一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
59回大会(2007年)
選択された号の論文の358件中151~200を表示しています
  • 村上 陽子, 中野 綾子
    セッションID: P-407
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 現在,オゾン層破壊による紫外線増加の深刻化により,紫外線の人体に及ぼす影響が問題となっている。また,美白ブームの現代において,紫外線対策は,女性にとって関心事の1つである。女性にとっての紫外線対策には,日焼け止めやUV化粧品の利用,帽子の着用,衣服の工夫などがあげられる。「子どもの紫外線対策に関するアンケート」(子どもの危険回避研究所,2003年)によると,子どもの紫外線対策をしている母親は89%であり,紫外線対策を要する年齢を0歳とする割合も75%を上回っている。しかし,こうした紫外線対策は世代間によって違いがあるように思われる。たとえば,10代~20代の若い世代は,紫外線対策として日焼け止めを好む傾向にある。彼女達は真夏でもタンクトップや半袖などを着用し,肌を晒すことを厭わない。逆に母親世代では,日焼け止めよりもむしろ,日傘や長袖着用といった道具や衣服の工夫による紫外線対策を好むように思われる。そこで,母親およびその娘について,紫外線対策に対する意識の違いを明らかにするために,その対策方法に焦点を当ててアンケート調査を行なった。本研究では,化粧品や紫外線対策に対する世代間の意識の相違について検討する。
    方法 調査期間は2005年10月21日~11月11日,静岡大学の女子学生100名およびその母親に対し,アンケート調査を実施した。調査は留め置き法により行ない,学生である娘に質問紙を配付し,母親には娘経由で配付・回収した。アンケートの回収率は62%であった。
    結果 日焼け止めの使用状況,化粧品を選ぶ基準,化粧品にかける費用,メイク用品の使用頻度などにおいて,母娘間で相違が見られた。
  • 津田 淑江, 堂薗 寛子, 岡本 春香, 小池 恵, 大家 千恵子
    セッションID: P-408
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的:地球温暖化防止のための京都議定書では目標期間(2008年~2012年)に1990年比で一定数値を削減することを義務付けている。しかし2004年度のCO2排出量は、産業部門においては基準年と比べ96.6_%_削減されているが、家庭部門からのCO2排出量は131.5%と増えている。そこで本研究では、家庭で食材から調理する場合を想定し、料理が出来上がるまでのCO2排出量を算出し、家庭における具体的なCO2削減のための評価方法を検討した。また高等学校において環境に配慮した食生活を意識させることを目標に食教育とその実践を行い、介入教育の効果を検討した。
    方法:1)環境負荷研究対象メニューの作成には、主食、主菜、副菜、汁物での出現頻度上位品目とその形態を参考に選んだ。朝食はパン食、昼食は麺類とし、夕食は和食、洋食、中国食の3パターンを作成した。また調理を実践し、調理時の都市ガス消費量、電気使用量を測定し、調理におけるCO2排出量を算出した。2)食教育とその実践ではハンバーグを取り上げ、牛肉の生産時のCO2排出量が多いことから豆腐のハンバーグを提案した。
    結果:1)調理から排出されるCO2量は、夕食で比較すると和食(約670g)、洋食(約500g)、中国食(約370g)の順で少なくなった。対象メニューにおいて一日分の食事を調理する際に排出されるCO2量は、平均1.405Kg- CO2であった。世帯数(4983万世帯/2004年)を考えると、調理時に全世帯より排出される1年間のCO2量は2556万トンと想定された。2)食教育とその実践の結果、ハンバーグの牛肉の替わりに豆腐を使用することにより、生産・輸送・調理・消費という流れで環境を見ることを学び、日常生活で環境に配慮した行動を意識することができるようになり介入教育の効果が認められた。
  • 富田 寿代, 今光 俊介, 水谷 令子
    セッションID: P-409
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 都市は廃棄物や排熱による大気・水質汚染やヒートアイランド現象など多大な環境負荷を作り出しており、その改善には、都市緑化と緑地のもつ多面的な効果の活用が重要である。近年、新たな緑地確保の試みとして、従来は緑化が困難とされてきた屋上や屋内等の特殊空間の緑化が注目されている。suzuka産学官の環境植物研究会では、都市環境の改善を目的として、ミヤママンネングサを用い、ビルや工場および調整池を対象とした屋上・壁面・水面などの空間緑化を検討している。その基礎研究として、ミヤママンネングサを植栽した緑化マットが温熱環境に与える影響および当該植物の水質浄化効果について報告する。
    方法 緑化マットで被覆したコンクリート面と緑化マットを屋根に敷設した犬小屋内の温度湿度変化を簡易温湿度計(TandD製TR-72S)で測定した。さらに、緑化マットを浮かべた水槽内の水質変化を、マルチ水質モニタリングシステム(Horiba、U-23)、分光光度計(Shimazu、UV1200)を用いて測定した。
    結果 緑化マットでコンクリート面を被覆することによって、夏期の気温は低下し、空気中の水分量は低く保持された。緑化マットを屋根に敷設した犬小屋内では、温度変化が緩和され、相対湿度が増加した。セダム類は蒸散量が極めて少ないため、温度が大幅に低減されることはないが、このマットにより、直射日光を遮蔽し、照り返しを防止するとともに、相対湿度をコントロールすることができ、マット周辺の微気象を緩和する効果が認められた。また、ミヤママンネングサは水中のK+、NO3-、Ca2+を吸収し、藻やプランクトンの繁殖を抑制することを確認した。
  • 大浦 律子, 中村 順子
    セッションID: P-410
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的:森林の保全のために、紙パルプ資源の多様化、分散化が注目されるなか、木材資源に代わる非木材資源として近年ケナフの利用が注目されている。ケナフは製紙目的だけでなく、壁紙やカーッペット、インテリア織物にも徐々に採り入れられてきている。ほとんどは生成の状態で製品化されているが、染色加工が加われば用途がさらに広がるのではないかと考え、ケナフの染色性及び堅牢性を検討した。その中で近年家庭にも普及しつつあるアルカリ電解水を有効利用した染色法についてあわせて検討した。 実験:試料として市販ケナフ織物を前処理して用いた。染色性の比較のために木綿(ガラ紡)とケナフ・木綿混紡織物を用いた。染料は反応染料3種を用い、所定の条件で染色した。反応染料の染色にあたり、アルカリ助剤として炭酸ナトリウムの代わりに電解水装置から得られるアルカリ電解水を用い、炭酸ナトリウムと比較した。染色性は色差計による測色と、染色された糸断面の顕微鏡観察により行った。堅牢度はJISに準じて行った。 結果:ケナフ織物は反応性染料により美しく染色される。表面の測色結果ではガラ紡より濃く染色された。また、アルカリ助剤の代わりに用いたアルカリ電解水中でケナフ、木綿共に十分染色された。しかしケナフは木綿に比べ繊維がかたく、表面染色となり断面観察から環染が観察された。また、アルカリ電解水で染色したものは炭酸ナトリウムに比べ洗濯堅牢度がやや低く出る場合があった。堅牢度の課題に対応すれば、ケナフは染色により多彩にインテリアに活用されると考える。
  • 片平 理子, 矢ヶ崎 隆義
    セッションID: P-411
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 ペットボトル入り緑茶飲料の消費増に伴い、飲料の製造工程から排出される抽出残渣(以下、茶殻)は年間6万t以上に達しているが、その大半は産業廃棄物として焼却あるいは埋め立て処理されている。本研究では、茶殻に炭化処理及び更なる機能化を目指す賦活処理を施し、得られた茶殻炭化物の各種ガス物質吸着能を評価することにより、茶殻の再資源化の可能性を検討した。これと併せ、炭化物が吸着した有害物質の分解及び再資源化処理コストの低減を目的とした炭化物発電の可能性を探るために、燃焼についても検討を加えた。
    方法 市販煎茶の抽出残渣を送風乾燥して粉末としたものを試料とし、精密制御型バッチ式炭化炉にて大気圧下・30分間炭化処理を行った。更に、この炭化物を水蒸気発生装置を付帯した管状赤外線イメージ炉に導入し、750℃・30分の水蒸気賦活処理を施した。得られた炭化物及び賦活炭化物の比表面積と細孔分布測定、表面微細構造の観察を行った。また、3種のガス(ホルムアルデヒド、エチレン、アンモニア)の吸着能を、検知管によるガス濃度測定により調べた。
    結果と考察 試料粉末の熱重量曲線を基に3条件(400℃、550℃、700℃)で炭化及び賦活処理を行った結果、収率及び比表面積から550℃が最適条件であると考えられた。茶殻炭化物のガス吸着の初速度は、市販ヤシ殻活性炭のそれに比べてやや劣ったものの、時間をかければ対象ガスを同程度吸着することが明らかとなった。また、炭化に続く賦活処理によりガス吸着効率が向上した。更に、炭化物の発熱量は5000kcal/kg以上が確保され、燃料としての適性が認められた。以上より、茶殻の炭化処理により再資源化を図れる可能性が示された。
  • メディアに表れた代表景観を対象にして
    鈴木 睦美, 小松 正史
    セッションID: P-412
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】近年、京都の観光入洛数が増加する中、京都の景観の質が問われる頻度が高くなっている。本研究では、市主導の景観行政の内容にも含まれる「色彩」領域を切り口にして、京都景観のイメージ分析を試みる。具体的には、京都在住者・外在住者の京都のイメージについての基礎調査を行い、続いて、メディアに紹介される京都景観をもとに、京都イメージの構成要素を抽出した。
    【方法】京都在住者・外在住者にアンケート調査を実施した。実施期間は2006年8~9月で、京都在住者・京都の宿泊施設やギャラリーを利用する外在住者に対し、京都のイメージカラー・選定理由・メディアに対する意識・属性などについての質問を行った(回答者は173名)。メディア分析にはインターネットと旅行パンフレットを使用した。両者ともに、アンケート結果に基づいて分析データの選定を行った。色彩の特性を利用した分析には、日本カラーデザイン研究所が開発したカラーイメージスケールを使用した。
    【結果】アンケート調査の結果は、「赤」が最も京都をイメージする色であった。具体的なアイテムは、神社寺院や紅葉などである。その他についても、神社寺院に関する色彩を回答する人が多くいた。京都在住者と外在住者のイメージに、大きな違いは見られなかったが、観光を目的に入洛する外在住者特有の回答が見受けられた。メディアの分析では、色彩イメージに多様性が見られるものの、伝統的で固定化された画一的な色彩イメージをもつことが確認された。本研究から、色彩を通した京都の象徴的な景観の色彩の特徴が明確になった。
  • 戸田 貞子, 立山 和美, 笠松 千夏, 浜田 陽子, 高橋 恭子, 畑江 敬子
    セッションID: P-413
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 高齢者の健康で活力ある生活のために高齢者の食事作りを支援することを目的に高齢者の調理技術の実態を観察した.高齢者にとってどのような調理がやりやすいか、どんな食材が取り扱いやすいか、どんな調理器具が使いにくいか、何を改良すれば調理をしやすいか、について検証を行う.
