形態・機能
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14 巻, 1 号
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原著論文
  • 向井 加奈恵, 小松 恵美, 浦井 珠恵, 中島 由加里, 浅野 きみ, 尾崎 紀之, 中谷 壽男
    2015 年 14 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究は静脈穿刺時の橈骨神経浅枝損傷を防ぐために、手首付近での橈骨神経浅枝と橈側皮静脈の交叉の位置と頻度を明らかにすることを目的とした。本学において解剖実習に供されたご遺体28体28右肢の前腕、手首、手背を用いた。外側上顆から橈骨茎状突起までの距離は22.3±1.7cm であった。橈骨茎状突起より近位6.7±0.8cm の地点で橈骨神経浅枝が腕橈骨筋の深部より皮下に出現し、この神経より内側に位置する橈側皮静脈と伴行、下行した。この橈骨神経浅枝の出現部位は、外側上顆から橈骨茎状突起までの距離の遠位30.0±3.3%に位置していた。また、皮下に出現した橈骨神経浅枝と橈側皮静脈の交叉の頻度は、橈骨茎状突起より近位で62.6%、遠位で17.1%、橈骨茎状突起の位置で14.3%であった。また、橈骨神経浅枝は常に橈側皮静脈より深層に位置していた。橈骨神経浅枝と橈側皮静脈の太さの比は0.88±0.31であった。以上の結果より、外側上顆から橈骨茎状突起までの距離の遠位約1/3の位置で静脈穿刺を実施する際には、橈骨神経浅枝と橈側皮静脈の位置関係を考慮して行う必要があることが示唆された。
  • 川真田 聖一, 青山 裕彦, 黒瀬 智之
    2015 年 14 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究は、解剖体見学(見学実習)を1回実施して、その教育効果を調べた。見学実習前の看護学生に、ヒトのさまざまな解剖学的構造の輪郭を、想像している大きさで紙に描いてもらった。見学実習後に、看護学生にもう1度、これらについて新しいイメージの大きさで輪郭を描いてもらった。また、学生に、さまざまな器官の実物の大きさについて、想像していた大きさと比較した主観的な印象を質問した。ほとんどの学生は、心臓、上行大動脈、肺と肝臓が、想像より大きかった。対照的に、気管、脊髄と子宮は、一般に想像より小さかった。脊髄は、見学実習前はほとんどの人が非常に大きく、そして見学後も一部の人は大きく描いた。描いた輪郭の最大径は、見学実習前と実習後がそれぞれ、心臓は92.7±14.5と105.8±16.3mm(平均±標準偏差、n=187)、上行大動脈は17.3±8.1と26.4±6.3mm(n=185)、気管は22.9±10.1と18.1±6.7mm(n=184)、脊髄は41.4±28.1と13.4±10.3mm(n=111)だった。本研究で、看護学生の大部分が、小さいにせよ大きいにせよ、ヒトのさまざまな解剖学的構造の大きさを誤って理解しており、見学実習が誤りを訂正するのに非常に有用であることが明らかになった。見学実習は、他分野のコ・メディカル学生にも、このような教育効果が期待される。見学実習は非常に有用であるが、日本ではかなりの割合の看護学生は、解剖体に接する機会がほとんどない。見学実習の解剖学的および他の教育効果を考慮に入れると、人体標本に接する実習を、それぞれの職種の必要性に応じた実習方式で、看護学生には少なくとも1回、そして他のコ・メディカル学生にも、もっと広汎に実施すべきである。
  • 長 雄一郎, 佐藤 健次, 星 治
    2015 年 14 巻 1 号 p. 22-32
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    膀胱の機能制御には下腹神経(HN)と骨盤神経(PN)が重要な役割を果たしている。また結腸の機能制御は結腸神経(CN)により支配されている。本研究では、ビーグル犬5頭に対し、結腸を利用した膀胱拡大術およびHN を間置したPN-HN-CN 再縫合術を施行し、結腸を膀胱に移植した結腸代用膀胱モデルを作製して、結腸代用膀胱に至るPN の再生および膀胱機能再建に関して電気生理学的、組織学的検討を行った。術後18ヶ月に、縫合PN-HN-CN の電気刺激による結腸代用膀胱の収縮反応を電気生理学的に測定した。その結果、PN 部と間置HN 部の電気刺激により、犬5頭全てにおいて結腸代用膀胱圧の上昇反応が検出され、その収縮圧は最高15 mmHg から最低4 mmHg の範囲にあり、平均8.3 mmHgであった。さらに、縫合PN-HN-CN 組織および正常対照(対照PN、対照HN)組織を採取し、ヘマトキシリン・エオジン染色法、鍍銀染色法、免疫組織化学染色法、透過型電子顕微鏡法により、縫合PN-HN-CN 組織の微細構造について組織学的に検討した。その結果、縫合PN-HN-CN 組織の全経過で連続的な神経線維の存在が確認され、PN-HN 縫合部では結合組織の増加および神経線維のランダムな走行も観察された。また縫合PN-HN-CN の末梢側ほど神経線維の変形が強くなり、軸索径も細く変化し、神経線維が結合組織間に疎に散在し、一部では細い無髄神経線維が少数集まり、束を形成し始めていた。以上より、縫合PN-HN-CN におけるPN の再建が確認された。縫合PN-HN-CN の中枢側であるPN 部より神経線維が再生し、その再生PN の副交感神経作用が本来は交感神経であった間置HN 部とCN 部を介して結腸代用膀胱において発現されたことから、神経縫合を施行した結腸代用膀胱が機能的にも代用膀胱となり得る可能性が示唆された。
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