セッションID: P-164
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的 緑茶に含まれるカテキンは強い抗酸化活性を示し、様々な疾病の予防などに効果があることで知られている。しかしながら、茶の飲用は食事や薬からの鉄などの吸収を妨げるといわれている。これは、カテキンと金属イオンとが錯体を形成するためであると考えられている。本研究では、電気化学的手法を用いて、カテキンと金属イオンとの反応のメカニズムを解明することを目的とした。
方法 サイクリックボルタンメトリー(CV)および電気化学検出器(ECD、750mV)を装備したHPLCを用いて、カテキンの酸化電位および酸化ピーク面積値に与える金属イオン(Fe
2+、Fe
3+、Cu
2+)の影響を調べた。カテキンは、緑茶に含まれる主要なもの((-)-エピカテキン(EC)、(-)-エピガロカテキン(EGC)、(-)-エピカテキンガレート(ECG)、(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG))を使用した。
結果 CVの結果から、金属イオンは、カテキンの酸化電位に影響を与えることが明らかになった。特に、pH7以上において、EGCGの酸化ピークはFe
2+やCu
2+の添加によってほとんど消滅した。また、HPLCの結果、ECは金属イオンの影響をほとんど受けなかったが、他のカテキン、特にEGCGは金属イオンの添加により著しい濃度の減少が認められた。これは、pH7以上で起こりやすく、金属イオンの濃度に依存することがわかった。以上のことにより、EC以外のカテキンは、酸化活性部位において金属イオンと錯体を形成するか、もしくは金属イオンによりカテキンが酸化分解されることが示唆された。
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小竹 佐知子, 弘中 綾子, 阿久澤 良造
セッションID: P-165
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的 和牛しゃぶしゃぶ肉を模擬咀嚼させた時の溶出遊離アミノ酸量の変化について検討した。
方法 脂質含量の異なる3種の佐賀牛ロース肉を10cm×5cm×0.2cmに成型し、80℃にて20秒間加熱後、人工唾液とともにモデル咀嚼器にて30、60、90、120秒間模擬咀嚼した。取り出した肉塊にトリクロロ酢酸を添加後、遠心して除タンパクし、逆相高速液体クロマトグラフィーにより、遊離アミノ酸量を測定した(Tosho 8010、東ソー(株))。模擬咀嚼中の咀嚼圧変化(ELFシステム、ニッタ株式会社)と物性測定(RE-3305S、山電)を行った。試料について25人のパネリストにより官能検査を行った。
結果 試料の脂質含量は24%-A試料、41%-B試料、53.2%-C試料であり、タンパク質含量はそれぞれ18.9%、14.6%、9.4%であった。脂質が多くなるほど破断強度は0.83N、0.50N、0.34Nと減少した。咀嚼圧は試料A、B間では差が見られず、Cが最も小さく(A-0.33N、B-0.34N、C-0.27N)、いずれも咀嚼時間に伴い減少する傾向を示した。模擬咀嚼30秒で溶出遊離アミノ酸の80%が溶出し、120秒後では平衡に達していた。遊離アミノ酸溶出全量は試料Aが高い傾向であったが、予備実験で求めた分泌唾液量(A-3.04mL、B-2.45mL、C-1.89mL)を考慮した濃度は試料間の差が小さくなり、官能評価で味の強度に有意差が認められなかった内容と一致した結果となった。
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西山 一朗, 福田 哲生, 大田 忠親
セッションID: P-166
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目 的 キウイフルーツ等マタタビ属果実には,さまざまな品種・系統がある
1).これらの果実に含まれる糖質,糖アルコールならびに有機酸組成の品種間差異に関する報告は少ないため,検討を行った.
方 法 ニュージーランド系キウイフルーツ(
Actinidia deliciosa)5種,中国系キウイフルーツ(
A. chinensis)7種,シマサルナシ(
A. rufa)2種,サルナシ(
A. arguta)8種ならびに種間雑種3種の適熟期果実を実験に供した.各々の可食部より得られた抽出液を試料として,糖質および糖アルコールはアミノカラムを,また,有機酸はODSカラムを用いたHPLC法により定量した.
結 果 キウイフルーツおよびシマサルナシ果実のグルコース,フルクトース,スクロースおよび
myo-イノシトールの濃度は,それぞれ2.5~4.4 g/100g,2.5~4.2 g/100g,1.3~4.0 g/100g,および0~0.18 g/100gの範囲にあった.またサルナシでは,それぞれ0.72~1.6 g/100g,0.88~1.8 g/100g,4.1~7.8 g/100g,および0.58~0.98 g/100gの範囲にあり,キウイフルーツと比較してスクロースの割合が高く,また,
myo-イノシトール含量が顕著に高いことが示された.一方,キウイフルーツ果実に含まれるクエン酸,キナ酸およびリンゴ酸の濃度は,それぞれ0.84~1.29 g/100g,0.88~1.12 g/100gおよび0.14~0.39 mg/100gの範囲にあった.これと比較すると,シマサルナシ果実ではキナ酸の割合が高く,サルナシ果実ではキナ酸の割合がやや低い傾向を示した.
1) Nishiyama, I. (2007) Fruits of
Actinidia genus.
Adv. Food Nutr. Res. ,
52, 293-324.
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人見 英里, 黒瀬 有紀, 安藤 真美
セッションID: P-167
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
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【目的】グルタチオンs‐トランスフェラーゼ(GST)は第二相解毒代謝酵素の一種であり、生体の解毒代謝において重要な役割を果たしている酵素である。これまでにアブラナ科植物に含まれるイソチオシアネート類が肝臓のGSTを誘導することが報告されている。本研究では、山口県山口市徳地産のわさび及びその加工品について誘導活性の検索を行なった。
【方法】山口市徳地にて栽培されているわさびを生産者より購入し、部位毎に細断あるいはすりおろし後、3倍容の95%エタノールを加え4℃にて3日間抽出を行い、遠心分離後の上清をサンプルとした。GST活性はラット正常肝由来細胞RL34を用い、上記のエタノール抽出液を10ないし20μℓ/mlの濃度となるよう培地に投与し24時間後に細胞を収穫し、ジギトニンにて溶解した細胞上清を用いてCDNB法にて測定した。
【結果】1、わさびによるGST誘導能の季節変動:わさび根茎では、四季を通して高いGST誘導活性が見られ、特に顕著な季節変動の傾向は認められなかった。葉わさびでは、3月に収穫されたものに高い活性が認められた。2、根茎の冷凍保存によるGST誘導能の変化:すりおろし根茎は、冷凍保存2ヵ月後まで高い誘導活性を示した。根茎をすりおろした“おろしわさび”を冷凍した場合も、根茎を冷凍し冷凍状態のまますりおろした場合も、GST誘導能に大きな違いはなかった。3、加工されたわさびのGST誘導能:生のわさびだけでなく、醤油漬、味噌漬け、粕漬けもGST誘導能を示した。以上の結果、生のみならず、わさびを冷凍保存した場合や加工した場合でもGST誘導能は保持されることから、がん予防食品としてのわさびの有効性が再確認された。
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白井 睦子
セッションID: P-168
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的 カムカム
(Myrciaria dubia)は南米ペルー原産のフトモモ科の果実で,ビタミンC含量が高い植物である。しかしカムカムについての研究報告は少ない。本研究では,カムカム飲料の抗酸化活性を検討するために,ビタミンC含量,総ポリフェノール含量,DPPHラジカル捕捉能を測定した。
方法 試料はアマゾンカムカム(株)より入手した10%および60%カムカム飲料を用いた。比較試料として,緑茶,80%アセロラ飲料を用いた。ビタミンCの定量はヒドラジン比色法で測定した。ポリフェノールの定量はFolin-Denis法で測定し,標準物質に没食子酸を用いた。DPPHラジカル捕捉能の測定は0.5 mM DPPH (1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl, 和光純薬製)エタノール溶液に試料溶液を混和し,20分間反応(遮光下)させた後,517 nmにおける吸光度を測定した。システインを標準物質として用い,1mol のシステインが1mol のDPPHを捕捉するとして,DPPHラジカル捕捉能(μmol DPPH trapped/100ml juice)を算出した。
結果 ビタミンC含量は60%カムカム飲料>80%アセロラ飲料>10%カムカム飲料の順に高く,緑茶は低かった。総ポリフェノール含量は60%カムカム飲料>80%アセロラ飲料>10%カムカム飲料>緑茶の順に高かった。DPPHラジカル捕捉能は60%カムカム飲料>80%アセロラ飲料>緑茶>10%カムカム飲料の順に高かった。本研究の結果から60%カムカム飲料はビタミンCおよび総ポリフェノール含量が高く,強い抗酸化活性を有することが明らかとなった。
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奥村 奈央子, 松田 覚
セッションID: P-169