    方法 (1)新潟県典型的農村在住者5名(平均年齢72.6歳)および都市近郊である千葉県在住10名(平均年齢72.2歳)を対象に調理実習を実施した.実習内容は、味噌汁、肉じゃが、漬物の3品とした.実習中はビデオ撮影し、包丁による切砕操作、調味(味付け)、火加減、手順についての調理行動を観察した.(2)(1)の高齢者および20~30代の調理熟練者に、りんごの皮むき、きゅうりの千切り、鯵の三枚おろしを課し、調理時間と仕上がり成績を比較した.
    結果 (1)高齢女性は、全体の流れはスムーズで、待ち時間を効率よく他の作業にあてるなど、短時間で調理を終えることができた.一方、高齢男性はレシピの手順通りに調理し、段取りを考えての3品同時調理はなかった.農村在住高齢者の中には、一定の姿勢を維持しながら連続して行う調理操作が困難で途中着席するものも見られた.参加者はいずれも火加減の細かな調節、調味料を加える順番や加減はあまり意識せず、調味料の入れ忘れも観察された.そのため味噌汁の塩分濃度は0.9~1.6%とばらつきが大きかった.(2)りんごの皮むきにおける廃棄率は、調理熟練者と差がなかったが、きゅうりの千切りにおいては個人差が大きく、調理経験との関連が示唆された.鯵の三枚おろしは農村在住高齢者の方が比較的スムーズに行っていた.高齢者の調理は、単位操作にかかる時間が短い調理においては全体的に支障なく行うことができた.しかし調味、加熱操作において、支援すべき事項が示唆された.
  • 介護者のおしゃれと高齢者の変化〈第1報〉
    山岸 裕美子, 佐野 雪江, 鈴木 靖弘
    セッションID: P-414
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 高齢者自身がおしゃれをすることで精神を活性化させることができることについては、多くの研究成果が報告されている。しかし介護される側ではなく、介護する側の装いについては未だ何も語られてはいない。外出することが難しい高齢者の入居している施設では特に、若い職員を通して外からの文化が入ってくる。そこで、今現在の文化情報の一つとして若者のファッションに焦点を当て、これを文化受容の方途及びコミュニケーションの手段として活かすことを考えた。今回はまず、どのような若者のファッションが高齢者に好まれるかについての調査を行った。
    方法 高齢者福祉施設の利用者に対し、男女の若者のファッションの代表的な写真を提示し、どれが好ましいか(好ましくないか)について聞き取り調査を行った。対象としたのはデイサービスセンター・「ふれあい・いきいきサロン」・新型特養(ユニットケア)の利用者である。
    結果 今日の高齢者は、ただまじめに見えるだけのものや、個性の感じられないスタイルに魅力を見出さず、ある程度流行を取り入れたものを好ましいと感じていることがわかった。また、個性そのものよりも全体のバランスが大切であることも明らかとなった。さらに、キャミソールやパンク風ファッションに関しては賛否両論が出現し、高齢者そのものの中の文化的背景による考え方の相違等を見出すこともできた。
  • デイサービスの現状と手指の巧緻性
    豊田 美佐子, 川畑 昌子
    セッションID: P-415
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【 目的 】  ’01年より高齢者の手芸活動を通し手指の巧緻性、製作意欲など報告してきた。「もの作り」をする手芸活動はデイサービス利用者にとって会話もはずみ、作品の出来上がりを楽しみにするなど生き甲斐となっている。指先を用いる手芸はリハビリテーションや作業療法としての効果もある。本報は長期間通所している利用者の手芸活動について観察当初と比較し、加齢に伴う手指の巧緻性について調査する。昨年の介護予防法実施によりデイサービスの運営は継続利用者の確保や資金面などこれまで以上に厳しい現状となり、また利用者側にもその影響がみられるため双方の問題点を併せて調査する。 【 方法 】  調査対象は’99年3月より継続しているH市のデイサービス「Y」である。手指の巧緻性については月間の活動予定表より刺し子、継続調査をしているパンフラワーなど手芸活動について観察する。問題点については現状把握と聞き取りを行なう。 【 結果および考察 】  デイサービス「Y」は特に手芸活動に力を入れており、その内容は機織り・籐手芸など幅広く、手芸活動は主にボランティア講師の指導による。講師の都合により休止や中止した活動は職員が引き継ぎ指導しているため以前と内容に異なりがみられる。観察当初利用者は曜日別のグループ制で通所し全員が同じ活動に参加していた。しかし、現在は介護度により通所条件が同一でないため通所回数に個人差ができ、楽しみにしている手芸への参加が内容の重複や通所曜日と活動日との不一致により参加できないなど問題も生じている。利用者の加齢に伴う衰えには個人差がみられるが職員の励ましが何よりの支えとなっているようである。
  • 重度認知症高齢女性に対する試み
    泉 加代子, 小田 佳代子, 飯野 礼子
    セッションID: P-416
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 2005年の国勢調査速報によると、日本の高齢化率は21.0%で世界最高となった。認知症高齢者も今後ますます増えると推定されている。泉らはこれまでに要介護高齢者を対象としてファッション・セラピーを実施し、高い確率で精神状態や日常生活に維持・改善の効果が認められたことを報告している1)。しかし、その効果は、対象者の精神的機能、特に認知症の程度に左右されているのではないかと考えられる。そこで、本報では重度認知症の高齢女性を対象としてファッション・セラピーを実施し、その効果を検討する。
    方法 対象者は京都府下の特別養護老人ホーム入居女性4名で、人選は協力施設に依頼した。実施期間は2006年4月~12月の8ヶ月間、回数は月に1回の間隔で計8回である。実施内容は、対象者と担当者全員が同じ場所に集まって、その日の健康状態と着用している衣服について尋ね、服装への関心を高めるために服装写真を呈示した。次に、対象者が持っている衣服を用いてコーディネートの提案を行い、気に入った衣服を身体にあてて鏡で見せた。実施中の様子をビデオ撮影し、表情や言動を日誌に記録した。初回時と最終回時に施設職員に老人精神機能評価尺度(NMスケール)と生活能力評価への記入を依頼した。
    結果 鏡や写真に映った自分を認識できた1名はファッション・セラピーの効果が認められたが、認識できなかった3名には効果が認められなかった。ファッション・セラピーは、服装などで外観を変化させることによって自己概念を強化させる働きを応用した心理療法であるので、鏡に映った自分が認知できない重度認知症の高齢者には効果が得られないことが実証できた。[文献]1)泉加代子;日本衣服学会誌,50,17(2006)
  • 水野 一枝, 水野 康, 山本 光璋, 白川 修一郎
    セッションID: A1-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】高温環境は覚醒を増加させ、レム睡眠、徐波睡眠、直腸温の低下を抑制することが知られているが、幼児と母親に着目したものは少ない。そこで、本研究では、アクチグラフを用いて、夏期の高温環境が幼児と母親の睡眠および寝床内気候に及ぼす影響を検討することを目的とした。
    【方法】被験者は、心身ともに健康な幼児(3~4歳)と母親8組(男児4名、女児4名)であった。測定期間は7月下旬~8月であった。測定項目は寝床内温湿度、寝室内温湿度、アクチグラフ、主観的睡眠感、温冷感、快適感とした。被験者の自宅でアクチグラフ、寝室内温湿度を7日間連続測定した。7日間の間に2晩、夜間就寝中の寝床内温湿度を測定し、就寝前、起床時の主観的睡眠感、温冷感、快適感を申告してもらった。
    【結果】夜間の寝室の温湿度は26.9±1.0℃、69.8±8.6%であった。寝具の枚数や着衣に幼児と母親の間で差は見られなかった。睡眠時間は母親で346.0±60.1分と短く、幼児では518.7±48.8分であった。幼児では、母親よりも有意に睡眠中の活動量が増加し、睡眠効率が低下していた。足部の寝床内温度は、幼児の方が母親よりも有意に低かった。母親が自覚している覚醒回数は2±1.0回であり、このうち子供が原因の覚醒は1.12±0.99回であった。
    【結語】高温環境が睡眠に及ぼす影響は母親よりも幼児の方が大きく、母親の睡眠にも影響を及ぼしている可能性が示唆された。
    *本研究は平成18年度文部科学省科学研究費の補助を受けて実施された。
  • 佐藤 真理子, 近久 容子, 猪瀬 美季枝, 豊島 泰生, 田村 照子
    セッションID: A1-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 近年,市場でみられる夜用生理用ナプキンは,モレ対策が追求された結果,面積が極めて広く,厚みのある製品が多い.夜間の睡眠時,ナプキン内における高湿環境形成の懸念がある.本研究では,夜用生理用ナプキンの使用実態を明らかにすると共に,臥位時のナプキン内気候計測を行い,ナプキンの種類や装着の仕方,寝返り運動等がナプキン内温湿度環境に及ぼす影響について検討した.
    方法 夜用生理用ナプキンの使用実態と意識に関するアンケート調査を20代女性118名対象に実施した.着用実験は,20代女性10名を被験者とし,ナプキン3種(夜用2種,昼用1種)着用時と非着用時の4条件で,ナプキン内,ナプキン外,ショーツ外,尾骨下部,鼠径部内側,胸部中央の温湿度計測を行った.被験者は26℃・60%環境下で,仰臥位40分,左側臥位5分,右側臥位5分,仰臥位10分,計60分間の実験に参加した.
    結果 アンケートの結果,生理時の夜間睡眠中の不快感として,肌の湿りや殿部の汗,ムレが多く挙げられた.着用実験の結果,夜用ナプキン内は,昼用や非着用時と比べ高温高湿で,特に尾骨下部とナプキン内の値が高かった.大きさが同一で表面材の異なる夜用2種では,体動に伴う温湿度変動が異なり,ナプキンの形態・素材が臥位時のナプキン内気候に影響することが明らかとなった.
  • ―江戸期の着方に着目して―
    有泉 知英子, 田村 照子
    セッションID: A1-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 現代の和服は晴れ着化し,日常生活からほとんど姿を消している.しかし,和服が日常着であった時代,人々は明確な四季の変化に対応して衣替えにより寒暖の調節をはかると共にゆるやかな着方による活動性をも確保していたと考えられる.そこで本研究では,和服が日常着であった江戸期に着目し,春秋・夏季における和服の素材・着方の相違がその気候適応性に及ぼす影響を検討し,現代における日常着としての和服のあり方を探る基礎とすることを目的とした.
