脳血管内治療
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4 巻, 1 号
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特集 神戸宣言,その後:急性期脳梗塞に対する血管内治療の普及の取り組み
序文
原著
  • 髙木 俊範, 吉村 紳一, 坂井 信幸, 飯原 弘二, 大石 英則, 広畑 優, 松丸 祐司, 松本 康史, 山上 宏
    2019 年 4 巻 1 号 p. 2-6
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    [早期公開] 公開日: 2018/08/24
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】我が国においても,急性期脳主幹動脈閉塞症に対する血栓回収療法は,グレードA にて推奨されている.しかし我が国での治療実態に関する詳細な報告は存在しない.本研究の目的は,我が国での脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法の実施状況を把握することである.【方法】日本脳神経血管内治療学会全会員を対象に,メールにてアンケートを送付し,結果を回収した.調査項目は2016 年1 月から12 月までの各施設の症例数および出張先での治療数とした.結果を集計し,都道府県別の人口当たりの治療件数と専門医数を計算した.【結果】専門医所属施設594 のうち,574 施設より回答を得た(96.6%).全治療症例数は7702 例であり,人口10 万人当たりの治療件数は6.06 件であった.1 例でも治療を行った,全治療施設数は596 であった.人口当たりの治療件数ならびに専門医数には地域格差が大きかった.【結論】全国アンケートにより悉皆性の高い調査が行えた.2016 年では人口10 万人当たりの治療数は6.06 件であり,今後の症例数の増加が望まれる.

  • 長内 俊也
    2019 年 4 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    [早期公開] 公開日: 2018/08/09
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】脳主幹動脈閉塞による脳梗塞に対する血栓回収療法のエビデンスは確立された.さらに新しいエビデンスも次々と発表されており,これまでの脳梗塞治療が今後激変することが予想される.【方法】2016 年の日本脳神経血管内治療学会学術総会で“神戸宣言”が発表されたのち,血管内治療に携わる医師を中心として,この治療の恩恵をすべての患者に届けるための全国的な取り組みが展開されてきた.【結果】北海道は広大な大地と都市に人口が集約している.医療過疎地から都市までの距離がほかの都府県と比べると離れている.またドクターヘリも冬期間の悪天候により利用できないことも多く,短時間に治療しなければならない血栓回収療法には不利な土地である.【結論】このような悪条件の中,北海道の血管内治療医ならびに血栓回収チームがこの治療を普及させていくための取り組みについて報告する.

  • 國分 康平, 清水 宏明, 松本 康史
    2019 年 4 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    [早期公開] 公開日: 2018/09/12
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】血栓回収療法について日本脳神経血管内治療学会(the Japanese Society for Neuroendovascular Therapy: JSNET)東北地方会での取り組みを報告する.【方法】JSNET 東北地方会では東北各県の血栓回収療法の現状を報告するREgional systems for Brain attack to Improve efficacy of clot Retrieval treatment in Tohoku Hospital network( REBIRTH) を発足させた.今回,REBIRTH に提示された2016 年の東北各県の専門医/指導医数,血栓回収症例数や今後の課題などを報告するとともにREBIRTH の発表状況を報告する.【結果】2016 年当時,東北7 県で66 人のJSNET 専門医・指導医が活動し,血栓回収症例数は計516 例であった.REBRITH の発足以降,各県の代表によって計3 回の国内学会でREBIRTH の内容について発表があった.【結論】REBIRTH の活動は東北地方において血栓回収療法の課題の解決に寄与すると考えられる.

  • 太田 貴裕, 松丸 祐司
    2019 年 4 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    [早期公開] 公開日: 2018/08/06
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】東京都多摩地区における血栓回収療法の現状と取り組みについて報告する.【方法】多摩地区は東京都の西半分を占めており,人口は約430 万人.限られた専門医・施設において血栓回収療法が行われている.血栓回収療法普及のため4 つの取り組みを行っている.1)血栓回収療法勉強会、多摩急性期虚血性脳卒中治療フォーラム(Tama Forum of Acute ischemic Stroke Therapy: Tama-FAST)の立ち上げ,2)情報共有,3)血栓回収療法の多施設登録研究(Tama-REgistry of Acute endovascular Thrombectomy: TREAT)の開始,4)救急隊への教育である.【結果】東京都脳卒中急性期医療機関は多摩地区では44 施設,そのうちtissue-plasminogen activator (t-PA)実施可能施設は33,血栓回収施行施設は13 である.血栓回収療法の勉強会を年3 回,合計9 回行い,顔の見える連携が構築され脳外科の急性期対応を行うための病病連携へつながった.2017 年4 月からは血栓回収療法の多施設登録研究を開始し,これまで600 例以上の症例登録があり今後データ解析予定である.【結論】多摩地区ではすでに血栓回収可能施設に症例が集まっており実質的な脳卒中治療センターとしての機能を果たしている.今後は血栓回収療法が必要な症例を優先的に治療施設に搬送する救急搬送システムを構築することを目指すなど,地域の特性をもとに血栓回収療法の治療機会を最大限有効利用できるように検討を進めていく必要がある.