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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【目的】ウシ海綿化脳症(BSE)やクロイツフェルト・ヤコブ病のようなプリオン病は、異常型Prion蛋白質が原因と言われている。Prion蛋白質を発現させるprion遺伝子は、ほぼ全ての哺乳動物に保存されて存在し、中枢神経系や末梢神経組織を中心に発現が見られるが、その機能やプリオン病発病のメカニズムなど未解明な部分は多い。近年、prion遺伝子の近傍に、doppel遺伝子が発見され、両者の相同性は高い。Doppelについては、精巣やリンパ球に発現が認められているが、Prion同様、その機能やメカニズムなどはほとんど解明されていないのが現状である。そこで、本研究では、Doppelの機能について解析し、先行研究より指摘されているDoppelとapoptosisとの関連を含め、Doppelが細胞へ及ぼす影響を明らかにすることが目的である。【方法】GST-fusion法にて抗原を精製、rabbitを用いてのポリクロナール抗体作製を行った。細胞にDoppelを過剰発現させたサンプルを用いて抗体認識の有無を確認した。さらに目的のvectorへ挿入し、培養細胞などに形質転換した後、Western blotting法や光学顕微鏡にて発現を確認した。同様にして薬剤耐性マーカーによる発現細胞の選別を行い、クローン細胞を作製した。Short cut RNAi kitを用いて目的の遺伝子のsiRNAを作製した。遺伝子組換えしたDoppelの過剰発現細胞における、Doppelとapoptosisとの関連を、Western blotting法にて検討を行った。【結果】抗体の作製については、37kD付近に目的のバンドが見られ、Doppelを認識していることが確認できた。目的の遺伝子の細胞への導入により、蛋白質発現が確認できた。形質転換後の細胞の形状変化やWestern blottingなどを見ると、Doppelが細胞のapoptosisに影響を及ぼしていることが示唆されたが、apoptosisのカスケードのどの部位に働きかけているか、今後さらなる検討が必要である。
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高澤 まき子, 金濱 耕基
セッションID: P-170
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
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【目的】食生活の多様化に伴って高品質な農産物への要求が高まっている。野菜の食味には糖や有機酸の組成と含量が大きく影響される。トマトを栽培する場合、灌水量を抑えて土壌を乾燥させると果実の糖度は上昇するが、果実は小玉化し、果実のCa欠乏症状(尻腐れ果)を起こしやすい。一方、有機物を施用すると土壌の団粒構造が発達して根毛が多く発生するので、土壌を乾燥させても根が健全に働くことから、Ca欠乏症状を少なくすると考えられる。今日では、循環型農業を推進する一環として生ゴミを堆肥化してリサイクルする取り組みが始まっている。そこで、生ゴミ堆肥を有機質肥料として施用し、灌水量を少なくしてトマトを栽培した場合の生育、収量、品質について調べた。
【材料と方法】材料はトマト(品種:ホーム桃太郎)で、有機質肥料としては、仙台市清掃公社製生ゴミ堆肥(pH8.4)にピートモス(pH4.1)を2:1に混合して用いた。定植用土壌は砂壌土に化成肥料のみを加えた対照区と、砂壌土に生ゴミ堆肥を混合した生ゴミ堆肥区を設けた。栽培は、ビニルハウス内でプランターによる根域制限栽培を行い、灌水処理区として、250(乾燥区)、500(中湿区)、750ml/株(湿潤区)の3水準を設けた。果実成分は果肉部とゼリー部に分け、糖度、有機酸含量、ビタミンC含量、Ca含量を測定した。
【結果と考察】生ゴミ堆肥区の土壌はpH7.1~7.7と高かったが、対照区と同程度に草丈が伸張した。灌水量が少ないほど1果実重は小さく、糖度、有機酸含量、ビタミンC含量が高くなったが、その傾向は生ゴミ堆肥区で顕著であった。灌水量が少ないと果肉中のCa含量が低下して尻腐れ果が発生したが、生ゴミ堆肥区では尻腐れ果の発生が少なかった。このことから、生ゴミ堆肥を用いると、尻腐れ果の発生を少なくして高品質のトマト果実を生産できることが示された。
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川口 治子, 溝崎 久美子, 山口 直彦
セッションID: P-171
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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〔目的〕いわし,あじなど赤身魚は高度不飽和脂肪酸であるEPA,DHAなどを含み大変酸化を受け易いと思われる。また,その干物は乾燥工程あるいは流通過程などでは急速な酸化の進行が危惧される。そこで私達は市販干物(あじ,いわし及びししゃも)の酸化度を実態調査すると共に,酸化度が著しく高かったいわしについて試作試験を行ったので報告する。
〔方法〕1,干物は,それぞれ5点,豊橋及び岡崎市内で購入した。2,いわし(鮮魚)は岡崎市中央市場で購入した。3,いわし干物の試作は鮮魚をカテキン,トコフェロール及び味噌などの溶液に一定期間浸漬した後,乾燥した。4,酸化度は酢酸-イソオクタン法で過酸化物質(POV)を測定した。
〔結果〕1,市販干物のPOVをみると,あじでは,天日干しと表示してある1点のみ99と高い値を示したが,他4点の平均値は11.5±6.6であった。次いでいわしは5点共にPOVは50以上と高く,その平均値は111.9±58.7を示した。さらにししゃも5点の平均値は18.4±5.3であった。これらの結果からいわし干物の酸化度が著しく高いことを知った。いわしの干物の試作試験の結果,2,カテキン製剤(茶葉抽出物10%含有)0(対照区),0.1及び0.5%溶液にいわしを浸漬後,乾燥した干物を5℃,5日間保存し,そのPOVで比較すると,対照区:118,0.1%区:119及び0.5%区:69であった。3,トコフェロ-ル製剤(トコフェロール8.5%含有)についても同様に試験し,5日目のPOVで比較した結果,対照区:160,0.1%区:157及び0.5%:100であった。4,豆味噌の効力を測定した結果,7日目のPOVは対照区:217,1%区:76.6,3%区:79.0及び6%区85.6であった。5,さらに,カテキン及びトコフェロール製剤と豆味噌との併用試験などを行っている。
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安藤 真美, 安藤 正史, 山根 昭彦
セッションID: P-172
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
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【目的】発表者らは,クルマエビの保存における氷温貯蔵の有効性について報告した
1)。この際,光学顕微鏡観察により,冷蔵個体では細胞間の結合力が2日目以降に低下したのに対し,氷温ではそのような変化は生じないことが明らかとなった。そこで本研究ではこの理由を明らかにするため,クルマエビ筋肉の細胞間領域を中心に透過型電子顕微鏡により観察した。
【方法】活けクルマエビを業者より購入し,研究室に搬入後断頭即殺した。保存温度は-1℃,5℃,10℃とした。貯蔵0・1・3日においてカミソリの刃で筋肉を細切し,5%グルタルアルデヒドにより固定後,エポキシ樹脂に包埋し,透過型電子顕微鏡により観察した。
【結果】即殺時には細胞間に太さ約12nmのコラーゲン繊維が高密度に認められた。その後,1・3日経過しても氷温区においてはコラーゲン繊維の構造に変化は認められなかった。一方,冷蔵区では3日目において変化が生じ,筋細胞間の所々においてコラーゲンらしき物体は認められるものの,即殺時のような明瞭な繊維構造を有してはいなかった。また,筋細胞間の隙間として観察された領域においては,その中央付近にコラーゲン繊維が見られ,それらと筋細胞との間に大きな空間が存在した。なお,10℃貯蔵区は腐敗臭のため食用にはできないが,構造的に大きな破壊は多くは認められなかった。
以上の結果から,光学顕微鏡観察で認められる筋細胞間の隙間は,コラーゲン繊維の構造の崩壊,あるいはコラーゲン繊維と筋細胞との結合力の低下により生ずることが明らかとなった。今回試みた氷温貯蔵はこれらの変化の抑制に有効であり,その他食材への応用が期待される。
1)Ando
et al.,
Food Sci. Technol. Res.,
10, 25-31, 2004
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望月 美也子, 重村 隼人, 長谷川 昇
セッションID: P-173
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
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目的
炎症性腸疾患は、腸粘膜に慢性の炎症または潰瘍を引き起こす難治性特定疾患の総称であり、過剰な過酸化物の生成により発症することが明らかとなっている。一方、シクンシ科植物であるテルミナリアのその抽出物質であるセリコサイドは、
Terminalia sericeaの樹皮および根に由来し、アフリカや東南アジアでは、抗酸化作用を持つハーブとして民間療法に用いられている。
そこで、本研究は、2,4,6-trinitrobenzene sulfonic acid(TNBS)によって誘発される、炎症性腸疾患動物モデルに対するセリコサイドの炎症性腸疾患保護効果を確かめるために行われた。
方法
雄SDラット(165±10g)を用い、セリコサイド(30mg/kg)を10日間連続的に経口投与した。その後、炎症性腸疾患を誘発させるためTNBS50%エタノール水溶液(120mg/Kg)を直腸内投与した。12時間後、大腸を採取し、炎症部位のダメージスコア、好中球浸潤の指標であるmyeloperoxidase(MPO)活性、superoxide dismutase(SOD)活性を測定した。
結果・考察
本研究の結果、TNBSによる潰瘍、出血を伴う炎症性大腸炎の症状と、MPO活性の有意な増加が見られた。この際、あらかじめセリコサイドを投与しておくと、粘膜肥厚と出血が抑えられ、白血球の浸潤も抑制された。
以上の結果を総合すると、セリコサイドはTNBSによって惹起された炎症性腸疾患の粘膜保護に有効であることが明らかとなった。
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木下 朋美
セッションID: P-174
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的 近年の国内における緑茶購買動向は,購入量の減少および購入単価の低下の傾向にある。そこで新需要創生のため,従来の緑茶とは異なる新しい香味を持った緑茶の生産・販売が求められている。その一つの方法として,新品種の導入が挙げられる。しかし新品種を流通業者が買う見込みがなければ,生産者は新品種を導入するという投資はできないのが現状であり,結果として消費者が新品種を手にする機会は依然として増加しない。そこで本研究では,新品種が消費者に受け入れられるのかを明らかにすることを目的とし,新品種の茶の官能評価を行うこととした。