    方法 和服の熱抵抗Rd・蒸発熱抵抗Reを湿潤サーマルマネキンを用いて測定した.着衣は春秋季の袷長着,夏季の絽の単長着の2種で,下着・帯等は各季節に応じた組み合わせとした.着装条件は,江戸前期の細帯ルーズフィット1(以下LF1),江戸後期の広幅帯ルーズフィット2(以下LF2),現代のタイトフィット(以下TF)の計3形式である.夏季の単においては約1m/secの有風条件を加えた.得られたRd・ReよりMecheelとUmbachの推定式を用いて各着衣の快適気候適応域を求めた.
    結果 (1)Rd・Re共に、単(有風下)<単<袷の順で高く,衣替えによる素材・組み合わせ効果が示された. (2)着方についてRdはTF<LF1<LF2の順に,ReはLF1<TF<LF2の順に大きく,帯幅とゆとり量に依存した結果となった. (3)和服の気候適応域は安静座位時の条件で日本の気候と一致し,和服が座位中心とする生活様式に適し,夏季における風の利用が有効であることが示された. 以上,江戸期の和服は日本の気候と生活様式に対し,着方と組み合わせにより適応していたことを明らかにした.
  • 楊 燕, 高橋 勝六, 冨田 明美
    セッションID: A1-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 衣服を通しての熱移動速度は外気、衣服を構成する布および衣服間間隙空気層の各熱移動抵抗により左右される。本研究では布について抵抗の逆数である熱移動係数(熱貫流率)を測定し、布を構成する繊維と空気の熱伝導率および布中の繊維の占める体積割合を用いて熱移動係数を推算することの可能性を検討する。 方法 上部と底部を保温した回転ガラス試薬ビン(1ℓ)の側面に布を装着し、ビン中の温水の温度変化から熱移動速度を求めた。保温有り無しの結果から保温部の熱移動係数を求め、これを使用して測定部の熱移動係数を算出した。布1枚と布2枚を重ねたときの熱移動抵抗の差から布の熱移動抵抗を求めた。 結果 綿、麻、羊毛、絹、ポリエステル、ナイロンの中で、セルロース系の布は他より熱移動係数が大きかった(移動しやすい)。熱が最も移動しやすいのは布中の繊維と空気の抵抗が並列のときで、移動しにくいのは抵抗が直列のときと考えられる。測定した熱移動係数は両者の中間で、並列部分が1/3、直列部分が2/3として推算すると実験結果に一致した。
  • 須田 理恵, 田村 照子
    セッションID: A1-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 2005年の京都議定書発効に端を発した環境省によるクールビズ・ウォームビズの呼びかけに対して,夏はより涼しく冬はより暖かい肌着の開発が進められている。本研究では近年の開発肌着について,素材の物性と肌触りの関係,およびこれに及ぼす環境温度条件の影響を検討した。
    方法 対象肌着は,試料提供企業が2005年度市販用に開発した10種の素材を用いた同一サイズ・同一パターンのU首半袖シャツで,素材特性としては基本特性のほか,熱・水分特性(乾・湿時熱損失値,熱伝導率,熱コンダクタンス,接触冷温感,保温性,透湿性,吸湿性,吸水性)並びに力学特性(剛軟性,引っ張り,曲げ,せん断,表面摩擦,表面粗さ,圧縮特性)を測定した。肌触りについては,手触りと着用感を,環境温度22℃,28℃,34℃,いずれも湿度50%一定の条件下で,SD法を用いて評価した。被験者はMサイズ着用可能な女子学生16名である。
    結果 手触りにおける快適感は,いずれの温度条件においても,共通して滑らかさ・柔らかさ・べたつき感という布地の表面的な風合いを示す官能量が高い相関を示し,物性値としては通気性,コース方向における表面粗さ変動(SMD)の寄与が大きいことが示された。一方,着用感における快適感については,環境温度の関与が見られ,22℃では,しなやかさ,28℃ではこれにゆるみ感が加わり,34℃では,さらに清涼感が加わることが示された。また,着用感と素材物性間の重回帰分析によると,22℃では,表面粗さと摩擦,28℃では,吸湿性が加わり,34℃では,引張り・圧縮などの力学特性の関与が認められた。
  • 田村 照子, 井上 真理, 大泉 幸乃, 小柴 朋子, 斉藤 秀子, 薩本 弥生, 嶋根 歌子, 土肥 祥司
    セッションID: A1-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的: 現在国内外の繊維・アパレルメーカーによって多種多様なストレッチ衣料が開発・市販されている。特にストレッチの結果生じる衣服圧は、人体表面に作用することにより血流の阻害・促進、振動抑制、筋力増進、疲労の増大・低減、さらには、自律神経系・免疫系にも影響することが報告され、医療分野では、適正な衣服圧調整により静脈血栓症の予防や下肢静脈瘤の治療に資する弾性ストッキングが認可されている。しかしこれらの衣料開発の背景にある衣服圧は果たして適正に評価されているのか、その表示は信頼しうるものか否か、消費者視点での検討が必要と考えられる。本研究では、まずわが国における衣服圧の評価技術・評価基準に関する現状を調査し、衣服圧について今後取り組むべき課題を抽出したいと考えた。
    方法: 調査対象は、パンティストッキング・ソックス製品の生産企業5社、インナー・ファンデーション製品の生産企業8社、およびスポーツウェア・サポーター製品の生産企業4社で、各社が採用している衣服圧測定機器、測定法、表示方法、課題意識、等に関する聞き取り調査を実施した。
    結果: 各企業が使用している衣服圧測定機器は、大きく4種に分けられた。測定対象としてはダミーと人体モニターが混在し、測定条件が不統一であること、また、表示単位もgf/cm2, mmHg, kPa, hPaなどが混在し、市販品パッケージの表示衣服圧が同一であっても内容は必ずしも同一とはいえない状況にあることが示された。この結果は、衣服圧表示の現状が必ずしも消費者にとって望ましいものではなく、今後の改善が求められるべき課題であることを示唆し、この結果を受けて、産・官・学共同参加型の衣服圧研究会が立ち上げられた。
  • 平林 優子, 大村 知子, 布施谷 節子, 駒城 素子
    セッションID: A1-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 身体寸法、着装感の評価および普段購入するサイズの相違を明らかにし、胸囲および官能評価での適合する号数の動作適応性や着用時のズレを分析する。
    方法 実験1 着用実験によるサイズ適合官能検査:被験者は若年女性49名(平均22.3歳)で、実験衣は前あきシャツで、バスト実測値を基に2号小さい、適合、2・4・6号大きいサイズの5枚である。それぞれのシャツのサイズ官能評価および「適合する」と「好み」のサイズの選択をした。被験者にはサイズを提示せず、ランダムな順で着用した。購入する号数についても調査をした。その結果について分散分析および主成分分析した。実験2 動作性とずれに関する着用実験:被験者は10名で、実験衣は胸囲に対応したものと実験1の官能評価で適合としたサイズのシャツである。身体の計測点に赤外線発光マーカーを、実験衣に反射マーカーをそれぞれ装着して、腕の挙上等の動作をビデオカメラで撮影した。三次元動作分析システム(Hu-Tech製)を用いて各マーカーの座標値を求め、最大動作時と動作後の衣服のズレを求めた。
    結果 官能評価による適合する号数は胸囲実測値に対応するものとほぼ一致していたが、購入する号数では胸囲の大きさにより顕著な違いが見られた。また、着用状態について、衣服の動きと身体の動きとを同時に座標値で捉えることで評価できる可能性が示唆された。
  • 森 俊夫, 淺海 真弓, 小見山 二郎
    セッションID: B1-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 天然染料による染色方法は極めて複雑であり,色の再現性の難しさや染色堅牢度などの点で大きな問題もあるが,深みや渋みのある色など自然感のある色合いを出すことができる.合成染料とは異なる天然染料特有の染色性の評価は定性的,視覚的判断でしか行われておらず,微妙で複雑な色調を有する天然染料による染色物を色彩科学的に解明することは困難であった.本研究では,画像解析を適用することにより天然染料と合成染料で染めた布の色彩分析を行い,明度,彩度,色相の視点から両者の違いについて検討する.
    方法 試料として,各種天然染料および各種合成染料で染めた綿,絹および羊毛の染色布を選び,カラースキャナからこれらの画像を取り込んだ.画像解像度は200dpiで,各画像における色彩情報を約0.1mm間隔で求めた.取り込んだ各RGB画像を明度(L*),彩度(C*)および色相(H*)画像に変換し,L*およびC*画像から各画素のL*値およびC*値を算出し,H*画像からは赤を基準(0°)とした色相角H*を色彩情報量として求めた.
    結果 横軸に水平(垂直)方向の画素位置をとり,縦軸に垂直(水平)方向のL*値の合計値SV- L*(SH- L*)をプロットし,天然染料と合成染料による染色物の変動曲線を比較した.綿の染色布では,SV- L*(SH- L*)は水平(垂直)方向の場所により大きく変動し,天然染料は合成染料による染色物に比べて変動が大きいことが分かった.同様に,C*およびH*画像についてもの変動曲線を求めた.各変動曲線から,各色彩情報量の平均値,標準偏差並びに変動率(CV)を算出した.羊毛の染色布ではC*画像,絹の染色布ではH*画像で,天然染料と合成染料の染色物の変動率に違いが見出された.
