数学教育学会誌
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53 巻, 3-4 号
数学教育学会誌
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 生徒の特性に応じた学力の向上を目指して
    長谷川 勝久, 齋藤 昇
    2013 年 53 巻 3-4 号 p. 71-83
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー
    本研究では,一人ひとりの生徒の特性に応じた学力の伸長をはかるための学校数学教材バンクシステムの開発とその適用例について述べる。学校数学教材バンクシステムを開発するにあたり,学校数学で必要な学力を測定するための評価の観点を明らかにし,構造方程式モデリングを用いて階層型評価モデルを構築した。次に,教科書などの問題を,階層型評価モデルに基づいて,どの観点の学力を測定する問題なのかを判断し,適切に分類するシステムをニューラルネットワークを用いて開発した。最後に,分類した問題をデータベースとして蓄積する学校数学教材バンクシステムを開発した。本システムを公立中学校において適用した結果,本システムを用いて学習したクラスは,本システムを用いなかったクラスよりも学習効果が高いことが明らかになった。
  • 図形の概念形成
    河合 博一
    2013 年 53 巻 3-4 号 p. 85-96
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー
    中学校と高等学校では論証を図形分野で学ぶことになっている。しかし、現在の生徒にとっては、数学の中でも図形分野は不得意な分野である。その原因は図を描くこと、推論、論証の積み重ねと専門用語などであると言われているしそれらにより嫌われ習得が困難とされている。また時代の変化に伴い学習姿勢も変貌してきている。一方、新教育課程では中学校の対称図形は、対称図形の大部分が小学校に移行される。この数年、旧教育課程で中学校1年の図形分野の最初の教授項目である対称図形と立体図形の定義に照準を定めてその習得状況、学習姿勢と教授法の関係を研究して来た。その調査の分析から定義の習得状況の悪いことは数学の教授法にも関係があることが判明した。更に、Rによる回帰分析、分散分析と工夫を加えた因子分析の結果より、「教授方法を変えると、定義の習得状況と学習姿勢に変化が見られた」のでこれらを報告する。
  • 坂井 武司, 齋藤 昇, 高橋 正, 廣瀨 隆司
    2013 年 53 巻 3-4 号 p. 97-106
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー
    本研究は,割合についての児童の認識の仕方を明らかにした。そこでは,3つのくじの当たりやすさを比較する調査問題を作成し,小学校第5学年の児童51名を対象として調査を実施した。調査データのスケログラム分析及び児童のプロトコルの分析を行った結果, 次のことが明らかになった。
    (1)割合についての児童の認識は,5つのカテゴリーに分類できる。
    (2)倍関係を認識することのできる児童は,5.9%で少ない。
    (3)3つのくじそれぞれにおいて,当たりくじの総数がはずれくじの総数と等しくなると,「2つのくじそれぞれにおいて,当たりくじの総数がはずれくじの総数と等しいとき,2つのくじの当たりやすさは等しい」という考え方を使用できなくなる。
  • 歩く動作と「時間と距離のグラフ」の関係を考察する遠隔協同学習
    佐伯 昭彦, 末廣 聡, 中谷 亮子, 土田 理
    2013 年 53 巻 3-4 号 p. 107-119
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,遠隔協同学習におけるコミュニケーション活動が現象の変化とグラフを関係づける表現力にどの様に影響したかを明らかにすることである。そのために,本研究では,歩く動作と「時間と距離のグラフ」に関する問題を出し合う遠隔協同学習において,歩く動作を体や文章で表現したり解釈したりする数学的活動を取り入れた実験授業を行った。その結果,以下のことが明らかになった。
    (1)文章等を読み取り現象の変化をグラフで表現する能力が高まる傾向があった。
    (2)グラフを読み取り現象の変化を文章等で表現する能力が高まる傾向があった。
    (3)歩く動作の変化を伴って変わる時間と距離の関数関係として捉える生徒の意識が高まる傾向があった。
  • 校内研修におけるRTMaC 授業研究の取り組み
    渡邉 伸樹
    2013 年 53 巻 3-4 号 p. 121-129
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー
    近年,算数・数学科を指導する現職教員の再教育が課題として指摘されることが多い。しかしながら,効果的な研修ができているとはいえないのが実情である。そこで,本研究では,この課題を解決する研修の一方法として,学校全体の校内研修,及び有志の個人・集団研修で取り組みが行えるRTMaC 授業研究を開発した。本稿では,実際に校内研修で取り組みを行った結果,子どもの学力が向上する,教員の指導の力量が質的に向上するなどの効果が認められ,現職教員の再教育の研修として有意義であることが示唆された。
  • 神崎 秀嗣, 藤田 洋一, 石田 洋一
    2013 年 53 巻 3-4 号 p. 131-143
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/04/21
    ジャーナル フリー
    筆者らは臨床検査技師養成校において情報教育に携わっている。これまで医療従事者にとって情報科学は必ずしも必要な学問ではなかった。しかし検査機器の進歩と高度化, 日本での医師不足の解決や医師業務の負担増から医療機関内の電子カルテの普及やオンライン化によってPC 含めた情報科学技術は必要になってきており, 医療従事者の国家試験にも情報科学の分野が出題されるようになってきた。またスマートフォン/タブレットも医療現場に登場し始めた。近年のICT 環境の進歩と医療系への導入を考えると, スマートフォン/タブレットを教育に導入することを考えた。タブレットを使えば, 必要な情報を即座に引き出し, 他の医療従事者や患者と情報を共有できる。医療現場や遠隔地医療においても, チーム医療に役立つ。この状況からカリキュラムの変更を迫られている。そこでスマートフォン/タブレットを用いた情報科学の教育法を考察する。以上のように筆者の医療機関で即戦力として役立つ情報科学教育の試みを紹介する。
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