方法 官能評価に用いる品種は,2002年に品種登録された‘そうふう’とした。この’そうふう’は香気成分にアントラニル酸メチルを含み,従来の緑茶にはない甘い花香を品質上の特徴とする。そして緑茶に対する関心が高いと想定される消費者に,現在最も生産量の多い品種である‘やぶきた’の緑茶と‘そうふう’の緑茶について官能評価を行った。また,調査対象者の緑茶の飲用状況や緑茶に対する嗜好性を明らかにするため,質問紙によるアンケート調査も実施した。
結果 質問紙によるアンケート調査により,対象者は,緑茶に対する関心が高いこと,緑茶の利用程度が高いことなどが明らかとなった。官能評価を行ったところ,‘そうふう’に対する総合評価は,「とてもよい」が21%,「よい」が50%,「どちらでもない」が27%,「悪い」が1%未満であった。また‘そうふう’の特徴である香りに対する評価は,「とてもよい」が16%,「よい」が60%,「どちらでもない」が22%,「悪い」が1%未満であった。以上より,従来の緑茶消費者も‘そうふう’に対する嗜好性が高いことが示唆された。
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井上 和子, 山田 恒代
セッションID: P-175
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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(目的)被調査者に負担をかけずに食事摂取量を把握できる食事調査法のひとつに“目測り法”がある。目測り法を用いての食事調査は、調査者の食品の重量をより正確に推測する能力が問われることとなる。食品重量推測能力を高める訓練の方法として、自己の食事記録をつけることを実施し、それによって、推測能力の向上が得られたかどうかを検討した。
(対象)管理栄養士、栄養士養成校の2.3年生の女性29名である。年齢は、19~35歳である。
(方法)2週間の自己の食事を記録することを訓練法として実施した。食事記録実施直前に食品推測の前テスト(Pre-test)を行い、1週間後(Post-test1)と2週間後(Post-test2)に同様のテストを行った。食品は16種類で、テストには3回とも同じ食品を用いた。
(結果)前テスト(Pre-test)を行い、1週間後(Post-test1)と2週間後(Post-test2)と平均としての推測誤差は減少した。個人の推測誤差の原因は食品の種類にもよる。個人の推測誤差は訓練後、的確に推測できるものもいれば、数倍あるいは数分の一の誤差を出すものもいる。個人特有の誤差もあり、食品を軽く推測する傾向のあるものは訓練後も軽く推測する傾向にあった。また、誤差を大きく出すものは食品重量を軽く推測する傾向にあった。
(文献)井上和子、西念幸江、石川元康;二葉栄養専門学校研究集録 Vol 2,観察法による食品重量の推測(第2報) p91~104(2004)
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小竹 佐知子, 石田 尚子, 三浦 孝之, 阿久澤 良造
セッションID: P-176
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的 挽肉製品の製造に欠かせない組織化大豆タンパク質が、挽肉製品であるハンバーグ咀嚼中の放散香気にどのような影響を及ぼすか咀嚼モデル器を用いて検討した。
方法 脂質含量の異なる2種の佐賀牛モモ挽肉(A-20.1%およびB-34.5%)に組織化大豆タンパク質(フジニックエース100、不二製油株式会社)を20%添加してハンバーグを調製し(それぞれ、AS試料およびBS試料)、無添加試料を対照にして咀嚼モデル器による模擬咀嚼中(37℃、窒素ガス流速100mL/min、15分間咀嚼)の放散香気をGC-MS測定(6890GC-59 73MSD、Agilent社)した。模擬咀嚼中の咀嚼圧(ELF、ニッタ株式会社)、物性測定(RE-3305S、山電)および官能検査(7段階評点法、分散分析)を行った。
結果 調製したハンバーグの破断強度は3.5N(A)、3.9N(B)、5.2N(AS)、5.3N(BS)と、大豆タンパク質添加により増加した。官能検査の結果、ASおよびBS試料はそれぞれAおよびB試料に比べて有意に粒度感があり、多汁性が少なく、香気強度が低かった(p<0.01)。模擬咀嚼中(咀嚼圧0.2N~0.3N)はA試料に比べてB試料の方が崩壊が早く、また脂質分解物であるhexanalをはじめとするアルデヒド類の放散香気量が多かった。大豆添加により脂質含量にかかわらず放散香気量は減少した。大豆タンパク質添加試料の方が破断強度が高いため模擬咀嚼中の崩壊程度が少ないことが一因と考えられ、またタンパク質による香気成分の吸着も示唆された。
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植田 和美, 渡辺 文雄
セッションID: P-177
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的 ビタミンB
12は,畜肉類,魚介類,牛乳等主に動物性食品が供給源とされる.平成16年の国民健康・栄養調査では,男性平均7.6μg/日,女性平均6.4μg/日を摂取しており,推奨量2.4μg/日の3倍前後となる.通常はビタミンB
12欠乏症になることは希であるが,50歳以上の中高年から胃酸分泌の減少が始まり,発症リスクが高まることが報告されている.また,ビタミンB
12の調理損失に関する知見は非常に少ない.そこで,中高年者のビタミンB
12供給源となる食品を特定し,加熱調理による損失率を明らかにすることを目的とした.
方法 中高年者を対象として,2005年11月下旬~12月初旬に半定量的食物摂取頻度調査を実施し,ビタミンB
12供給源となる食品の特定を行なった.そして,供給源となる食品の中から鶏卵および牛乳を用い,基本的な調理操作別(蒸し,焼く,煮る,ただし牛乳においては直火加熱のみ),加熱時間経過毎(3分,5分,7分経過)のビタミンB
12含量をバイオアッセイ法で測定し,損失率を計算した.
結果 調査結果より,ビタミンB
12摂取量は平均10.8μg/日となり,摂取量と年齢との間に相関(5%有意)が見られた.摂取頻度では,鶏卵,牛乳がともに20.1回/月と著しく多く,魚介類は平均1~3回/月程度と低かった.畜肉類よりも魚介類の寄与率が高く,それ以外では鶏卵,牛乳の寄与率が高かった.また,加熱調理によるビタミンB
12の損失率では,鶏卵は調理方法に関係なく加熱開始7分後には未加熱時に比べ40%前後のビタミンB
12の損失が見られた.しかし,牛乳においては,加熱7分経過ではほとんど損失が見られなかった.
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塩谷 奈緒子, 五十嵐 由利子, 萬羽 郁子
セッションID: P-201
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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【目的】調理時に発生する調理臭は隣接空間に拡散し、居住性を左右することが懸念されるが、調理臭の拡散やその主観評価には、室内の温湿度環境も影響すると推測される。そこで、本研究では湿度環境の主観的評価への影響について検討することを目的とした。
【方法】実験室の熱環境は、温度24~25℃とし、湿度についてはRH50%を基準に、RH70%を高湿度環境、RH30%を低湿度環境とした。臭気については、菜種油の加熱時に発生する油臭の主成分である2,4デカジエナールを希釈し、0.5~3までの6つの異なる強度の基準臭を作成し、これを実験室において無作為に選び開栓し、その強度の主観評価を被験者4名により行った。
【結果】高湿度・低湿度の両環境における臭気強度の正当率が基準としたRH50%における主観評価と異なっていたことから、湿度環境が主観評価に何らかの影響を与えていると推測された。低湿度環境では全ての強度の基準臭において、弱めに評価する傾向がみられたが、高湿度環境においては、低濃度の基準臭を若干強めに評価する傾向がみられた。また、高濃度の基準臭については、高湿度環境の方がより臭気を弱めに評価するケースが多くみられた。
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長塚 路子, 高松 舞子, 長谷川 義博, 水野谷 博英
セッションID: P-202
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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【目的】住空間での気になるニオイとして、調理に関するニオイが挙げられる。近年の住空間はキッチンのオープン化により、家中にニオイが拡散することが考えられる。そこで、住空間で調理臭がどのように拡散するか検討を行った。
【方法】3DK(60m
2)の一般住宅において、リビング中央でホットプレートを用いて調理した時に発生するニオイの拡散性を調べた。対象臭気は、モデル香料(ノナナール、リナロール、リモネン)および味付き牛肉(丸大食品(株)製)をホットプレートで加熱して発生させた。ホットプレート近傍や玄関等、住空間の数箇所でニオイの捕集を行い、GC-MSにより各測定場所ごとのニオイ成分の解析を行った。
【結果】モデル香料は、加熱3分後ではホットプレート周辺で多く観察されたが、10分後から住空間全体で均一に拡散し始め、1日後には玄関を含む家全体にほぼ均一になることが観察された。一方、味付き牛肉を加熱した場合は、加熱直後ではリビングで焼肉臭の成分が多く観察された。リビング、廊下、玄関の順に発生源から離れるほど焼肉臭成分の検出量は少なくなるが、玄関でも十分に焼肉臭成分は観察された。1日後でもリビング、廊下、玄関いずれの場所においても焼肉臭は十分に観察された。その分布傾向は焼肉直後とあまり変わらず、リビングでは焼肉時に飛散した油から臭気成分が発生し続けていると考えられた。
ニオイの消臭対策としては、発生源近傍の対処として、飛散した油を除去することは勿論であるが、家全体、特に部屋の角や玄関など空気の循環が少ない場所に拡散した臭気成分の対処も必要と考えられる。
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後藤 和貴子, 浦野 千代美, 磯田 憲生, 久保 博子
セッションID: P-203
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的:高温多湿な夏期において快適な睡眠環境を得ることは非常に困難であり、通風などの工夫がされている。しかし近年防犯の意識が高まり、窓を施錠しエアコンを使用する例が増えている。本研究は実空間において窓開閉、エアコン使用による条件を設定し、夏期の温熱環境が睡眠前後・睡眠中の生理心理反応に及ぼす影響についての検討を行う事を目的とする。