  • ーフェニルエステル系紫外線吸収剤の利用ー
    織田 博則, 杉山 章, 佐藤 昌子
    セッションID: B1-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的最近、天然素材に含有されている色素への関心が高まっているが、天然素材含有色素を繊維染色用材料として用いる場合には、色素の光不安定性が問題になる。ここでは、紫外線カット材料の生活環境への有効利用を目的として、紅花赤色素カルタミン、クチナシ青色素を天然色素のモデルに選び、フェニルエステル系紫外線カット材料の日光堅ろう度改善効果を検討した。
    方法天然色素は市販品をそのまま用いた。フェニルエステル系紫外線カット材料は従来の方法で合成した。また、その金属錯体についても、常法により合成した。クチナシ青色素の光退色挙動は各種添加物を含むクチナシ青色素溶液をtlcセルロース板上に滴下し、乾燥後、キセノンアーク灯を照射し検討した。紅花赤色素カルタミンについては、酢酸セルロース中カーボンアーク灯を照射し、その退色挙動を追求した。
    結果と考察紅花赤色素カルタミンの光退色は酢酸セルロースフィル中カーボンアーク灯照射により、3hで60%、5hで77%、15hで完全に退色するのに対し、ここで使用した数種のフェニルエステル系紫外線カット材料は、15hの光照射で85~90%程度の退色が見られ、わずかな抑制効果を示した。次に、クチナシ青色素の光退色については、キセノンアーク灯を1h照射した場合、75%退色するのに対し、フェニルエステル系紫外線吸収剤の添加の系では40~60%に退色は抑制され、フェニルエステル基を2個有する化合物添加の系では、更に優れた抑制効果が見られた。また、ニッケル錯体の効果や、新規合成化合物の地球環境負荷についても検討している。
  • 尾畑 納子, 桑原 宣彰
    セッションID: B1-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 本研究では水環境に負荷をかけない洗浄方法の一つとして、各種機能水に着目し、その除去性を検討している。すでに、各種繊維に付着する農薬の除去性を調べ、ナイロン汚染布に対してアルカリ電解水の洗浄効果が顕著であったことを報告した。本報告では、これまでの種々の洗浄液での洗浄性の結果を踏まえ、さらに効果的な洗浄液組成を提案するため、機能性電解水をベースとして、酵素や界面活性剤を助剤として添加した系における洗浄性について調べた。
    方法 洗浄液:アルカリ電解水(pH11.5)、電解還元水(pH6.7)補助成分:酵素(エスペラーゼ4)、界面活性剤(SDS)、汚染布:湿式人工汚染布(洗濯科学協会製)洗浄条件:洗浄液にSDSや酵素を適宜混合した洗浄液を調製し、洗浄温度20℃~40℃で、洗浄力試験機ターゴトメーター(40rpm~160rpm)により10分間洗浄を行った。洗浄性評価:汚染布の洗浄前後の表面反射率から求めたk/s値より除去性を算出した。また、酸化還元電位測定により洗浄前後の液性の変化を調べた。
    結果 各種洗浄液単独の系での湿式人工汚染布の洗浄性は、機械力が大きくなる程良くなるが、洗浄温度に関しては40℃よりも30℃の方が効果的であった。次にこれらの洗浄液に酵素や界面活性剤を添加した場合、単独系の場合と同様に機械力が大きくなるに従い洗浄性も良くなった。酵素や界面活性剤の添加効果が最も著しいのはアルカリ電解水との混合系であった。通常の洗濯濃度に相当するSDS 8mmol/lの半分に相当する4mmol/lの添加によって、十分な洗浄効果を発揮した。しかし、電解還元水ではアルカリ電解水のような洗浄効果は認められなかった。 
  • 大橋 郁美, 大和田 薫, 角田 光雄
    セッションID: B1-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    紫外線応答型TiO₂光触媒のクリーニング特性を調べた。TiO₂粒子を担持した綿布からオレイン酸、トリオレイン、流動パラフィンが高圧水銀灯の照射によって除去されることを確かめた。ポリエステル布を用いて同様の効果を調べたが、期待した効果が得られなかった。次にTiO₂担持ポリエステルからセバム汚れが通常の蛍光灯の照射によって除去されることがわかった。単純化したモデル汚れとしてエイコサンを用いたブラックライト照射の実験を行い、30%程度の除去率が得られた。一方、可視光応答型TiO₂の開発が進んでいる。そこで、可視光応答型TiO₂を入手し、人工太陽を用いてその効果を調べた。その結果を報告する。  ポリエステル布(JISL0803)に、窒素ドープしたTiO₂(可視光応答型)を担持させ、エイコサン、およびエイコサンにオイルバイオレットを添加した物質を汚れとし、人工太陽光源の照射によって除去性を調べた。除去性の評価は反射率法、重量法で行った。  その結果、オイルバイオレットはほぼ2時間の照射で約100%除去される。エイコサンは20%程度除去される。照射距離や照射時間、温度などの効果について考察した。
  • 藤生 直恵, 角田 光雄
    セッションID: B1-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    円形型、ヘラ型、ホチキス型の3種の超音波装置を用いて、JIS L 0803の染色堅ろう度試験用添付白布の綿とポリエステルに付着させた部分汚れのカレー、口紅、ファンデーション、墨汁の除去性を調べた。評価は目視と重量法で行った。重量法は系統的データがとりにくく、目視は精度に問題があったが、除去性については総合的な点からホチキス型が適していることが分かった。洗浄液はエタノール水溶液、これに酵素、界面活性剤、漂白剤を個別に加えた液およびこれらを全て混合したものを用いた。水を洗浄液として超音波の効果を調べ、その有効性を確認した。また水よりもエタノール水溶液の方が除去性が良かった。洗浄剤中の成分としては漂白剤が最も効果があった。口紅とファンデーションの除去性は綿>ポリエステルであり、カレーと墨汁はポリエステル>綿であった。これらは目視およびL*a*b*から白布との間の色差ΔE={(L*0-L*)2+(a*0-a*)2+(b*0-b*)2}1/2、走査型電子顕微鏡(SEM)で評価を行った。なお、0の添字は白布に対応する。これらによる測定値間の比較を行った結果、ΔE値が評価法として簡便であり、数値化ができかつ目視の結果に対応することが分かった。
  • 兵藤 亮, 金田 英之, 田村 直也, 大熊 洋一, 宮前 喜隆, 掬川 正純
    セッションID: B1-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 最近の生活者の環境や衛生に対する意識の高まりやライフスタイルの変化から、洗濯環境も大きく変化している。特に洗濯機の大型化や節水コースを特徴とする洗濯機の普及が進み、たくさんの衣類を少ない水で洗濯する、いわゆる低浴比洗濯へのシフトが進んでいる。今回は、このような洗濯環境の変化が衣類に与える影響を、衣類ダメージの観点から把握することを目的とし検討を行った。

    方法 全自動洗濯機を用いて綿や化繊など各種衣類・タオルなどを処理し、浴比の変化や繊維の種類の違いによる影響を調べた。また、洗濯浴中の衣類における摩擦低減効果のある基材を探索し、実洗濯における効果の確認を行った。

    結果 毛羽立ちの観点からはいずれの衣類においても、浴比の低下に伴いダメージが大きくなる傾向にあることがわかり、特に綿素材のニット地などでは顕著であった。このことからも、洗濯浴中に衣類が詰め込まれるほど被洗物の繊維に与える悪影響が大きくなることが示唆された。この結果を受け、衣類ダメージは衣類同士の摩擦が原因となるものと仮定し、摩擦を低減する基材をスクリーニングし実洗濯において検証したところ、CMCなどのセルロース誘導体の一部に効果があることがわかった。今後、環境に配慮した水を大切にする洗濯の中で、洗濯時に生じる摩擦を抑制していく機能は、衣類を長持ちさせ資源を大切にする観点から重要な技術になると考える。
  • 金田 英之, 兵藤 亮, 田村 直也, 大熊 洋一, 宮前 喜隆, 掬川 正純
    セッションID: B1-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 第一報では、近年の洗濯機の大型化や節水コースの普及、いわゆる低浴比の洗濯により衣類ダメージ、特に衣類の毛羽立ちが悪化することを報告した。毛羽立ちが生じると、衣類の色合いが薄く見えたり、繊維の脱落によって繊維がやせるなど、外観、風合い劣化が生じる。本報告では、家庭洗濯における衣類の色合い変化に着目し、毛羽立ちの影響について確認した。

    方法 全自動洗濯機の低浴比条件で淡色や濃色の衣類を洗浄し、毛羽立ちが生じた衣類サンプルを作成。これに対し、塩素、蛍光剤、紫外線処理をおこない、衣類の毛羽立ちの有無による衣類の色合い変化の度合いを確認した。

    結果 家庭洗濯における衣類の色合い変化は、消費過程における様々な因子が重なり合って生じていることが確認された。その影響度は衣類の色によって傾向が異なり、淡色衣類では蛍光剤の影響が、濃色衣類では日光や水道水中の塩素の影響が大きくなる傾向が認められた。特に、濃色衣類の場合には毛羽立ちが色合いの変化に与える影響が大きく、紫外線など他の因子との組合せによっても色合いの変化度合いが変わることを確認した。これは、繊維が毛羽立つことによって、紫外線などの影響をうける繊維の表面積が増加することと関連があるのではないかと推測している。
     これらの結果から、衣類の毛羽立ちを抑制することは、紫外線などの二次的因子の影響を抑制することにもつながり、衣類本来の色合いを守る有効な手段となると考えられる。
  • 福村 明子, 安藤 真美, 戸塚 あゆみ, 山本 崇, 北尾 悟, 前田 俊道, 原田 和樹
    セッションID: D1-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は、長年、ルミノール化学発光法を用いて、ペルオキシラジカル捕捉活性能の測定法の普及に努めてきた。今回は、高価な電子スピン共鳴装置(ESR)を用いずに、ルミノール化学発光法で、食材のヒドロキシラジカル捕捉活性能の動向がつかめるかどうかを検討した。
    【方法】試料は抗酸化能が高いとされる大豆醤油や魚醤油を用いた。方法は鉄を反応のトリガーとして過酸化水素を用いたフェントン反応から、アルカリ条件下のルミノールによって発生したラジカルの発光(ケミルミネッセンス)を測定するために、アロカ社製ルミネッセンスリーダAccuFLEX Lumi400やキッコーマン社製ルミテスターC-100を使用した。一方、比較実験としては、日本電子(JEOL)社製ESR JES-FR30を用いて、鉄を反応のトリガーとしたフェントン反応から発生したヒドロキシラジカルをスピントラップ剤DMPOと共に測定した。両者の結果の比較検討は、発生したラジカルの半分量を捕捉する醤油濃度と定義したIC50値で行った。
    【結果】比較した醤油試料のIC50値は、ESRによる測定では0.11%~0.92%、ルミノール化学発光法による測定では、0.01%~0.28%の範囲であり、ルミノール化学発光法の方が感度の良さを示した。なお、現在、相関係数rは0.724で、コバルトをフェントン反応のトリガーに用いた場合と同様の傾向があり1)、ルミノール化学発光法で、ヒドロキシラジカル捕捉活性能を持つ食材のスクリーニングができる可能性が示唆された。
    1) 安藤真美, 薦田礼司, 切通舞, 戸塚あゆみ, 山本崇, 前田俊道, 原田和樹:日本農芸化学化学会2007年度大会講演要旨集, 印刷中 (2007).
  • 佐々木 智子, 永塚 規衣, 粟津原 理恵, 喜多 記子, 長尾 慶子, 原田 和樹
    セッションID: D1-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は、水産物が持つ抗酸化能をラジカル捕捉活性能の観点から研究を行ってきた。今回は、活性酸素損傷の中でもDNA上の脱プリン/ピリミジン損傷に注目し、その損傷を定量できる脱塩基DNA法を用いて、鮮魚肉から水産加工品への加工過程における抗酸化能の変化を、イカを中心にしてDNA損傷に対する防御能の観点から研究を行った結果を報告する。
    【方法】試料は、市販のケンサキイカ、コウイカ、ヤリイカなどの鮮度の良い生肉を用いた。また、水産加工品としては、原料がスルメイカである市販の魚醤油(いしる)、手作りのスルメイカの煮こごりを用いた。生肉の場合、水抽出液0.4g/mlを原液として使用した。また、ポジティブ・コントロールとして、抗酸化能が高いルチン(ビタミンP)100ppm(164µM)の10%エタノール溶液を使用した。活性酸素はヒドロキシラジカルを用い、その発生はフェントン反応より行った。脱塩基DNA法は既に報告した手順で行った1)
    【結果】どのイカの生肉においても、ヒドロキシラジカルによるDNA損傷に対しての防御能は認められなかった。一方、イカが加工の過程を経ると、スルメイカの煮こごりでは17.67%、イカの魚醤油(いしる)では34.06%のDNA防御率を示し、加工が進むにつれて防御率が増大した。その時のポジコンのルチンのDNA防御率は35.46%であった。少なくとも、イカの場合、加工を経て発酵製品まで行くと、抗酸化能が増大することが、ラジカル捕捉活性能とDNA防御能の両観点から示唆された。
    1) 原田和樹・廣津大輔・前田俊道・粟津原理恵・長尾慶子・福田裕・芝恒男: 平成19年度日本水産学会春季大会講演要旨集, 印刷中. 2007.
