数学教育学会誌
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53 巻, 1-2 号
数学教育学会誌
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 旧課程の実施状況と新課程の編成状況
    礒田 正美, 松嵜 昭雄
    2012 年 53 巻 1-2 号 p. 1-13
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー
    高等学校における多様な教育課程の編成実施状況及び新課程の準備状況を知るために、某県全日制公立高等学校を対象として、質問紙調査「公立高等学校の数学科教育課程実施に関する調査」を行った。普通科と専門学科・総合学科別に旧課程と新課程に係る調査集計を行い、普通科については偏差値層別にクロス集計も行った。質問紙調査結果から、旧課程では学校毎の多様な工夫の現状が、また新課程への対応では[課題学習]の未認知などの対応遅れと「数学Ⅲ」単位増による工夫制約が認められた。各科目の実際の指導内容を知る目的で、上位層1 校と下位層2 校を抽出し、数学科主任にインタビュー調査も行った。インタビューから、公開された教育課程を越えて生徒の実態に応じて、学習指導要領を越えて指導する柔軟な実施状況が明らかになった。
  • 太陽光パネルによる家庭発電問題から
    柳本 哲, 宮川 敏之
    2012 年 53 巻 1-2 号 p. 15-23
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー
    数学的モデリングの教材として,「太陽光パネルによる家庭発電」の問題を取り上げ,中学生有志を対象に,その問題解決に挑戦させてみた。その際,数学的モデリングにおける条件設定と検証場面に焦点をあて,日本の中学生の問題解決スキルの様相を捉えようと試みた。この種の問題解決スキルは,社会を切り拓く人間教育をめざした数学的モデリングの数学的活動に欠かせないものである。その結果,全般的に複雑な現実事象の問題場面から条件設定が適切に行えないことや,一定の正解には至るものの不確定な数値や条件を取り扱うモデリングスキルが不十分であることが分かった。また,中学3年生にはこのような問題解決が可能であることも窺えた。
  • 専門科目を取り入れた微分授業の有効性の検討
    秦泉寺 俊弘
    2012 年 53 巻 1-2 号 p. 25-37
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高専学生の特性を考慮したうえで,専門科目を取り入れた微分授業の有効性について検討し,高専における関数指導法を提案することである。具体的には,機械工学科3 年生の専門科目「機構学」の内容を機械工学科2 年生一般科目「微積分Ⅰ」の授業に取り入れ,その効果について情意・学習の両面から検討を行った。その結果,情意面については授業アンケートの自由記述から高専学生の特性である道具的動機づけの高さ(「専門科目への興味」,「将来に役立つ」)が裏付けられた。学習面については,課題特性の異なる4つの調査問題を実施,数学的課題については関数指導法による効果は一部しかみられなかったが,工学的課題については専門科目を取り入れた微分授業を行った機械工学科の正答率が高かった。これらの結果は,高専学生に必要とされる力をつけるための指導方法,すなわち,高専における関数指導法としての可能性が示されたものといえる。
  • 小田 翔吾, 渡邉 伸樹
    2012 年 53 巻 1-2 号 p. 39-50
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー
    本研究では,現在の小学校高学年において有効であると考えられる正負の数のカリキュラム開発を行うことを目的とする。そこで本稿では,正負の数の教育の歴史的変遷・先行研究・諸外国の教育(一部の州)・認識調査などの分析から,現在の子どもに有効であると考えられる正負の数のカリキュラム(試案)を開発し,カリキュラムの小学校高学年段階の内容(一部)について,実際に,小学校6 年生(正負の数を未習)を対象に教育実験を行うことからその妥当性を検証した。その結果,小学校6 年生で十分に理解可能であることから,開発したカリキュラムに一定の妥当性が示唆された。
  • 廣瀬 隆司, 坂井 武司, 石内 久治, 齋藤 昇
    2012 年 53 巻 1-2 号 p. 51-60
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 極限の考えを導入した円の面積の授業実践とその効果を明らかにすることである。そのため, 第6学年の2クラスの児童61 名を実験クラスとし, 他の第6学年の2クラスの児童63名を統制クラスとした。実験クラスの児童に対しては, 算数的活動の内,「調査的な算数的活動」と「探求的な算数的活動」に焦点を当てて授業実践を行い, 統制クラスの児童に対しては, 教科書に沿った授業実践を行った。事後調査では, 6社の教科書が扱っている「円を分割し, 分割した扇形を交互に並び替える内容を問う問題」を問題1とし, T 社の「教科書の内容を発展させた内容を問う問題」を問題2とした。事後調査問題を分析・考察した結果, 次のことが明らかになった。
    (1) 問題1について, 実験クラスの正答率は90.2 %であり, 統制クラスの正答率は57.1 %であった。
    (2) 問題2について, 実験クラスの正答率は93.4 %であり, 統制クラスの正答率は58.7 %であった。
    これらの結果から, 算数的活動を重視し, 極限の考えを導入した円の面積の授業実践は, 児童にとって理解しやすく, 効果があることが判明した。
  • 学ぶことと生きること
    後藤 四郎
    2012 年 53 巻 1-2 号 p. 61-69
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー
    大学での学生生活が充実したものになるには,大学とはどのような使命を帯びた存在であり,そこで学ぶとはどのような営みであるかを,予め知ることが重要である。数学の場合には,高等学校までの学習法のままでは対応できない内容が出現する。進学上の指導・検討項目の一つとして考慮しておいて欲しい。
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