方法:被験者は健康な女子大学生9名を起用し、奈良女子大学学生寮にて終夜睡眠実験を行った。条件は「エアコン3時間タイマー」、「エアコン連続使用」、「窓閉鎖」、「窓開放(扇風機:弱)」の4条件とし、エアコンを使用した条件では設定温度27℃、風速自動で運転し、実験中の室内環境、脳波、直腸温、皮膚温などの生理反応及びOSA睡眠調査、主観的温熱申告などの心理反応を測定した。
結果:室温はエアコンの運転状況により大きく影響を受け、「エアコン3時間タイマー」ではタイマー運転中は26℃程度であったが終了後には30℃近くまで上昇した。「エアコン連続使用」では終夜26℃程度でほぼ一定であったのに対し、「窓閉鎖」では終夜30℃程度で上昇傾向がみられた。室温は寝床および衣服内環境に大きく影響しており、「エアコン連続使用」及び「窓開放」と、「窓閉鎖」との間に大きな差がみられた。また室温は生理反応にも影響し、皮膚温、直腸温、体動量などに有意差がみられた。しかし、「エアコン連続使用」条件では主観評価は良いものの若干の冷えが見られ、人体への影響が考えられること、「窓開放」条件では室温が29℃前後にも関わらず、最大0.4m/s程度の風速があり、主観評価も悪くないことなどから、この結果を踏まえ、今後さらに快適な寝室環境の条件を検討していく必要がある。
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矢島 和美, 村田 里美, 山岸 弘, 杉山 典久, 米山 雄二
セッションID: P-204
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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【目的】 台所の排水口などに発生するヌメリは手で触りたくない汚れであり、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする塩素系洗浄剤による掃除が一般に行われている。しかし、塩素系洗浄剤は特有の臭気を有するため、短時間で掃除を済ませることが望まれている。そこで、ヌメリを発生する原因菌とヌメリの構成成分を把握し、ヌメリの効率的な洗浄について検討した。
【方法】 一般の5家庭の台所排水口からヌメリを採取し、TSA培地で培養し菌種を同定した。アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液に滴下して調整したアルギン酸カルシウムゲルをヌメリモデルとし、次亜塩素酸ナトリウムと添加剤をこのヌメリモデルに作用させたときの分解状態を観察し、目視判定により、洗浄試験を実施した。
【結果】 採取したヌメリの菌種を同定した結果、、
Pseudomonas属が最も多く存在していることが分かった。この、
Pseudomonas属の菌と食品を接触させたところヌメリを発生したことから、ヌメリの原因菌は、
Pseudomonas属であると推定した。また、
Pseudomonas属は細胞外多糖としてアルギン酸を産出すると報告されている
1)ことから、ナフトレゾルシン呈色試験法によるヌメリ中のアルギン酸の同定を試みた結果、ヌメリにアルギン酸が存在することが確認できた。アルギン酸を成分とするヌメリモデルを用いた洗浄試験の結果、次亜塩素酸ナトリウムにアルカリ金属炭酸塩を添加することにより、アルギン酸の分解を促進することが分かり、実際にヌメリに対する洗浄試験においても素早い洗浄効果が確認できた。
文献1)森川正章,科学と生物,vol.41,No.1,(2003)
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咏 梅, 中山 徹, 今井 範子, 野村 理恵, 雅 如
セッションID: P-205
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
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私の故郷のアラシャン盟は内モンゴルの中で一番辺鄙な地理に位置され、砂漠化が一番厳重な地域でもある。アラシャン盟では近年塩や石炭の開発が進み、遠方からの漢民族の労働者が集まり、工業化になりつつである。政府からこれら要因により、牧民に対して、禁牧政策を行い、生業である牧業が禁止されている。この状況の中、牧民たちは今までに経験していない農業を営むあるいは都市に移住し、他の生業を探さなければならない現状である。しかし、従来の生活様態が急変化することに対して、牧民の生活レベルが悪化し、また、それに従い、教育状況も悪化する傾向が予想される。
そこで、私の研究では、アラシャン盟の牧民が目の前の現状をどう考えているのか、これから農業を営むのか、商売をするのか、それとも失業に堕ちるのかこれら生活形態による、モンゴル民族の住居・伝統的生活様態・教育状況がどのように変貌し、また、どの程度引き続がれているかを把握する。そして、モンゴル民族が引き続ごうとしている伝統的な生活様態とはなにか、それを可能とする物的・外的諸条件とはなにかを検討し、近代化・都市化が進む中で、少数民族としての生活上のアイデンティティを保障する方策を検討する。
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中国内モンゴル自治区シリンゴル盟を事例として
野村 理恵, 中山 徹, 今井 範子, ユン メイ, ヤ ル
セッションID: P-206
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
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(目的)中国・内モンゴル自治区ではモンゴル民族が遊牧生活を営み、独自の生活様式を確立してきた地域である。しかし、17世紀初頭、当時の中国王朝である清朝直属の統治下にはいり、独立を果たした現在のモンゴル国とは異なり、その後自治区成立を経て中華人民共和国の一行政区としての道を歩んでいる。このような背景により内モンゴル自治区におけるモンゴル民族は、中国政府の影響を大いに受けており、モンゴル民族としての生活様態は急速に変化しつつある。本研究では、古くからモンゴル民族の生業である牧畜業を営んでいる家庭において、定住化による生活変化及び居住空間の変化を明らかにし、その要因を考察する。
(方法) 調査地は、内モンゴル自治区中部に位置するシリンゴル盟である。草原地域において牧畜を生業とする家庭で住居の実測調査、生活様態の観察記録、ヒアリング調査を行った。調査期間は2007年2月15日~2月22日である。
(結果) 調査対象地で確認できた定住による主な生活変化として、1.土造り固定家屋からレンガ造り固定家屋の普及、2.インフラ整備による耐久消費財の導入、3.牧畜業の縮小があげられる。調査対象地域では、8世帯中約半数で土造りとレンガ造りの家屋を併用している。ゲルを使用して放牧にでかけるということもなく、ゲルの所有率も低い。また、2005年に電気、2006年に水道が整備され、テレビや脱水機、ソーラー湯沸し器等の消費財が普及している。牧畜業の縮小は、中国政府の実施する休牧政策により放牧できる期間が短くなったこと、また家族の人数が増えるに従い割り当てられた土地が狭くなっていることも要因として考えられる。
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-住宅の和室減少経過の地域比較-
高橋 洋子, 五十嵐 由利子
セッションID: P-207
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
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目的 衣食住の変遷については、従来、衣・食・住という各々の分野において質的な研究が数多く行われてきた。そこで、洋風化という共通の尺度を用いて、変遷を数量化し、衣食住の関連性や地域差等を考察する試みに着手した。本報では、住宅の洋風化の進行経過について、首都圏と地方を比較した事例を報告する。
方法 新聞(朝日・新潟日報)縮刷版
注)に掲載されている住宅広告のうち、平面図付きの新築住宅のものを資料とした。1971年('71)から2001年('01)まで10年毎の6月を中心に、戸建住宅・集合住宅ともサンプリングを行った。サンプル数は首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)が271戸、新潟県が326戸であった。1戸毎に洋室数(LDKのLは洋室1室とした)と和室数を数え、総室数に占める和室数の割合(:和室率)を算出した。
注)マイクロフィルムや現物製本も含む。
結果 (1)サンプリングの4時点における和室率は、4群〔新潟戸建・新潟集合・首都圏戸建・首都圏集合〕の順に、'71〔84%・84%・66%・58%〕、'81〔75%・63%・41%・30%〕、'91〔34%・27%・27%・21%〕、'01〔19%・20%・18%・11%〕となり、4群とも10年毎に和室率が減少していた。'71から'81の間に、特に首都圏の2群で和室率が減少し、'81の新潟と首都圏の差は4時点中最大であった。'81から'91の間に、新潟の2群で急激に和室率が減少し、'91の新潟と首都圏の差は小さかった。'91から'01の間、4群とも和室率は引き続き減少し、4群間の差は更に小さくなった。(2)1戸当たりの和室数を(1)と同様に示すと、'71〔3.4・2.3・2.3・1.6〕、'81〔3.4・1.3・2.0・1.1〕、'91〔1.7・0.9・1.4・0.8〕、'01〔0.9・0.8・0.9・0.4〕であった。
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名古屋市を事例として
櫻井 のり子, 谷本 道子, 佐藤 美樹, 中山 智草, 杉山 尚美
セッションID: P-208
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
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目的 戦後から高度経済成長期を通して,さまざまな手法で住宅供給がはかられた.公的には,住宅金融公庫,公営住宅,公団住宅が大量に計画的に供給され,同時に大量の民間供給も行われ,住宅戸数が世帯数を上回るまでに成長した.そこから,住宅需要が量から質へ転換したとされ,公的供給,民間供給ともに,次第に質的水準の高い住宅が供給されるようになってきた.しかし,近年の社会経済情勢の中で,世帯規模の縮小,高齢・少子社会,ライフスタイルの個性化,都心回帰,安全の追求といった状況の進行と同時に,公的財源支出の制限と,公共政策としての住宅供給の縮小が進行する状況になってきている.今後ますます民間依存の傾向が強くなると予想され,民間賃貸住宅の規模,家賃等をはじめとする水準の分析が急務である.