  • 小西 雅子, 久保田 紀久枝
    セッションID: D1-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    炙り調理における魚食肉の香気特性 小西雅子* 久保田紀久枝** (*東京ガス(株),**お茶の水女子大) 目的 炙り調理した食材から発現する香気は、他の調理時に発現するものと は明らかに異なり、しかも嗜好性が高い場合が多い。本研究では、食肉や魚 肉などタンパク質食品における炙り調理時に発現する香気について官能評価 で特性を明らかにするとともに、その後期に寄与する化学成分について分析 し、その特徴を明らかにすることを目的とした。 方法 (1)数種類の肉と魚について炙り調理を実施し、通常の焼き調理と 比べ、炙り調理に適する食材を検索するとともにその炙り条件について検討 した。(2)定量的記述分析法による官能評価を実施し、炙り調理の風味の 特徴づけを試みた。(3)豚肉、鶏肉、海老について、発生ガス濃縮装置に 接続したガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)によるダイナミックヘッ ドスペース法を用い、調理により発現した香気成分について分析した。 結果 炙り調理専門店の調理長へのヒアリングによると、経験的に鶏もも肉 や豚ロース肉など適度に脂ののった食材や、脂は少ないが、海老や烏賊など が炙り調理に適しているということであった。豚ロース肉について、官能評 価を行った結果、炙った豚肉はスパイシーでナッツ臭が強いのに対し、フラ イパンで焼いた豚肉は水っぽい香りが強いことがわかったGC-MSによる分析 の結果、炙り豚肉はフライパンで焼いた場合に比べて香り成分の種類が多く 、総量も多いことが示された。炙ったエビでは、香ばしい香りに関与する含 窒素化合物が多く、フライパンで焼いたエビでは脂肪酸の分解物であるアル デヒド類が顕著に多かった。
  • 摩郡 千香子, 住谷 美紗, 白石 淳
    セッションID: D1-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的シジミは、日本で一年中食されている貝であり、その中でも、ヤマトシジミガイは特に多く食されている。当研究室では、これまで多くの北部九州産貝類の一般成分の周年変化を調べ、旬には主にグリコーゲンの増加が認められると報告してきたが、呈味に直接関与するのは、アミノ酸やヌクレオチドなどの成分であると言われている。そこで、これら成分の周年変化と旬との関係について調査した。
    方法2006年2月~2007年1月、毎月1回、福岡県前原市の長野川と泉川の合流地点の汽水域で採取したヤマトシジミガイを研究室に持ち帰り、人工海水:真水=1:1中で2日間通気飼育した。その後、軟体部を取り出し、筋肉部分と内臓部分に分け、凍結乾燥後、均一な粉末にし、これを分析試料とした。分析は、糖質はフェノール硫酸法、タンパク質はケルダール分解法、遊離アミノ酸及びヌクレオチドはHPLCを用いて行った。
    結果夏期の土用シジミの時期にはタンパク質、冬期の寒シジミの時期には糖質・グリコーゲンの増加が見られた。また、旨み成分について見ると、遊離アミノ酸では、筋肉部分で夏期にAla、冬季にAla、Lysが、内臓部分で夏期にAla、冬季にArg、Lys、His、Ala含有量が多く、ヌクレオチドでは、筋肉部分で夏期にUMP、IMPが、冬季にAMP、UMP、CMP、IMPが、内臓部分では夏期には変化がなく、冬期にはUMP、IMPの含有量が多かった。
  • 水野 時子, 山田 幸二
    セッションID: D1-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】魚は機能性成分として注目されているn-3系高度不飽和脂肪酸のEPAおよびDHA、含硫アミノ酸であるタウリン(Tau)に富んでいることから、生活習慣病の予防効果の観点から関心が高まり多くの研究がなされている。しかし、福島県いわき市の魚でもある「メヒカリ(マルアオメエソ)」の栄養成分についての研究は、ほとんど見られない。そこで、メヒカリの遊離アミノ酸と調理による遊離アミノ酸の変動について検討した。
    【方法】試料には、平成18年10月末に郡山市内のスーパーおよび魚市場より生鮮品を一尾として入手したメヒカリ(愛知県産、宮崎県産、福島県いわき市産)、アジ、サンマ、イワシを用いた。メヒカリの調理は、焼く(電子レンジ、オーブン)、揚げる(素揚げ、唐揚げ、天ぷら、フライ)を行った。一般成分は常法により分析し、遊離アミノ酸組成は日立L-8800型高速アミノ酸自動分析計を用い、生体液分析法で分析した。
    【結果】メヒカリは、アジ、サンマ、イワシに比べてタンパク質含量が低値であった。遊離アミノ酸総量(生鮮品100g当り)は、サンマ、アジ、メヒカリに対して、イワシが顕著に高値であった。メヒカリは頭と内臓の除去により減少した。主要なアミノ酸はサンマ、アジ、イワシではヒスチジン、メヒカリはリジン、Tau、グルタミン酸(Glu)、アラニン、ロイシンであった。メヒカリは漁獲地により、遊離アミノ酸総量、Glu、BCAA(分枝鎖アミノ酸)、アルギニン(Arg)に差が見られ、特にArgは愛知県産、宮崎県産に比べ、いわき市産で高値であった。生鮮品に対して調理品の遊離アミノ酸(除水分除脂質)は低下し、電子レンジ、オーブン、素揚げに比べて唐揚げ、天ぷら、フライでの低下が顕著であった。
  • 藤井 可奈, 佐藤 香澄, 加藤 みゆき, 庄司 善哉, 大森 正司
    セッションID: D1-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】北陸地方では米、魚、野菜などを利用して加工し、冬季期間中の食卓を構成する主要な素材となっている。 へしこは若狭地方の郷土料理のひとつで、内臓とエラを除去したサバを約1週間塩漬けした後、米ヌカと調味料を合わせたヌカ床に漬けこみ、半年から約1年熟成させたものである。これは伝統的な発酵食品の一種であり、原料の魚やヌカとは全く風味が異なる美味なものへと変化している。つまり微生物がこの間に大きく関与していることが示唆される。そこで本研究では、へしこの嗜好性とともにへしこの製造工程における成分変化と微生物との関わりを明らかにすることを目的として実験し、知見が得られたので報告する。
    【方法】米ヌカは福井米(コシヒカリ)から、へしこ(サバのへしこ)は福井県枩田商店で製造したものを用いた。まず、米ヌカとへしこ及びへしこヌカの一般成分分析(糖質、タンパク質、脂質、水分、アミノ酸等)を行い試料間の相違点を検討した。へしこから普通寒天培地を用いて微生物を分離し、グラム染色、アミラーゼ活性、プロテアーゼ活性等を測定することにより微生物の特徴を明らかにした。
    【結果】_丸1_へしこヌカ中の脂質含量はヌカに比べ増加した。米ヌカ中の水抽出物ではGABAが最も多く25.3mg/100g又、ヌカの加水分解物ではArgが最も多く3472.2mg/100gであった。米ヌカをブタノールで抽出するとGluが最も多く324.9mg/100gであった。_丸2_へしこより普通寒天培地を用いて微生物を分離して30株を得た。これをゼラチン液化試験を行うことにより、液化力の強い14株を得た。この14株を用いてグラム染色、及びプロテアーゼ活性を測定し、その活性が強く認められた5株を得た。
  • 久保 加織, 原 優希, 磯部 由香, 糸賀 千佳, 堀越 昌子
    セッションID: D1-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 琵琶湖固有種であるビワマスは、琵琶湖で最もおいしいとされる淡水魚で、刺身や滋賀県の食文化財にも採択されているあめのいおご飯として食される。一方、湖北の一部地域(南浜)では、脂の落ちた産卵後のビワマスを飯と麹菌と共に漬け込み、こけらずしというなれずしに加工して食する。本研究ではビワマスの脂質の季節変動と養殖魚との比較を行うと共に、こけらずしの栄養価および嗜好性について検討した。
    方法 琵琶湖で漁獲あるいは養殖されたビワマスの脂質をBrigh & Dyer法により抽出し、BF3によってメチル化後、GCMSおよびGCにより分析した。11月に桶漬けされたこけらずしを随時サンプリングし、pH、脂肪酸組成、核酸関連物質、揮発性成分について分析した。またこけらずしに生育する乳酸菌を分離し、分子生物学的手法を用いて属・種の推定を行うとともに、γ-アミノ酪酸(GABA)生成能について検討した。
    結果 ビワマスの脂質含量は3~4月に最も高くなり、卵が大きくなる秋にかけて減少した。卵を持つビワマスでは脂質に占める脂肪酸の割合が高く、卵では脂肪酸の割合が低かった。脂肪酸組成に季節変動は見られなかったが、養殖魚では餌の影響を受けていると考えられた。こけらずしは桶漬け22日目までにpHが4.0まで低下し、なれずしに特徴的な揮発性成分が出現した。その後は麹菌が関与すると考えられる多くの揮発性成分が出現した。IMPは呈味性に大きく寄与すると考えられる量が含まれていた。分離した乳酸菌はすべてLactobacillus属であったが、その中にGABA生成能を持つ種が存在していた。
  • 国民栄養調査と国民生活時間調査から見た朝食の摂取状況とその推移
    原島 恵美子, 本橋 洋子, 吉田 由紀子, 中川 靖枝
    セッションID: E1-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 望ましい食生活は、食事摂取基準に則った給与栄養目標の確保と規則正しい食事の摂取やどのような形態で誰と食事をするかなど、多くの要素が関わってくる。しかし、現代の生活環境における食事習慣は、価値観の多様化を反映して,3度の食事の意味や重要性は必ずしも十分理解されていない。食事の規則性に関わる欠食行為は、生活習慣病の一次予防という観点から定めた「健康日本21」において栄養・食生活の分野で、朝食欠食の減少を掲げている。本研究では1日の食事の中でも「朝食」に着目し、日本人の朝食摂取状況の年次推移と食事時間を調べ、若干の知見が得られたので報告する。
    方法 調査資料は、国民栄養調査結果、並びにNHK国民生活時間調査(2005年度版)を用いた。調査内容は、食事区分別欠食状況の年次推移、性・年齢階級別、職業別欠食状況の年次推移に分別した。時刻別食事の行為者率(性別・年齢階級別)は、平日・土曜・日曜に分別した。
    結果 昭和61年から平成16年までの食事区分別欠食状況の年次推移は、昼食や夕食に比べ朝食の欠食率が、平均的に約6%~7%高かった。男性の朝食欠食率は、女性の欠食率の約1.5倍であり、年齢階級別には、20歳代の欠食率が常に最も高く、高齢層ほど欠食率は低率であった。時刻別食事の行為者率は、平日の朝食摂取時刻の全国平均値は7時~7時15分が最高値を示し、同時刻の20歳代の行為者率は最も低く、全国平均の半数に止まった。以上のことから、朝食の摂取状況に問題があるのは、一貫して20歳代の男性であることが判明し、この年代に朝食の重要性を認識してもらうことが必要でそれに対応した改善策が急務と考えられた。