  • 今井 啓輔, 山上 宏, 白川 学, 中川 一郎, 中澤 拓也, 八子 理恵, 吉村 紳一, 今村 博敏, 髙木 俊範, 坂井 信幸
    2019 年 4 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    [早期公開] 公開日: 2019/02/06
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】近畿地方での脳梗塞の急性期血行再建術(Emergency NeuroEndovascular Revascularization: ENER)の現状を明らかにし今後の対策を提起する.【方法】Recovery by Endovascular Salvage for Cerebral Ultra-acute Embolism (RESCUE)-Japan Project の全国実態調査のデータと,第4 回日本脳神経血管内治療学会(JSNET)近畿地方会での特別企画「神戸宣言─その後─」の二府四県の発表内容から近畿全体・各府県の現状と取り組みをまとめる.【結果】ENER の治療数は大阪府が,人口当たりの実施率は兵庫県が最多であった.専門医・治療施設の都市部への集中に伴い,各府県の二次医療圏別の治療数も都市部に偏っていた.ドクターヘリの活用と救急隊との連携強化は全府県で取り組まれていた.【結論】近畿二府四県のENER 治療数には都市部とそれ以外の二次医療圏の間で格差が存在していた.治療数の格差是正だけでなく,都市部での治療施設の集約化と都市部以外での治療施設の設置,近隣の二次医療圏同士の連携強化,遠隔医療システム支援下でのヘリコプター搬送など多面的なアプローチにより,近畿地方の全住民がENER を迅速に受けられる救急医療体制を構築していくべきである.

  • 杉生 憲志, 築家 秀和, 浜崎 理, 春間 純, 石原 秀行, 鈴木 倫保
    2019 年 4 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    [早期公開] 公開日: 2018/08/06
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】2016 年秋の日本脳神経血管内治療学会 (JSNET) 中国四国地方会における「脳梗塞急性期血行再建」の特別シンポジウムの中から,医療資源を集中させることが困難な山間部過疎地におけるtissue-plasminogen activator (t-PA) 静注から血栓回収療法のモデルケースとして下記の3 つを報告する.【方法・結果】1)地域の中核病院に集約してcomprehensive stroke center (CSC)に準じる施設を構築し,それまでゼロであった血栓回収療法が急増し,治療成果をあげた.2)大学病院と連携して血管内治療専門医の応援によるMobile Endovascular-therapy を展開し,血栓回収療法施行件数が急増し,それに伴って地元医師の技量も向上し,応援医師が不要となった.3)ドクターヘリ(場合によっては救急車)による全県型のhub-and-spoke モデルによる大学病院のCSC 化により,専門医不在地域から遠隔画像を駆使した診療支援により効率的に患者搬送を行い成果をあげた.【結論】これらの取り組みが,日本各地の同様の問題を抱える地域に対して,参考になることを期待する一方,多大なマンパワーが必要で,医師およびメディカルスタッフへの大きな負担の上に成り立っているため,今後の社会整備・サポートの必要性も強調したい.

  • 政平 訓貴, 太田 剛史, 岡田 憲二, 福田 真紀, 松岡 賢樹, 津野 隆哉, 竹村 光広, 森本 雅徳, 大西 広一
    2019 年 4 巻 1 号 p. 44-51
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    [早期公開] 公開日: 2018/09/14
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】急性期脳卒中の搬入から治療開始までの時間短縮を目的に各手順を定型化した「脳卒中スクランブル」による血栓回収療法の症例数や治療成績の変化を明らかにする.【方法】2012 年9 月から2017 年12 月の間で発症4.5 時間以内の急性期虚血性脳卒中を対象に血栓回収症例数,治療に関連する時間,転帰について「脳卒中スクランブル」導入前後で後向きに解析した.【結果】血栓回収実施件数は有意に増加し(20/63,32% vs. 86/117,74%),来院から穿刺(分,中央値,四分位範囲192,146–218 vs. 85,65–103),穿刺から再開通(158,101–180 vs. 45,28–73),発症から再開通(437,378–552 vs. 241,185–305)の時間は短縮,Thrombolysis in Cerebral Infarction 2b 以上の有効再開通率は増加した(45% vs. 85%)(いずれもP<0.001).3 カ月後のmodified Rankin Scale 0–2 は15%から42%に増加した(P=0.038).【結論】「脳卒中スクランブル」導入により,急性期血栓回収療法は増加,臨床転帰も改善した.

  • 進藤 誠悟
    2019 年 4 巻 1 号 p. 52-54
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    [早期公開] 公開日: 2018/08/09
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】九州各県の専門医数に関しては,熊本県以外は全国平均と比較して同等かそれ以上の数が在籍していた.福岡県,佐賀県,長崎県は症例数が多かったが,その他の県に関しては,全国平均より少ない症例数であった.症例数が少ない県は,専門医が県庁所在地などの都市部に偏在しており,広大な県内の各地域をカバーしきれていないことが影響していることが推察される.今後,各県で脳血管内治療の対象となる急性期脳梗塞患者の搬送システムの確立や,脳血管内治療専門医の偏在化に関する取り組みが必要と考える.【方法】熊本県では,これらの問題を解決するため,「熊本血栓回収療法地域格差解消プロジェクト(Kumamoto EliminAting Regional THrombectomy disparity project: K-EARTH)」を開始した.【結果】K-EARTH は,脳梗塞に対して血管内治療を行っている熊本市内の施設が共通の脳梗塞血管内治療ホットラインを作成し,脳卒中診療を行っているが血管内治療が行えない熊本県内の病院に血管内治療の適応患者が搬入された場合,ホットラインに連絡し,治療可能な施設にヘリコプターなどを用いて速やかに搬送を行い,血管内治療を行えるようにするシステムである.【結論】このシステムにより,県内全域の患者に対して血管内治療が行える体制が整えられつつある.

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