方法 本稿では,名古屋市における新規民間賃貸住宅のうち,1999年(平成11年)1月から2005年(平成17年)12月までの7年間に不動産仲介会社M社およびN社が取り扱った物件(計4098棟,45115戸)を対象に,家賃や水準を分析した.
結果 名古屋市の新規供給戸数は近年減少傾向にあるが,それを住戸タイプ別にみると,7年間で1R.1Kは減少傾向,1LDK.2DKは増加傾向,2LDK.3DKは変化が少ない傾向にあることがみられた.また,1R.1Kは44.6%,1DK.2Kは10.2%.1LDK.2DKは17.0%,2LDK.3DKは21.0%,3LDK.4DKは6.4%,4LDK以上は0.7%であった.1R.1K,1LDK.2DK,2LDK.3DKを合わせると82.6%を占めることから,ここではこれらの住戸タイプを中心に検討し,世帯型と住戸タイプとの対応関係等を明らかにした.
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天野 圭子, 中山 徹
セッションID: P-209
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
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目的 近年、我が国の自治体政策では多様な分野において公から民への転換がみられつつあるが、交通政策、例えば市営交通事業等に関してもこういった検討は例外ではない。一方、隣国韓国の大都市では従来民間が行ってきた公共交通事業を準公営化とする交通政策改革の動きが現れている。そこで、本研究では韓国内で2007年2月に市内バスの準公営化が導入された釜山広域市での導入経過とその後の展開に関して把握することを目的とする。
方法 公共交通の準公営化を図った韓国釜山広域市において政策の概要・効果について把握。調査時期は2006年10月、2007年3月である。調査方法は市内の交通政策に大きく関与している機関でのヒアリングによるものとし、釜山市交通局、市内バス・マウルバス各運送事業組合で実施。また、釜山広域市大衆交通市民公聴会への参加による現状問題と制度把握も行った。
結果 釜山広域市では地下鉄の準公営化はすでに実施されており、今回2007年2月の変更は市内バスを対象としたものである。まず制度実施による変更点としては、1)収入管理2)乗換料金体系3)重複路線の調整4)交通重要管理が挙げられる。これにより、交通混雑の緩和、公共交通利用の促進等の効果が期待できるものと釜山広域市側では考えている。また、完全公営化ではなく、準公営化とした理由としてはバスの車庫を全て市が用意しなければならない、運転手の公務員化等の問題により赤字増加が懸念されたためである。今後の課題としては今回の改革対象として含まれなかったマウルバス1)についての収入構造問題等もあげられる。
[注記]1)マウルバス:主に市の郊外域を走る小型バス。日本のコミュニティバスと似た側面も持つ。
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会田 さゆり, 山本 直子
セッションID: P-301
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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【目的】近年、「食」をめぐる様々な環境の変化に伴い、多岐に亘る分野への対応の必要性から栄養士の資質向上が叫ばれている。日本栄養士会ではその対策に加え、あるべき栄養士・管理栄養士像の確立を目的とした栄養士と管理栄養士の「業務のすみ分け」等の検討がなされている。そこで今回、栄養士および管理栄養士養成施設で学ぶ学生を対象に、栄養士という専門職の意識の現状把握を目的に調査を行ったので報告する。
【方法】2006年12月に、栄養士養成施設であるH短大の2年次生および、管理栄養士養成施設であるS大の2年次生に対して、アンケート調査を集合法による調査手法を用いて自己記述方式で実施しクロス集計・解析を行った。
【結果】H短大において、入学時(前)栄養士になりたいと思っていた学生は、思っていなかった学生と比較し有意に入学時(前)、栄養士の仕事内容の知識があった(p<0.01)。しかしS大において、差は生じなかった。栄養士としての適性があるかの質問に対して、S大では有意に入学時(前)栄養士になりたいと思っていた学生の方があると答えた(p<0.05)が、H短大においては、差がなかった。H短大とS大の入学時(前)に栄養士になりたいと思っていた学生との比較では、栄養士の報酬の妥当性についての質問に対しH短大の方が有意に不当である(p<0.001)と答えた。調理の知識と技術の必要性については、両学とも100%の学生が必要だと思っていた。しかし、その修得については、S大が有意にしていないとの回答(p<0.001)であった。現在も栄養士として就職したいと思っているかの質問に対して、S大は、有意に思っていると回答した(p<0.001)。さらに、栄養士として就職したいと思っている学生に希望職域を尋ねたところH短大が有意に医療関連を希望していた(p<0.001)。
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-性差を中心に-
黒川 衣代
セッションID: P-302
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的 近年,夫婦間で起こる暴力はドメスティック・バイオレンス(DV)として社会的に認知されるようになり,DVに関する調査は数多く行われている.しかし,結婚していない親密な若い男女間での暴力(デートDV)についてはほとんど調査がない.そこで本研究は,大学生のデートDVに対する意識とデートDV経験の実態について,性差に注目して明らかにすることを目的とした.
方法 東北地方の2つの国立大学の学生(386名)を調査対象とし,2004年11,12月に質問紙による調査を行った.主な調査内容は,デートDVについての理解度チェックを兼ねているデートDVの意識調査テスト15項目と具体的なデートDV行動の経験有無を聞いた5項目である.それぞれの項目について,統計的検定により男女差があるか調べた.また,デートDVの被害・加害の有無によりグループ化し,デートDV理解度の比較を行った.
方法 主な知見は以下のとおりである.(1)デートDV意識調査15項目の誤答率は平均3割強,項目によっては約7割の学生がデートDVを正しく理解していなかった.(2)統計的有意差が認められたのは15項目中6項目で,女性より男性のデートDV理解度が低かった.(3)約2割の学生にデートDV経験がみられ,必ずしも男性が一方的に加害者というわけではなく,女性がより多く行っているDV行為があった.(4)デートDV経験の有無により理解度を比較すると,加害グループの方が理解度の高い項目があることから,自分の行為がデートDVと気づかずに行っていると考えられ,デートDV学習の必要性が認められた.
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小野寺 泰子, 佐々木 栄一
セッションID: P-303
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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【目的】演者等は、これまで新しい機能性繊維材料の実験教材開発について報告してきた
1,2)。本研究ではポリエステルを改良した吸水・速乾性繊維の実験教材開発を目途として、その基礎的な知見を得るための検討を行った。その検討結果を踏まえて小学校の家庭科で実施可能な実験教材の開発を試みた。
【方法】吸水性改良ポリエステルとしてUFO型断面繊維や中空多孔構造繊維を取り上げて汎用天然繊維や汎用化学繊維と比較実験を行った。吸水性は吸い上げ法による吸水速度を測定した。乾燥性は最大吸水量からおよび脱水操作後からの乾燥時間測定を行った。また、各繊維の乾燥速度曲線を求め異形断面繊維の特徴を検討した。その結果に基づいて繊維の速乾性を目測できる簡単な実験装置を試作した。
【結果】最大吸水量からの乾燥時間と脱水操作後の乾燥時間の比較から、UFO型断面繊維は高い吸水性と短い乾燥時間を示したが、中空多孔構造繊も高い吸水性を示すが乾燥時間は長く綿に近い挙動をしめした。乾燥速度曲線から求めた恒率乾燥速度と恒率乾燥時間、減率乾燥時間と減率乾燥速度の変化挙動および限界含水率からの値からもUFO型断面繊維は吸水性と速乾性を示したが、中空多孔構造繊維は吸水性を有するが速乾性を有するとは言えないことが明らかになった。これらの実験結果を基に、乾燥の速さを観察できる梃子の原理を利用した簡単な天秤を試作し、予備実験を行い良好な結果が得られた。
参考文献1) 川又,佐々木; 東北生活文化大学三島学園女子短期大学紀要No.33, p.29-39(2003).
2) 川又, 小野寺, 佐々木; 日本家政学会東北北海道支部研究発表要旨集第47号p.29
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吉田 仁美, 伊藤 セツ
セッションID: P-304
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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〔背景〕 現代日本は超少子高齢社会である.「ユニバーサルデザイン」の概念は,そのような背景にあって重要視されつつあり,すべての年齢および障害を持つ人もそうでない人も使用可能な製品および環境のデザインとして定義されている.ユニバーサルデザインの概念の広まりは,シティプランニング,建築物に限らず,多様化してきている.近年は,さらにライフスタイルに関わる衣食住の分野まで取り入れられ,家政学・生活科学の教育・研究の課題となっている.
〔目的及び方法〕 本研究における目的は,日本全国の家政学系・生活科学系統大学のユニバーサルデザイン教育の実態および特徴を明らかにし,カリキュラム発展の可能性を探ることである.方法は,日本全国の家政系・生活科学系大学の科目・シラバス調査による.情報収集手段はインターネット検索に限定している.