  • 本橋 洋子, 原島 恵美子, 吉田 由紀子, 中川 靖枝
    セッションID: E1-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 高校生は身体発育のピークを迎え、健康度が高いため、望ましい食生活への関心が低い傾向にある。また義務教育から開放され、行動範囲が広り、外食や嗜好的な食品・飲料に接する機会が多くなる。さらに生活時間の乱れは欠食などの問題を生じやすく、健全な食生活を営む力を身につけることが必要であるが、周囲の働きかけに対しては反発しやすい時期でもある。本研究は学生生活や単身生活へ移行する時期であるため、適切な選択・判断力を身につけさせる具体的な方策の一助としたい。
    方法 被調査者は都立高校(普通科・3校)の2年生男女219名とした。主要な調査内容は食生活状況:食事時刻、食事時間、欠食の有無、情報源:食にかかわる必要な情報、食事の準備能力:自分で整えられるか、食生活に対する問題意識や改善意欲等とした。調査票はHR及び、家庭科の授業時に配布し、記入後直ちに回収した。調査票の集計及び統計処理はSPSSを用い、学校別、性別、各項目間の関連はχ二乗検定で行った。
    結果 決まった時刻に食事を取っている生徒は平均55%であったが、学校差が見られた。性別では男女とも約3割が決まった時刻に取っていなかった。食事には十分な時間をとっているのは学校差、男女差とも見られなかった。欠食習慣のあるのは学校差が大きかったが平均的には約2割であった。食事や栄養について必要な情報を得ているのは18%から45%と大差が見られた。自分で食事の準備をすることが出来るのは平均56%で、女子は男子より10%多かった。食生活の改善意欲がある生徒は約半数であったが、男子が44%、女子は57%であった。これらの数値は改善の具体的目標とし、家庭科教育における学習の場の担う役割が大きいと示唆された。
  • 塚田 三香子, 齋藤 芽衣
    セッションID: E1-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】葉酸摂取不足は、胎児の先天異常である二分脊椎などの神経管閉鎖障害児出産のリスクを高める。日本人の食事摂取基準では妊娠を計画している女性と妊娠の可能性がある女性について、400μg/日以上の葉酸摂取が望まれる旨を記しているが、国民栄養調査の結果などは、20代、30代の女子が成人女子中で、最低の値であることを示している。本研究では、若年女性の食事中の葉酸摂取量を秤量記録法と蔭膳法により求めた。これら2種の方法で求めた葉酸摂取量の値とその差について評価し、どのような食生活が葉酸摂取に影響を与えているのかについて検討することを目的とした。 【方法】若年女子(平均年齢21.4±1.7歳)11名を対象とした。対象者は、平成17年冬季の3日間、朝食、昼食、夕食及び摂取した場合は間食を含め1日分の食事について、事前に配布した調査用紙に食材料名と原食品重量を各自で秤量、記載した。これを基にExcel栄養君(建帛社)を用いて葉酸を含む26種類の栄養素の1日あたりの摂取量の算出を行った(秤量記録法)。このとき食品群別摂取量も算出した。また摂取した食事と同一の食事をもう1食分用意し微生物定量法を用いて葉酸摂取量を実測したものを蔭膳法とした。 【結果】1.秤量記録法と蔭膳法を用いて算出した葉酸量の比較検討を行ったところ、この2つの葉酸量の間に有意な正の相関が見られた。2.本研究で対象とした集団の葉酸摂取量の平均値が蔭膳法では、227μg/日、秤量記録法では261μgであり、若年女性が摂取すべき400μg/日を満たしていなかった。3.秤量記録法によって求めた葉酸摂取量と正の相関の認められる食品群は、緑黄色野菜、その他の野菜などであった。
  • 中田  理恵子, 石田 麻夏, 井上 裕康
    セッションID: E1-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】葉酸は、核酸の生合成、アミノ酸の代謝、メチル基転移反応などに関するビタミンである。葉酸が欠乏すると、動脈硬化症のリスクファクターである血漿ホモシステイン濃度の上昇がおこり、生体に様々な影響を与えることから、生体内での葉酸の機能が注目されている。本研究では、葉酸欠乏ラットを用い、ホモシステイン代謝に関連する酵素について、欠乏過程での遺伝子発現の変化を検討した。
    【方法】Wistar系雄性ラット(3週齢)を、欠乏群(葉酸フリー)と対照食群(葉酸 8mg/kg diet)に分け、各々の実験食を自由摂取させた。実験食開始4,6,8週目に血液と肝臓を採取し、血漿と肝臓の葉酸量およびホモシステイン濃度を定量した。さらに、肝臓のホモシステイン代謝酵素遺伝子のmRNA量をreal time RT-PCR法にて測定した。
    【結果】血漿および肝臓中の葉酸量は、欠乏4週目より有意に減少した。血漿および肝臓中のホモシステイン濃度は、欠乏群において4週目から有意に上昇していた。葉酸欠乏ラットでは、ホモシステイン代謝に関連する酵素のうち、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸(MTHFR),メチオニン合成酵素(MS),シスタチオニン-β-合成酵素(CBS)のmRNA量が、対照食群に対して有意に減少していた。また、ベタイン-ホモシステインメチル基転移酵素(BHMT)は発現が増加する傾向にあった。以上の結果から、葉酸欠乏によるホモシステインの上昇は、ホモシステインからメチオニンへの代謝の抑制と、ホモシステインからシスタチオニンへの分解の抑制によって起こると考えられ、その調節は、MTHFR,MS,CBSの各遺伝子の発現によって調節されていると考えられた。
  • 塚本 幾代, 稗 万美子
    セッションID: E1-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    [目的]骨髄細胞は、M-CSF(macrophage colony stimulating factor)とRANKL(receptor activator of NF-κB ligand)の存在下で破骨細胞に分化する。ビタミンC(VC)が、骨髄細胞の破骨細胞への分化にどのように影響するかを検討した。
    [方法]ラットの大腿骨・脛骨から骨髄細胞を採取し、10%FCSとM−CSFを含むMEM培地で、VC存在下と非存在下で培養した。3日後、培地交換とともにRANKLを添加し、72 hの培養を行った。培養細胞の生細胞数、酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)活性, TRAP染色による破骨細胞数の計測を行った。また、RANKLシグナリングにおけるVCの影響を明らかにするために、RANKL添加後、0~120 minの培養を行い、MAPK(JNK, ERK, p38MAPK)のリン酸化をwestern blotで調べた。
    [結果]VC存在下と非存在下において、生細胞数には差異が認められなかった。TRAP活性は、10, 50, 100μg/mlのVC存在下で、VC非存在下の培養細胞の約50, 35, 35%に減少した。多核(3個以上の核)のTRAP陽性細胞数も、10, 50, 100μg/mlのVC存在下で、VC非存在下の培養細胞の約45, 35, 10%に濃度依存的に減少した。即ち、VCは、破骨細胞形成を阻害することが明かとなった。western blotの結果、VCは、ERKの活性化には影響しなかったが、RANKL添加後5,15 min でおこるp38MAPKと JNKのリン酸化を抑制することが判明した。以上の結果から、VCは、p38MAPKと JNKの活性化を阻害することによって、破骨細胞形成を抑制したと考えられる。
  • 内田 友乃, 池田 彩子, 市川 富夫, 山下 かなへ
    セッションID: E1-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】現在までに、ラットにおいて、ゴマがビタミンEであるγ-トコフェロールの代謝を阻害することによって体内γ-トコフェロール濃度を上昇させることを見出した(1)。さらに本研究では、ビタミンEの中で最もビタミンE活性の高いα-トコフェロールの代謝に対するゴマの影響を明らかにすることを目的とした。 【方法】ビタミンE無添加飼料で4週間飼育したビタミンE欠乏ラットに、α-トコフェロールのみ(A群)、α-トコフェロールとγ-トコフェロール(AG群)、α-トコフェロールとゴマ(AS群)をそれぞれ添加した飼料を1週間摂取させた。すべての飼料のα-トコフェロール添加量は等しく、AG群とAS群の飼料のγ-トコフェロール含量も等しくした。屠殺前12時間の尿と、血液および主要組織を採取した。 【結果】α-トコフェロール代謝産物の尿中排泄量は、A群とAG群で等しく、この2群に比べてAS群では40%程度に減少した。一方、血清、肝臓、腎臓、肺のα-トコフェロール濃度は、A群とAG群で等しく、この2群に比べてAS群では有意に上昇していた。以上の結果から、ゴマは、γ-トコフェロール代謝だけでなく、α-トコフェロール代謝も阻害することによって、血液や組織のα-トコフェロール濃度を上昇させることが示唆された。 (1) Ikeda et al. J Nutr, 132, 961 (2002)
  • 三浦 陽子, 永島 麻里, 山田 和, 長岡 利, 山下 かなへ
    セッションID: E1-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】近年、コレステロール代謝に関わるタンパクであるSR-B_I_やABCA1がビタミンE代謝にも関与しているとされ、コレステロールとともにα-Tocを輸送する経路の存在が示唆されている。演者の研究室では、脳内α-Toc量は高α-Toc食を与えても変化しにくいが、ゴマ投与により顕著に上昇することを明らかにしている。本研究はゴマ摂取による脳中Toc濃度上昇にSR-B_I_及びABCA1発現量が関与している可能性を調べるため、ゴマ摂取時のSR-B_I_及びABCA1遺伝子発現量をラットとα-TTP遺伝子欠損(α-TTP KO)マウスを用いて検討した。 【方法】〈1〉4週齢の雄性Wistar系ラットをα群(α-Toc50mg/kg)、ゴマ群(50α+200gゴマ/kg) 、E欠群に分けて4および8週間飼育した。その後、脳・肝臓及び血漿中Toc濃度と血漿中総コレステロール濃度を測定するとともに、脳と肝臓のSR-B_I_及びABCA1遺伝子発現量をリアルタイムPCRで測定した。〈2〉自家繁殖させた7週齢の雄性α-TTP KOマウスを用いて、α群(α-Toc50mg/kg)、ゴマ群(50α+120gゴマ/kg)、E欠群に分け、4週飼育した後〈1〉と同様の実験を行った。 【結果】〈1〉脳・肝臓中α-Toc濃度はゴマ群で有意な上昇が見られたが、SR-B_I_及びABCA1遺伝子発現量は、各群間に有意差は見られなかった。〈2〉脳・肝臓中α-Toc濃度は、E欠群に比べてゴマ群で有意に上昇した。SR-B_I_及びABCA1遺伝子発現量は、各群間に有意差は見られなかった。〈1〉,〈2〉ともに血漿中総コレステロール濃度は、各群間に差は見られなかった。以上より、ゴマ成分はSR-B_I_及びABCA1遺伝子の発現自体には影響していないと考えられた。