〔結果及び考察〕 結果は次の通りである.第一に,シラバス調査によると,「ユニバーサルデザイン」に関連した科目を用いているのは全70大学中20大学であった.(2006年10月現在).第二に,ユニバーサルデザインに関連科目は,人間工学系・被服系に多く存在し,ユニバーサルデザイン評価,ユニバーサルデザイン7原則に基づいた科目に集中している. 第三に,シラバス調査によると,ユニバーサルデザイン教育は,高齢者,障害者が主要なキーワードとなっていることが明らかにされた. 以上を考慮すると,ユニバーサルデザインに関連するカリキュラム手法にはハード面に関わる授業への偏りがみられる.家政学領域におけるソフト面に関わるユニバーサルデザイン教育へのカリキュラム再編成への課題が残されている.
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藤田 絵美, 後藤 昌弘, 西川 和孝
セッションID: P-305
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的 近年,食生活におけるグローバル化や情報化等がもたらした結果,食生活の均一化が進行し,地域に根付く郷土料理が作られなくなっている.そこで本研究では,多様な郷土料理が存在し,地域の生徒にとって非常に身近なサツマイモを用いた郷土料理の教材としての有効性について,明らかにすることを目的とした.
方法 今回調査した地域は,サツマイモの生産量が比較的高く,多様な加工・調理例がある長崎県と徳島県を対象とした.各県のサツマイモを用いた郷土料理を文献や聞き取り調査等により,教材として適切なものをそれぞれ1品検討・選定した.また,授業実践用のレシピと指導案を作成し,徳島県内の中学校にて授業実践及びアンケートによる生徒の意識調査を実施した(2006年11~12月).さらに,サツマイモ料理及び郷土料理の嗜好・関心について,主成分得点を変数としたクラスター分析等を行った.
結果 得られた主な知見は以下の3点である.1)教材開発の結果,長崎県の郷土料理「ヒカド」と徳島県の郷土料理「サツマイモの白干しの煮物(いとこ煮)」が,短時間で作りやすく,中学生が調理するにあたって適度な教材であった.2)実施したすべての班が安全かつ時間内に調理実習を終えることができ,授業実践後に生徒の理解が深まっていた.3)授業実践前及び実践後のサツマイモ料理及び郷土料理への嗜好・関心についてクラスター分析した結果,サツマイモ料理に対する嗜好・関心は高いが郷土料理に対する嗜好・関心が低い群がなくなった.さらに,サツマイモ料理や郷土料理に対する嗜好・関心が全体的に高まる傾向を示した.
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小町谷 寿子, 間瀬 清美, 加藤 千穂, 石原 久代
セッションID: P-306
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的 大学など高等教育における教育方法の一つとしてe-learningの導入検討が進んでいるが、被服実習におけるマルチメディア教材導入の検討はまだ少ない。個人製作を主とする被服実習では、講義や実験とは異なるアプローチが必要と考えられ、同時にゆきとどいた個人製作指導に向けたe-learning導入効果への期待も大きい。本研究では、被服実習のためのコンテンツ制作を学生によるグループワークの演習課題として取り入れた場合の効果を検討する。
方法1.平成18年度後期生活環境学科の専門科目である「アパレル造形演習」(受講者2年生50名、90分×8 回)でグループワークによる被服実習コンテンツ制作を実施した。2.演習後、コンテンツ作成をした学生を対象に選択式と自由記述形式の組み合わせでアンケートを実施した。主な内容は、演習前後のIT関係器材・ソフトの使用経験と理解度、各グループで制作した被服実習コンテンツと相互プレゼンテーションに対する学生評価、グループワーク演習やコンテンツ制作に対する意見についてである。
結果 グループワークによる被服実習コンテンツ制作に対する肯定的意見は81%、わかり易い77%、グループワークに積極的に演習に参加したという意見は86%、将来役に立つと思うと判断した学生は90%となり、学生への期待に応える授業を提供し得ることを確認できた。コンテンツの出来や理解度の差などの課題もあるが、制作したコンテンツは電子媒体としての共有化や学外からのアクセスが可能となり、多様化する学生のライフスタイルに合わせた学習環境づくりにも役立つと期待される。
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-食生活および食品摂取に関連する要因-
加藤 佐千子, 木原 和子
セッションID: P-307
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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【目的】食育基本法が施行され,学校現場での食育が盛んに行われている。このような状況下で次期子育て世代として直近にある女子大学生に対する食育も重要視する必要があると考える。そこで,女子大学生に対する食育をどのように展開すべきか,授業をはじめ,大学としてどのように食育を提供してゆけばよいかを考えるための基礎資料を得るために,新入生の食生活の実態および問題点を明らかにし,そこから教育方法を探ることを目的として行った。
【方法】 対象者;2006年4月に入学の新入生と在学生。調査時期;2006年5月~6月。調査方法;質問紙法。配付数は233票,回収数は230票,有効数224票。調査内容;健康習慣,食事摂取,食知識,食生活に対する意識に関する質問,一般性自己効力感,食事自己効力感,食情報への関心に関する質問,属性など。分析方法;1)学年および学科を独立変数,食情報に対する関心の有無,信頼の有無,実践の有無をそれぞれ従属変数としたクロス集計。検定はχ
2検定またはフィッシャーの直接法,ウイルコクスンの順位和検定。2)食知識を独立変数に食意識の各項目を従属変数とした多項ロジスティック回帰分析。3)居住形態,学年,所属学科,アルバイトの有無,就寝時刻,食知識,健康習慣,食事SE,GSEを独立変数に,食品摂取を従属変数とした2項ロジスティック回帰分析。
【結果】一部の食知識および食品の安全性と病気との関連の知識が低く,食知識が高い人程,肯定的に食生活を捉えていた。下宿生はインスタント食品,レトルト食品の摂取が高く,自己効力感の低い学生はレトルト食品やインスタント食品の摂取が高かった。食知識の教授方法,下宿生をターゲットとした個別教育,調理に自信を持たせるなどの自己効力感を高める授業展開の必要性が示唆された。
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松岡 英子
セッションID: P-308
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的 本研究は中高年男女の生活実態を把握して,ディストレスに影響を及ぼしている要因を明らかにするとともに,ディストレスへのセルフ・エスティームの影響を検討することを目的とする。
方法 中年期調査は40~59歳男女2400名,高齢期調査は65歳以上男女3500名を長野県長野市の住民基本台帳から無作為抽出し,郵送による質問紙法で実施した。中年期データは回収数1176(49.0%),有効数1099(45.8%)であり,高齢期データは回収数2074(59.3%),有効数1998(57.1%)である。
結果 ディストレスは日本語版SDSを参考にして9項目を用い,抑うつ傾向が強い順に4点から1点を与え,加算尺度にしたところ,中年男女では平均19.3点,SD=4.35,α=.82であった。男性の平均は19.7点,女性の平均は19.1点であった。高齢男女では平均17.9点,SD=4.56,α=.81であり,男性の平均は17.5点,女性の平均は18.3点であった。このことから,中年期の方が高齢期よりもディストレスが高く,中年期では男性,高齢期では女性のディストレスが高いことが明らかになった。セルフ・エスティームはRosenberg.M.の尺度をベースにして,建設的低得点を克服する工夫をした。世代差,性差ともに有意差がみられなかった。ディストレスに影響を与えている要因を明らかにするために分散共分散分析等を行ったところ,両世代に共通して影響を与えていた変数は「対象者の健康」「家計の状態」「相談事の有無」「将来や老後への不安」「セルフ・エスティーム」であった。違いがみられたのは,生きがいとソーシャル・サポート要因に含まれる変数であった。
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大石 美佳, 松永 しのぶ
セッションID: P-309
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的 青年から大人への移行期の自立意識に影響する要因を、心理的・社会的側面から検討するため、大学生の就職、結婚、離家時期に対する態度を、性別、親の態度との関連から考察した。
方法 大学生791名(6大学)に無記名の質問紙調査を2006年7月から9月に実施した。調査内容は、将来(就職、結婚、離家時期)に対する本人と親の態度、自立意識尺度(独自に作成)などで、有効回答数は784名(男性382名、女性402名)であった。
結果 就職については8割近くの学生が「ぜったいに就職したい」と回答したが、女性の方が「状況によっては就職しなくてもよい」の比率が高かった。結婚については約半数が「ぜったいに結婚したい」と回答し、その割合は女性の方が高かった。離家時期については「状況によっては出ても出なくてもかまわない」「できるだけ早く出たい」がそれぞれ4割程度で、男性の方が「できるだけ早くでたい」、女性の方が「できるだけ長く親元にいたい」と回答した比率が高かった。自分の将来は状況次第と考える傾向がうかがえた。大学生からみた父母の態度は、就職については「ぜったいに就職してほしい」が父母ともに6割以上であったが、結婚や離家時期に対しては「何も言わない」が父母ともにもっとも多かった。親が子どもに強く独立を促すような態度を示すことは少なく、親子双方にパラサイトな関係を築きやすい構造にあることが推測された。このような親子関係は自立意識の構造における親との親密な関係の高さにも反映されていた。
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女亜 茹, 中山 徹, 室崎 生子, 今井 範子, 野村 理恵, 咏 梅
セッションID: P-310
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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【目的】中国内モンゴル自治区においては、モンゴル民族の比率が高く、モンゴル民族の伝統文化を比較的に守っている地域は锡林郭勒(シリンゴル)盟の草原地域である。近年、都市化、工業化の影響を受け、生活の基盤である衣食住から交通手段までは大きく変貌した。そこで、本研究が着目したのは、地元の学校の統廃合により、子どもが教育を受けるため草原を離れ、シリンゴル盟の町に移住するようになった。また、学校が統廃合されていない地域に対しても中国語、英語の勉強ができる環境や教育の質を求めて、遠くても子どもを町の学校に通わせている状況である。本研究では、シリンゴル盟草原地域における子どもの生活実態を把握した上、問題点について考察することを目的とする。
【方法】2006年6月と9月に2回わたり、シリンゴル盟草原地域の子どもが教育を受けるため町に移住し、その家庭及び子どもが通っている小学校において、聞き取り調査を行った。
【結果】子どもたちが教育を受けるため草原と親元を離れ、シリンゴル盟の町に移住することになった。子どもが幼い頃に親から離れ、町での祖父母や親戚などの保護者との暮らしや、学校寮での暮らしは従来の草原で育っていた生活とは大きく異なるといえる。こういった状況の中では、子ども自身の負担、子どもが親の生活から伝統文化を継承しにくい問題、祖父母や母親、親戚など子どもの世話をする人手が町に出ざるをえないため草原における家庭の人手不足、二重生活による家計への負担などの問題が考えられる。
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映画『誰も知らない』と『少年』の比較
荒川 志津代
セッションID: P-311
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
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目的:メディアの中に描かれた子どもをめぐる食の在り方から、今日の子どもと家族の在り方について考えることを目的とした。本研究では現代的背景の中で描かれた映画『誰も知らない』と、1960年代の生活を背景に子どもを描いた映画『少年』を取り上げた。それぞれの作品の固有性を文献から明らかにした後に、2つの作品の食描写の比較をし、食の在り方を背景とした子どもと大人の関係性を分析した。
方法:2つの作品における食場面を抽出し、食をめぐっての子どもと大人の関係の在り方を、作品固有の特質に配慮しつつ比較考察した。
結果:『誰も知らない』(2004)も『少年』(1969)も実際の事件に着想を得て制作された映画であるが、表現されている子どもの内面や状況の設定は仮想の面もあった。しかし生活様式及び食をめぐっての大人の配慮は描かれた時代を反映したものであるとみなせた。
『誰も知らない』においては、前半と後半で明確な対比が見られた。家庭料理を作る場面が挿入された前半は内面の「豊かな時間」を描いており、後半におけるコンビニでの賞味期限切れ食品で子どもたちが生き延びる場面では、食と親の保護が切り離された(関係の薄い)現代の状況が描かれていた。現代の『誰も知らない』に比して1960年代の『少年』では、食堂や旅館などで用意された相対的に「まともな」食事が描かれていた。少年は親を離れては食にありつくことが難しく、親は食事で少年をコントロ-ルする場面も見られ、食の提供は子どもを保護するという一面で、子どもを支配するという側面も持っていた。食を介した大人と子どもの関係は、2つの映画間で大きく変貌したと言えた。
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生命・文化・環境的な食の再構築に向けて
石田 智宏, 安田 純子
セッションID: P-312
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的現代における食生活とフードシステムとの相互関連性を、家政学の理念および生活経済学の理論の上に検討し、地域におけるコンパクトなフードシステムの必要条件を考察する。
方法おもに先行文献の調査による。
結果1.グローバルなフードシステムの下では、健康的な食生活や食の安全・安心は利便性とトレードオフされる。
2.生命・文化・環境の継承という観点から望ましい食生活の実現のためには、コンパクトなフードシステムの再構築が有効と考えられる。
3.フードシステムを評価する指標として、消費量・価格だけではなく、QOL、WTP、付加価値なども視野に入れる必要性がある。
4.フードシステムの変容のためには、分裂型の消費者が今のライフスタイルを見直すための広範な食育が必要である。
5.コンパクトなフードシステムを実現するためには、新たなコミュニティと地域振興のモデルが必要となる。
[文献]1)内閣府;食育白書(2006) 2)時子山ひろみ他;フードシステムの経済学(2005)ほか
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-村人の情報活用能力の進化に注目して-
益本 仁雄, 宇都宮 由佳, 青木 絵美
セッションID: P-313
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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1992年以来,社会情報化の進展が北タイの未電化村の住民や共同体に与える影響と生活変容の実態を質問紙調査や聞取り調査などを用いて継続的に研究している.10年前,村に電気が供給されテレビが急普及し大量の社会情報がもたらされた.村人は,生活向上の実現を目的に収入増加をはかるため出稼ぎや夜間に電灯下で労働を増やし,また高学歴志向をもつようになった.都会に出る者の急増は家族の役割・機能に変化をもたらした.家族機能の外部化現象や,生活用品の購入や輸出用農産物作付けの積極化が認められた.しかし伝統文化である年中行事は村の構成員としてのアイデンティティー維持のため盛んに行われている.
近年,発表者らは村人の社会情報の収集・活用能力がどのように進化したのかについての研究に取組んでいる.未電化時代,村人は社会情報を得るすべも無くまた関心もなかった.しかし,最近では情報の重要性を認識し,積極的に収集・活用しようとしている.農業情報及び自動車情報では,現在に近いほど収集・活用している.健康情報と政治情報では,現在が最も活発に収集・活用しているが,未電化時でもある程度行っていたと意識している.また,農業情報は,村人全体の収集・活用能力が顕著に上昇したが,自動車情報では一部の村人のみが高い能力を獲得し活用していた.さらに,女性が最近になってマスコミの影響を受け,活用能力を急激に高め,老年層が一部の情報で最近,情報受容をしていることも明らかになった.
村人は,社会情報について未電化時には低い収集・活用の能力レベルであったが,電化後は能力を飛躍的に伸ばし,能動的な活用能力レベルとなり,最近では能動的な情報収集に裏付けされた活用能力を獲得したと考えられる.
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温 海燕, 宮坂 順子, 伊藤 セツ
セッションID: P-314
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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背景
中国は社会主義経済のもとで,市場経済を取り入れて,経済成長を遂げている.
本研究は,その過程が中国の都市世帯の収支項目の変遷にどう反映するのかを,日本との比較においてみたものである.
目的
第1に,中国国家統計局の都市家計調査の収支項目分類の変遷を追い,その特徴と中国経済の変化を捉える.第2に,現行の収支項目分類を用いて,集計方法の異なる実際の数値から,構成比率で日中の家計構造の相違を明らかにする.
方法
分析に用いる統計は,中国については,中国国家家計統計局1981年から2004年までの「中国都市住民家計調査」各年,日本においては,総務省統計局「家計調査」の2005年版である.
結果
1.中国の収支項目は,1985年,1988年,1992年,2002年の家計調査で,項目の新設,廃止,名称変更など,分類に大幅な変更がみられた.当初,収支発生源別に区分されていたものが,私企業からの収入が増加するに従い,日本と同じ勤め先収入に統一された.
2.中国の収支項目分類は,当初シンプルであり,詳細になるのは1986年以降であり,現行消費支出は8大費目分類で,非消費支出および実支出以外の支出は細かく,日本には見られない「住宅ローン」,「車ローン」,「教育ローン」,「その他ローン」といったローンの細分化が見られる.
3.中国は市場経済を取り入れる度合いに応じて収支項目が変遷しているが,日本は生活様式の変化に応じて変化している.
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杉田 あけみ, 伊藤 セツ
セッションID: P-315
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的ワークライフ・バランス(WLB)のとれた働き方ができる環境整備は,男女共同参画社会の実現であり,少子化対策でもあるという政府見解(内閣府2006:3)が示された.企業における経営資源としてのヒトは,個人・家庭・地域においては血のかよった人間である. WLBのとれた働き方ができる環境整備の前提として,このような認識がなければならない.そこで,男女従業員のWLBの現状を把握し,WLB施策とその実施効果に関する男女従業員と企業との認識を生活経営の視点から検討する.
方法ファミリー・フレンドリー企業表彰受賞企業(1999~2005年)と均等推進企業表彰受賞企業(1996~2006年)の従業員(男性172人,女性133人)へ「WLB尺度」(WLB実態尺度とWLB満足尺度)による調査を実施した.WLB施策,同施策実施効果に関する調査も実施した(上記従業員と企業49社).2004年に実施した調査との継続において,生活経営の視点から考察した.
結果WLB尺度の位置は従業員個々人によって異なるが,「仕事中心の生活に満足していない」従業員は,「仕事中心の生活に満足している」従業員の男性で2.2倍,女性で3.8倍である.男女従業員は,WLB施策では,「長時間労働の廃止」を,同施策実施効果では,「従業員の職場生活と家庭・個人生活とにゆとりと豊かさが生まれ,従業員は,職場生活でも家庭・個人生活でも幸福感を得ることができるようになる」を,上位項目に選択している.企業も同項目を上位に選択している.調査結果から,本報告では男女従業員個々人が満足を得ることができるWLBの実現に向けて,生活経営の視点から企業へ働きかける方策を示した.