  • 石田 享子, 原 直也
    セッションID: H1-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】本研究の目的は、昼間の照明計画として昼光と室内照明の適切な併用方法を明らかにすることである。昼光利用時の室の視環境評価には、室の大きさや内装、窓形状、昼光環境、室内照明などの多くの要因が影響を与えている。本報では、室内照明の器具種類とその出力を検討対象として行なった実験の結果を示す。 【方法】12畳のリビングを想定した1/5 縮尺模型を用いた主観評価実験である。壁と天井は反射率77%、床は33%である。模型内には人形とテーブルを設置する。被験者は3名、ソファーに座ってくつろぐ状態での眼高75cmを想定して頭部のみを模型内部に挿入する。条件を変化させる毎に30秒間順応する。実験変数は、屋外の明るさ(4段階)、室内の明るさ(5段階)、室内照明の器具種類(3種類:シーリング、ダウンライト、ブラケット)である。評価は、室内の明るさ、室内の明るさのバランス、人形の視認性、まぶしさなどである。 【結果】室内の明るさに関しては、屋外の輝度が低い場合に室内照明を点灯させることで、室内の明るさ評価を高くすることが可能である。しかし、屋外が非常に高輝度な場合は室内照明を併用させても明るさ評価は変化しない。また、被験者によって異なるものの照明器具によっては昼光と併用させることで昼光のみのときよりも明るさ評価が低くなる条件がある。 室内のバランスと室内外の明るさのバランスに関しては、屋外の輝度が高い場合、シーリングを用いると昼光のみの場合と同程度の評価であるが、ダウンライトやブラケットでは評価が適している側に変化する。この原因として、室内の輝度分布が影響していると考えられる。視認性・まぶしさ評価に関しては顕著な違いは認められない。
  • 井上 容子, 泊 美穂
    セッションID: H1-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    [目的] 照明技術が進み、LEDをはじめ多彩で効率の良い光源が提供され、「有彩色光」がこれからの照明光として積極的に利用されることが予測される。そこで、光色が視覚心理に及ぼす影響を検討し、色光を導入した新しい照明計画のための知見を整備する。 [方法] 5光色(三波長型の白・青・緑・黄・赤)×5照度(0.1~1800ルクス)の条件下で、印象評価(SD法)、視力測定、色識別、写真による人の見えの評価を行う。実験室(W2.7m×D2.7m×H2.6m)は光天井、内装白(反射率88_%_)であり、均一輝度空間である。被験者は若齢男女各8名、高齢男女各8名の計36名である。実験は光色別に実施し、被験者は前室(床面照度0.1ルクス)で10分間順応後、実験室(視標面0.1ルクス)に移動し、入室直後に印象評価を行う。その後、更に10分間順応して、一連の評価を行い、最後に再度、印象評価を行う。次いで、設定照度を変え、同様の測定を1800ルクスまで繰り返し行う。 [結果]各色光による視力の白光視力に対する比率は、低照度で赤光が高く、高照度では差が小さい。色の見えは全照度について白光が高い順位にあり、色光と同系色の識別率が低い。低照度では緑光の色識別率が低く、高照度では黄光が低い。人の見えも全般的に白光が良く、高齢者は低照度で緑光での見えが悪い。印象評価では若齢者、特に女性が光色の影響を受け易い。高齢者は高照度で色光による印象変化が見られる。活動性・寒暖性・力量性は赤光での評価が高く、安心感・快適性は白光、明るさ感・清澄感は青光での評価が高い。光色の影響は全般的に高照度より低照度において大きく、暗い空間の照明計画において色光の特徴が発揮されると考えられる。(H 18 年度社会安全研究財団研究助成金)
  • 棚村 壽三, 光田 恵, 小林 和幸
    セッションID: H1-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的
     近年建設された住宅では、対面型キッチンの間取りが多くなっている。そういった間取りでは、調理によって発生した臭気、油煙などが生活環境の広範囲にわたって影響を及ぼすことが考えられる。また、住宅の高気密化が進み換気量が従来の住宅に比べ少ない傾向がある。そのため、調理臭が生活環境中に長く滞留し、空気環境が悪化されることが懸念される。そこで本研究では、実物大のLDKを想定した実験室を用いて調理臭の分布を測定するとともに、経時変化により臭気質がどのように変化するかを検討する。
    方法
     実験に用いた実験室は、15畳相当のLDKを想定した床がアクリル、天井・壁がガラスの建材臭の影響が極力少ない条件で行った。調理臭の分布測定には、においセンサー(AET-S、新コスモス電機)を36点設置し、30秒間隔で測定を行った。また、三点比較式臭袋法により臭気指数を算出し、においセンサーとの対応関係を確認した。調理品目は焼肉、焼魚、コロッケとし、調理熱源はガスレンジとIHクッキングヒーターで各調理品の調理を行った。 臭気質の評価は、調理品近傍で採取した試料をサンプリングバックに保管し、調理直後から48時間後まで5回被験者に評価させた。
    結果および考察
     調理臭の分布を測定した結果、においセンサーの値と臭気指数の対応関係がみられた。このことにより、調理臭の分布をにおいセンサーを用いて測定することが可能であると確認できた。また、調理熱源と調理品により室内への分布に違いがあることが示唆された。臭気質の評価に関しては、経時変化に伴い変化する臭気質は調理品ごとに差がみられた。今後は、調理による残留臭の原因物質を解明し、有効な除去対策を検討する必要があると考えられる。
  • 異なる気温下での生理・心理反応の男女差について
    水田 祐美子, 久保 博子, 磯田 憲生
    セッションID: H1-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年では空調機器により快適な環境を創造できるようになり、冷房に関する多くの研究より至適温度が提案されていが、多くは全体の80%の人に対する快適範囲であり1)、それ以外の人についてはほとんど考慮されていない。より多くの人に快適な環境を創造するため、至適温熱環境の個人差について検討することを目的とした。夏期に若齢男女を被験者として、選択気温実験により個人の快適温度を明らかにし、また好みの気温が異なる被験者を設定気温下に曝露し生理・心理反応を見ることにより温熱的特徴の性差を把握し快適な温熱環境を提案したい。 【方法】(1)選択気温実験:被験者は大学生の男女(男性32名、女性21名)を用いて行った。28℃一定で20分間椅座安静状態を保ち、その後120分間自由に気温を調節した。生理反応として皮膚温・直腸温、心拍数、舌下温、血圧、体重を測定し、心理反応として快適感・温冷感を申告した。(2)設定気温実験:被験者は選択気温実験で用いた内の男性20名、女性21名で行った。前室で30分間、実験室で60分間椅座安静状態を保ち、条件は前室27℃・実験室23℃、前室29℃・実験室33℃の2条件とした。測定項目は選択気温実験と同様の項目を測定した。 【結果】選択気温実験の結果、選択気温は男性22.8~29.6℃、女性は22.5~30.1℃の間で選択された。平均は男性26.4℃、女性26.5℃でありほぼ同じ値であったが、女性の方が快適な範囲が広かった。設定気温実験では23℃の条件において女性の足背皮膚温が男性より低く、低い気温下での女性の末梢部の冷えが考えられる。また、33℃の気温において、男性の方が水分蒸発放熱量が多く、高温環境下では発汗による放熱が女性より多くなることが分かった。心理反応では、男性の方が「涼しい」申告ときに「快適」と感じていた。 [文献]1)ASHRAE;ASHRAE Standard55,Thermal Environmental Conditions for Human Occupancy, P5,ANSI/ASHRAE,2001
  • 寺田 留美, 佐々 尚美, 久保 博子, 磯田 憲生
    セッションID: H1-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】既往の研究1)で高齢女性の好む気温と生理および心理反応が明らかにされている。しかし気温選択の要因のひとつである体脂肪量・体表面積などの異なる男性を対象とした実験はあまり行われていない。そこで高齢男性を対象として同様の実験を行い、高齢男性の選択気温下・設定気温下における生理および心理反応を明らかにすることを目的とする。 【方法】実験は奈良女子大学生活環境学部環境調節室で行った。被験者は健康な高齢男性23名で、好む気温を明らかにする選択気温実験および24~32℃の気温下に被験者を曝露する設定気温実験ともにご協力して頂いた。被験者は夏服着用(0.4clo)で選択気温実験・設定気温実験ともに椅子座安静で行った。実験中は生理反応として皮膚温・舌下温・血圧・心拍数・体重を測定し、心理反応として温冷感・快適感などを申告してもらった。実験は2006年8月18日~9月6日に行った。 【結果】選択気温実験において高齢男性の選択気温範囲は24.8~27.9℃と、高齢女性の選択気温範囲24.4~29.3℃に比べて狭かった。平均選択気温は高齢男性26.7℃、高齢女性27.0℃とほぼ同等で、平均皮膚温においても男性33.7℃、女性33.8℃と性差はみられなかった。設定気温実験において高齢男性は気温24℃の場合、女性より躯幹部皮膚温が低下する傾向がみられた。この傾向は選択気温実験で低い気温を選択した人ほど低下していた。男性は女性より「やや涼しい」と感じるとき最も快適性は高くなり、26℃近傍で最も快適性が高くなった。 [文献]1)衣笠奈々恵(2005):高齢者の個人差を考慮した至適温熱環境に関する研究,平成17年度奈良女子大学修士論文
  • -住宅の温熱環境-
    東 実千代, 磯田 憲生, 久保 博子
    セッションID: H1-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】近年の環境に対する問題意識の高まりとともに、環境共生の考え方が徐々に浸透している。本研究は、既存の自然環境や土地の形状をできる限り残存させ、建築材料も環境への負荷を考慮して計画された住宅地に着目した。住宅地内の住戸を対象として継続的に環境実測調査を行い、季節変化や緑の成長が住宅地に及ぼす影響を把握することを目的としている。 【方法】奈良市内に2005年4月に竣工したコーポラティブ住宅群10戸のうちの5戸を対象とした。対象住宅は全て木造住宅で、住宅によってはRC造の地階がある。測定項目は、外気温度・相対湿度(百葉箱,h=1.2m)、居室の温度(h=0.1、0.6、1.1m)、相対湿度(h=0.6m)、床暖房を採用している居室については床温も測定項目に加えた。測定にはサーモレコーダーを用い、10分間隔で連続的に測定している。2005年7月に測定を開始し、現在も継続している。 【結果】調査対象地は盆地特有の内陸性気候であるが、夏期における住宅地外気の平均温度は奈良市気象台データ(奈良市)に比べて低い傾向があり、住宅地内の樹木による暑熱緩和効果の影響と考えられた。冬期には氷点下を記録する日もあり、相対湿度が低い傾向があった。室内温熱環境実測結果の中から本報では、N邸、Y邸の結果を中心に報告する。各住宅の温熱環境は、立地条件や植生との関係による特徴がみられ、夏期にはエアコンをほとんど使用しないで生活していることがわかった。冬期の実測結果からは、住宅性能や居室の気積、暖房方法によって異なっていた。床暖房運転時の床温、室温の変動は、床暖房システム(電気式・温水式)による違いに加え、床仕上げ材の蓄熱量の違いによる特徴がみられた。