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-前門地区を事例として-
王 飛雪, 中山 徹
セッションID: P-401
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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北京の旧城には、現在大規模な更新工事が行われている。
前門地区は古い北京市で風致・歴史的文化財において最も保存がよい、同時に現在最も人口密度が高い住宅地の一つであるため、その改造計画には大きな関心が持たされた。このため、前門地区を所轄する崇文区政府は関係部門と共同で『前門地区の保護・整理および発展の総合的計画』を編成し、この地区のマスタープランを募集した。住民投票および専門家の評価、部門的会議での審議、そして設計部の修正、というプロセスによって、この「マスタープラン」を北京市政府に届け出した。2003年12月31日に、この「マスタープラン」は北京市政府によって認可された。
多数の人口を含み、危険な古屋を更新する工事をする地区として、前門地区の改造は幾つか新しい特徴を示した。そのうえ、ある程度に過去10年の間に危険な古屋を改造する考え方の変化を反映した。
本研究は現場を考察したうえで、前門地区に関する保護・整理・発展という都市計画を評価し、その問題点を分析し、新しい提言をする。
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神部 順子, 中山 榮子, 青山 智夫, 長嶋 雲兵
セッションID: P-402
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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【目的】環境問題は個別の地域を研究する時代から大域的な地域を関連付けて考えなければならない時代になっている。東アジア、東南アジアの大都市では人口増加、経済発展に伴い、大気汚染に関心が集まっている。浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter: SPM)とNOxは健康への影響面から最も憂慮される大気汚染物質である。東アジア・東南アジアという大域的な地域を関連付けるためには、多様なデータを柔軟に取り扱うことのできるデータ解析技法の開発が必要である。ところが大域的な環境データは、測定者や測定方法などが異なるため、データを均質なものとして取り扱うことができない。また広域の定量的な測定はない。データの均一化には、標準化の方法を確立する必要がある。本講演では、標準化の方法の開発のための指針を得るために、多変量解析を用いて東京都環境局のデータの特徴抽出を行う。
【方法】用いたデータは東京都環境局によって公表された大気汚染結果で、2004年と2005年である。パラメータはSPMとNOxを分析した。東京都環境局のデータは、SPM 84 測定地点、NOx 80測定地点である。各パラメータについて、記述統計量を求め、多変量解析(主成分分析とクラスター分析)を行ない、それぞれの測定地点の関連と月別の特徴をみた。
【結果】年間平均値でみると、NOxはSPMに比べて測定局毎にばらつきがあり、また標準偏差の値も大きい。 SPMとNOxの分布の相関をみると強い相関はみられなかった。月別にみると、11月は特異なデータであることがわかった。
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2006年8月ソウル、2007年2月ハノイ、ホーチミンの現状
中山 榮子, 神部 順子
セッションID: P-403
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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目的温暖化対策としてガソリン車よりもディーゼル車を選択する傾向のあるヨーロッパでは、1992年以降自動車排ガス規制(Euroシリーズ)を定めており、東南アジア各国でもこの規制を導入している国が多い。本研究室では東南アジア各国において継続的に環境測定を行っている。今回は、2006年8月ソウルと2007年2月にハノイ、ホーチミンにて行ったSPMの測定結果を報告する。
方法SPMの測定にはデジタル粉塵計LD-1およびLD-3Kを用い、ソウルおよびハノイ、ホーチミン市内において約60箇所ずつ測定を行った。同時に温湿度、風向風速も測定した。
結果2006年8月におけるソウル市内の地下鉄沿線の測定結果をコンターマップで表した。ソウル市内はオリンピックなど国際大会を機会に車も道路も整備され、SPMは高い値を示さなかった。一方、ハノイは台北以上にバイクが利用されており、旧式の車が多かったこともありSPMは日本の基準(100μg/m
3)をはるかに越えた値であった。ホーチミンでは、快晴で大気が大変よく循環していたこともあり、ハノイほどの高いSPM値は観測されなかった
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千 裕美, 高瀬 弥津美
セッションID: P-404
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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〔目的〕 近年,個人住宅における下水道整備が完備されつつある。しかしながら,その割合はまだ100%には達しておらず,一部の生活排水が生態系へ流出しているのが現状である。本研究は,流出した生活排水が生物体にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的として行った。
〔方法〕 植物体への影響は,キュウリ・ダイコン・コマツナの発芽試験を行うことによって調べた。動物体への影響は,人工孵化したメダカを飼育した際の水温・pH・行動変化を観察することによって調べた。いずれの試験も,蒸留水と実際の流出点で採取した生活排水の両者を用いて比較検討した。さらに,生活排水中の界面活性濃度をMB法で測定し,LAS濃度に換算して同濃度のLAS(ハード型およびソフト型)溶液中で飼育した場合についても観察を行った。
〔結果〕 キュウリ・ダイコン・コマツナの発芽に対する生活排水の負の影響は見られなかった。一方,メダカへの影響は,顕著であった。蒸留水中のメダカは,23日間の実験期間を通して,ゆったりと泳いでいた。しかしながら,生活排水中のメダカは,飼育後9日目に直線的にすばやく動くものが現れ(異常行動の出現),その後16日目に旋回するものも出現した。生活排水で23日間飼育した場合の異常行動を示す割合は25%であった。その後,24日目にメダカを蒸留水中に移したところ,さらに異常行動を示す割合は増加し,飼育開始から40日目の異常行動を示す割合は87%であった。その後,43日目に異常行動は消失した。LAS溶液で飼育した場合には,ハード型およびソフト型共に,異常行動の出現時期が生活排水の場合より早かったものの,その出現頻度は少なく,消失時期も早かった。
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渡邊 紀子
セッションID: P-405
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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【目的】 酸化チタン光触媒は、紫外線を利用するだけで不要な有機物を安全に分解できるため環境浄化材料として注目されている。最近は紫外線のみならず可視光応答型や有機質素材にも対応できるハイブリット型など各社の技術革新は目覚しい。しかし、様々な特性を有する酸化チタンを原材料の段階で簡便に性能評価する方法は確立されていない。そこで、本研究ではメチレンブルー(MB)色素分解に対する光源に対する影響を、2種の簡易評価方法より検討した。
【方法】 試料:色素としてメチレンブルー(CI-52015,東京化成工業_(株)_)、TiO2は和光試薬工業_(株)_のアナターゼ型およびTiO2製造メーカーの提供試料を使用。三光純薬_(株)_のセルロース膜(厚さ:47μm)にMB色素を染着。光分解実験:TiO2分散液中にMBセルロース膜および0.0005%MB色素を入れ、ブラックライト直管形20W(ピーク主波長352nm)、蛍光灯直管形20W(ウォーム色・クール色)60分照射後のMB色素分解率を日立分光光度計(U-1800形)によりλmax 664.5nmの吸光度から測定。照射によるMBの褪色・TiO2へのMB吸着を補正後、正味色素分解率(%)を算出。
【結果】 従来型、可視光応答型、ハイブリッド型TiO210種に対する各光源によるMB色素分解率を検討した結果、20Wの光源照射における色素分解率は、ブラックライト>蛍光灯ウォーム色>蛍光灯クール色 の順であった。特に、蛍光灯20W下の照度は4.2klux と同一であるが、蛍光灯中に含まれる紫外線強度がウォーム色(30μW/cm2)、クール色(17μW/cm2)で差があることから、紫外線の若干多いウォーム色による色素分解率が高いことを確認した。また、蛍光灯照射においては、可視光応答型より従来型TiO2の色素分解率が高い傾向にあった。また、可視光応答型TiO2でありながらブラックライトに対する色素分解率が高いことが確認された。
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(第1報)女子学生を対象とした月経および生理用品の使用実態
武井 玲子, 鍋山 友子, 小野寺 潤子, 平野 由香里, 村田 歩
セッションID: P-406
発行日: 2007年
公開日: 2008/02/26
会議録・要旨集
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【目的】女性は一生のうち4~9年間は月経中であり、その間生理用ナプキンを使用し、使用後廃棄される枚数は約1~2万枚/人と推算される。したがって、生理用品は、生理痛のような随伴症状を除き、月経期間中の生活や行動が普段と変わらず快適に、かつ安全・安心して過ごすことができる品質であること、使用後廃棄されるため環境保全上の視点からも配慮する必要がある。そこで、生理用品のリスクマネジメントを検討する基礎的知見を得ることを目的に、月経時の意識実態調査ならびに生理用品の使用性や購入~着用~廃棄の各行動に対する意識と実態を把握する調査を行う。
【方法】本学学生403人を対象として、質問紙による留置き自記入調査を行った。調査期間は2006年12月であった。調査結果は、単純集計やクロス集計を用いて考察した。
【結果】初潮年齢は平均12.3才、月経期間は3~7日とする割合が7割、月経周期は25~35日型が51.7%であり、残りは不順・不明であった。月経期間中の不快な症状として、腹痛、腰痛等の身体的な症状と共にイライラ感、動きが制限される、モレ・生理痛の心配など精神的不安感を訴える割合が高かった。生理用品の種類は、ナプキンのみの使用者は92.2%であり、8割以上がスーパー・薬局にて、家族の勧めや店頭で見て購入していた。生理用ナプキンは羽つき、夜間用、多い日用の使用割合が高い傾向であり、交換回数は起きている間は平均4.4回、就寝中は0.5回であった。また、生活シーン・生活行動別で種類を変えている割合は5割であり、特にスポーツや体育の授業、動き回ったり座ることが多い時に交換割合が高かった。廃棄方法については、トイレットペーパーや包装紙に巻いて専用のゴミ箱に、家庭では燃えるゴミとして廃棄している実態が明らかとなった。
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