  • 南向き室・西向き室における人体影響
    井上 彩香, 東 実千代, 磯田 憲生
    セッションID: H1-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】夏季における室内の暑熱緩和が期待できる緑化について、一般住宅でも取り入れやすい窓際植生に着目した。その日射遮蔽効果と緑の心理的効果を把握し、南向き室と西向き室における環境の違いと緑の総合的効果を検討する。 【方法】温熱環境実測調査:奈良女子大学内の隣接した南向きの2室を実測対象室とし、1室の窓際にあさがお植生を施し(あさがお室)、もう1室を比較対象室(ブラインドA室)とした。同様に西向き室は風船かずら室とブラインドB室とした。温熱環境要素は、気温、黒球温度、相対湿度、外気温湿度(学内百葉箱)を5分間隔で測定した。測定期間は2005年6月~10月、2006年6月~10月である。被験者実験:両室の窓は1/2開放・扉は全開とし、ブラインド室は直射日光が入らないように調整した。被験者は、各室にて30分間椅子座安静状態を保った。申告は室内温熱環境評価と室内雰囲気評価などを10分毎に行った。 【結果】7月~9月の晴天日で、2室の窓・扉の開放状態が一致し、日射の影響を受けやすい12時~16時の黒球温度の平均値を比較した。外気温が高く、窓面の緑被率が80%以上の時期(8/1~8/16)における植生室とブラインド室の黒球温度差は、南向き室で‐0.3℃、西向き室で-0.9℃と、西向きの方が植生の室温上昇を抑える効果が大きかった。被験者実験について、特に西向きにおいて植生室の方がブラインド室に比べ体感温度が1.5℃低く、雰囲気評価でも植生室は「安らぎのある」などの項目で高く評価された。温熱環境実測調査、被験者実験の結果を総合すると、窓際植生により、日射の強い西向き室においても高い暑熱緩和効果が得られた。
  • 東京女子高等師範学校卒業生と家政学専門職に関する研究の一環として
    八幡(谷口) 彩子
    セッションID: I1-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 筆者は、戦前、東京女子高等師範学校において、どのような家政に関する教育が行われ、それを学んだ卒業生が専門性を活かしてどのように社会貢献を行ったのかについて研究を進めている。本研究では、東京女高師家事科の卒業生で、のちに文部省教科調査官となる鹿内瑞子氏の旧蔵資料をもとに、昭和20年代の小学校家庭科と、そこに鹿内氏がどのように関わったのかについて検討することを目的とする。
    方法 本研究で用いた資料は、鹿内氏の逝去後、林雅子氏らが分類整理し、東京書籍での委託保管後国立教育政策研究所に移管され、2006年5月より同教育図書館で公開された鹿内瑞子旧蔵資料1139点のうち、昭和20年代の小学校家庭科に関する資料15点である。
    結果 (1)鹿内(旧姓:中島)瑞子氏(1915-1981)は1937年東京女高師家事科を卒業。1941年同研究科(日本教育史専攻)修了、同校教育室勤務等を経て、1947年から1976年までの約30年間、小学校家庭科を中心とする教育課程行政に従事した。(2)鹿内瑞子氏の旧蔵資料によれば、戦後の小学校家庭科の発足期に、家庭科存続を求める地方教員からの要望書の中に家庭科教育の本質に関する言及がみられるとともに、新しい家庭科教育のあり方について、各地で検討が行われていた。(3)昭和20年代、鹿内氏は、教科書局事務嘱託、事務補佐員、文部事務官として文部省初等中等教育局に勤務。家庭生活と両立しながら、精力的に新しい家庭科創設に向けて活動を開始し始めた時期であったことが伺われる。
  • 小・中・高等学校を通して
    芳賀 香昌, 赤塚 朋子
    セッションID: M1-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    家庭科における障がい理解教育の現状~小・中・高等学校を通して~ ○芳賀 香昌,赤塚 朋子 (宇都宮大学・院 ,宇都宮大学) <目的>障がい理解教育は、いまだ教育の方法や内容が確立されていない分野である。そこで実際の教育現場では、障がい理解教育がどのように扱われているのかを、特に家庭科においての現状を調査し、今後の課題、改善点を検討することを目的とした。 <方法>調査対象は栃木県の小・中・高等学校(私立校含む)の家庭科担当教員で、教員の障がい理解教育の認知度、行われているかの有無、行われている場合には、授業時間、頻度、授業形態、授業内容などに関する調査用紙を郵送し、分析を行った。 <結果>小学校、中学校、高等学校の家庭科の授業で、障がい理解教育を行っている割合は少なかった。行っている場合でも、総合的な学習の時間、特別活動、道徳などの時間である。授業時間や頻度についても単発的なものが多く、授業内容は交流といった直接、障がいをもった人と関わるものが多い。また、小学校から中学校、中学校から高等学校と学年が上がるにつれ、障がい理解教育を行っている割合は、低くなっていく。しかし、障がい理解教育は長期的・継続的に行う必要があることから、アンケート調査の結果や文献調査をもとに、高等学校の家庭科での障がい理解教育の授業を提案する。
  • 長野県の小・中学校教員を対象とした調査より
    森 友希恵, 草野 篤子
    セッションID: M1-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    2001年から障害児と健常児が共に学ぶ「統合教育」の実践が全国的に広がっている。そこで本研究では,「生活自立」という点において障害児教育と共通の目標をもつ家庭科に限定した統合教育に注目し,家庭科の統合教育における現状と課題を明らかにする。 家庭科における統合教育の実践経験がある教員は57.3%であった。授業者への支援者がいない場合は小学校38.1%,中学校81.8%であった。障害児の学習目標を健常児とは異なるものに置いている教員は小学校84.2%,中学校45.5%であった。指導上の課題を意識している教員は小学校96.2%,中学校76.5%であり,最も多く指摘された課題は「障害児と健常児の関わりへの支援」38.5%であった。統合教育の学習者への大きな意義は,授業中に障害児と健常児との関わりが生まれることであった。障害児と健常児が共により豊かに生きるために,家庭科における統合教育をより効果的に実施することが求められる。
  • 藤田 智子
    セッションID: M1-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    食育という言葉がもてはやされ、食に関する教育の大幅な見直しが行われている。だが、行動変容につながる栄養指導の不足も問題とされており、日常生活において学校知としての栄養の知識はうまく機能していない場合が多いことが指摘されている。青年期は、自己と身体像が深く結びつき、ウェイトコントロールへの関心が高い時期であり、身体像と食生活が密接に関わるともいえる。青年期の食生活行動に影響を与えている要因を身体像に注目しながら明らかにすることが本研究の目的である。
    【方法】
    調査対象者:東京都、新潟県、福岡県の高校1~2年生、計1629名
    調査時期:2006年10月~2007年1月
    調査方法:質問紙調査
    なお、本調査は平成18年度お茶の水女子大学COE公募研究の一環として行われた。
    【結果】
    (1) 食生活指針および家庭科の教科書などを参考に、望ましい食生活行動を15項目で測定する尺度を作成し、合計得点を食生活行動得点とした。
    (2) 身体コントロール願望(今よりやせたい、背が高くなりたい)と食生活行動得点との一元配置分散分析を行った。その結果、二項目とも有意な群間差がみられ、やせたいという願望が強くなるほど得点は低く、背が高くなりたい願望に関しては、中位群が最も得点が高く、低位群・高位群は低かった。
    (3) 身体コントロール願望と他変数との相関関係を分析した。女子は、食事を準備する際TV・ファッション誌・本・女友達からの情報や知識を気にする、体重・身長への不満足度が高い場合、やせたい願望が強かった。料理をする、家庭科で習ったことを気にする、自尊感情得点が高い場合、やせたい願望は低かった。男子に関しては、自尊感情得点が高い人はやせたい願望が弱く、ファッション誌からの情報を気にする、男は背が高くなければと思う人が、背が高くなりたい願望が強かった。
  • -日米の教科書等の検討を通じて-
    萱島 知子, 井川 佳子
    セッションID: M1-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】 食品の機能性に関する情報が氾濫している現状への対応として,生活者が適切な食情報を入手するための環境整備が数年前から政府やその関連機関によって推進されている。一方で生活者個人が適切な知識や態度をもって食情報に接することが肝要であり,そのためには学校教育を含めた学習の場が必要になると考えられる。この研究では,マスメディアから提供される食情報,特に食品の機能性に関するものに注目して,家庭科教科書等の記述を検討し,家庭科の学習内容を考察することを目的とした。
    【方法】 日本の中学校から高等学校のレベルに相当する米国の家庭科教科書(5冊),日本の中学校および高等学校家庭科の学習指導要領,教科書(中学校2冊,高等学校19冊),指導書を対象とした。マスメディアから提供される食情報,特に食品の機能性に関するものに注目して,記述を調査した。
    【結果】 1)米国の教科書全5冊で食情報に関連する記述があった。食品の機能性に関する情報への対応を詳細に記述しているものもあり,情報を批判的に思考し判断するための要点の例示がなされていた。2)日本の学習指導要領では,生活情報に関する記述はあったが,「食情報」という用語は使われていなかった。中学校教科書全2冊と高等学校教科書19冊中6冊で,食情報に関連する記述があった。情報に惑わされないという態度を提示しているものもあったが,具体的な対応はほとんど示されていなかった。3)食情報,特に食品の機能性に関する情報について批判的に思考するための具体的な対応が,家庭科の学習内容として必要と考えられ,そのための方策を提示した。
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